StudyMed医師国家試験

背中は語る―前屈ひとつで見抜く脊柱側弯症の学校検診

第102回医師国家試験 I問題 第16問

国試問題にチャレンジ

第102回 I問題 第16問

学校における脊柱側弯症検診で着目すべき所見はどれか。2つ選べ。

  1. a.漏斗胸
  2. b.肋骨の隆起
  3. c.肩甲骨の位置
  4. d.仙椎部の腫瘤
  5. e.Lasègue徴候

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は学校検診で脊柱側弯症を見つけるとき、体のどこを見ればよいかという問題だ。ポイントは「側弯は背骨が横に曲がるだけでなく、ねじれも伴う」ということ。そのねじれが体表にどう現れるかを考えれば、答えは自然に出てくるよ。
医学生医学生
側弯症って、単純に背骨がS字に曲がった状態だと思っていました。ねじれもあるんですか。
ドクタードクター
そうなんだ。脊柱側弯症は前額面、つまり正面から見た面で脊柱が横に弯曲した状態だけど、構築性の側弯では多くの場合、椎体の回旋を伴う。診断は立位全脊柱X線正面像でCobb角10°以上が基準だ。大部分は原因不明の特発性側弯症で、特に思春期の女子に多い。
医学生医学生
自覚症状がほとんどないまま進むから、学校検診で拾い上げる意味があるんですね。
ドクタードクター
その通り。成長期に進行しやすいので、早く見つけるほど装具などの選択肢が広がる。では、椎体が回旋すると背中はどうなると思う?
医学生医学生
椎体に肋骨がくっついているので、肋骨も一緒にねじれて……片側が後ろに出っ張るんでしょうか。
ドクタードクター
まさにそれ。胸椎が側弯すると椎体は凸側へ回旋し、凸側の肋骨が後方へ押し出される。これを前屈させるとはっきり見えるのが肋骨隆起、いわゆるrib humpだ。両手のひらを合わせ、膝を伸ばしたまま前屈してもらって背中を後ろから眺める。これが前屈テスト、Adams testだね。
医学生医学生
整形外科の臨床実習で、外来の先生が子どもに前屈してもらって背中を横から覗き込んでいたのを思い出しました。あれが肋骨隆起を見ていたんですね。
ドクタードクター
そう。前屈テストは椎体の回旋による変形を最も鋭敏に捉える方法なんだ。角度計(scoliometer)で体幹回旋角を測って客観化することもある。それから立位でも見るべきところがある。どこだと思う?
医学生医学生
胸郭が変形するなら、その上に乗っている肩甲骨の位置もずれそうです。
ドクタードクター
いいね。凸側の肩甲骨が後方へ突出したり、左右の高さが違ったりする。立位で後ろ向きに立たせて、肩の高さ、肩甲骨の高さや突出、ウエストラインの左右差を確認するのが基本だ。だから着目すべきは肋骨の隆起と肩甲骨の位置になる。
医学生医学生
漏斗胸は胸郭の変形なので関係ありそうにも思えたんですが、違うんですか。
ドクタードクター
迷うところだね。漏斗胸は胸骨と肋軟骨が後方に落ち込む前胸壁の先天的な変形で、側弯そのものから生じる所見ではない。Marfan症候群のような結合組織疾患では両者が合併することもあるけれど、側弯症検診で着目する項目ではないんだ。
医学生医学生
仙椎部の腫瘤は、二分脊椎を思わせる所見ですよね。
ドクタードクター
そう。腰仙部の皮下腫瘤は、脂肪腫を伴う潜在性二分脊椎などの脊椎癒合不全を示唆する所見で、多毛や皮膚陥凹、血管腫とセットで見る。先天奇形に伴う側弯が合併することはあっても、学童の側弯症検診のチェック項目ではない。
医学生医学生
Lasègue徴候はOSCEで練習しました。仰臥位で下肢を伸ばしたまま挙上して、放散痛を見るテストです。
ドクタードクター
よく覚えているね。坐骨神経の伸張で殿部から下肢後面に痛みが走るもので、主に下位腰椎の椎間板ヘルニアなどの神経根障害を見る検査だ。側弯症の検診とは目的がまったく違う。
医学生医学生
つまり検診では、立位で肩・肩甲骨・ウエストの左右差、前屈で肋骨隆起や腰部隆起、という流れで見るんですね。
ドクタードクター
完璧だ。最後に発展的な話をしておこう。側弯には姿勢不良や脚長差、疼痛による逃避姿勢で生じる機能性側弯もあって、こちらは椎体の回旋を伴わず、前屈や臥位で消える。前屈テストで隆起が出るかどうかは、構築性かどうかを見分けるヒントにもなるんだ。
医学生医学生
見つかった後はどう管理するんですか。
ドクタードクター
X線でCobb角を測り、腸骨稜骨端核のRisser signで骨成熟度を評価する。骨成熟前は進行しやすいからね。目安として25°未満は経過観察、成長期で25〜40°程度なら装具療法、40〜50°を超えるような高度側弯では矯正固定術を検討する。高度の胸椎側弯は拘束性換気障害の原因にもなるので、見逃さないことが大切だよ。

