StudyMed医師国家試験

ひだの奥にぽつんと開く「出口」―Vater乳頭で見抜く十二指腸の内視鏡像

第104回医師国家試験 B問題 第33問

国試問題にチャレンジ

第104回 B問題 第33問

内視鏡写真を別に示す。  部位はどこか。

第104回 B問題 第33問の問題画像
  1. a.食道
  2. b.胃
  3. c.十二指腸
  4. d.回腸
  5. e.大腸

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、内視鏡写真1枚から消化管のどこを見ているかを当てる問題だ。こういう問題では、その臓器にしかない「目印」と、粘膜のひだや表面の性状に注目するのが基本になる。まずは写真の中で一番目立つ構造を探してみよう。
医学生医学生
壁から半球状に盛り上がった小さな隆起がありますね。最初はポリープかと思いました。
ドクタードクター
そう見えるのも無理はないね。ただ、よく見ると隆起のてっぺんに穴のような開口部があって、その口側を縦のひだが覆うように走っている。腫瘍というより、何かが「開口している」構造なんだ。
医学生医学生
開口部……消化管の中に何かが流れ込んでくる場所ということですか。
ドクタードクター
その通り。消化管の内腔に別の管が開口する代表的な場所といえば?
医学生医学生
解剖学実習で、総胆管と主膵管が合流して十二指腸に開く場所を剖出しました。Vater乳頭ですね。
ドクタードクター
正解。Vater乳頭、つまり大十二指腸乳頭は十二指腸下行部の内側壁にあって、胆汁と膵液の出口になっている。開口部の周りはOddi括約筋が取り囲んで排出を調節しているんだ。そしてもう一つの手がかりが背景のひだ。奥のほうに管腔をぐるりと輪状に取り巻くひだが何重にも見えるよね。
医学生医学生
輪状ひだ、Kerckringひだですか。組織学の講義で小腸の表面積を増やす構造だと習いました。
ドクタードクター
そう。Kerckringひだは十二指腸下行部から空腸にかけてよく発達する、小腸に特徴的な構造だ。粘膜も絨毛のためにビロードのような顆粒状に見える。乳頭と輪状ひだ、この2つがそろえば十二指腸下行部と判断できる。では、ほかの部位がなぜ違うかも確認しておこう。食道ならどう見える?
医学生医学生
消化器内科の実習で上部内視鏡を見学したとき、食道は白っぽくてつるっとしていて、血管が透けて見えていました。
ドクタードクター
よく観察していたね。食道は重層扁平上皮なので白色調で平滑、樹枝状の血管が透見される。送気するとひだはほぼ消えるし、乳頭も輪状ひだもない。胃はどうだろう。
医学生医学生
胃は太いひだが縦に走っているイメージです。輪状ではないですね。
ドクタードクター
そう、胃体部では大弯を中心に縦走する皺襞があり、送気で伸びると平坦になる。前庭部はひだが少なく、その先に幽門輪が見える。胃に胆管や膵管の開口部はない。次に回腸はどうかな。同じ小腸だから迷いやすいところだ。
医学生医学生
回腸にも輪状ひだがあるので、正直ここは迷いました。
ドクタードクター
迷うのは自然だよ。ただKerckringひだは空腸で最も発達し、回腸では肛門側ほど低く疎になる。回腸末端ではリンパ濾胞の集まりであるPeyer板が見えることもある。何より、胆管・膵管が開く乳頭は十二指腸にしかないから、乳頭が写っている時点で回腸は外れる。
医学生医学生
大腸にも横向きのひだがありますけど、あれは輪状ひだとは違うんですよね。
ドクタードクター
いい確認だね。大腸のひだはハウストラの間の半月ひだで、小腸の輪状ひだより間隔が広い。粘膜は絨毛がなくて平滑、網目状の血管が透けて見えるのが特徴だ。大腸の目印は回盲弁や虫垂開口部であって、乳頭はない。
医学生医学生
つまり、臓器固有の目印をまず探して、ひだの形と粘膜の性状で裏付ける、という順番ですね。
ドクタードクター
その通り。臨床的な話もしておこう。Vater乳頭は正面から見にくいので、ERCPでは横向きに観察できる側視鏡を使って乳頭に挿管する。乳頭の口側には副膵管が開く小十二指腸乳頭、いわゆる副乳頭もあるから、取り違えないよう注意が必要だ。
医学生医学生
ERCPといえば、総胆管結石で乳頭括約筋を切開する処置を見たことがあります。
ドクタードクター
内視鏡的乳頭括約筋切開術、ESTだね。乳頭は総胆管結石の嵌頓による急性胆管炎や胆石性膵炎、乳頭部癌による閉塞性黄疸など、重要な疾患の舞台になる。黄疸の患者で内視鏡を担当するときは、乳頭の腫大やびらんを必ずチェックするんだ。
医学生医学生
ただの部位当て問題だと思っていましたが、胆膵疾患の診療に直結する知識なんですね。
ドクタードクター
そういうこと。正常像の目印をしっかり押さえておくと、異常に気づく力も自然と身についていくよ。

