「生理痛」の裏に潜む病変―器質性月経困難症の3大原因をつかむ
第103回医師国家試験 D問題 第14問
国試問題にチャレンジ
月経困難症をきたすのはどれか。3つ選べ。
- a.子宮筋腫
- b.子宮腺筋症
- c.子宮内膜症
- d.子宮内膜増殖症
- e.子宮頸管ポリープ
対話形式の解説
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ドクターまとめ
月経困難症は、プロスタグランジン過剰による子宮収縮が原因の機能性と、骨盤内の病変による器質性に分けられます。器質性の3大原因は子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫で、いずれもエストロゲン依存性であり、互いに合併することも少なくありません。一方、子宮内膜増殖症や子宮頸管ポリープは不正性器出血などの出血の異常が主症状で、月経困難症の原因とは通常なりません。痛みが年々強くなる、月経期以外にも痛む、性交痛・排便痛や過多月経を伴うといった場合は器質性を疑って画像検査を行います。症状の性質から背景疾患を推定する視点は、日常診療で女性の痛みに向き合ううえでの基本となります。
解答・解説
正解はa, b, cです
月経困難症とは
月経困難症(dysmenorrhea)とは、月経期間中に月経に伴って起こる病的な症状をいう。最も多いのは下腹部痛と腰痛で、ほかに腹部膨満感、悪心、頭痛、疲労・脱力感、食欲不振、いらいら、下痢、抑うつ気分などがみられる。日常生活に支障をきたすほど強いものが治療の対象となる。なお、月経が始まる前の3〜10日間に症状が出て月経開始とともに軽快・消失するものは月経前症候群(PMS)であり、月経困難症とは区別する。
2つのタイプ
・機能性(原発性)月経困難症:骨盤内に器質的な病変がないもの。子宮内膜で産生されるプロスタグランジン(特にPGF2α)が過剰となり、子宮筋が強く収縮して虚血性の痛みを生じる。初経後まもない若年者に多く、痛みは月経初日〜2日目に強い。 ・器質性(続発性)月経困難症:骨盤内の病変が原因となるもの。代表は子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫であり、ほかに骨盤内の炎症・癒着、子宮の奇形、子宮頸管の狭窄なども原因となる。年齢とともに症状が強くなる、月経期以外にも痛みがある、などの特徴をもつ。
解き方
本問は器質性月経困難症の原因疾患を選ぶ問題である。子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫の3疾患はいずれもエストロゲン依存性で、性成熟期に発生し、互いに合併することも多い。一方、子宮内膜増殖症や子宮頸管ポリープは、症状としては不正性器出血などの出血の異常が主で、通常月経困難症の原因とはならない。
選択肢考察
- ○a. 子宮筋腫
子宮筋腫は子宮の平滑筋から発生する良性腫瘍であり、エストロゲン依存性で性成熟期女性に高頻度にみられる。発生部位により粘膜下筋腫、筋層内筋腫、漿膜下筋腫に分けられる。筋腫によって子宮内腔が拡大・変形すると子宮内膜の面積が増え、プロスタグランジン産生の増加や、月経血を排出しようとする子宮の強い収縮が生じて月経痛が起こる。とくに粘膜下筋腫では過多月経とともに強い月経困難症をきたしやすい。過多月経による鉄欠乏性貧血、周囲臓器の圧迫による頻尿・便秘なども代表的な症状である。以上より子宮筋腫は月経困難症の原因となる。
- ○b. 子宮腺筋症
子宮腺筋症は、子宮内膜に似た組織(内膜腺と間質)が子宮筋層の中に入り込んで増殖する疾患である。筋層内の内膜様組織も月経周期に応じて出血を繰り返すため、筋層が反応性に肥厚し、子宮はびまん性に腫大する。月経時には筋層内での出血や炎症、子宮の強い収縮により強い月経痛を生じ、過多月経も伴う。月経困難症は本症の最も代表的な症状であり、経産婦を含む30〜40歳代に多い。画像では子宮壁が全体に厚くなり、境界の不明瞭な病変として描出されるため、境界明瞭な結節を形成する子宮筋腫との鑑別が問題となる。CA125が高値となることがある。以上より子宮腺筋症は月経困難症をきたす。
