StudyMed医師国家試験

昼は職場、夜は病院―ナイトホスピタルと授産所が支える「段階的な社会復帰」

第103回医師国家試験 B問題 第38問

国試問題にチャレンジ

第103回 B問題 第38問

精神障害者の社会復帰のための施設はどれか。2つ選べ。

  1. a.授産所
  2. b.ホスピス
  3. c.児童相談所
  4. d.保護観察所
  5. e.ナイトホスピタル

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、精神障害者の社会復帰を支える施設を選ぶ問題だ。選択肢はどれも聞いたことのある名前だけれど、大事なのは「その施設が何を目的にしているか」。目的が社会復帰なのか、別のところにあるのかで振り分けていこう。
医学生医学生
精神科の実習で、退院した患者さんがデイケアに通っていると聞きました。社会復帰というと、そういう通所の仕組みのことでしょうか。
ドクタードクター
いいところから入ったね。精神障害者の社会復帰には、症状の安定だけでなく、生活技能の回復、就労に向けた訓練、住まいの確保、地域での居場所づくりといった段階的な支援が必要なんだ。デイケアはその代表で、医療機関が行う部分入院・通所型の治療の一つだよ。
医学生医学生
ナイトホスピタルは、デイケアの夜版ということですか。
ドクタードクター
そのイメージでほぼ合っている。ナイトホスピタル、つまりナイトケアは、日中は職場や学校に通い、夕方から夜を病院で過ごして治療や生活指導を受ける部分入院の形態だ。退院していきなり完全な地域生活に移るのではなく、医療の支えを受けながら就労・就学を再開できる。まさに社会復帰のための手段なんだ。
医学生医学生
逆に、昼に病院へ通って夜は自宅に帰るのがデイケア、デイホスピタルですね。
ドクタードクター
その通り。日中から夜間まで通所するデイ・ナイトケアもある。これらは精神科リハビリテーションの手段として診療報酬上も位置づけられているよ。では授産所はどうかな。
医学生医学生
授産というのは、仕事を授けるという意味でしょうか。作業所のようなものを想像しました。
ドクタードクター
いい推測だね。授産施設は、障害などのため一般企業での就業が難しい人に作業や就労の場を提供し、職業に必要な技能や生活習慣を身につけて社会的・経済的な自立を目指す施設だ。精神障害者授産施設は、かつて精神保健福祉法に定められた精神障害者社会復帰施設の代表だった。だから正解は授産所とナイトホスピタルの2つになる。
医学生医学生
ホスピスは「ホスピタル」と似ているので一瞬迷いましたが、緩和ケアの施設ですよね。
ドクタードクター
そう。ホスピスは治癒が望めない終末期の患者、主にがん患者に対して、身体的苦痛だけでなく精神的・社会的・スピリチュアルな苦痛も和らげ、本人と家族のQOLを保つ全人的ケアを行う場だ。日本では緩和ケア病棟として位置づけられている。社会復帰が目的ではないね。
医学生医学生
児童相談所は、小児科の実習で虐待疑いの子の通告先として出てきました。
ドクタードクター
まさにそれが中心的な役割だ。児童福祉法に基づいて都道府県や指定都市などに置かれ、18歳未満の児童の養護、障害、非行などの相談に応じて、判定、指導、一時保護、施設入所措置などを行う。発達障害や知的障害の相談も扱うけれど、目的は児童の福祉の確保であって、精神障害者の社会復帰施設ではない。
医学生医学生
保護観察所は少し迷いました。医療観察法で社会復帰調整官がいると習った気がします。
ドクタードクター
よく勉強しているね。保護観察所は法務省の機関で、保護司と協力して保護観察を行い、犯罪や非行をした人の更生を図るところだ。確かに医療観察法に基づいて、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った人の地域処遇を社会復帰調整官が調整する業務もある。ただ、それは限られた対象者への司法の枠組みで、精神障害者一般の社会復帰を目的とする施設ではないんだ。
医学生医学生
名前だけで判断せず、根拠となる法律や目的で分けると整理しやすいですね。
ドクタードクター
その通り。発展知識として制度の変遷も押さえておこう。1995年に精神保健法が精神保健福祉法に改められ、「自立と社会経済活動への参加の促進」が目的に加わった。当時は社会復帰施設として、生活訓練施設、授産施設、福祉ホーム、福祉工場、地域生活支援センターが定められていたんだ。
医学生医学生
今は「授産所」という言葉はあまり聞かない気がします。
ドクタードクター
鋭いね。2006年施行の障害者自立支援法、現在の障害者総合支援法で、身体・知的・精神と障害種別ごとに分かれていた施設体系が一元化された。今は就労移行支援、雇用契約のある就労継続支援A型と雇用契約のないB型、自立訓練、グループホーム、地域活動支援センターなどのサービスがその役割を担っている。
医学生医学生
患者さんの退院を考えるときに、こうしたサービスを組み合わせて地域生活につなげていくわけですね。
ドクタードクター
そう。長期入院を減らして地域で暮らせるようにするには、医療だけでなく就労や住まいの支援を早くから計画に組み込むことが大切だ。精神保健福祉士などの多職種と連携して、患者さん一人ひとりに合った段階を設計していこう。

