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便が白いと尿から消えるもの―ビリルビンの旅路で読み解くウロビリノゲン

第104回医師国家試験 B問題 第18問

国試問題にチャレンジ

第104回 B問題 第18問

灰白色便を呈する患者で尿中排泄が低下するのはどれか。

  1. a.ウロビリノゲン
  2. b.ハプトグロビン
  3. c.ビリベルジン
  4. d.ビリルビン
  5. e.ヘモグロビン

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、灰白色便という一つの所見から、尿中で減る物質を推理する問題だ。カギはビリルビン代謝の流れを、赤血球が壊されるところから腸、そして腎臓まで順にたどれるかどうか。まず、そもそも便はなぜ茶色いのか考えてみよう。
医学生医学生
胆汁の色、ですよね。ビリルビンが関係していると習いました。
ドクタードクター
そう。正確には、胆汁中に出たビリルビンが腸内細菌で代謝されてできるステルコビリンやウロビリンといった色素が便の色をつくっている。だから便が灰白色、粘土色になるということは、胆汁が十二指腸に流れ込んでいないことを意味するんだ。
医学生医学生
総胆管結石や膵頭部癌で胆管が詰まった閉塞性黄疸ですね。
ドクタードクター
その通り。高度の肝内胆汁うっ滞でも起こりうる。では、ビリルビン代謝の流れを整理しよう。老化した赤血球は脾臓のマクロファージで壊され、ヘモグロビンのヘムがヘムオキシゲナーゼでビリベルジンになり、さらに還元されて非抱合型ビリルビンになる。これは水に溶けにくいのでアルブミンに乗って肝臓へ運ばれ、グルクロン酸抱合を受けて水溶性の抱合型ビリルビンになり、胆汁へ排泄される。
医学生医学生
生化学の講義で、ヘムからビリルビンまでの図を何度も描かされました。その後、腸で何が起きるかが少し曖昧です。
ドクタードクター
腸に入った抱合型ビリルビンは腸内細菌によってウロビリノゲンに変換される。大部分は便に出るけれど、一部は腸管から再吸収されて門脈経由で肝臓に戻る。これが腸肝循環で、肝臓で取り込まれなかったわずかな分が腎臓から尿に出る。
医学生医学生
ということは、尿中ウロビリノゲンは、ビリルビンが一度腸まで届かないと生まれないんですね。
ドクタードクター
まさにそこがポイント。胆汁が腸に届かなければ原料がないから、ウロビリノゲンは腸でつくられず、尿中排泄は低下し、完全閉塞なら陰性になる。これが正解だ。
医学生医学生
でも閉塞性黄疸では尿の色が濃くなると聞きました。ビリルビンも減るのかと一瞬迷いました。
ドクタードクター
いい迷いだね。行き場を失った抱合型ビリルビンは血中に逆流する。抱合型は水溶性でアルブミンとの結合も弱いから、糸球体で濾過されて尿中に出る。つまり尿中ビリルビンは陽性になり、尿はビール様の褐色になる。減るのではなく増えるんだ。
医学生医学生
逆に非抱合型ビリルビンは水に溶けないので、溶血で増えても尿には出ないんですよね。
ドクタードクター
その通り。CBTでもよく問われる対比だ。ではビリベルジンはどうだろう。
医学生医学生
ヘムからビリルビンになる途中の物質なので、胆汁が腸に届くかどうかとは関係なさそうです。
ドクタードクター
正しい。ビリベルジンは緑色の色素で、すぐにビリルビンへ還元されるから体内にほとんど溜まらない。胆道閉塞で生成が左右されることはない。ただ、長く続く高度の閉塞性黄疸では、溜まったビリルビンの一部が酸化されてビリベルジンになり、皮膚が緑がかって見える緑色黄疸が起こることがある。
医学生医学生
ハプトグロビンとヘモグロビンは、どちらも溶血の話ですよね。
ドクタードクター
そうだね。ハプトグロビンは肝臓でつくられる血漿蛋白で、血管内に出た遊離ヘモグロビンと結合して処理する。臨床では血清値の低下を血管内溶血の指標として使うもので、尿中排泄を評価する物質ではない。ヘモグロビン尿はハプトグロビンの結合能力を超える血管内溶血、たとえば発作性夜間ヘモグロビン尿症や不適合輸血で出るもので、もともと健常時には尿に出ないし、胆道閉塞とは無関係だ。
医学生医学生
黄疸の型ごとに尿と便の所見を整理しておくとよさそうですね。
ドクタードクター
ぜひそうしてほしい。溶血性黄疸は間接ビリルビン優位で、尿中ビリルビン陰性、尿中ウロビリノゲン増加、便は濃い色。肝細胞性黄疸は直接・間接ともに上がり、尿中ビリルビン陽性で、肝臓での再取り込みが落ちるため尿中ウロビリノゲンは増えることが多い。閉塞性黄疸は直接ビリルビン優位で、尿中ビリルビン陽性、尿中ウロビリノゲン低下から陰性、灰白色便、そしてALPやγ-GTPの上昇を伴う。
医学生医学生
消化器内科の実習で、膵頭部癌の患者さんがかゆみを強く訴えていたのを思い出しました。
ドクタードクター
胆汁酸のうっ滞による皮膚瘙痒感だね。もう一つ臨床で大事なのは、腸に胆汁酸が届かないことで脂肪の吸収が落ち、脂溶性のビタミンKも吸収されなくなること。プロトロンビン時間が延長するので、ERCPなどの処置の前には凝固能を確認し、必要ならビタミンKを経静脈的に補充する。経口では吸収されにくいから非経口投与がポイントだ。

