StudyMed医師国家試験

食べすぎたマクロファージの暴走―血球貪食症候群で「増えるもの・減るもの」を整理する

第103回医師国家試験 I問題 第15問

国試問題にチャレンジ

第103回 I問題 第15問

血球貪食症候群で増加するのはどれか。2つ選べ。

  1. a.白血球
  2. b.血清フィブリノーゲン
  3. c.血清LD〈LDH〉
  4. d.血清フェリチン
  5. e.血清補体価

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は血球貪食症候群の検査所見を問う問題だ。丸暗記ではなく、「マクロファージが暴走すると何が起こるか」という病態から考えると、増えるもの・減るものが自然に整理できる。まず、この病気の本態をどう理解しているかな。
医学生医学生
名前のとおり、マクロファージが血球を食べてしまう病気ですよね。基礎の免疫学で習った気がしますが、なぜそうなるのかまでは曖昧です。
ドクタードクター
正直でいいね。本来、ウイルス感染などで免疫が動くと、細胞傷害性T細胞やNK細胞が感染細胞を処理して、反応はやがて収まる。ところがこのブレーキがきかなくなると、T細胞とマクロファージが過剰に活性化し、IFN-γやTNF-α、IL-6、IL-18などのサイトカインが大量に放出される。いわゆるサイトカインストームだ。その結果、活性化したマクロファージが骨髄や脾臓、肝臓で自分の血球を食べてしまうんだ。
医学生医学生
血球を食べられてしまうなら、白血球は減りそうですね。でも炎症が強いなら白血球は増えるのでは、とも思ってしまいます。
ドクタードクター
そこはよくある迷いどころだ。普通の細菌感染なら白血球は増えるけれど、この病気では貪食に加えてサイトカインによる骨髄の造血抑制も起こるので、2系統以上の血球減少、ときに汎血球減少になる。診断基準でも血球減少が項目の一つになっているくらいで、白血球は増えるのではなく減るのが特徴なんだ。
医学生医学生
フィブリノゲンは炎症で増える急性期蛋白だと習いましたが、ここでも増えるんでしょうか。
ドクタードクター
いい疑問だね。一般的な炎症ならそうなんだけど、この病気では逆に減る。DICを合併して消費されること、肝障害で合成が落ちること、活性化マクロファージが出すプラスミノゲンアクチベーターで線溶が亢進することなどが理由と考えられている。低フィブリノゲン血症は高トリグリセリド血症と並んで診断基準に入っているよ。
医学生医学生
炎症なのにフィブリノゲンが低いというのは、かえって目立つサインになりそうですね。
ドクタードクター
その通り。「強い炎症があるのにフィブリノゲンが低い、血球が減っている」という組み合わせは、この病気を疑う手がかりになる。では増えるものを考えよう。LDはどうかな。
医学生医学生
LDは全身の細胞にあるので、細胞が壊れれば上がりますよね。血球が壊されて、肝臓も傷むなら増えると思います。
ドクタードクター
正解。貪食された血球からの放出、サイトカインによる肝細胞障害、臓器への組織球浸潤による組織障害が重なって、著明に高くなることが多い。背景にリンパ腫があれば腫瘍由来のLDも加わる。そしてもう一つ、この病気を最も特徴づけるのが血清フェリチンだ。
医学生医学生
フェリチンは鉄の貯蔵の指標というイメージでした。CBTの勉強では鉄欠乏性貧血で低くなる、という覚え方しかしていなかったです。
ドクタードクター
フェリチンは炎症でも上がる急性期反応物質でもあるんだ。活性化マクロファージが赤血球を貪食してヘム鉄を取り込み、さらにIL-1やIL-6の刺激でフェリチンの合成・分泌が亢進する。診断基準では500 ng/mL以上だけど、実際には数千から数万に達することも珍しくない。極端な高値はこの病気を強く疑うきっかけになるし、病勢や治療効果の指標にもなる。
医学生医学生
血清補体価はどうでしょう。免疫が暴走しているなら動きそうな気もします。
ドクタードクター
補体価はこの病気の診断に使う指標ではなく、正常範囲のことが多い。DICを合併したり、背景にSLEのような自己免疫疾患があったりすれば消費で下がることはあるけれど、特徴的に上昇する項目ではない。だから選ぶべきはLDとフェリチンの2つになる。
医学生医学生
増えるのはフェリチン、LD、それにトリグリセリド。減るのは血球とフィブリノゲン、と病態から整理できました。
ドクタードクター
よくまとまっているね。トリグリセリドが上がるのはTNF-αがリポ蛋白リパーゼを抑えるためだ。ほかに活性化T細胞を反映する可溶性IL-2受容体、肝逸脱酵素も上がる。逆にNK細胞活性は低下する。原因としては、乳幼児に多いパーフォリン遺伝子異常などの一次性と、EBウイルスをはじめとする感染症、T/NK細胞リンパ腫などの悪性腫瘍、成人Still病やSLEといった自己免疫疾患に伴う二次性がある。自己免疫疾患に伴うものはマクロファージ活性化症候群とも呼ばれるよ。
医学生医学生
血液内科の実習で、成人Still病の患者さんでフェリチンが異様に高いと話題になっていたのを思い出しました。治療はどうするんですか。
ドクタードクター
原因疾患の治療に加えて、副腎皮質ステロイド、シクロスポリン、エトポシドを組み合わせた治療が基本で、一次性や重症例では造血幹細胞移植も検討する。進行が非常に速いので、不明熱に血球減少、肝脾腫、著明な高フェリチン血症が揃ったら、骨髄検査などで早めに確認に動くことが予後を左右するんだ。

