StudyMed医師国家試験

引っかき傷に沿って皮疹が並ぶ―Köbner現象で見分ける乾癬と扁平苔癬

第103回医師国家試験 D問題 第11問

国試問題にチャレンジ

第103回 D問題 第11問

Köbner現象を示すのはどれか。2つ選べ。

  1. a.Bowen病
  2. b.扁平苔癬
  3. c.尋常性狼瘡
  4. d.菌状息肉症
  5. e.尋常性乾癬

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は皮膚科の理学的所見の代表、Köbner現象を示す疾患を2つ選ぶ問題だ。まずは現象そのものを正確に理解すること。そのうえで、選択肢の疾患を「炎症性」「腫瘍性」「感染性」に分けてみると答えが見えてくるよ。Köbner現象とは何か、説明できるかな。
医学生医学生
皮膚をこすったら皮疹が出る現象…でしたっけ。Nikolsky現象とごっちゃになりそうです。
ドクタードクター
混同しやすいところだね。Köbner現象は同形反応とも呼ばれ、皮疹のない一見正常な皮膚に、掻く・こする・圧迫・外傷・手術創・日焼けなどの刺激が加わると、その部位に元の病気と同じ皮疹が新たに出てくる現象だ。刺激から出現までは通常1〜3週間ほどかかる。引っかき傷に沿って皮疹が線状に並ぶ形で見つかることが多いよ。
医学生医学生
Nikolsky現象は、こすると表皮がずるっとはがれるほうでしたね。天疱瘡で習いました。
ドクタードクター
その通り。こちらは「同じ皮疹が出る」、あちらは「表皮がはがれる」。ではKöbner現象を示す代表的な疾患は何だと思う?
医学生医学生
皮膚科の講義で、乾癬の患者さんの肘や膝に皮疹が多いのはこすれるからだと聞きました。尋常性乾癬は入りそうです。
ドクタードクター
正解だ。尋常性乾癬はKöbner現象の最も代表的な疾患だね。IL-23/Th17系を中心とした免疫異常で表皮のターンオーバーが著しく亢進し、境界明瞭な紅斑に厚い銀白色の鱗屑がのった局面ができる。肘・膝・頭部・腰殿部など刺激を受けやすい場所に好発するのは、まさにKöbner現象で説明できる。
医学生医学生
鱗屑をはがすと点状出血が出るのはAuspitz現象でしたね。
ドクタードクター
そう、セットで覚えておこう。もう1つの正解は扁平苔癬だ。基底細胞をT細胞が攻撃する炎症性角化症で、紫紅色の扁平に隆起した多角形の丘疹が手関節屈側などにでき、強いかゆみを伴う。表面には白い網目状のWickham線条が見え、口腔粘膜にはレース状の白色病変ができる。掻破部位に丘疹が線状に並ぶのが典型的なKöbner現象だ。
医学生医学生
病理実習で、表皮直下に帯状にリンパ球が並んでいる標本を見ました。あれが扁平苔癬でしたか。
ドクタードクター
よく覚えているね。基底層の液状変性と表皮直下の帯状リンパ球浸潤が特徴だ。乾癬も扁平苔癬も、T細胞が関わる免疫学的な炎症が背景にある点が共通している。外からの刺激が引き金となって、同じ炎症が新しい場所で誘発されると考えられているんだ。では、残りを見ていこう。Bowen病はどうかな。
医学生医学生
表皮内癌ですよね。腫瘍は刺激で新しくできたりはしないので、違うと思います。
ドクタードクター
そのとおり。Bowen病は表皮内にとどまる有棘細胞癌で、鱗屑や痂皮を伴う褐色〜紅色の扁平な局面が単発することが多い。ヒ素曝露、紫外線、HPVなどが関与する。腫瘍性病変だから、正常皮膚への刺激で同じ病変ができることはない。
医学生医学生
菌状息肉症も皮膚のT細胞リンパ腫なので、同じく腫瘍として外せますか。T細胞が関わるので少し迷いました。
ドクタードクター
迷いどころをよく突いているね。確かにT細胞だけれど、炎症ではなく腫瘍としてCD4陽性の異常T細胞が増殖する病気だ。紅斑期、扁平浸潤期、腫瘤期と年単位でゆっくり進み、病理では表皮内に異型リンパ球が集まるPautrier微小膿瘍が特徴だよ。Köbner現象はみられない。
医学生医学生
尋常性狼瘡は皮膚結核なので、感染症として外れますね。
ドクタードクター
正解。結核菌が皮膚に病変をつくる真性皮膚結核の代表で、顔面にできる軟らかい褐色の結節が、ガラス板で圧迫するとりんごゼリーのように透けて見える。感染による肉芽腫で、正常皮膚への刺激で誘発されるものではない。治療は抗結核薬の多剤併用だ。
医学生医学生
炎症性角化症の2つが正解で、腫瘍と感染症は外れる、という整理ですね。
ドクタードクター
その通り。発展として、Köbner現象を示す疾患にはほかに尋常性白斑や光沢苔癬がある。疣贅でも引っかいた跡に線状に並ぶことがあるけれど、これはウイルスが傷に沿って自家接種されるもので、仮性Köbner現象として区別されることがある。ほかの理学的所見も整理しておこう。Behçet病の針反応、肥満細胞症で皮疹をこすると膨疹が出るDarier徴候、機械性蕁麻疹の皮膚描記症などだね。
医学生医学生
OSCEの前に皮膚科の身体診察の項目をまとめたとき、名前のついた徴候が多くて苦労しました。
ドクタードクター
名前と「何をすると何が起こるか」「どの疾患か」を3点セットで覚えるといい。臨床的にも大事で、乾癬の患者さんには、こすったり掻いたりすると皮疹が増えうるので強くこすらない、手術創にも皮疹が出ることがある、と説明しておくと生活指導に役立つよ。