まとめ

脊柱側弯症は脊柱が側方に弯曲し、多くは椎体の回旋を伴う変形で、思春期特発性側弯症が大部分を占めます。自覚症状に乏しいまま成長期に進行するため、学校検診では立位での肩の高さ・肩甲骨の位置・ウエストラインの左右差と、前屈テスト(Adams test)での肋骨隆起を観察します。肋骨隆起は椎体回旋を反映する最も鋭敏な所見であり、回旋を伴わない機能性側弯との区別にも役立ちます。漏斗胸は前胸壁の変形、仙骨部腫瘤は二分脊椎、Lasègue徴候は坐骨神経の刺激症状をみるもので、側弯症検診の項目ではありません。確定診断は立位全脊柱X線でCobb角10°以上とし、角度と骨成熟度に応じて経過観察・装具・手術を選ぶ流れを押さえておくと、整形外科や小児の診療で役立ちます。

解答・解説

正解はb, cです

学校の運動器検診で行う脊柱側弯症のスクリーニングで、何を観察するかを問う問題である。

脊柱側弯症とは

脊柱が前額面(正面から見た面)で横に弯曲した状態で、多くは椎体の回旋(ねじれ)を伴う。X線の立位全脊柱正面像でCobb角が10°以上のものを側弯症と定義する。学童期〜思春期に発症・進行する特発性側弯症(とくに思春期特発性側弯症。女子に多い)が大部分を占め、自覚症状に乏しいまま成長期に進行するため、学校検診での早期発見が重要である。

なぜ体表の左右差を見るのか

胸椎が側弯すると、椎体の回旋に伴って凸側の肋骨が後方へ押し出される。その結果、背中の形に次のような左右差が生じる。 ・前屈したときの肋骨の隆起(肋骨隆起、rib hump) ・肩の高さの左右差 ・肩甲骨の高さや突出の左右差 ・腰のくびれ(ウエストライン)の左右非対称

検診での見方

児童生徒を後ろ向きに立たせ、立位で肩の高さ・肩甲骨の位置・ウエストラインの左右差を見る。次に両手のひらを合わせて膝を伸ばしたまま前屈させ(前屈テスト、Adams test)、背部の肋骨隆起や腰部の隆起(腰椎部の傍脊柱筋の隆起)の有無を確認する。前屈テストは椎体回旋による変形を最も鋭敏に捉える方法である。したがって、着目すべき所見は「肋骨の隆起」と「肩甲骨の位置」である。

選択肢考察

  1. ×a.  漏斗胸

    漏斗胸は胸骨とその両側の肋軟骨が後方へ落ち込み、前胸壁が漏斗状に陥凹する先天性の胸郭変形である。Marfan症候群などの結合組織疾患では側弯症と合併することがあるが、側弯そのものによって生じる所見ではなく、脊柱側弯症の検診で着目すべき項目ではない。

