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拒絶反応の主役は誰だ?―免疫担当細胞と「本業」の正しい組合せ

第102回医師国家試験 E問題 第10問

国試問題にチャレンジ

第102回 E問題 第10問

免疫担当細胞と役割の組合せで正しいのはどれか。

  1. a.NK細胞 ―― 抗原提示
  2. b.樹状細胞 ―― 自己免疫
  3. c.Tリンパ球 ―― 移植免疫
  4. d.Bリンパ球 ―― 抗体依存性細胞傷害〈ADCC〉
  5. e.マクロファージ ―― 補体活性化

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、免疫担当細胞とその役割を対応づける問題だ。どの細胞もいろいろな場面に少しずつ顔を出すから、「関与するかどうか」ではなく「その役割の主役かどうか」で判断するのがコツだよ。まずは全体像として、自然免疫と獲得免疫の区別から確認しよう。
医学生医学生
自然免疫は好中球やマクロファージ、NK細胞、補体などで、獲得免疫はT細胞とB細胞ですよね。免疫学の講義で最初に習いました。
ドクタードクター
そう。そして両者をつなぐのが抗原提示細胞で、その代表が樹状細胞だ。取り込んだ抗原をMHC分子に載せてT細胞に提示する。では、NK細胞と抗原提示の組合せはどうかな。
医学生医学生
NK細胞は感染細胞を殺す側なので、抗原提示はしない気がします。
ドクタードクター
正しい判断だ。NK細胞は事前の感作なしに、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞を直接傷害する。特にMHCクラスIの発現が低下した細胞を狙うのが特徴で、T細胞から逃れようとした細胞を拾い上げる役回りなんだ。抗原提示を担うのは樹状細胞、マクロファージ、B細胞で、ナイーブT細胞を活性化できるのは主に樹状細胞だよ。
医学生医学生
では樹状細胞と自己免疫は?自己免疫にも関わっていそうで迷いました。
ドクタードクター
迷うのは無理もない。樹状細胞は自己寛容の維持や一部の自己免疫疾患の病態にも関わりうる。でも本業はプロフェッショナル抗原提示細胞で、組織で抗原を取り込みリンパ節へ移動してT細胞に提示することだ。自己免疫の実行役として中心にいるのは、自己反応性T細胞と自己抗体を作るB細胞だから、この組合せは適切とはいえない。
医学生医学生
Bリンパ球とADCCも、抗体が関わるのでつい正しく見えてしまいます。
ドクタードクター
そこが典型的な引っかけだね。ADCCは抗体依存性細胞傷害で、標的細胞に結合したIgGのFc部分を、Fc受容体であるCD16で認識したエフェクター細胞が標的を壊す現象だ。実行役は主にNK細胞で、マクロファージや好中球なども担う。B細胞は形質細胞に分化して抗体を作る側であって、自ら細胞を傷害するわけではないんだ。
医学生医学生
抗体を作る人と、抗体を目印に攻撃する人は別、ということですね。マクロファージと補体活性化はどうですか。
ドクタードクター
補体は主に肝臓で作られる血漿タンパク質群で、古典経路・第二経路・レクチン経路の3つで連鎖的に活性化される。マクロファージは補体受容体を持っていて、C3bでオプソニン化された微生物を貪食する、いわば補体の利用者だ。活性化の担い手ではないね。マクロファージの本業は貪食、抗原提示、TNF-αやIL-1などのサイトカイン産生だ。
医学生医学生
となると、残るTリンパ球と移植免疫が正解ですね。
ドクタードクター
その通り。移植片の拒絶反応は、ドナーとレシピエントのHLAの違いを、レシピエントのT細胞が異物として認識することで起こる。CD4陽性ヘルパーT細胞がサイトカインで反応を指揮し、CD8陽性の細胞傷害性T細胞が移植片の細胞を直接破壊する。急性拒絶反応の主体はT細胞性なんだ。
医学生医学生
腎臓内科を回ったとき、腎移植後の患者さんがタクロリムスの血中濃度を毎回測っていました。あれもT細胞を抑えるためなんですね。
ドクタードクター
よく結びつけたね。タクロリムスやシクロスポリンはカルシニューリン阻害薬で、T細胞の活性化に必要なIL-2の産生を抑える。だからこそ移植免疫の主役がT細胞だとわかるわけだ。ちなみに骨髄移植後の移植片対宿主病、GVHDも、ドナー由来のT細胞が患者の組織を攻撃して起こる。輸血後GVHDを防ぐために血液製剤へ放射線照射をするのも、リンパ球を不活化するためだよ。
医学生医学生
拒絶反応はすべてT細胞性なのでしょうか。
ドクタードクター
そこは分けて覚えよう。移植直後に起こる超急性拒絶反応は既存の抗体と補体によるもので、急性拒絶反応は主にT細胞性だけど一部に抗体関連型もある。慢性拒絶反応は抗体や慢性炎症による血管病変などが関わる。だからT細胞が中心ではあるけれど、抗体も無関係ではないんだ。
医学生医学生
各細胞の本業を一言で言えるようにしておけば、組合せ問題は崩せそうです。CBTのときにも同じような問題で苦戦しました。
ドクタードクター
それが一番の対策だ。好中球は細菌の貪食、マクロファージは貪食と抗原提示とサイトカイン、樹状細胞は最強の抗原提示細胞、NK細胞は感作不要の細胞傷害とADCC、T細胞は細胞性免疫と移植免疫、B細胞は抗体産生。この一覧を頭に入れておくと、臨床で抗体医薬の作用機序を理解するときにも役立つよ。