まとめ

便の茶褐色は胆汁中のビリルビンが腸内細菌で代謝されてできる色素によるもので、灰白色便は胆汁が腸に届いていない閉塞性黄疸を示します。ウロビリノゲンは腸内細菌がビリルビンから生成し、一部が再吸収されて尿中に出るため、胆道閉塞では尿中ウロビリノゲンが低下ないし陰性化します。一方、水溶性の抱合型ビリルビンは血中に逆流して尿中に排泄され褐色尿となり、ハプトグロビンやヘモグロビン尿は血管内溶血の指標、ビリベルジンはビリルビンの前駆物質で胆汁流出とは無関係です。溶血性・肝細胞性・閉塞性黄疸で尿中ビリルビンと尿中ウロビリノゲンの動きが異なることを押さえておくと、尿検査だけでも黄疸の原因をある程度推測できます。閉塞性黄疸では瘙痒感やビタミンK吸収障害による凝固異常にも注意が必要で、代謝経路の理解がそのまま臨床判断に直結する好例です。

解答・解説

正解はaです

灰白色便が意味するもの

便の茶褐色は、胆汁中に排泄されたビリルビンが腸内細菌によって代謝されてできる色素(ウロビリノゲンが酸化されたウロビリン、ステルコビリノゲンが酸化されたステルコビリンなど)によるものである。したがって便が灰白色(粘土色・クリーム色)になるのは、胆汁が十二指腸に流れ込んでいないことを示す。代表的な病態は、総胆管結石、膵頭部癌、胆管癌、乳頭部癌などによる肝外胆管の完全閉塞(閉塞性黄疸)であり、ほかに高度の肝内胆汁うっ滞でもみられる。

ビリルビン代謝の流れから考える

老化した赤血球が脾臓などのマクロファージで壊されると、ヘモグロビンのヘムがヘムオキシゲナーゼによってビリベルジンに変わり、さらにビリベルジン還元酵素で非抱合型(間接)ビリルビンになる。非抱合型ビリルビンは水に溶けにくく、血中ではアルブミンに結合して肝臓へ運ばれ、肝細胞でグルクロン酸抱合を受けて水溶性の抱合型(直接)ビリルビンとなり、胆汁中へ排泄される。腸管に入った抱合型ビリルビンは腸内細菌によってウロビリノゲンへと変換され、大部分は便中に出るが、一部は腸管から再吸収されて門脈経由で肝臓に戻る(腸肝循環)。その再吸収分のうち肝臓で取り込まれなかったわずかな量が腎臓から尿中に排泄される。

設問の考え方

尿中ウロビリノゲンは「ビリルビンが腸まで到達し、腸内細菌で変換される」という過程を経て初めて生じる。胆汁の流れが途絶えて灰白色便となっている状態では、腸管内でウロビリノゲンがつくられないため、尿中ウロビリノゲンは低下し、完全閉塞では陰性化する。一方で、行き場を失った抱合型ビリルビンは血中に逆流し、水溶性であるため腎から尿中に出て、尿は濃い褐色(ビール様)になる。灰白色便・褐色尿・尿中ウロビリノゲン低下の組み合わせが閉塞性黄疸の典型像である。

選択肢考察

  1. ○a.  ウロビリノゲン

    ウロビリノゲンは、胆汁とともに腸管に排泄された抱合型ビリルビンが腸内細菌によって還元されてできる物質である。その一部が腸管から吸収されて血中に入り、尿中へ排泄される。胆汁が腸に届かない閉塞性黄疸では、原料となるビリルビンが腸管内に存在しないためウロビリノゲンが生成されず、尿中排泄は低下(完全閉塞では陰性)する。これが正解である。なお、溶血性貧血や肝細胞障害(肝臓での再取り込み低下)では逆に尿中ウロビリノゲンは増加する。

