StudyMed医師国家試験

「止める薬」と「減らす薬」―片頭痛治療の2本柱を整理する

第103回医師国家試験 I問題 第14問

国試問題にチャレンジ

第103回 I問題 第14問

片頭痛の予防薬はどれか。2つ選べ。

  1. a.β遮断薬
  2. b.トリプタン
  3. c.エルゴタミン
  4. d.カルシウム拮抗薬
  5. e.非ステロイド性抗炎症薬

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は片頭痛の薬物療法の問題だ。ポイントは、起きた発作を止める急性期治療薬と、発作の回数や程度を減らすために毎日飲む予防薬をきちんと区別できるかどうか。まずは片頭痛の薬として思い浮かぶものを挙げてみて。
医学生医学生
真っ先に浮かぶのはトリプタンです。片頭痛の特効薬と薬理学の講義で習いました。
ドクタードクター
そうだね。ただトリプタンは発作が起きてから飲む急性期治療薬なんだ。セロトニン5-HT1B/1D受容体に作用して、拡張した頭蓋内血管を収縮させ、三叉神経からのCGRPなどの放出を抑える。頭痛が始まったら早めに飲むほどよく効く。
医学生医学生
特効薬なら毎日飲めば発作も起きにくくなりそうですが、それは違うんですか。
ドクタードクター
そこが誤解しやすいところ。トリプタンに予防効果はなく、連用するとかえって薬剤の使用過多による頭痛、いわゆる薬物乱用頭痛を招いてしまう。血管収縮作用があるから、虚血性心疾患や脳血管障害、コントロール不良の高血圧がある人には禁忌でもあるよ。
医学生医学生
では、エルゴタミンも同じ血管収縮薬なので急性期の薬ですか。
ドクタードクター
その通り。麦角アルカロイドで、古くから発作時に使われてきた。ただ発作のごく早期に飲まないと効きにくく、悪心などの副作用も多いので、今は第一選択ではない。トリプタンとの24時間以内の併用は禁忌だ。
医学生医学生
NSAIDsも頭痛のときに飲む鎮痛薬なので、急性期治療薬ですね。
ドクタードクター
そう。軽度から中等度の発作にはアセトアミノフェンやNSAIDsを使い、それで効かない中等度以上の発作にトリプタンを使うのが基本的な流れだ。NSAIDsも月15日以上など頻回に使うと薬物乱用頭痛の原因になる。
医学生医学生
すると、予防薬はβ遮断薬とカルシウム拮抗薬ですね。どちらも高血圧の薬というイメージなので意外です。
ドクタードクター
正解。β遮断薬のプロプラノロールは片頭痛予防で有効性が多くの試験で示されている薬だ。カルシウム拮抗薬では、日本ではロメリジンが片頭痛予防薬として承認されている。どちらも脳血管の異常な反応性や神経の興奮性を抑えると考えられていて、効果判定には2か月程度の継続が必要だよ。
医学生医学生
β遮断薬なら、喘息の患者さんには使えないですよね。
ドクタードクター
よく気づいたね。気管支喘息には禁忌だ。もう一つ大事なのが、プロプラノロールはリザトリプタンの代謝を妨げて血中濃度を上げるので、日本ではこの2剤は併用禁忌とされている点。予防薬と急性期治療薬を組み合わせるときは相互作用にも気を配ろう。
医学生医学生
予防薬はどんな患者さんに始めるんですか。神経内科の外来実習では、頭痛ダイアリーをつけてもらっていました。
ドクタードクター
いい実習をしているね。目安は発作が月2回以上あるか月6日以上ある場合、急性期治療だけでは生活に支障が出る場合、急性期治療薬が使えない・効かない場合などだ。頭痛ダイアリーは発作頻度や薬の使用日数を把握するのにとても役立つ。
医学生医学生
ほかにも予防薬はありますか。
ドクタードクター
抗てんかん薬のバルプロ酸、抗うつ薬のアミトリプチリン、ARBのカンデサルタンなどがある。バルプロ酸は催奇形性があるので妊娠可能年齢の女性には注意が必要だ。近年はガルカネズマブなどCGRP関連の抗体薬も登場して、選択肢が大きく広がったよ。
医学生医学生
発作時の薬を飲みすぎている人ほど、予防薬を考えるべきなんですね。
ドクタードクター
その通り。薬物乱用頭痛では原因薬剤の中止と予防薬の導入が治療の柱になる。それから群発頭痛との違いも押さえておこう。群発頭痛の発作にはスマトリプタン皮下注と純酸素吸入、予防にはベラパミルを使う。同じカルシウム拮抗薬でも疾患によって使う薬が違うんだ。

