StudyMed医師国家試験

逆流する尿が腎を傷つける―膀胱尿管逆流は「熱のある尿路感染」から見つけよ

第103回医師国家試験 A問題 第1問

国試問題にチャレンジ

第103回 A問題 第1問

膀胱尿管逆流で正しいのはどれか。

  1. a.思春期に発症する。
  2. b.肉眼的血尿を認める。
  3. c.尿路感染症の原因になる。
  4. d.排泄性腎盂造影で診断する。
  5. e.腎機能障害が急速に進行する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は膀胱尿管逆流、略してVURの基本を問う問題だ。発症年齢、症状、診断法、経過の4点を押さえれば迷わず解ける。まずは、そもそも正常ではなぜ尿が逆流しないのかから考えてみよう。
医学生医学生
尿管と膀胱のつなぎ目に弁のようなものがあるからでしょうか。
ドクタードクター
発想は近いけど、実際は弁ではなく構造の工夫なんだ。尿管は膀胱壁の中を斜めにある程度の長さ走ってから開口している。これを膀胱壁内尿管という。排尿で膀胱内圧が上がると、この壁内尿管が押しつぶされて閉じ、逆流を防ぐんだ。
医学生医学生
解剖実習で、尿管が膀胱に斜めに入っていくのを見た覚えがあります。あれに意味があったんですね。
ドクタードクター
そういうこと。この逆流防止機構が生まれつき不十分なのが原発性VUR、神経因性膀胱や後部尿道弁、前立腺肥大症などで膀胱内圧が上がって起こるのが続発性VURだ。小児で問題になるのは主に原発性のほう。では、原発性VURはいつ見つかることが多いと思う?
医学生医学生
先天的な異常なら、小さい子どもですよね。思春期に発症というのは違いそうです。
ドクタードクター
正解。乳幼児期に、発熱を伴う尿路感染症、多くは腎盂腎炎をきっかけに見つかるのが典型だ。胎児エコーで水腎症として見つかることもある。しかも成長とともに壁内尿管が長くなるので、軽度の逆流は自然に消えやすい。
医学生医学生
なぜ逆流があると感染しやすくなるんですか。
ドクタードクター
いい質問だ。まず、膀胱内の細菌を含んだ尿が腎盂まで運ばれる。さらに排尿後、尿管や腎盂に戻った尿がまた膀胱に流れ込むので、実質的に残尿になって細菌が洗い流されにくい。だから腎盂腎炎を起こしやすく、繰り返しやすいんだ。これが「尿路感染症の原因になる」が正しい理由だね。
医学生医学生
小児科実習で、熱だけで来た赤ちゃんの尿検査をしたら尿路感染だった、という症例がありました。
ドクタードクター
まさにそれが入口だ。乳児では発熱のほかに哺乳不良や不機嫌、嘔吐など非特異的な症状しか出ないことも多い。だから原因不明の発熱では尿検査が大事になる。ちなみに血尿についてはどう思う?
医学生医学生
感染があれば血尿も出そうなので、肉眼的血尿もありそうに思ってしまいました。
ドクタードクター
感染に伴って顕微鏡的血尿が出ることはあるけど、VURそのものが肉眼的血尿の原因になるわけではない。主役はあくまで腎盂腎炎による発熱だ。では診断はどうする?
医学生医学生
腎盂や尿管を見るなら、排泄性腎盂造影でしょうか。
ドクタードクター
そこがひっかけだね。排泄性腎盂造影、つまり静脈性腎盂造影は、静注した造影剤が腎から下へ流れていく様子を撮る検査だ。流れは上から下だけだから、逆流そのものは証明できない。確定診断は、カテーテルで膀胱に造影剤を入れて排尿時に撮影し、尿管や腎盂への逆流を確認する排尿時膀胱尿道造影、VCUGで行う。
医学生医学生
逆流を見るなら、膀胱側から造影剤を入れて排尿させないといけないわけですね。
ドクタードクター
その通り。VCUGでは逆流の程度もgrade IからVの5段階で評価する。尿管のみがI、腎盂まで達して拡張がないのがII、拡張が強くなるにつれてIII、IV、Vと上がり、低gradeほど自然消失しやすい。最後に、腎機能への影響はどうだろう。
医学生医学生
感染を繰り返すと腎がダメになるので、急速に悪くなる印象があります。
ドクタードクター
腎が傷むのは事実だけど、速さが違う。腎盂腎炎を繰り返すと腎実質に瘢痕ができ、逆流性腎症になる。これが高血圧、蛋白尿、慢性腎臓病の原因になり、末期腎不全に至ることもあるけど、経過は年単位でゆっくりなんだ。
医学生医学生
腎瘢痕の評価にはDMSA腎シンチグラフィを使う、とCBTの勉強で覚えました。
ドクタードクター
よく覚えているね。超音波は水腎症や腎の大きさを見るのには便利だけど、逆流の有無を否定することはできない点も注意だ。治療は、経過観察や少量の抗菌薬の予防投与が基本で、便秘や排尿習慣の是正も大切。感染を繰り返す例や高度の逆流、瘢痕が進む例では膀胱尿管新吻合術や内視鏡的注入療法を考える。続発性なら原因の排尿障害を治療することが先決だよ。
医学生医学生
乳幼児の発熱性尿路感染を見たら背景にVURを疑ってVCUGで確認し、瘢痕の有無はDMSAで見る、という流れですね。
ドクタードクター
完璧だ。小児期の慢性腎臓病の原因の一つでもあるから、早く見つけて感染を防ぐことが、将来の腎機能を守ることにつながるんだ。

