白いレンズは何を語るか―CTの「形」で見分ける頭蓋内血腫
第102回医師国家試験 I問題 第17問
国試問題にチャレンジ
頭部外傷患者の頭部単純CTを別に示す。 診断はどれか。

- a.皮下血腫
- b.硬膜外血腫
- c.硬膜下血腫
- d.くも膜下出血
- e.脳内血腫
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
頭部外傷後の単純CTでは、急性期の血腫は高吸収域として写り、その位置と形から出血の種類を見分けます。頭蓋骨直下に限局する両側凸のレンズ状高吸収域は硬膜外血腫の典型で、硬膜が頭蓋骨内面、特に縫合部に強く癒着しているため血腫が広がれず、縫合線を越えにくいことが形の理由です。硬膜外血腫は側頭骨骨折に伴う中硬膜動脈損傷が多く、意識清明期を経て急速に悪化しうる一方、早期の開頭血腫除去で予後は良好なことが多いとされます。脳表に沿う三日月状なら硬膜下血腫、脳溝・脳槽に沿えばくも膜下出血、骨の外なら皮下血腫、実質内なら脳内血腫と、外側から層をたどって読む習慣は救急外来での迅速な判断に直結します。
解答・解説
正解はbです
頭部外傷後の単純CTで、頭蓋内出血の種類を「血腫がどこに、どんな形で広がっているか」から見分ける問題である。
CTでの読み方
単純CTでは、急性期の血液は周囲の脳実質より白く(高吸収域として)写る。そこで、高吸収域の位置を外側から順に確認する。 ・頭蓋骨より外側(頭皮の下)にあるか → 皮下血腫 ・頭蓋骨の直下で脳の表面を覆うようにあるか → 硬膜外血腫または硬膜下血腫 ・脳溝や脳底槽(脳の底部にある脳脊髄液のたまり)に沿って広がるか → くも膜下出血 ・脳実質の中にあるか → 脳内血腫
本問の画像
頭蓋骨の内板直下に、内側へ向かって両面とも凸に膨らんだレンズ状(紡錘形)の高吸収域が認められる。範囲は限局しており、脳表全体に沿って薄く広がる三日月状ではない。脳溝内や脳実質内には出血を示す高吸収域はみられない。
形の違いが生じる理由
硬膜は頭蓋骨の内面に強く癒着しており、特に頭蓋縫合の部分で強固に付着している。硬膜外に出血すると、血液は硬膜を骨から引きはがしながらたまるため、縫合線を越えにくく、限局した凸レンズ状になる。一方、硬膜とくも膜の間には癒着がないため、硬膜下の血液は脳表に沿って広く薄く広がり、三日月状になる。 以上から、凸レンズ状の頭蓋内・脳実質外の高吸収域であり、硬膜外血腫と診断する。
選択肢考察
- ×a. 皮下血腫
皮下血腫は頭皮と頭蓋骨の間(頭蓋骨の外側)に生じる血腫で、CTでは骨の外側の軟部組織の腫脹・高吸収域として写る。本問の高吸収域は頭蓋骨の内側にあるため該当しない。なお、頭部外傷では皮下血腫が硬膜外血腫と同じ側に合併することも多いが、診断として問われている頭蓋内の病変はこれではない。
- ○b. 硬膜外血腫
頭蓋骨の内板直下に、両側凸のレンズ状(紡錘形)で境界明瞭な高吸収域があり、硬膜外血腫の典型像である。硬膜は頭蓋骨内面、特に縫合部に強く付着しているため、血腫は硬膜をはがしながら局所的に厚みを増し、縫合線を越えにくい。原因の多くは側頭骨骨折による中硬膜動脈の損傷であり、動脈性出血のため急速に増大しうる。
- ×c. 硬膜下血腫
急性硬膜下血腫は硬膜とくも膜の間に生じ、脳表の架橋静脈(脳表から静脈洞へ向かう静脈)や脳挫傷部からの出血が原因となる。硬膜下腔には癒着がないため、血液は脳表に沿って広がり、内側が凹の三日月状の高吸収域となる。縫合線を越えて広がりうる点も硬膜外血腫と異なる。本問は凸レンズ状なので該当しない。
- ×d. くも膜下出血
くも膜下出血はくも膜と軟膜の間のくも膜下腔に血液が入るもので、CTでは脳溝、シルビウス裂、脳底槽などの脳脊髄液腔に沿った高吸収域として写る。破裂脳動脈瘤では脳底槽が星形(ペンタゴン〜ダビデの星状)に白く見えるのが代表像である。外傷性くも膜下出血では脳表の脳溝に沿って少量みられることが多い。本問の画像は脳溝・脳槽に沿う出血ではない。
- ×e. 脳内血腫
脳内血腫は脳実質の内部に生じる高吸収域であり、外傷では脳挫傷に伴って前頭葉底部や側頭葉先端に生じやすい。本問では高吸収域は脳実質の外(頭蓋骨直下)にあり、脳実質内に出血はみられないため該当しない。
急性硬膜外血腫と急性硬膜下血腫の比較
・部位: 硬膜外血腫は頭蓋骨と硬膜の間、硬膜下血腫は硬膜とくも膜の間。 ・主な出血源: 硬膜外血腫は中硬膜動脈(側頭骨骨折に伴うことが多い)や静脈洞、板間静脈。硬膜下血腫は架橋静脈や脳挫傷部の皮質血管。 ・CT像: 硬膜外血腫は両側凸レンズ状で縫合線を越えにくい。硬膜下血腫は三日月状で縫合線を越えて広がるが、大脳鎌や小脳テントは越えない。 ・骨折の合併: 硬膜外血腫では高率に頭蓋骨骨折を伴う。 ・脳実質損傷: 硬膜外血腫は脳損傷の合併が比較的少なく、早期に血腫を除去すれば予後は良好なことが多い。硬膜下血腫は脳挫傷を伴いやすく、予後は不良なことが多い。
硬膜外血腫の臨床像
受傷直後に一時的に意識を失い、その後いったん意識が回復し(意識清明期)、血腫の増大に伴って再び意識が悪化する経過が典型とされる。ただし意識清明期がみられるのは一部の症例に限られる。血腫の増大によりテント切痕ヘルニアを起こすと、同側の瞳孔散大(動眼神経圧迫)や対側の片麻痺が出現する。治療は、占拠性病変として脳を圧迫している場合には緊急の開頭血腫除去術を行う。
CTの吸収値
急性期の血腫は高吸収、その後時間とともに等吸収、さらに低吸収へと変化する。慢性硬膜下血腫が等〜低吸収、あるいは新旧の出血が混在した像を示すのはこのためである。
POINT
・頭蓋骨直下の凸レンズ状高吸収域 → 硬膜外血腫(中硬膜動脈損傷、骨折合併が多い、意識清明期) ・脳表に沿った三日月状高吸収域 → 硬膜下血腫(架橋静脈損傷、脳挫傷の合併が多い) ・脳溝・脳底槽に沿う高吸収域 → くも膜下出血 ・形の差は、硬膜が頭蓋骨に癒着しているか否かによる