- ○c. 子宮内膜症
子宮内膜症は、子宮内膜に似た組織が子宮の外(卵巣、ダグラス窩、子宮仙骨靱帯、腹膜など)に発生・増殖する疾患である。異所性の内膜組織も月経周期に応じて出血・炎症を繰り返すため、プロスタグランジンなどの炎症性物質が増え、周囲組織との癒着を生じる。主症状は疼痛であり、月経困難症が最も頻度が高く、ほかに慢性骨盤痛、性交痛、排便痛などをきたす。症状は年齢とともに進行性に悪化しやすい。卵巣に血液が貯留したものを卵巣チョコレート嚢胞という。また不妊症の重要な原因でもある。CA125が上昇することがある。以上より子宮内膜症は月経困難症の代表的な原因疾患である。
- ×d. 子宮内膜増殖症
子宮内膜増殖症は、プロゲステロンによる拮抗を受けないエストロゲンの持続的な刺激(無排卵周期、肥満、エストロゲン単独補充など)によって、子宮内膜が過剰に増殖する病態である。主な症状は不正性器出血、過多月経、過長月経などの出血の異常であり、月経困難症は通常きたさない。異型を伴うもの(子宮内膜異型増殖症)は子宮体癌(類内膜癌)の前癌病変として重要であり、診断には子宮内膜の組織診が必要である。
- ×e. 子宮頸管ポリープ
子宮頸管ポリープは、子宮頸管の粘膜が限局性に増殖して外子宮口から突出する良性の病変である。多くは無症状で、内診時に偶然見つかることが多いが、症状がある場合は性交後出血や帯下の増加、不正性器出血などである。月経困難症の原因とはならない。治療は外来での切除で、切除したポリープは悪性でないことを確認するため病理検査に提出する。
子宮内膜症・子宮腺筋症・子宮筋腫の比較
・子宮内膜症:子宮外に内膜様組織。症状は月経困難症、慢性骨盤痛、性交痛、排便痛、不妊。卵巣チョコレート嚢胞を形成しうる(まれに悪性化し、卵巣明細胞癌・類内膜癌の発生母地となる)。 ・子宮腺筋症:子宮筋層内に内膜様組織。子宮がびまん性に腫大し、強い月経困難症と過多月経をきたす。 ・子宮筋腫:子宮平滑筋由来の良性腫瘍。過多月経と貧血、月経困難症、圧迫症状、不妊などをきたす。 いずれもエストロゲン依存性であり、閉経後には縮小・軽快する傾向がある。互いに合併することもまれではない。
月経困難症の治療
・鎮痛:非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)がプロスタグランジンの産生を抑え、特に機能性月経困難症に有効である。 ・ホルモン療法:低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)、黄体ホルモン製剤(ジエノゲストなど)、レボノルゲストレル放出子宮内システム、GnRHアゴニスト・アンタゴニストなど。 ・器質性の場合は原因疾患に応じて手術(筋腫核出術、病巣切除、子宮全摘出術など)を検討する。
器質性月経困難症を疑うポイント
初経から数年以上たってから症状が出現・増悪した、月経期以外にも痛みがある、性交痛・排便痛を伴う、鎮痛薬が効きにくい、過多月経を伴う、などの場合は、内診・超音波検査・MRIなどで原因疾患を検索する。
POINT
・月経困難症は機能性(プロスタグランジン過剰による子宮収縮)と器質性に分けられる。 ・器質性月経困難症の3大原因:子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫(いずれもエストロゲン依存性で互いに合併しやすい)。 ・子宮内膜増殖症は不正性器出血・過多月経が主症状で、異型増殖症は子宮体癌の前癌病変である。 ・子宮頸管ポリープは性交後出血・不正出血が主症状で、月経困難症はきたさない。 ・子宮内膜症・子宮腺筋症ではCA125が上昇することがある。