まとめ

精神障害者の社会復帰には、症状の安定に加え、就労訓練や生活技能の回復、住まいの確保を段階的に支える仕組みが必要です。授産所(授産施設)は作業や就労の場を提供して自立を支援する施設で、ナイトホスピタルは日中に就労・就学し夜間を病院で過ごす部分入院の形態であり、いずれも社会復帰を目的とします。一方、ホスピスは終末期の緩和ケア、児童相談所は児童福祉法に基づく児童福祉、保護観察所は法務省所管の更生保護の機関で、精神障害者一般の社会復帰施設ではありません。かつて精神保健福祉法に定められていた社会復帰施設は、現在は障害者総合支援法のもとで就労移行支援・就労継続支援(A型・B型)、自立訓練、グループホームなどのサービスに再編されています。施設の目的と根拠法で整理しておくことは、退院支援や地域生活への移行を多職種で計画する際の基礎になります。

解答・解説

正解はa, eです

問われていること

精神障害者の社会復帰(リハビリテーション)を目的とする施設・サービスを選ぶ問題である。各用語が何を目的とする施設・機関なのかを正しく理解しているかが問われている。

考え方

精神障害者の社会復帰には、症状の安定に加えて、生活技能の回復、就労に向けた訓練、住まいの確保、地域での居場所づくりといった段階的な支援が必要である。そのための場として、就労の訓練・機会を提供する施設(授産施設、福祉工場)、生活の訓練や住まいを提供する施設(生活訓練施設、福祉ホーム、グループホーム)、医療機関が行う部分入院・通所型の治療(デイケア、ナイトケア=ナイトホスピタル)などがある。 選択肢のうち、授産所は職業訓練・就労の場であり、ナイトホスピタルは昼間は職場や学校に通い夜間は病院で過ごす部分入院の形態であって、いずれも社会復帰を直接の目的とする。ホスピスは終末期ケア、児童相談所は児童福祉、保護観察所は更生保護を主目的とする機関であり、精神障害者の社会復帰施設にはあたらない。

選択肢考察

  1. ○a.  授産所

    授産所(授産施設)は、障害などのために一般企業での就業や技能の習得が難しい人に、作業や就労の場を提供し、職業に必要な技能や生活習慣を身につけさせて社会的・経済的自立を支援する施設である。精神障害者授産施設は、かつて精神保健福祉法に定められた精神障害者社会復帰施設の代表であった。2006(平成18)年の障害者自立支援法の施行以降、障害種別ごとの施設体系は再編され、現在は障害者総合支援法に基づく就労移行支援・就労継続支援(A型:雇用契約あり、B型:雇用契約なし)などの障害福祉サービスがその役割を担っている。