まとめ

片頭痛の薬物療法は、発作を止める急性期治療薬と、発作を減らすために継続服用する予防薬の2本柱で整理します。急性期治療薬はアセトアミノフェン・NSAIDs、トリプタン、エルゴタミンで、トリプタンとエルゴタミンは血管収縮作用のため虚血性心疾患などで禁忌です。予防薬にはβ遮断薬(プロプラノロール)、カルシウム拮抗薬(ロメリジン)、バルプロ酸、アミトリプチリン、CGRP関連抗体薬などがあり、発作が月2回以上ある場合や生活への支障が大きい場合に検討します。急性期治療薬の使いすぎは薬物乱用頭痛を招くため、頻度を把握して適切に予防薬を導入することが重要です。薬の役割を区別して理解することは、頭痛診療だけでなく相互作用や禁忌を踏まえた安全な処方の基礎になります。

解答・解説

正解はa, dです

片頭痛の薬物療法は、起きてしまった発作を止める「急性期治療薬(頓挫薬)」と、発作の回数や程度を減らすために毎日服用する「予防薬」の2本立てである。この区別を問う問題である。 急性期治療薬:軽度~中等度の発作にはアセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、中等度~重度の発作や NSAIDs が効かない発作にはトリプタン(片頭痛に特異的な治療薬)を用いる。エルゴタミン製剤も古くから急性期治療に用いられてきたが、現在は優先度が低い。 予防薬:発作が月に2回以上ある、あるいは生活への支障が大きい、急性期治療薬だけでは十分に対応できない、といった場合に検討する。代表的なものはβ遮断薬(プロプラノロール)、カルシウム拮抗薬(ロメリジン、海外ではフルナリジン)、抗てんかん薬(バルプロ酸)、抗うつ薬(アミトリプチリン)などであり、近年はカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)関連の抗体薬も加わった。 したがって選択肢のうち予防薬に当たるのはβ遮断薬とカルシウム拮抗薬であり、トリプタン・エルゴタミン・NSAIDs は発作時に使う薬である。

選択肢考察

  1. ○a.  β遮断薬

    予防薬である。プロプラノロールは片頭痛予防の有効性が多くの臨床試験で示され、ガイドラインでも推奨度の高い薬剤である。作用機序は完全には解明されていないが、脳血管の異常な反応性の抑制や中枢神経系の興奮性の調整などが考えられている(血管を拡張させるわけではない)。気管支喘息の患者には禁忌である。また、プロプラノロールはリザトリプタンの代謝を妨げてその血中濃度を上昇させる(AUCが約70%増加する)。このため日本の添付文書では、プロプラノロール投与中の患者へのリザトリプタン投与は併用禁忌とされている(米国などではリザトリプタンを5mgに減量して併用する扱い)。予防薬と急性期治療薬の組み合わせを考える際に注意すべき点である。

  2. ×b.  トリプタン

    急性期治療薬であり、予防薬ではない。セロトニン5-HT1B/1D受容体作動薬で、拡張した頭蓋内血管を収縮させ(5-HT1B)、三叉神経終末からのCGRPなどの神経ペプチド放出を抑える(5-HT1D)。頭痛が始まってから早めに服用するほど効果が高い。血管収縮作用があるため、虚血性心疾患・脳血管障害・コントロール不良の高血圧などでは禁忌である。予防目的で連用すると薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)の原因になる。