まとめ

免疫担当細胞の組合せ問題では、その細胞が関与するかではなく、その役割の中心的な担い手かどうかで判断します。移植片拒絶反応はレシピエントのT細胞がドナーのHLAの違いを認識して起こり、急性拒絶の主体がT細胞性であることから、移植後にはタクロリムスなどのカルシニューリン阻害薬が用いられ、GVHDもドナーT細胞によって生じます。一方、抗原提示は樹状細胞・マクロファージ・B細胞の役割でNK細胞は担わず、ADCCの主なエフェクターはCD16をもつNK細胞でB細胞は抗体を作る側、補体は肝臓で産生される血漿タンパクでマクロファージはその利用者にすぎません。各細胞の本業を整理しておくことは、免疫抑制療法や抗体医薬など臨床での薬理を理解する土台になります。

解答・解説

正解はcです

免疫担当細胞のそれぞれについて、「その細胞に最も特徴的な、中心的な役割」を正しく対応づけられるかを問う問題である。 免疫は大きく、生まれつき備わっていて病原体を素早く非特異的に排除する自然免疫と、抗原を特異的に認識して記憶を残す獲得免疫(適応免疫)に分けられる。 ・自然免疫の主な担い手:好中球、マクロファージ、樹状細胞、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)、補体など。 ・獲得免疫の主な担い手:Tリンパ球(細胞性免疫の中心)とBリンパ球(抗体を産生する液性免疫の中心)。 ・両者をつなぐのが抗原提示細胞(樹状細胞が代表)で、取り込んだ抗原をMHC(主要組織適合遺伝子複合体)分子に載せてT細胞に提示する。 各選択肢について、左の細胞が右の役割の「主役」であるかどうかを判断する。移植された他人の組織は、ドナーとレシピエントのMHC(ヒトではHLA)の違いによって異物として認識され、その拒絶反応の中心を担うのはT細胞である。この点から正解が決まる。

選択肢考察

  1. ×a.  NK細胞 ―― 抗原提示

    NK細胞は自然免疫に属する大型の顆粒リンパ球で、事前の感作やヘルパーT細胞の助けなしに、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞を直接傷害する。特に、MHCクラスI分子の発現が低下した細胞(ウイルスや腫瘍がT細胞からの認識を逃れるためにMHCを減らした細胞)を標的とする。抗原をT細胞に提示する役割は持たない。抗原提示を担うのは樹状細胞、マクロファージ、B細胞であり、中でも未感作(ナイーブ)T細胞を活性化できるのは主に樹状細胞である。

  2. ×b.  樹状細胞 ―― 自己免疫

    樹状細胞の中心的な役割は、組織で抗原を取り込み、リンパ節へ移動してT細胞に提示する「プロフェッショナル抗原提示細胞」としての働きである。自己成分に対して免疫反応が起こる自己免疫の病態で主な実行役となるのは、自己反応性のT細胞と、自己抗体を産生するB細胞である。樹状細胞も自己寛容の維持や、一部の自己免疫疾患の病態(例: 形質細胞様樹状細胞によるI型インターフェロン産生)に関与しうるが、樹状細胞の役割として自己免疫を対応させるのは適切でない。