まとめ

血球貪食症候群は、T細胞・NK細胞による免疫制御が破綻し、T細胞とマクロファージが過剰に活性化して高サイトカイン血症と血球の貪食が起こる病態です。そのため血清フェリチン(著増が特徴)、LD、トリグリセリド、可溶性IL-2受容体、肝逸脱酵素が上昇し、反対に血球(2系統以上)、フィブリノゲン、NK細胞活性は低下します。白血球やフィブリノゲンは「炎症なら増える」と考えがちですが、本症では減少する点が重要で、補体価は特徴的な変化を示しません。原因にはパーフォリン遺伝子異常などの一次性と、EBウイルス感染、リンパ腫、自己免疫疾患に伴う二次性があり、ステロイド・シクロスポリン・エトポシドなどによる早期治療が予後を左右します。病態から検査値の増減を導く考え方は、HLH-2004診断基準の理解や不明熱診療での早期発見にも直結します。

解答・解説

正解はc, dです

血球貪食症候群(HPS:hemophagocytic syndrome、血球貪食性リンパ組織球症 HLH:hemophagocytic lymphohistiocytosis ともいう)は、T細胞(特に細胞傷害性T細胞)やNK細胞による免疫反応の制御がきかなくなり、マクロファージ(組織球)が過剰に活性化される病態である。活性化したT細胞・マクロファージから、インターフェロンγ(IFN-γ)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターロイキン(IL-1、IL-6、IL-18など)といったサイトカインが大量に放出される(高サイトカイン血症、サイトカインストーム)。 検査所見は、次の2つの流れから理解すると覚えやすい。 1) マクロファージが骨髄・脾臓・肝臓などで自分の血球(赤血球・白血球・血小板)を食べてしまう → 2系統以上の血球減少。 2) 大量のサイトカインと組織障害 → 高熱、肝障害、凝固異常、脂質代謝異常。 この結果「増加するもの」として、血清フェリチン(活性化マクロファージが産生)、LD(血球破壊・肝細胞障害・組織障害を反映)、トリグリセリド、可溶性IL-2受容体(活性化T細胞を反映)、肝逸脱酵素などが挙がる。逆に「減少するもの」は、血球(白血球・赤血球・血小板)とフィブリノゲンである。選択肢の中で増加するのはLDとフェリチンである。

選択肢考察

  1. ×a.  白血球

    減少する。活性化マクロファージによる貪食に加え、サイトカイン(IFN-γやTNF-αなど)による骨髄での造血抑制も加わり、2系統以上の血球減少(汎血球減少のことも多い)をきたす。HLH-2004診断基準でも、好中球1,000/μL未満、ヘモグロビン9 g/dL未満、血小板10万/μL未満のうち2系統以上の減少が項目の一つとなっている。

