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手洗いから切開まで―「清潔は不潔に触れない」で組み立てる清潔野の5ステップ

第103回医師国家試験 C問題 第15問

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第103回 C問題 第15問

清潔野を作り,切開排膿をする手順(①~⑤)を別に示す。  4番目に行うのはどれか。

第103回 C問題 第15問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、膿瘍の切開排膿をするときに清潔野をつくる手順を並べる問題だ。写真は手洗い、滅菌手袋、皮膚消毒、ドレープ、切開の5場面。暗記ではなく、「清潔なものは、それより不潔なものに触れてはいけない」という原則から順番を組み立てるのがコツだよ。
医学生医学生
まずはどの写真が何をしているかの確認からですね。
ドクタードクター
そう。流水で手を洗っている場面、袋から出した滅菌手袋に手を伸ばしている場面、腕の皮膚に綿球でヨードを塗っている場面、茶色く消毒された部位だけが穴から見えるように青い覆布を掛けた場面、そして覆布の穴の中でメスを入れている場面だ。では最初に行うのはどれかな。
医学生医学生
手洗いです。OSCEの練習でも、何をするにもまず手指衛生から始めました。
ドクタードクター
その通り。術者の手の常在菌や付着した通過菌を減らすのが目的で、すべての清潔操作の出発点だ。ただ、手洗い後の手は菌が減っただけで無菌ではない。そこで次に何をする?
医学生医学生
滅菌手袋を着けます。でも、患者さんの皮膚の消毒は素手で先にやってもいいような気もします。
ドクタードクター
そう考える人は意外と多いね。でも消毒には滅菌された綿球や鉗子を使うし、その後にドレープという滅菌物を扱う。清潔な物品に触れる前に手を清潔な状態にしておく必要があるから、手袋が2番目だ。装着時は素手で手袋の外側に触れないよう、折り返した袖口の内側を持つのがポイントだよ。
医学生医学生
外科の実習で、手袋の外側に素手が触れて「やり直し」と言われたのを思い出しました。
ドクタードクター
誰もが一度は通る道だね。3番目は皮膚消毒。患者の皮膚は滅菌できないので、消毒薬で菌数を減らす。切開予定部位を中心にして外側へ円を描くように広く塗り、一度外側に塗った綿球で中心へ戻らないのが原則だ。
医学生医学生
そして4番目がドレープですね。消毒の前に掛けたらだめなんですか。
ドクタードクター
だめなんだ。先にドレープを掛けると、その下の皮膚が消毒できないし、ドレープ自体の清潔も損なわれる。逆に切開した後に掛けても清潔野として意味がない。だから消毒の直後、切開の直前、つまり4番目がドレープの被覆になる。消毒していない周囲の皮膚や衣服、処置台を覆い、切開部位だけを露出させることで清潔野が完成するんだ。
医学生医学生
手洗い、手袋、消毒、ドレープ、切開、という流れですね。最後に切開排膿がくるのも納得です。
ドクタードクター
そう、清潔野ができて初めてメスを入れる。膿を出したら膿瘍腔を生理食塩液で洗浄し、必要に応じてドレーンやガーゼを留置する。排出した膿は細菌培養と薬剤感受性検査に出しておくと、その後の抗菌薬選択に役立つよ。
医学生医学生
そもそも、膿瘍は抗菌薬だけでは治らないんでしょうか。
ドクタードクター
波動を触れるような皮下膿瘍は、膿の塊に抗菌薬が届きにくいので、切開して膿を出すドレナージが治療の基本になる。局所麻酔のあと、最も膨隆した部位を皮膚割線に沿って切開するのが一般的だ。
医学生医学生
基礎の微生物学で習った、滅菌と消毒の違いもここで効いてくるんですね。
ドクタードクター
まさにそうだ。滅菌は芽胞を含むすべての微生物を除くこと、消毒は感染を起こさない程度まで病原微生物を減らすこと。器具や手袋、ドレープは滅菌物を使い、生体の皮膚は滅菌できないから消毒で対応する。消毒薬ではポビドンヨードは乾くまで待つこと、クロルヘキシジンアルコールは持続効果があること、エタノールは即効性があるが芽胞には無効なことも押さえておこう。
医学生医学生
手洗いの水は滅菌水でないといけないと思っていました。
ドクタードクター
かつてはそうだったけれど、水道水でも手指の菌数減少効果に差がないとされ、今は水道水が広く使われている。それから、滅菌手袋をした手は腰より上、視野の範囲に保つこと、清潔か迷ったものは不潔とみなすこと、清潔野から出た物品は戻さないこと。この3つは実習ですぐに役立つ原則だよ。

まとめ

清潔野をつくって切開排膿を行う手順は、手洗い、滅菌手袋の装着、皮膚消毒、滅菌ドレープの被覆、切開排膿の順で、4番目はドレープの被覆です。手洗い後の手は無菌ではないため滅菌手袋を着けてから滅菌物を扱い、滅菌できない皮膚は消毒で菌数を減らし、その周囲の不潔な部分をドレープで覆って初めて清潔野が完成します。順序は「清潔なものは不潔なものに触れない」という原則から論理的に導けるため、丸暗記より理由を理解することが大切です。あわせて、滅菌と消毒の違い、消毒薬の特徴、手袋をした手を腰より上に保つといった清潔操作の基本を押さえておくと、臨床実習や処置の場面でそのまま役立ちます。