  2. ×b.  ホスピス

    ホスピスは、治癒が望めない終末期の患者(主にがん患者)に対し、延命を主目的とせず、痛みなどの身体的苦痛や精神的・社会的・スピリチュアルな苦痛を和らげ、患者と家族のQOL(生活の質)を保つための全人的な緩和ケアを行う施設である。日本では医療保険上、緩和ケア病棟として位置づけられている。精神障害者の社会復帰を目的とする施設ではない。

  3. ×c.  児童相談所

    児童相談所は児童福祉法に基づき都道府県・指定都市などに設置される行政機関で、18歳未満の児童に関する養護(虐待を含む)、保健、障害、非行、育成などの相談に応じ、調査・判定(診断)・指導・一時保護・施設入所措置などを行う。発達障害や知的障害のある児童の相談・判定も扱うが、主な目的は児童の福祉の確保であり、精神障害者の社会復帰施設ではない。

  4. ×d.  保護観察所

    保護観察所は法務省の機関で、保護観察処分を受けた少年、少年院や刑事施設から仮退院・仮釈放となった者、保護観察付き執行猶予となった者などに対し、保護司と協力して保護観察(指導監督と補導援護)を行い、更生を図る。また、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(医療観察法)に基づき、社会復帰調整官が対象者の地域での処遇を調整する業務も担う。しかし、これは限られた対象者に対する更生保護・司法の枠組みであり、精神障害者一般の社会復帰を目的とする施設ではない。

  5. ○e.  ナイトホスピタル

    ナイトホスピタル(ナイトケア)は部分入院の一形態で、日中は職場や学校に通い、夕方から夜間を病院で過ごして治療や生活指導を受けるものである。退院後いきなり完全に地域生活へ移るのではなく、医療の支えを受けながら就労・就学を再開し、段階的に社会生活に慣れていくことを目的とした社会復帰のための手段である。反対に、日中に通所して治療・リハビリテーションを受け、夜は自宅に帰る形態がデイケア(デイホスピタル)である。

精神障害者の社会復帰に関わる施設・サービス

1995(平成7)年に精神保健法が精神保健福祉法(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律)に改められ、「自立と社会経済活動への参加の促進」が法の目的に加わった。当時の同法には精神障害者社会復帰施設として、次のものが定められていた。 ・精神障害者生活訓練施設(援護寮):日常生活に必要な訓練・指導を行う ・精神障害者授産施設:就労が難しい者に訓練と作業の場を提供する ・精神障害者福祉ホーム:住居を提供し生活を支援する ・精神障害者福祉工場:雇用契約のもとで就労の場を提供する ・精神障害者地域生活支援センター:相談・交流の拠点 2006(平成18)年施行の障害者自立支援法(2013年から障害者総合支援法)により、身体・知的・精神の障害種別ごとに分かれていた施設体系は一元化された。現在は、就労移行支援、就労継続支援(A型・B型)、自立訓練(生活訓練)、共同生活援助(グループホーム)、地域活動支援センターなどのサービスとして提供されている。

医療機関による部分入院・通所型の治療

・デイケア(デイホスピタル):日中に通所し、集団活動・作業療法・生活技能訓練(SST)などを受け、夜は帰宅する ・ナイトケア(ナイトホスピタル):日中は就労・就学し、夜間を病院で過ごす ・デイ・ナイトケア:日中から夜間まで通所して支援を受ける これらは精神科リハビリテーションの手段として診療報酬上も位置づけられている。

POINT

・精神障害者の社会復帰施設・手段の代表:授産施設、福祉工場、生活訓練施設、福祉ホーム、デイケア、ナイトケア(ナイトホスピタル)。 ・ナイトホスピタル:昼は職場・学校、夜は病院。デイホスピタル:昼は病院(通所)、夜は自宅。 ・ホスピス=終末期の緩和ケア、児童相談所=児童福祉(児童福祉法)、保護観察所=更生保護(法務省)。 ・現在の精神障害者の就労・生活支援は障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス(就労移行支援・就労継続支援など)として提供される。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。