まとめ

膀胱尿管逆流は、膀胱壁内尿管による逆流防止機構の不全などにより、膀胱内の尿が尿管・腎盂へ逆流する病態です。原発性VURは乳幼児期の発熱性尿路感染症(腎盂腎炎)を契機に見つかることが多く、逆流した尿が細菌を上部尿路へ運び、残尿となることで感染を起こしやすく反復しやすくなります。確定診断と重症度評価は排尿時膀胱尿道造影で行い、静脈性腎盂造影では逆流を証明できません。腎盂腎炎の反復で生じる逆流性腎症は、高血圧・蛋白尿・慢性腎臓病を年単位で緩徐に引き起こし、腎瘢痕はDMSA腎シンチグラフィで評価します。発症年齢・症状・診断法・経過を正しく押さえることは、小児の発熱診療で尿路感染の背景を見逃さないための基本となります。

解答・解説

正解はcです

テーマ

膀胱尿管逆流(vesicoureteral reflux:VUR)は、膀胱内の尿が尿管、さらには腎盂へと逆流する病態である。正常では、尿管は膀胱壁内を斜めに一定の長さ走行してから膀胱内に開口しており(膀胱壁内尿管)、排尿時に膀胱内圧が上がると壁内尿管が圧迫されて閉じ、逆流が防がれる。この逆流防止機構が生まれつき不十分なもの(壁内尿管が短い、尿管口の位置や形の異常など)が原発性VUR、神経因性膀胱や下部尿路の通過障害(後部尿道弁、前立腺肥大症など)で膀胱内圧が高くなって生じるものが続発性VURである。

正解を導く考え方

小児の原発性VURは、乳幼児期の発熱性尿路感染症(多くは腎盂腎炎)をきっかけに見つかることが最も多い。逆流があると、膀胱内の細菌を含んだ尿が上部尿路に運ばれ、排尿後も尿管・腎盂に戻った尿が膀胱に流れ込んで残尿となり、細菌が洗い流されにくい。そのため腎盂腎炎を繰り返しやすく、感染を繰り返すと腎に瘢痕が生じる(逆流性腎症)。したがって「尿路感染症の原因になる」が正しい。 発症年齢(乳幼児期)、症状(血尿ではなく発熱を伴う尿路感染)、診断法(排尿時膀胱尿道造影)、経過(瘢痕形成による緩徐な腎機能低下)の4点を押さえれば、他の選択肢はすべて否定できる。

選択肢考察

  1. ×a.  思春期に発症する。

    原発性VURは先天的な尿管膀胱移行部の異常によるもので、乳幼児期に発熱性尿路感染症を契機に見つかることが多い。胎児期の超音波検査で水腎症として見つかり、生後の精査で診断されることもある。成長に伴って壁内尿管が長くなるため、軽度の逆流は年齢とともに自然消失しやすい。思春期に初めて発症する疾患ではない。