まとめ

Köbner現象(同形反応)とは、一見正常な皮膚に掻破・摩擦・外傷・手術創・日焼けなどの刺激が加わった部位に、元の疾患と同じ皮疹が通常1〜3週間ほどで新たに生じる現象です。代表的疾患は尋常性乾癬と扁平苔癬で、ほかに尋常性白斑や光沢苔癬が知られ、いずれもT細胞が関与する免疫学的炎症が背景にあります。Bowen病や菌状息肉症のような腫瘍性疾患、尋常性狼瘡のような皮膚結核ではこの現象はみられず、疣贅の線状配列はウイルスの自家接種による仮性Köbner現象として区別されることがあります。Auspitz現象(乾癬)、Nikolsky現象(天疱瘡など)、針反応(Behçet病)、Darier徴候(肥満細胞症)と対比して覚えると混同を防げます。皮疹の分布を刺激との関係で読み解く視点は、診断だけでなく患者への生活指導にも役立ちます。

解答・解説

正解はb, eです

Köbner現象とは

Köbner現象(同形反応)とは、皮疹のない一見正常な皮膚に、掻く・こする・圧迫・外傷・手術創・日焼けなどの刺激が加わると、その刺激を受けた部位に元の疾患と同じ皮疹が新たに出現する現象である。引っかき傷に沿って線状に皮疹が並ぶ形で観察されることが多い。刺激から皮疹出現までは通常1〜3週間ほどかかる。

正解を導く考え方

Köbner現象を示す代表的な疾患は、尋常性乾癬、扁平苔癬、尋常性白斑である。これらはいずれも免疫学的な炎症(T細胞の関与)を背景にもつ疾患で、外的刺激が引き金となって同じ病変が誘発されると考えられている。また扁平疣贅や尋常性疣贅でも掻破部位に線状の皮疹が生じるが、これはウイルスが傷に沿って自家接種されることによるもので、仮性Köbner現象として区別されることがある。一方、腫瘍性疾患(Bowen病、菌状息肉症)や感染症である皮膚結核(尋常性狼瘡)は、正常皮膚への刺激で同じ病変が誘発される疾患ではない。以上より、扁平苔癬と尋常性乾癬を選ぶ。

選択肢考察

  1. ×a.  Bowen病

    Bowen病は表皮内にとどまる有棘細胞癌(表皮内癌、上皮内癌)であり、進行すると真皮へ浸潤してBowen癌となる。境界明瞭で、表面に鱗屑や痂皮を伴う褐色〜紅色の扁平な局面として体幹や四肢に単発することが多い。ヒ素の曝露、紫外線、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染などが関与する。腫瘍性病変であり、正常皮膚への刺激で同じ病変が生じるKöbner現象はみられない。治療は外科的切除が基本である。

