ひだの奥にぽつんと開く「出口」―Vater乳頭で見抜く十二指腸の内視鏡像
第104回医師国家試験 B問題 第33問
国試問題にチャレンジ
内視鏡写真を別に示す。 部位はどこか。

- a.食道
- b.胃
- c.十二指腸
- d.回腸
- e.大腸
対話形式の解説
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ドクターまとめ
内視鏡像で部位を判断するときは、その臓器にしかない目印、ひだの形、粘膜の性状の3点に注目します。頂部に開口部をもつ半球状の隆起とそれを覆う口側のひだはVater乳頭(大十二指腸乳頭)の典型像で、背景の輪状のKerckringひだと合わせて十二指腸下行部と判断できます。食道は白色調で平滑な粘膜と樹枝状の血管透見、胃は縦走する皺襞、回腸は疎な輪状ひだとPeyer板、大腸はハウストラと半月ひだに網目状の血管透見が特徴で、いずれにも乳頭はありません。Vater乳頭は総胆管と主膵管の出口であり、総胆管結石の嵌頓、乳頭部癌、ERCPやESTなど胆膵領域の診療で重要な部位です。正常像の目印を確実に押さえることが、内視鏡で異常所見に気づくための土台になります。
解答・解説
正解はcです
画像所見
管腔の壁から半球状に盛り上がる小さな隆起があり、その頂部に開口部を思わせる構造がみられる。隆起の口側には、これを覆うように縦方向のひだ(口側隆起・被覆ひだ)が走っている。画面の下方(奥)には、管腔を輪状に取り巻く横走するひだが幾重にも見える。粘膜は光沢があり、やや顆粒状(ビロード状)である。
部位の判断
頂部に開口を持つ乳頭状の隆起はVater乳頭(大十二指腸乳頭)と考えられる。Vater乳頭は総胆管と主膵管が合流して開口する部位で、十二指腸下行部(第2部)の内側壁に位置する。背景にみられる輪状のひだはKerckring(ケルクリング)ひだ(輪状ひだ)で、十二指腸下行部から空腸にかけてよく発達する小腸に特徴的な構造である。この2点から、十二指腸(下行部)の内視鏡像と判断できる。
考え方
消化管の内視鏡像で部位を問われたら、①その臓器にしかない目印(Vater乳頭、幽門、噴門、回盲弁、虫垂開口部など)と、②粘膜ひだの形(縦走か輪状か、間隔が密か粗か)、③粘膜の性状(絨毛の有無、血管透見の有無)を手がかりにする。本問は①のVater乳頭が決め手となる。
選択肢考察
- ×a. 食道
誤り。食道は重層扁平上皮に覆われた筒状の管腔で、正常では白っぽく平滑な粘膜の下に樹枝状の血管が透見される。送気で伸展するとひだはほぼ消え、輪状ひだや乳頭状の構造は存在しない。本像の赤みを帯びたビロード状粘膜と輪状ひだ、乳頭とは合わない。
- ×b. 胃
誤り。胃の体部では大弯側を中心に縦走する太いひだ(胃皺襞)がみられ、送気で伸展すると平坦化する。前庭部はひだに乏しく、その先に幽門輪が見える。胃には胆管・膵管の開口部である乳頭は存在せず、輪状ひだもみられない。
- ○c. 十二指腸
正解。頂部に開口部をもつ半球状の隆起と、それを覆う口側の縦ひだはVater乳頭(大十二指腸乳頭)の典型像であり、背景には輪状のKerckringひだがみられる。Vater乳頭は十二指腸下行部の内側壁に位置し、総胆管と主膵管が開口する部位であるため、本像は十二指腸下行部と判断できる。なお乳頭の口側(上方)には副膵管が開口する小十二指腸乳頭(副乳頭)がある。乳頭は正面視しにくいため、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)などでは側視鏡を用いて観察・挿管する。
- ×d. 回腸
誤り。回腸も小腸であり絨毛による顆粒状の粘膜をもつが、Kerckringひだは空腸で最も発達し、回腸では肛門側に向かうほど低く疎になる。回腸末端部にはリンパ濾胞の集合であるPeyer板がみられることがある。胆管・膵管が開口する乳頭は十二指腸にしか存在しないため、乳頭がみられる本像は回腸とは考えられない。
- ×e. 大腸
誤り。大腸にはハウストラ(結腸膨起)とその間の半月ひだがみられ、ひだは横走するが小腸の輪状ひだより間隔が広い。粘膜には絨毛がなく平滑で、粘膜下の血管が網目状に透見されるのが特徴である。大腸の目印としては回盲弁(Bauhin弁)や虫垂開口部があるが、胆管・膵管の開口する乳頭は存在しない。
十二指腸の区分と主な構造
・球部(第1部):幽門輪の直後の膨らんだ部分。ひだに乏しく、十二指腸潰瘍の好発部位である。 ・下行部(第2部):内側壁にVater乳頭(大十二指腸乳頭)があり、その口側に小十二指腸乳頭(副乳頭)がある。Kerckringひだが明瞭になる。 ・水平部(第3部):上腸間膜動静脈の背側を横切る。 ・上行部(第4部):Treitz靱帯のところで空腸に移行する。
Vater乳頭の構造
総胆管と主膵管は十二指腸壁内で合流(または近接)し、共通管として乳頭に開口する。開口部はOddi括約筋に取り囲まれ、胆汁・膵液の排出を調節する。内視鏡的には、乳頭の口側を覆う縦走ひだ(口側隆起)、乳頭の肛門側に続く縦走ひだ(小帯)が目印になる。
Vater乳頭が関係する主な疾患・手技
・乳頭部癌、乳頭部腺腫:閉塞性黄疸の原因となる。 ・総胆管結石の乳頭部嵌頓:急性胆管炎・胆石性膵炎の原因となる。 ・膵・胆管合流異常:胆道癌のリスクとなる。 ・ERCP、内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)、内視鏡的乳頭バルーン拡張術(EPBD)。
消化管各部位の内視鏡的特徴のまとめ
・食道:白色調で平滑な重層扁平上皮、樹枝状血管の透見 ・胃:体部の縦走ひだ、前庭部と幽門輪 ・十二指腸:球部、Vater乳頭、輪状ひだ、絨毛による顆粒状粘膜 ・空腸・回腸:輪状ひだ(空腸で密、回腸で疎)、回腸末端のPeyer板 ・大腸:ハウストラと半月ひだ、網目状の血管透見、回盲弁・虫垂開口部
POINT
・頂部に開口をもつ半球状の隆起と口側の被覆ひだ → Vater乳頭 → 十二指腸下行部 ・Vater乳頭には総胆管と主膵管が開口し、その口側に副膵管の開口する副乳頭がある ・輪状ひだ(Kerckringひだ)は十二指腸下行部〜空腸で発達する小腸の特徴 ・食道は平滑で血管透見、胃は縦走ひだ、大腸はハウストラと血管透見が目印