  2. ×b.  肉眼的血尿を認める。

    VURそのものは肉眼的血尿の原因にはならず、主な症状は腎盂腎炎による発熱である。乳児では発熱以外に哺乳不良、不機嫌、嘔吐など非特異的な症状のみのことも多い。感染に伴って顕微鏡的血尿がみられることはあっても、肉眼的血尿を特徴とする疾患ではない。

  3. ○c.  尿路感染症の原因になる。

    逆流により膀胱内の細菌が腎盂まで運ばれ、さらに排尿後に逆流した尿が膀胱へ戻ってくるため、事実上の残尿となって細菌が排除されにくい。その結果、上部尿路感染症(腎盂腎炎)を起こしやすく、再発もしやすい。小児の発熱性尿路感染症では、背景にVURがないか検索することが重要である。

  4. ×d.  排泄性腎盂造影で診断する。

    排泄性腎盂造影(静脈性腎盂造影、IVP)は静注した造影剤が腎から尿へ排泄される過程を撮影する検査で、造影剤は上から下へ流れるだけなので、逆流そのものは証明できない(腎盂・尿管の拡張や腎の変形から間接的に推測できる程度である)。確定診断は、膀胱内にカテーテルから造影剤を注入し、排尿時に撮影して尿管・腎盂への造影剤の逆流を確認する排尿時膀胱尿道造影(voiding cystourethrography:VCUG)で行い、逆流の程度もこれで評価する。

  5. ×e.  腎機能障害が急速に進行する。

    VURに腎盂腎炎が繰り返し合併すると、腎実質に瘢痕が形成されて逆流性腎症となり、高血圧、蛋白尿、慢性腎臓病(末期腎不全に至ることもある)を生じうる。しかしその経過は年単位の緩徐なものであり、腎機能障害が急速に進行するわけではない。

分類

・原発性VUR:尿管膀胱移行部の先天的な逆流防止機構の不全。小児に多い。 ・続発性VUR:神経因性膀胱、後部尿道弁、前立腺肥大症など、排尿障害や膀胱内圧上昇に伴って生じる。

重症度分類(国際分類)

排尿時膀胱尿道造影所見で5段階に分類する。 ・grade I:尿管のみへの逆流 ・grade II:腎盂・腎杯まで達するが拡張はない ・grade III:尿管・腎盂の軽度〜中等度の拡張、腎杯の鈍化は軽度 ・grade IV:尿管の中等度の拡張・屈曲、腎盂腎杯の中等度の拡張 ・grade V:尿管の高度の拡張・屈曲、腎盂腎杯の高度拡張(腎杯の乳頭圧痕が消失) 軽度(低grade)ほど自然消失しやすい。

検査

・排尿時膀胱尿道造影(VCUG):確定診断と重症度評価。 ・腎尿路超音波検査:水腎症・水尿管の有無、腎の大きさの評価(逆流自体の除外はできない)。 ・DMSA腎シンチグラフィ:腎瘢痕(逆流性腎症)の評価。

治療

・経過観察や、少量の抗菌薬を継続して内服させる予防投与(尿路感染症の再発予防)。便秘や排尿習慣の異常(排尿排便機能障害)の是正も重要である。 ・感染を繰り返す例、高度の逆流、腎瘢痕が進行する例では、逆流防止術(膀胱尿管新吻合術)や内視鏡的注入療法を検討する。 ・続発性VURでは、原因となる排尿障害の治療(経尿道的前立腺切除術、間欠的自己導尿、後部尿道弁切除など)を行う。

逆流性腎症

逆流と腎盂腎炎の反復により腎瘢痕が形成された状態。高血圧、蛋白尿、腎機能低下の原因となり、小児期の慢性腎臓病の原因の一つである。

POINT

・VURは乳幼児の発熱性尿路感染症(腎盂腎炎)の重要な原因である。 ・確定診断・重症度評価は排尿時膀胱尿道造影(VCUG)で行う。静脈性腎盂造影では逆流を証明できない。 ・腎瘢痕の評価はDMSA腎シンチグラフィ。 ・反復感染による逆流性腎症は、高血圧・蛋白尿・慢性腎臓病を緩徐に引き起こす。 ・低gradeの原発性VURは成長とともに自然消失しやすい。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。