まとめ

内視鏡像で部位を判断するときは、その臓器にしかない目印、ひだの形、粘膜の性状の3点に注目します。頂部に開口部をもつ半球状の隆起とそれを覆う口側のひだはVater乳頭(大十二指腸乳頭)の典型像で、背景の輪状のKerckringひだと合わせて十二指腸下行部と判断できます。食道は白色調で平滑な粘膜と樹枝状の血管透見、胃は縦走する皺襞、回腸は疎な輪状ひだとPeyer板、大腸はハウストラと半月ひだに網目状の血管透見が特徴で、いずれにも乳頭はありません。Vater乳頭は総胆管と主膵管の出口であり、総胆管結石の嵌頓、乳頭部癌、ERCPやESTなど胆膵領域の診療で重要な部位です。正常像の目印を確実に押さえることが、内視鏡で異常所見に気づくための土台になります。

解答・解説

正解はcです

画像所見

管腔の壁から半球状に盛り上がる小さな隆起があり、その頂部に開口部を思わせる構造がみられる。隆起の口側には、これを覆うように縦方向のひだ(口側隆起・被覆ひだ)が走っている。画面の下方(奥)には、管腔を輪状に取り巻く横走するひだが幾重にも見える。粘膜は光沢があり、やや顆粒状(ビロード状)である。

部位の判断

頂部に開口を持つ乳頭状の隆起はVater乳頭(大十二指腸乳頭)と考えられる。Vater乳頭は総胆管と主膵管が合流して開口する部位で、十二指腸下行部(第2部)の内側壁に位置する。背景にみられる輪状のひだはKerckring(ケルクリング)ひだ(輪状ひだ)で、十二指腸下行部から空腸にかけてよく発達する小腸に特徴的な構造である。この2点から、十二指腸(下行部)の内視鏡像と判断できる。

考え方

消化管の内視鏡像で部位を問われたら、①その臓器にしかない目印(Vater乳頭、幽門、噴門、回盲弁、虫垂開口部など)と、②粘膜ひだの形(縦走か輪状か、間隔が密か粗か)、③粘膜の性状(絨毛の有無、血管透見の有無)を手がかりにする。本問は①のVater乳頭が決め手となる。

選択肢考察

  1. ×a.  食道

    誤り。食道は重層扁平上皮に覆われた筒状の管腔で、正常では白っぽく平滑な粘膜の下に樹枝状の血管が透見される。送気で伸展するとひだはほぼ消え、輪状ひだや乳頭状の構造は存在しない。本像の赤みを帯びたビロード状粘膜と輪状ひだ、乳頭とは合わない。