  2. ×b.  血清フィブリノーゲン

    減少する。機序として、①凝固が過剰に活性化して播種性血管内凝固(DIC)をしばしば合併し、フィブリノゲンが消費される、②肝障害により肝臓でのフィブリノゲン合成が低下する、③活性化マクロファージが放出するプラスミノゲンアクチベーターにより線溶が亢進する、などが考えられている。低フィブリノゲン血症(150 mg/dL以下)は高トリグリセリド血症と並んで診断基準の一項目である。

  3. ○c.  血清LD〈LDH〉

    増加する。LD(乳酸脱水素酵素)は全身の細胞に含まれる酵素で、細胞が壊れると血中に漏れ出る。本症では貪食・破壊された血球からの放出に加え、サイトカインによる肝細胞障害、臓器への組織球浸潤による組織障害が重なり、著明な高値を示すことが多い。背景にリンパ腫がある場合(リンパ腫関連血球貪食症候群)には腫瘍由来のLDも加わる。LDは病勢のモニタリングにも用いられる。

  4. ○d.  血清フェリチン

    増加する。本症を特徴づける所見である。活性化マクロファージが赤血球を貪食してヘム鉄を細胞内に蓄えるとともに、IL-1やIL-6などの炎症性サイトカインの刺激でフェリチンの合成・分泌が亢進するため、血清フェリチンは著しく上昇する。HLH-2004診断基準では500 ng/mL以上が項目の一つだが、実際には数千~数万 ng/mL に達することも珍しくなく、極端な高値は本症を強く疑う手がかりになる。病勢の推移・治療効果の指標としても有用である。

  5. ×e.  血清補体価

    増加する所見ではない。血清補体価は本症の診断に用いる指標ではなく、正常範囲のことが多い。DICを合併したり、背景に全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患がある場合には消費により低下することもある。いずれにしても本症で特徴的に上昇する項目ではない。

分類と原因

一次性(遺伝性):家族性血球貪食性リンパ組織球症(パーフォリン遺伝子 PRF1、UNC13D、STX11 などの異常)、Chédiak-Higashi症候群、X連鎖リンパ増殖症候群など。細胞傷害性T細胞・NK細胞が標的細胞を殺す仕組み(パーフォリン・グランザイム系)の障害により、免疫反応が終息しない。乳幼児期に発症することが多い。 二次性(反応性): ・感染症関連:EBウイルス(最多)、サイトメガロウイルスなどのヘルペス属ウイルス、その他のウイルス・細菌・真菌・原虫 ・悪性腫瘍関連:悪性リンパ腫(特にT/NK細胞リンパ腫)など ・自己免疫疾患関連:成人Still病、若年性特発性関節炎(全身型)、SLEなど。マクロファージ活性化症候群(MAS)と呼ばれる

HLH-2004診断基準

分子遺伝学的診断がつくか、次の8項目のうち5項目以上を満たす。 1) 発熱(38.5℃以上) 2) 脾腫 3) 2系統以上の血球減少(Hb 9 g/dL未満、血小板10万/μL未満、好中球1,000/μL未満) 4) 高トリグリセリド血症(空腹時265 mg/dL以上)かつ/または低フィブリノゲン血症(150 mg/dL以下) 5) 骨髄・脾臓・リンパ節などでの血球貪食像 6) NK細胞活性の低下または欠如 7) 血清フェリチン500 ng/mL以上 8) 可溶性IL-2受容体 2,400 U/mL以上

その他の所見

AST・ALT・ビリルビンの上昇(肝障害)、肝脾腫、リンパ節腫脹、皮疹、中枢神経症状、DICの合併など。トリグリセリドの上昇は、TNF-αがリポ蛋白リパーゼの活性を抑えることによる。

治療

原因疾患の治療に加え、副腎皮質ステロイド、シクロスポリン、エトポシドを組み合わせた治療(HLH-94/2004プロトコール)が基本で、重症例・一次性では同種造血幹細胞移植を行う。進行が速く、早期診断・早期治療が予後を左右する。

POINT

・血球貪食症候群は、T細胞・マクロファージの過剰活性化による高サイトカイン血症と、マクロファージによる血球の貪食が本態 ・増加するもの:フェリチン(著増が特徴)、LD、トリグリセリド、可溶性IL-2受容体、AST・ALT ・減少するもの:血球(2系統以上)、フィブリノゲン、NK細胞活性 ・原因:一次性(家族性)と二次性(EBウイルスなどの感染、リンパ腫、自己免疫疾患) ・HLH-2004診断基準の8項目は頻出

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。