冷えると固まる抗体の正体―クリオグロブリン血症から整理するアレルギー分類Ⅰ〜Ⅴ型
第104回医師国家試験 B問題 第17問
国試問題にチャレンジ
アレルギー反応の分類と疾患の組合せで正しいのはどれか。
- a.Ⅰ型アレルギー ―― 免疫性血小板減少性紫斑病〈特発性血小板減少性紫斑病〉〈ITP〉
- b.Ⅱ型アレルギー ―― 混合性結合組織病〈MCTD〉
- c.Ⅲ型アレルギー ―― クリオグロブリン血症
- d.Ⅳ型アレルギー ―― Goodpasture症候群
- e.Ⅴ型アレルギー ―― 慢性甲状腺炎〈橋本病〉
対話形式の解説
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ドクターまとめ
アレルギー反応はⅠ型(IgEと肥満細胞)、Ⅱ型(細胞・基底膜への抗体による傷害)、Ⅲ型(免疫複合体の沈着)、Ⅳ型(感作T細胞)、Ⅴ型(受容体を刺激する抗体)に分けられ、何がどのように組織を傷害するかで型が決まります。クリオグロブリン血症は低温で沈殿する免疫グロブリンが免疫複合体として小血管に沈着し、補体を活性化して血管炎を起こす典型的なⅢ型で、紫斑・関節痛・脱力感や補体(特にC4)低下を示し、C型肝炎との関連が重要です。ITPとGoodpasture症候群はⅡ型、橋本病は破壊性の機序からⅡ型(Ⅳ型の要素を含む)、Ⅴ型の代表はBasedow病であり、MCTDは単一の型の代表疾患とはされません。採血検体を37℃で保温して運ぶといった実務上の注意も含め、機序から型を理解しておくと、膠原病・腎臓・血液疾患の病態理解にも幅広く応用できます。
解答・解説
正解はcです
Coombs(クームス)とGell(ゲル)によるアレルギー反応の分類(Ⅰ〜Ⅳ型)に、Ⅴ型を加えた分類と代表疾患の対応を問う問題である。
各型の要点
・Ⅰ型(即時型・アナフィラキシー型):抗原特異的IgE抗体が肥満細胞(マスト細胞)や好塩基球の表面に結合しており、再び侵入した抗原がIgEを架橋すると脱顆粒が起こる。放出されたヒスタミンやロイコトリエンなどにより、数分〜数十分で症状が出る。 ・Ⅱ型(細胞傷害型):細胞表面や基底膜などの組織抗原にIgG・IgM抗体が結合し、補体の活性化やマクロファージによる貪食、NK細胞などによる抗体依存性細胞傷害(ADCC)で細胞・組織が傷害される。 ・Ⅲ型(免疫複合体型・Arthus型):可溶性抗原と抗体が結合した免疫複合体が血管壁や糸球体などに沈着し、補体を活性化して好中球を呼び寄せ、組織を傷害する。 ・Ⅳ型(遅延型・細胞性免疫型):抗体ではなく感作T細胞が主役で、T細胞が放出するサイトカインによるマクロファージの活性化や、細胞傷害性T細胞の直接攻撃によって、24〜72時間ほどかけて反応が起こる。 ・Ⅴ型(刺激型):受容体に対する自己抗体が、細胞を壊すのではなく受容体を刺激(あるいは阻害)して機能異常を起こす。Ⅱ型の特殊型として扱われることも多い。 疾患を考える際は、「何に対する抗体(あるいはT細胞)が、どのように組織を傷害するか」を確認すると型が決まる。クリオグロブリン血症は、寒冷で沈殿する免疫グロブリン(多くは抗原抗体複合体)が血管壁に沈着し、補体を活性化して血管炎を起こす病態であり、典型的なⅢ型アレルギーである。
選択肢考察
- ×a. Ⅰ型アレルギー ―― 免疫性血小板減少性紫斑病〈特発性血小板減少性紫斑病〉〈ITP〉
ITPでは、血小板膜糖蛋白(GPⅡb/Ⅲaなど)に対するIgG自己抗体が血小板に結合し、抗体で覆われた血小板が主に脾臓のマクロファージに貪食されて破壊される。細胞表面抗原に対する抗体による細胞傷害なのでⅡ型アレルギーである。Ⅰ型の代表はアナフィラキシー、気管支喘息(アトピー型)、アレルギー性鼻炎、花粉症、蕁麻疹、食物アレルギーなどである。
- ×b. Ⅱ型アレルギー ―― 混合性結合組織病〈MCTD〉
MCTDは、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、多発性筋炎/皮膚筋炎の症状が混在し、抗U1-RNP抗体が高力価で陽性となる膠原病である。Raynaud現象、手指のソーセージ様腫脹、肺高血圧症などが特徴である。病態は単一のアレルギー型では説明されておらず、Ⅱ型アレルギーの代表疾患として位置づけられるものではない。Ⅱ型の代表は自己免疫性溶血性貧血、ITP、Goodpasture症候群、血液型不適合輸血、Rh不適合妊娠(新生児溶血性疾患)などである。
- ○c. Ⅲ型アレルギー ―― クリオグロブリン血症