  2. ×b.  胃

    誤り。胃の体部では大弯側を中心に縦走する太いひだ(胃皺襞)がみられ、送気で伸展すると平坦化する。前庭部はひだに乏しく、その先に幽門輪が見える。胃には胆管・膵管の開口部である乳頭は存在せず、輪状ひだもみられない。

  3. ○c.  十二指腸

    正解。頂部に開口部をもつ半球状の隆起と、それを覆う口側の縦ひだはVater乳頭(大十二指腸乳頭)の典型像であり、背景には輪状のKerckringひだがみられる。Vater乳頭は十二指腸下行部の内側壁に位置し、総胆管と主膵管が開口する部位であるため、本像は十二指腸下行部と判断できる。なお乳頭の口側(上方)には副膵管が開口する小十二指腸乳頭(副乳頭)がある。乳頭は正面視しにくいため、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)などでは側視鏡を用いて観察・挿管する。

  4. ×d.  回腸

    誤り。回腸も小腸であり絨毛による顆粒状の粘膜をもつが、Kerckringひだは空腸で最も発達し、回腸では肛門側に向かうほど低く疎になる。回腸末端部にはリンパ濾胞の集合であるPeyer板がみられることがある。胆管・膵管が開口する乳頭は十二指腸にしか存在しないため、乳頭がみられる本像は回腸とは考えられない。

  5. ×e.  大腸

    誤り。大腸にはハウストラ(結腸膨起)とその間の半月ひだがみられ、ひだは横走するが小腸の輪状ひだより間隔が広い。粘膜には絨毛がなく平滑で、粘膜下の血管が網目状に透見されるのが特徴である。大腸の目印としては回盲弁(Bauhin弁)や虫垂開口部があるが、胆管・膵管の開口する乳頭は存在しない。

十二指腸の区分と主な構造

・球部(第1部):幽門輪の直後の膨らんだ部分。ひだに乏しく、十二指腸潰瘍の好発部位である。 ・下行部(第2部):内側壁にVater乳頭(大十二指腸乳頭)があり、その口側に小十二指腸乳頭(副乳頭)がある。Kerckringひだが明瞭になる。 ・水平部(第3部):上腸間膜動静脈の背側を横切る。 ・上行部(第4部):Treitz靱帯のところで空腸に移行する。

Vater乳頭の構造

総胆管と主膵管は十二指腸壁内で合流(または近接)し、共通管として乳頭に開口する。開口部はOddi括約筋に取り囲まれ、胆汁・膵液の排出を調節する。内視鏡的には、乳頭の口側を覆う縦走ひだ(口側隆起)、乳頭の肛門側に続く縦走ひだ(小帯)が目印になる。

Vater乳頭が関係する主な疾患・手技

・乳頭部癌、乳頭部腺腫:閉塞性黄疸の原因となる。 ・総胆管結石の乳頭部嵌頓:急性胆管炎・胆石性膵炎の原因となる。 ・膵・胆管合流異常:胆道癌のリスクとなる。 ・ERCP、内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)、内視鏡的乳頭バルーン拡張術(EPBD)。

消化管各部位の内視鏡的特徴のまとめ

・食道:白色調で平滑な重層扁平上皮、樹枝状血管の透見 ・胃:体部の縦走ひだ、前庭部と幽門輪 ・十二指腸:球部、Vater乳頭、輪状ひだ、絨毛による顆粒状粘膜 ・空腸・回腸:輪状ひだ(空腸で密、回腸で疎)、回腸末端のPeyer板 ・大腸:ハウストラと半月ひだ、網目状の血管透見、回盲弁・虫垂開口部

POINT

・頂部に開口をもつ半球状の隆起と口側の被覆ひだ → Vater乳頭 → 十二指腸下行部 ・Vater乳頭には総胆管と主膵管が開口し、その口側に副膵管の開口する副乳頭がある ・輪状ひだ(Kerckringひだ)は十二指腸下行部〜空腸で発達する小腸の特徴 ・食道は平滑で血管透見、胃は縦走ひだ、大腸はハウストラと血管透見が目印

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。