リハビリも「予防」になる?―病気の時間軸で読み解く一次・二次・三次予防
第103回医師国家試験 G問題 第34問
国試問題にチャレンジ
三次予防はどれか。2つ選べ。
- a.肥満者への食事指導
- b.うつ病患者の社会復帰
- c.脳梗塞患者のリハビリテーション
- d.胃潰瘍患者のHelicobacter pylori検査
- e.医療従事者へのインフルエンザワクチン接種
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
疾病予防は病気の自然経過のどこに働きかけるかで3段階に分けられ、一次予防は発症前の健康増進や予防接種、二次予防は検診や診断のための検査による早期発見・早期治療、三次予防は発症後のリハビリテーションや社会復帰支援・再発防止を指します。脳梗塞後のリハビリテーションとうつ病患者の社会復帰は、発症後の機能回復と社会生活への復帰を目的とするため三次予防です。肥満者への食事指導は生活習慣病の発症を防ぐ一次予防、ワクチン接種は特異的予防として一次予防、胃潰瘍患者のピロリ菌検査は診断・治療の一環として二次予防に整理されます。「対象者がすでに病気か」と「目的は何か」の2点で判定する型を身につければ、初見の選択肢にも対応できます。疾患ごとに重点を置く予防段階が異なることを理解しておくと、臨床や地域保健で効果的な対策を考える土台になります。
解答・解説
正解はb, cです
疾病予防は、病気の自然経過(発症前→発症・進行→後遺症・障害)のどの段階に働きかけるかによって、一次予防・二次予防・三次予防の3段階に分けて整理される(Leavell と Clark による予防医学の段階の考え方)。
3段階の区分
・一次予防:まだ病気になっていない人を対象に、発症そのものを防ぐ。健康増進(食事・運動・禁煙などの生活習慣改善、健康教育)と特異的予防(予防接種、事故防止、職業病対策など)が含まれる。 ・二次予防:すでに病気が始まっている人を早い段階で見つけ、早期に治療して進行や重症化を防ぐ。検診・スクリーニング、早期診断・早期治療が代表である。 ・三次予防:病気が進行した後、あるいは治療後の段階で、機能障害や能力低下を最小限にとどめ、社会生活への復帰を図る。リハビリテーション、社会復帰支援、再発防止などが含まれる。
解き方
各選択肢について「対象者はすでに病気をもっているか」「働きかけの目的は発症の防止か、早期発見・治療か、機能回復・社会復帰か」を順に確認すればよい。発症後の機能回復・社会復帰を目的とするものが三次予防であり、本問では精神疾患患者の社会復帰と、脳血管疾患後のリハビリテーションがこれにあたる。
選択肢考察
- ×a. 肥満者への食事指導
肥満そのものに対する指導ではあるが、その主眼は、肥満を背景に生じる糖尿病・高血圧・脂質異常症・心血管疾患といった生活習慣病の発症を防ぐことにある。食生活の改善による健康増進であり、一次予防に分類される。
- ○b. うつ病患者の社会復帰
すでにうつ病を発症し治療を受けた患者について、職場・学校・家庭などでの生活を取り戻せるよう支援するものである。リワーク(復職支援)プログラムやデイケアなど、発症後に社会的機能を回復させ再発を防ぐ働きかけは三次予防に該当する。
- ○c. 脳梗塞患者のリハビリテーション
脳梗塞を発症した後に、片麻痺・言語障害・嚥下障害などの後遺症による機能低下を回復させ、日常生活動作(ADL:activities of daily living)の自立や社会復帰を目指すものである。発症後の機能回復・障害の軽減を目的とするリハビリテーションは、三次予防の代表例である。
- ×d. 胃潰瘍患者のHelicobacter pylori検査
胃潰瘍と診断された患者に対し、主要な原因である Helicobacter pylori(ヘリコバクター・ピロリ)の感染の有無を調べる検査である。原因を明らかにして適切な治療(陽性なら除菌療法)につなげる診断・治療の過程の一部であり、早期診断・早期治療として二次予防に位置づけられる。発症前の人を対象としていないため一次予防ではなく、機能回復や社会復帰を目的とするものでもないため三次予防でもない。
- ×e. 医療従事者へのインフルエンザワクチン接種
インフルエンザに罹患していない人に対し、感染・発症を防ぐ目的で行う予防接種であり、特異的予防として一次予防に該当する。医療従事者が接種することで、本人の発症予防だけでなく、患者への院内感染の防止にもつながる。
予防の3段階と代表例
・一次予防(発症前) 健康増進:栄養指導、運動習慣、禁煙指導、節酒、健康教育、ストレス対策 特異的予防:予防接種、職場の作業環境管理、交通事故防止、食品衛生、上水道の塩素消毒 ・二次予防(発症初期) 早期発見:がん検診、特定健康診査、新生児マススクリーニング、各種スクリーニング検査 早期治療:早期の適切な治療による進行・合併症の防止 ・三次予防(発症後・治療後) リハビリテーション、社会復帰支援(就労支援、デイケアなど)、再発防止、合併症・障害の進行防止
効率的な疾病対策
疾病ごとの特徴によって、どの段階に重点を置くべきかが変わる。たとえば、原因が明確で予防手段がある感染症では一次予防(予防接種・衛生対策)が有効であり、早期に見つければ治癒が期待できるがんでは二次予防(検診)の意義が大きい。脳卒中や精神疾患のように後遺障害や社会生活上の支障を生じやすい疾患では、三次予防も重要となる。
補足
近年は、健康への悪影響をもたらす社会的・環境的要因そのものに働きかける「ゼロ次予防」という概念も用いられる。
POINT
・一次予防=発症を防ぐ(健康増進・予防接種) ・二次予防=早期発見・早期治療(検診・スクリーニング、診断のための検査) ・三次予防=発症後の機能回復・社会復帰・再発防止(リハビリテーション、社会復帰支援) ・「対象者がすでに病気か」「目的は何か」で段階を判定する