クリオグロブリンは、低温(おおむね4℃前後)で沈殿し、37℃に温めると再び溶ける免疫グロブリンである。混合型クリオグロブリン血症では、IgMリウマトイド因子とIgGなどが免疫複合体を形成し、これが小血管壁に沈着して補体を活性化し、血管炎を起こす。紫斑(下肢に多い触知可能な紫斑)、関節痛、末梢神経障害、膜性増殖性糸球体腎炎などを生じ、補体(特にC4)の低下を伴う。免疫複合体の沈着による組織傷害であり、Ⅲ型アレルギーに分類される。原因としてはC型肝炎ウイルス感染が最も重要である。
- ×d. Ⅳ型アレルギー ―― Goodpasture症候群
Goodpasture症候群(抗糸球体基底膜〈GBM〉抗体病)は、Ⅳ型コラーゲンα3鎖に対する自己抗体が糸球体基底膜と肺胞基底膜に直接結合し、急速進行性糸球体腎炎と肺胞出血を起こす疾患である。組織の抗原に抗体が結合して傷害するのでⅡ型アレルギーであり、蛍光抗体法では基底膜に沿った線状のIgG沈着がみられる。Ⅳ型の代表はツベルクリン反応、接触皮膚炎、移植片拒絶反応、結核・Hansen病の肉芽腫、サルコイドーシスなどである。
- ×e. Ⅴ型アレルギー ―― 慢性甲状腺炎〈橋本病〉
橋本病では、抗甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)抗体や抗サイログロブリン抗体が陽性となり、甲状腺濾胞細胞が抗体や細胞傷害性T細胞によって破壊されて、甲状腺機能低下症に至る。細胞を破壊する機序であり、一般にⅡ型(T細胞の関与からⅣ型の要素も併せ持つ)に分類される。Ⅴ型の代表は、TSH受容体を刺激する抗体(TRAb/TSAb)によって甲状腺機能が亢進するBasedow病である。重症筋無力症(アセチルコリン受容体抗体が受容体の働きを妨げる)もⅤ型に含めることがあるが、補体による終板の傷害を伴うためⅡ型に分類されることも多い。
アレルギー分類と代表疾患の整理
・Ⅰ型(IgE・肥満細胞):アナフィラキシーショック、アトピー型気管支喘息、アレルギー性鼻炎・花粉症、アレルギー性結膜炎、蕁麻疹、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎(Ⅳ型の要素も含む) ・Ⅱ型(抗体による細胞傷害):自己免疫性溶血性貧血、ITP、不適合輸血、新生児溶血性疾患、Goodpasture症候群、尋常性天疱瘡・水疱性類天疱瘡、橋本病 ・Ⅲ型(免疫複合体):血清病、全身性エリテマトーデス(ループス腎炎)、溶連菌感染後急性糸球体腎炎、クリオグロブリン血症、IgA血管炎、過敏性肺炎(Ⅳ型の要素も含む)、関節リウマチ(血管炎・関節炎の一部) ・Ⅳ型(感作T細胞):ツベルクリン反応、接触皮膚炎、移植片拒絶反応、結核・Hansen病・サルコイドーシスの肉芽腫形成、薬疹の多く ・Ⅴ型(受容体への刺激・阻害抗体):Basedow病、(重症筋無力症)
クリオグロブリン血症の分類(Brouet分類)
・Ⅰ型:単クローン性免疫グロブリンのみ。多発性骨髄腫、原発性マクログロブリン血症などに伴い、過粘稠や血栓による症状が主体。 ・Ⅱ型:単クローン性IgM(リウマトイド因子活性をもつ)+多クローン性IgG。C型肝炎に伴うものが大半。 ・Ⅲ型:多クローン性IgM+多クローン性IgG。膠原病(SLE、Sjögren症候群など)や感染症に伴う。 Ⅱ型・Ⅲ型をまとめて混合型と呼び、免疫複合体による血管炎(Meltzerの三徴:紫斑・関節痛・脱力感)が主体となる。検査では採血後の検体を37℃で保温して運ぶ必要がある(冷えると沈殿して正確に測れない)。
温度で性状が変わる蛋白
・クリオグロブリン:4℃前後で沈殿し、37℃で再溶解する。 ・Bence Jones蛋白(免疫グロブリン軽鎖):56℃前後で凝固し、100℃近くで再溶解する。多発性骨髄腫などで尿中に出現する。 ・パイログロブリン:56℃前後の加熱で不可逆的に凝固する。多発性骨髄腫などでみられる。 【関連事項】B型肝炎ウイルスと抗体の免疫複合体は結節性多発動脈炎の発症に関与するとされ、これもⅢ型の機序である。
POINT
・Ⅰ型:IgE・肥満細胞(アナフィラキシー、花粉症) ・Ⅱ型:抗体が細胞・基底膜を直接攻撃(ITP、AIHA、Goodpasture症候群、橋本病) ・Ⅲ型:免疫複合体の沈着(SLE、血清病、溶連菌感染後糸球体腎炎、クリオグロブリン血症) ・Ⅳ型:感作T細胞(ツベルクリン反応、接触皮膚炎、移植片拒絶) ・Ⅴ型:受容体を刺激する抗体(Basedow病) ・クリオグロブリン血症はC型肝炎との関連が重要。