解答・解説

正解はbです

膿瘍の切開排膿のような小手術でも、創から細菌が入らないように清潔野(無菌状態が保たれた作業領域)をつくってから操作を行う。図の①〜⑤は次の場面を示している。 ・①:切開予定部位の皮膚を消毒している ・②:滅菌ドレープ(覆布)を掛けている ・③:滅菌手袋を装着している ・④:清潔野が整い、切開排膿を行っている ・⑤:術者が手指を洗浄・消毒している(手洗い) 手順を組み立てるときは、「清潔なものは、それより不潔なものに触れてはいけない」という原則から考える。 1. まず術者自身の手を清潔にする(⑤ 手洗い)。 2. 手洗い後の手は無菌ではないので、滅菌手袋を着けて、清潔な器具やドレープを扱える状態にする(③ 手袋装着)。 3. 患者の皮膚は滅菌できないため、消毒薬で切開部位を中心に広く消毒し、細菌数を減らす(① 皮膚消毒)。 4. 消毒した部位の周囲にある、消毒されていない皮膚・衣服・処置台などを滅菌ドレープで覆い、清潔な範囲を確保する(② ドレープ)。 5. 清潔野が完成してから切開排膿を行う(④)。 したがって、⑤→③→①→②→④ の順となり、4番目は②である。

選択肢考察

  1. ×a.  ①

    誤り。①の皮膚消毒は3番目に行う。滅菌手袋を着けた手で消毒用の綿球や鉗子を扱い、切開予定部位を中心から外側へ向かって円を描くように広い範囲を消毒する。一度外側に塗った綿球で中心に戻らないのが原則である。消毒はドレープを掛ける前に行わなければならない。ドレープを先に掛けると、その下の皮膚を消毒できず、またドレープの清潔も損なわれる。

  2. ○b.  ②

    正しい。②の滅菌ドレープの被覆は4番目に行う。皮膚消毒(3番目)が済んだあと、消毒していない周囲の皮膚、患者の衣服、処置台などを滅菌された布(穴あき覆布など)で覆い、切開部位だけが露出するようにする。これにより、器具や手袋が不潔な部分に触れることを防ぎ、清潔野が完成する。消毒の前に掛けると消毒ができず、切開後に掛けたのでは清潔野として意味をなさないため、消毒の直後・切開の直前に行う。

  3. ×c.  ③

    誤り。③の滅菌手袋の装着は2番目に行う。手洗い後の手指は細菌が減っているものの無菌ではないため、清潔な物品に触れる前に滅菌手袋を着ける。装着の際は、素手で手袋の外側(清潔面)に触れないよう、折り返した袖口の内側を持って着け、もう一方は手袋をした指を折り返しの内側に差し入れて装着する。手洗いより先に着けることはなく、手袋をしてから消毒・ドレープへと進む。

  4. ×d.  ④

    誤り。④の切開排膿は最後(5番目)に行う。清潔野が確保されて初めて、メスで膿瘍を切開し、膿を排出させ、膿瘍腔を生理食塩液で洗浄し、必要に応じてドレーンやガーゼを留置する。排出した膿は細菌培養・薬剤感受性検査に提出するとよい。清潔野ができる前に切開すると、創部の新たな汚染を招く。

  5. ×e.  ⑤

    誤り。⑤の手洗い(手指の洗浄・消毒)は最初(1番目)に行う。術者の手指の皮膚常在菌や付着した通過菌を減らすことが目的で、手袋装着を含むすべての清潔操作の出発点になる。手術時の手洗いには、流水と抗菌性石けんで洗うスクラブ法と、洗浄後に速乾性アルコール製剤を擦り込むラビング法がある。洗浄に用いる水は、滅菌水でなく水道水でも手指の菌数減少効果に差がないとされ、現在は水道水が広く用いられている。

滅菌と消毒の違い

・滅菌:芽胞を含むすべての微生物を死滅・除去すること。手術器具、手袋、ドレープ、ガーゼなどは滅菌したものを用いる(高圧蒸気滅菌、酸化エチレンガス滅菌など)。 ・消毒:病原性のある微生物を減らし、感染を起こさない程度にすること。生体の皮膚や粘膜は滅菌できないため、消毒薬で消毒する。

主な皮膚消毒薬

・ポビドンヨード:広い抗菌スペクトルをもつ。効果を得るには塗布後に乾燥するまで待つことが大切である。 ・クロルヘキシジンアルコール:持続効果があり、手術部位の皮膚消毒に広く用いられる。 ・消毒用エタノール:即効性があるが、持続効果は乏しい。芽胞には無効。

清潔操作の基本原則

・清潔なものは清潔なものとだけ接触させる。清潔か不潔か迷ったものは不潔とみなす。 ・滅菌手袋をした手は、腰より上・視野の範囲に保つ。 ・清潔野から一度出た物品を戻さない。

切開排膿の要点

皮下膿瘍などで波動(内部に液体がある感触)を触れる場合は、抗菌薬だけでは治りにくく、切開して膿を出すこと(ドレナージ)が治療の基本である。局所麻酔の後、膿瘍の最も膨隆した部位を皮膚割線に沿って切開し、膿を排出、洗浄し、再貯留を防ぐためにドレーンやガーゼを留置する。

POINT

・清潔野をつくる順序:手洗い → 滅菌手袋装着 → 皮膚消毒 → 滅菌ドレープ → 処置(切開)。 ・「手を清潔に → 手袋 → 患者の皮膚を消毒 → 周囲を覆う」と、清潔が保たれるように順に組み立てる。 ・皮膚・粘膜は滅菌できないので消毒で対応し、器具・手袋・ドレープは滅菌したものを使う。 ・手術時手洗いは水道水でもよいとされる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。