  3. ○c.  Tリンパ球 ―― 移植免疫

    移植片拒絶反応は、主にドナーとレシピエントのHLA(ヒト白血球抗原、ヒトのMHC)の違いを、レシピエントのT細胞が異物として認識することで起こる。CD4陽性ヘルパーT細胞がサイトカインを出して免疫反応を指揮し、CD8陽性の細胞傷害性T細胞が移植片の細胞を直接破壊する。急性拒絶反応の主体はT細胞性であり、そのため移植後にはカルシニューリン阻害薬(タクロリムス、シクロスポリン)などT細胞の活性化を抑える免疫抑制薬が用いられる。骨髄移植後の移植片対宿主病(GVHD)も、ドナー由来のT細胞が患者の組織を攻撃することで生じる。したがってTリンパ球と移植免疫の組合せは正しい。

  4. ×d.  Bリンパ球 ―― 抗体依存性細胞傷害〈ADCC〉

    ADCC(抗体依存性細胞傷害)とは、標的細胞の表面抗原にIgG抗体が結合し、その抗体のFc部分をFc受容体(主にFcγRIII=CD16)で認識したエフェクター細胞が標的細胞を破壊する現象である。実行役は主にNK細胞で、マクロファージ、好中球、好酸球なども担う。かつてこの働きをもつ細胞は「K細胞(キラー細胞)」と呼ばれたが、現在ではその多くがNK細胞と同じ集団と考えられている。B細胞はADCCに用いられる抗体を産生する側(形質細胞に分化して分泌)であり、自らが細胞傷害を行うわけではない。

  5. ×e.  マクロファージ ―― 補体活性化

    補体は血漿中に存在する一連のタンパク質群で、主に肝臓で産生される。補体の活性化は、抗原に結合した抗体(IgM、IgG)のFc部分にC1qが結合して始まる古典経路、病原体表面で自発的にC3が活性化される第二経路(副経路)、マンノース結合レクチンなどが病原体の糖鎖を認識して始まるレクチン経路の3経路で進む、タンパク質どうしの連鎖反応である。マクロファージは補体受容体を持ち、C3bなどで覆われた(オプソニン化された)微生物を貪食する「補体の利用者」であるが、補体活性化の担い手とはいえない。マクロファージの主な役割は貪食、抗原提示、サイトカイン産生である。

主な免疫担当細胞と役割の整理

・好中球:自然免疫の最前線。細菌の貪食・殺菌。 ・マクロファージ(血中では単球):貪食、抗原提示、サイトカイン(TNF-α、IL-1、IL-6など)産生。 ・樹状細胞:最も強力な抗原提示細胞。ナイーブT細胞を活性化し、自然免疫と獲得免疫の橋渡しをする。 ・NK細胞:感作不要でウイルス感染細胞・腫瘍細胞を傷害。ADCCの主なエフェクター。 ・ヘルパーT細胞(CD4陽性):サイトカイン産生によりB細胞・マクロファージ・細胞傷害性T細胞などを活性化し免疫応答を調節する。 ・細胞傷害性T細胞(CD8陽性):MHCクラスIに提示された抗原を認識し、ウイルス感染細胞・腫瘍細胞・移植片の細胞を傷害。 ・制御性T細胞:過剰な免疫応答や自己免疫を抑える。 ・B細胞:抗原刺激により形質細胞へ分化して抗体を産生する。抗原提示能ももつ。

移植免疫の要点

・拒絶反応は、超急性(移植直後、既存抗体と補体による)、急性(主にT細胞性、一部抗体関連型)、慢性(抗体や慢性炎症による血管病変など)に分けられる。 ・同種移植ではHLAの適合度が生着に影響する。

補体の3経路

古典経路(抗原抗体複合体→C1)、第二経路(C3の自発的活性化)、レクチン経路(マンノース結合レクチン)。いずれもC3転換酵素の形成に合流し、オプソニン化、炎症細胞の動員(C3a・C5a)、膜侵襲複合体(C5b-9)による細胞溶解を起こす。

POINT

・移植片拒絶反応の主役はT細胞(HLAの違いを認識)。 ・抗原提示細胞は樹状細胞・マクロファージ・B細胞。NK細胞は抗原提示を行わない。 ・ADCCのエフェクターは主にNK細胞(Fc受容体CD16でIgGを認識)。B細胞は抗体を作る側。 ・補体は肝臓で産生される血漿タンパクで、古典経路・第二経路・レクチン経路で活性化される。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。