  3. ×c.  エルゴタミン

    急性期治療薬であり、予防薬には当たらない。麦角アルカロイドで、セロトニン受容体やα受容体などに作用して血管を収縮させる。前兆期など発作のごく早期に使わないと効きにくく、トリプタンに比べて有効性が不確実で、悪心などの副作用も多いため、現在は第一選択ではない。かつては麦角系薬剤(ジヒドロエルゴタミンなど)が予防目的で使われた時期もあったが、現在の予防薬の標準ではない。強い血管収縮作用のためトリプタンとの24時間以内の併用は禁忌であり、連用で麦角中毒や薬物乱用頭痛を起こしうる。

  4. ○d.  カルシウム拮抗薬

    予防薬である。日本ではロメリジンが片頭痛予防薬として承認されており、海外ではフルナリジンが広く使われている。脳血管の異常な収縮・拡張の反応性を抑えるほか、神経細胞の興奮性を下げる作用が想定されている。効果判定には通常2か月程度の継続投与が必要である。なお、ベラパミルは群発頭痛の予防に用いられる。

  5. ×e.  非ステロイド性抗炎症薬

    急性期治療薬であり、予防薬ではない。イブプロフェン、ナプロキセン、アスピリンなどが軽度~中等度の発作に用いられる。片頭痛に特異的な薬ではないが、手軽に使え一定の効果がある。月に10~15日以上など頻回に使用すると薬物乱用頭痛を招くため、発作が頻回なら予防薬の導入を検討する。

片頭痛の治療薬の整理

急性期治療薬(発作時) ・アセトアミノフェン、NSAIDs:軽度~中等度の発作 ・トリプタン(スマトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン、リザトリプタン、ナラトリプタン):中等度~重度の発作。点鼻・注射製剤もある ・ラスミジタン(5-HT1F受容体作動薬):血管収縮作用がなく、心血管リスクのある患者にも使いやすい ・エルゴタミン製剤:現在は使用頻度が低い ・制吐薬(メトクロプラミド、ドンペリドン):悪心を伴う場合に併用 予防薬(発作を減らすため継続服用) ・β遮断薬:プロプラノロール ・カルシウム拮抗薬:ロメリジン ・抗てんかん薬:バルプロ酸(催奇形性があり妊娠可能年齢の女性では注意)、トピラマート ・抗うつ薬:アミトリプチリン ・アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB):カンデサルタン ・CGRP関連抗体薬:ガルカネズマブ、フレマネズマブ、エレヌマブ(皮下注射)

予防療法を検討する目安

発作が月に2回以上、あるいは月に6日以上ある場合、急性期治療のみでは日常生活に支障がある場合、急性期治療薬が使えない・効かない場合など。

薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)

急性期治療薬を頻回に使うと、かえって頭痛が慢性化する。トリプタン・エルゴタミンでは月10日以上、単一成分の鎮痛薬では月15日以上の使用が3か月を超えて続くことが目安となる。予防薬の導入と原因薬剤の中止が治療の柱である。

群発頭痛との違い

群発頭痛の急性期にはスマトリプタン皮下注と純酸素吸入、予防にはベラパミルなどが用いられる。

POINT

・片頭痛の薬は「発作時に使う薬」と「予防のため毎日飲む薬」に分けて覚える ・予防薬:β遮断薬(プロプラノロール)、Ca拮抗薬(ロメリジン)、バルプロ酸、アミトリプチリン、CGRP関連抗体薬など ・急性期治療薬:トリプタン、NSAIDs・アセトアミノフェン、エルゴタミン ・トリプタンとエルゴタミンは血管収縮作用があり、虚血性心疾患などでは禁忌 ・急性期治療薬の使い過ぎは薬物乱用頭痛を招く

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。