  2. ○b.  肋骨の隆起

    胸椎の側弯では、椎体が凸側へ回旋し、それに付着する肋骨も凸側で後方へ突出する。前屈位をとると、この背部の左右非対称が肋骨隆起(rib hump)としてはっきり現れる。前屈テスト(Adams test)による肋骨隆起の確認は、側弯症スクリーニングの中心となる観察項目である。隆起の高さを計測したり、角度計(scoliometer)で体幹の傾き(体幹回旋角)を測ったりして客観化することもある。

  3. ○c.  肩甲骨の位置

    胸椎側弯があると、胸郭の変形に伴って凸側の肩甲骨が後方へ突出したり、左右の肩甲骨の高さが違ったりする。立位で背面から観察し、肩の高さの左右差、ウエストラインの非対称とともに、肩甲骨の高さ・突出の左右差を確認することは、側弯症検診の基本的なチェック項目である。

  4. ×d.  仙椎部の腫瘤

    腰仙部の皮下腫瘤は、脊髄髄膜瘤や脂肪腫を伴う潜在性二分脊椎などの脊椎癒合不全を示唆する所見であり、多毛・皮膚陥凹・血管腫などとともに観察される。先天奇形に伴う側弯を合併することはあっても、学童の側弯症検診で着目する項目ではない。

  5. ×e.  Lasègue徴候

    Lasègue徴候は、仰臥位で膝を伸ばしたまま下肢を挙上したときに、坐骨神経が伸張されて殿部から下肢後面に放散痛が生じる所見(下肢伸展挙上テスト、SLRテストで陽性となる)である。主に下位腰椎(L4/5、L5/S1)の腰椎椎間板ヘルニアなどによる神経根障害で陽性となる。坐骨神経の刺激症状をみる検査であり、側弯症の検診項目ではない。

側弯症の分類

・機能性側弯:姿勢不良、疼痛による逃避姿勢、脚長差などによる一時的な弯曲。椎体の回旋を伴わず、前屈や臥位、原因除去で消失する。 ・構築性側弯:椎体の回旋・変形を伴い、姿勢を変えても消えない。  - 特発性側弯症:原因不明で最も多い(構築性側弯の大部分)。発症時期により乳幼児期・学童期・思春期に分けられ、思春期特発性側弯症が最多で女子に多い。胸椎右凸の弯曲が典型。  - 先天性側弯症:半椎・癒合椎などの椎体形成異常による。  - 神経・筋原性側弯症:脳性麻痺、筋ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症など。  - 間葉系疾患に伴う側弯症:Marfan症候群、Ehlers-Danlos症候群など。  - 神経線維腫症1型に伴う側弯症など。

学校検診でのチェックポイント

1. 両肩の高さの左右差 2. 両肩甲骨の高さ・突出の左右差 3. ウエストライン(腰の脇線)の左右非対称 4. 前屈テストでの肋骨隆起・腰部隆起

診断と治療の目安(特発性側弯症)

・診断:立位全脊柱X線正面像でCobb角(弯曲の上端椎と下端椎の終板のなす角度)を測る。10°以上で側弯症。 ・骨成熟度の評価には腸骨稜骨端核の出現・癒合の程度(Risser sign)を用い、骨成熟前は進行しやすい。 ・治療の目安:25°未満は経過観察、成長期でおおむね25〜40°程度は装具療法(Boston型装具など)、40〜50°以上の高度側弯は手術(脊椎矯正固定術)を検討する。高度の胸椎側弯は拘束性換気障害の原因となる。

POINT

・学校の側弯症検診では、背部の左右非対称を観察する。 ・立位:肩の高さ、肩甲骨の位置(高さ・突出)、ウエストラインの左右差。 ・前屈テスト(Adams test):肋骨隆起(rib hump)・腰部隆起の有無。椎体回旋を反映する最も重要な所見。 ・漏斗胸は前胸壁の変形、仙骨部腫瘤は二分脊椎、Lasègue徴候は腰椎椎間板ヘルニアなどの坐骨神経刺激症状であり、側弯症検診の項目ではない。 ・確定診断は立位全脊柱X線でCobb角10°以上。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。