  2. ×b.  ハプトグロビン

    ハプトグロビンは肝臓で合成される血漿蛋白で、血管内に放出された遊離ヘモグロビンと結合して複合体をつくり、それが肝臓などで処理されることで、ヘモグロビンが腎から失われるのを防ぐ。尿中排泄を評価する物質ではなく、臨床では血清濃度の低下が溶血(特に血管内溶血)の指標として用いられる。胆道閉塞で尿中排泄が低下するものではない。

  3. ×c.  ビリベルジン

    ビリベルジンはヘムがヘムオキシゲナーゼで分解されて生じる緑色の色素で、すぐにビリベルジン還元酵素によってビリルビンへと変換されるため、通常は体内にほとんど蓄積しない。ビリルビンの前段階の物質であり、胆汁が腸に届くかどうかでその生成が左右されることはないため、灰白色便を呈する病態で尿中排泄が低下する物質ではない。なお、長期間続く高度の閉塞性黄疸では、血中に蓄積したビリルビンの一部が酸化されてビリベルジンとなり、皮膚が緑色がかって見える(緑色黄疸)ことがある。

  4. ×d.  ビリルビン

    閉塞性黄疸では、肝臓で抱合された抱合型(直接)ビリルビンが胆汁中へ出ていけなくなり、血中に逆流して増加する。抱合型ビリルビンは水溶性で、アルブミンとの結合も比較的弱いため、腎糸球体で濾過されて尿中に排泄され、尿中ビリルビンは陽性となり尿は褐色調を呈する。したがって低下ではなく増加する。これに対し、非抱合型(間接)ビリルビンはアルブミンと強く結合し水にも溶けにくいため、溶血などで血中濃度が上昇しても尿中には出ない。

  5. ×e.  ヘモグロビン

    ヘモグロビン尿は、血管内溶血によって遊離ヘモグロビンが大量に生じ、ハプトグロビンの結合能力を超えたときに出現する(発作性夜間ヘモグロビン尿症、不適合輸血、行軍ヘモグロビン尿症など)。大量のヘモグロビン尿は尿細管に円柱をつくったり尿細管障害を起こしたりして、急性腎障害の原因となりうる。胆道閉塞とは関係せず、灰白色便の患者で尿中排泄が低下するものではない(健常時もともと尿中には出ない)。

ビリルビン代謝の整理

1. 赤血球の寿命は約120日で、老化赤血球は主に脾臓のマクロファージで処理される。 2. ヘモグロビン → ヘム → (ヘムオキシゲナーゼ)→ ビリベルジン(緑色)→ (ビリベルジン還元酵素)→ 非抱合型ビリルビン(脂溶性、アルブミンと結合して輸送) 3. 肝細胞でUDP-グルクロン酸転移酵素によりグルクロン酸抱合 → 抱合型ビリルビン(水溶性)→ 毛細胆管から胆汁中へ排泄 4. 腸管内で腸内細菌によりウロビリノゲンへ変換 → 大部分は便中へ(ステルコビリンとして便の色をつくる)、一部は再吸収されて腸肝循環、ごく一部が尿中へ

黄疸の型と尿・便所見

溶血性黄疸(ビリルビン産生過剰): 血中は間接ビリルビン優位。尿中ビリルビン陰性、尿中ウロビリノゲン増加、便の色は濃い。 肝細胞性黄疸(肝炎など): 直接・間接ともに上昇。尿中ビリルビン陽性、尿中ウロビリノゲンは増加することが多い(肝臓の再取り込み低下のため)。 閉塞性黄疸: 血中は直接ビリルビン優位。尿中ビリルビン陽性、尿中ウロビリノゲン低下〜陰性、灰白色便。ALP、γ-GTP(γ-グルタミルトランスペプチダーゼ)などの胆道系酵素上昇を伴う。

閉塞性黄疸の随伴所見

胆汁酸の血中うっ滞による皮膚瘙痒感、腸管内胆汁酸欠乏による脂肪吸収障害とビタミンK吸収低下(プロトロンビン時間延長)など。ビタミンK欠乏による凝固異常はビタミンKの非経口投与で改善する。

POINT

・便の色はビリルビン由来の代謝産物(ステルコビリンなど)による。灰白色便=胆汁が腸に届いていない(閉塞性黄疸)。 ・ウロビリノゲンは腸内細菌がつくるため、胆道閉塞では尿中ウロビリノゲンが低下〜陰性になる。 ・閉塞性黄疸では水溶性の抱合型(直接)ビリルビンが尿中に出て褐色尿となる。 ・非抱合型(間接)ビリルビンは尿中に出ない(溶血性黄疸では尿中ビリルビン陰性、ウロビリノゲン増加)。 ・ハプトグロビン低下・ヘモグロビン尿は血管内溶血の所見であり、胆道閉塞とは無関係。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。