セカンドオピニオンに持たせる一通―「紹介状」が意見をつくる
第103回医師国家試験 C問題 第20問
国試問題にチャレンジ
70歳の男性。胃癌のため入院し精査中である。他の専門病院でセカンドオピニオンを求めたいとの申し出があった。脳梗塞の既往があり,要支援の介護サービスを受けていた。 患者に渡すのはどれか。
- a.診断書
- b.クリニカルパス
- c.診療情報提供書
- d.入院診療計画書
- e.介護保険主治医意見書
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
セカンドオピニオンは、主治医以外の医師に診断や治療方針についての意見を求める仕組みで、転院とは異なり患者の自己決定を支えるものです。担当医は主治医側の情報をもとに意見を述べるため、患者には診療情報提供書(紹介状)を渡し、画像・内視鏡・病理などの資料も添えるのが一般的です。診断書は病名の証明、クリニカルパスは標準化された診療計画表、入院診療計画書は入院患者本人への説明文書、介護保険主治医意見書は要介護認定のため市町村に提出する書類であり、いずれもセカンドオピニオンの目的には合いません。医療文書は「何のために、誰に渡すか」で整理しておくと、実習や臨床現場での書類作成にもそのまま役立ちます。
解答・解説
正解はcです
問題の整理
胃癌の精査のため入院中の70歳男性が、別の専門病院でセカンドオピニオン(主治医以外の医師による診断・治療方針についての意見)を受けたいと申し出た場面である。問われているのは、セカンドオピニオンを受けに行く患者に主治医が持たせるべき書類である。
考え方
セカンドオピニオンを担当する医師は、患者を直接診察・検査するのではなく、原則として主治医側で得られた情報をもとに意見を述べる。そのため、これまでの病歴、身体所見、血液検査・内視鏡・病理・画像検査の結果、現在の診断と検討中の治療方針などをまとめた文書、すなわち診療情報提供書(いわゆる紹介状)が必要になる。実際には、内視鏡写真やCTなどの画像データ、病理標本・病理報告書のコピーも合わせて渡すことが多い。 問題文中の「脳梗塞の既往」「要支援の介護サービス利用」は、介護保険主治医意見書などの選択肢に目を向けさせるための情報であり、セカンドオピニオンとは直接関係しない。場面が何を求めているかを見極め、余分な情報に引きずられないことが大切である。
選択肢考察
- ×a. 診断書
診断書は、医師が診察の結果として病名や療養の必要性などを証明する文書であり、勤務先・保険会社・学校などへの提出を目的に作成される。病名の証明が主眼で、診療経過や検査データの詳細、治療方針の検討内容は通常記載されないため、セカンドオピニオンを依頼する医師が病状を判断する材料としては不十分である。
- ×b. クリニカルパス
クリニカルパス(クリティカルパス)は、特定の疾患や手術について、入院から退院までに行う検査・処置・治療・ケアを時系列で標準化した診療計画表である。医療の質の均てん化や在院日数の短縮、チーム医療の情報共有に役立つが、個々の患者の検査結果や病状経過を他院の医師に伝える文書ではないため、セカンドオピニオン用の書類には当たらない。
- ○c. 診療情報提供書
診療情報提供書は、医療機関が他の医療機関などへ患者の診療情報を提供するための文書で、一般に紹介状と呼ばれる。主訴、既往歴、現病歴、検査結果、診断、これまでの治療経過と今後の方針案などが記載され、セカンドオピニオンを担当する医師は、これと画像・病理などの資料をもとに病状を把握し意見を述べる。したがって、セカンドオピニオンを希望する患者に渡すべき書類である。なお、セカンドオピニオン目的の情報提供は診療報酬上も評価されている(診療情報提供料の加算など)。
- ×d. 入院診療計画書
入院診療計画書は、入院した患者に対して、病名、症状、予定される検査・手術・治療の内容、推定入院期間などを記載し、入院後一定期間内(原則7日以内)に医師らが説明・交付する文書である。自院での入院診療の予定を患者本人に伝えるためのものであり、他院の医師が病状を評価するための情報(検査結果や経過)は含まれないため、セカンドオピニオンには適さない。クリニカルパスを患者向けに示したものが入院診療計画書として用いられることもあるが、両者は同一のものではない。
- ×e. 介護保険主治医意見書
介護保険主治医意見書は、要介護・要支援認定の申請があった際に、市町村の依頼を受けて主治医が作成する書類である。傷病の状況や心身の状態、生活機能、介護上の留意点などを記載し、介護認定審査会での二次判定の資料となる。提出先は市町村であって患者に渡すものではなく、またセカンドオピニオンとは無関係である。本患者が要支援のサービスを受けているという情報に惑わされないようにする。
セカンドオピニオンとは
現在の主治医以外の医師に、診断や治療方針について意見を求めることである。患者が納得して治療法を選択する(自己決定する)ための手段であり、インフォームド・コンセントを補完するものと位置づけられる。主治医を替える「転院」とは異なり、意見を聞いた後は元の主治医のもとで治療を続けるのが原則である。主治医は患者の申し出を否定せず、診療情報提供書や検査資料を準備して協力する姿勢が求められる。多くの医療機関ではセカンドオピニオン外来は自由診療(保険適用外)で行われる。
医療で扱う主な文書の整理
・診断書:病名や療養の必要性を証明する文書。医師法により、診察した医師は正当な理由なく交付を拒んではならない。 ・診療情報提供書(紹介状):他の医療機関へ診療情報を伝える文書。紹介・逆紹介、セカンドオピニオンで用いる。 ・入院診療計画書:入院時に病名・治療計画・推定入院期間などを患者に説明・交付する文書。 ・クリニカルパス:疾患ごとに標準化された時系列の診療計画表。 ・介護保険主治医意見書:要介護認定のため主治医が市町村へ提出する意見書。 ・退院療養計画書、看護サマリーなど:退院後の療養や施設間での情報共有に用いる。
POINT
・セカンドオピニオンを求める患者には、診療情報提供書(紹介状)に検査結果・画像・病理資料を添えて渡す。 ・セカンドオピニオンは転院ではなく、患者の自己決定を支援する仕組みである。主治医は協力的に対応する。 ・介護保険主治医意見書は要介護認定のために市町村へ提出する書類であり、患者に渡すものではない。 ・問題文中の介護保険や既往歴などの付随情報に惑わされない。