  2. ○b.  扁平苔癬

    扁平苔癬は、表皮の基底細胞をT細胞が攻撃する炎症性角化症である。紫紅色で扁平に隆起した多角形の丘疹が四肢屈側(特に手関節屈側)などに生じ、強い瘙痒を伴う。表面には白色の細かい網目状の線条(Wickham線条)がみられ、口腔粘膜にはレース状の白色病変が生じる。薬剤(降圧薬など)やC型肝炎との関連が知られる。掻破や外傷の部位に同じ丘疹が線状に並んで生じるKöbner現象を示す代表的疾患である。病理では基底層の液状変性と、表皮直下の帯状のリンパ球浸潤が特徴である。

  3. ×c.  尋常性狼瘡

    尋常性狼瘡は、結核菌が皮膚そのものに病変をつくる真性皮膚結核の代表的な病型である。顔面(特に頬や鼻)に好発し、軟らかい褐色の結節が集まって局面をつくり、ガラス板で圧迫すると黄褐色のりんご・ゼリー様の小結節が透けて見える(硝子圧法)。潰瘍化と瘢痕化を繰り返しながら慢性に経過する。感染症による肉芽腫性病変であり、正常皮膚への刺激で同じ病変が誘発されるKöbner現象はみられない。治療は抗結核薬の多剤併用である。

  4. ×d.  菌状息肉症

    菌状息肉症は皮膚T細胞リンパ腫の中で最も多い病型で、主にCD4陽性の異常T細胞が皮膚で増殖する。数年〜数十年の経過で、紅斑期(湿疹様の紅斑)→扁平浸潤期(浸潤を触れる局面)→腫瘤期へとゆっくり進行し、一部はリンパ節や血液、内臓に広がる。病理では表皮内に異型リンパ球が集まる像(Pautrier微小膿瘍)が特徴である。腫瘍性疾患であり、Köbner現象はみられない。

  5. ○e.  尋常性乾癬

    尋常性乾癬は、IL-23/Th17系を中心とした免疫異常により表皮細胞の増殖とターンオーバーが著しく亢進する慢性炎症性角化症である。境界明瞭な紅斑の上に厚い銀白色の鱗屑がのった局面が、肘・膝・頭部・腰殿部など外的刺激を受けやすい部位に好発する。Köbner現象を示す最も代表的な疾患であり、こすれやすい部位に皮疹が多いこともこの現象で説明される。鱗屑をはがすと点状出血がみられるAuspitz現象も特徴である。病理では表皮突起の規則的な延長、錯角化、角層内の好中球の集簇(Munro微小膿瘍)がみられる。

Köbner現象を示す主な疾患

・尋常性乾癬 ・扁平苔癬 ・尋常性白斑 ・光沢苔癬 ・扁平疣贅、尋常性疣贅(ウイルスの自家接種による線状の皮疹で、仮性Köbner現象とされることがある)

皮膚科でよく問われる理学的所見の整理

・Köbner現象:正常皮膚への刺激で同じ皮疹が出る(乾癬、扁平苔癬、白斑)。 ・Auspitz現象:乾癬の鱗屑をはがすと点状出血が出る。 ・Nikolsky現象:一見正常な皮膚をこすると表皮がはがれる(尋常性天疱瘡、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群、中毒性表皮壊死症)。 ・針反応(パテルギー):注射針を刺した部位に膿疱や紅斑が出る(Behçet病)。 ・Darier徴候:皮疹をこすると膨疹と発赤が出る(色素性蕁麻疹=肥満細胞症)。 ・皮膚描記症:皮膚をこすった形に一致して膨疹が出る(蕁麻疹、特に機械性蕁麻疹)。

選択肢の疾患の分類

炎症性角化症:尋常性乾癬、扁平苔癬 表皮内癌:Bowen病 皮膚リンパ腫:菌状息肉症 皮膚結核(真性):尋常性狼瘡

POINT

・Köbner現象:正常皮膚への掻破・外傷などの刺激部位に、元の疾患と同じ皮疹が生じる現象。 ・代表疾患は尋常性乾癬、扁平苔癬、尋常性白斑(疣贅でも線状の皮疹がみられる)。 ・腫瘍性疾患(Bowen病、菌状息肉症)や皮膚結核(尋常性狼瘡)では示さない。 ・Auspitz現象(乾癬)、Nikolsky現象(天疱瘡など)、針反応(Behçet病)、Darier徴候(肥満細胞症)と区別して覚える。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。