StudyMed医師国家試験

主役は1人じゃない―チーム医療を支える「情報共有」という土台

第102回医師国家試験 C問題 第13問

国試問題にチャレンジ

第102回 C問題 第13問

チーム医療で正しいのはどれか。

  1. a.看護師主体で構成する。
  2. b.職種別に記録を作成する。
  3. c.職種間で競争意識を持たせる。
  4. d.患者情報は職種間で共有する。
  5. e.チームリーダーは医師に限る。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はチーム医療の基本的な考え方を問う問題だ。選択肢を読むときは「特定の職種に偏っていないか」「情報が分断されていないか」「協働を妨げていないか」という3つの物差しを当てると、すっきり判断できるよ。まず、チーム医療と聞いてどんなイメージがあるかな。
医学生医学生
医師が指示を出して、看護師さんや薬剤師さんがそれを実行する、というイメージでした。
ドクタードクター
昔はそう捉えられがちだったけれど、今の考え方は少し違う。医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士・作業療法士、臨床検査技師、医療ソーシャルワーカーなどが、それぞれの専門性を前提に、目標と情報を共有して役割を分担し、互いに補い合う医療のことなんだ。上下関係ではなく、対等な連携が原則だよ。
医学生医学生
だとすると、看護師主体で構成するという考え方も偏っていることになりますね。
ドクタードクター
その通り。チームの構成は患者に必要な医療やケアの内容で決まる。たとえば栄養サポートチーム(NST)なら、医師・看護師・管理栄養士・薬剤師・臨床検査技師などが参加する。どこか1職種を主体にすると、ほかの専門的な視点が抜け落ちやすくなるんだ。
医学生医学生
チームリーダーは医師に限る、というのはどうですか。責任の所在を考えると医師が良さそうにも思えます。
ドクタードクター
迷うところだね。でもリーダーは、そのチームの目的を達成するのに最もふさわしい人が担えばいい。褥瘡対策や退院支援では看護師やMSWが、リハビリでは療法士が中心になることもある。リーダーを固定しないで運営されるチームも少なくないんだ。
医学生医学生
職種間で競争意識を持たせる、というのは明らかに変ですよね。
ドクタードクター
そうだね。競わせると情報を囲い込んだり協力しなくなったりして、患者の利益につながらない。チーム医療は競争ではなく協働の仕組みだ。では、記録を職種別に作るのはどう思う?
医学生医学生
それぞれの専門用語で書けるので効率的な気もしますが、ほかの職種が見なくなりそうです。
ドクタードクター
まさにそこが問題。記録が職種ごとに分かれると、誰が何を観察し何をしたのかが見えなくなる。だから問題志向型システム、いわゆるPOSに基づく共通の診療録に、各職種が書き込むのが望ましい。
医学生医学生
臨床実習でカルテを書いたとき、SOAPで書くように指導されました。あれもPOSの一部なんですね。
ドクタードクター
そう。主観的情報、客観的情報、評価、計画の順に書くSOAPは、共通の問題リストに沿って全職種が経過を追えるようにする工夫なんだ。こう整理すると、正しいのは「患者情報は職種間で共有する」になる。
医学生医学生
病状や治療方針だけでなく、生活背景や患者さん・家族の意向も共有するんですね。
ドクタードクター
その通り。共有されていないと方針の食い違いや処置の重複、見落としが起きて、医療の質と安全性が下がる。カンファレンスや共通の記録を通じて共有するのが基本だ。ただし、共有は診療上必要な範囲で行い、チームの外に漏らさない守秘義務は当然守らなければならない。
医学生医学生
緩和ケア科を回ったとき、カンファレンスで薬剤師さんやMSWさんの意見で方針が変わる場面を見て驚きました。
ドクタードクター
いい経験をしたね。ほかにも感染制御チーム(ICT)、呼吸ケアチーム、精神科リエゾンチーム、認知症ケアチームなど、多職種チームは院内にたくさんある。そして忘れてはいけないのが、患者さんと家族もチームの一員だということ。治療方針を一緒に決める共同意思決定の考え方だね。
医学生医学生
医師は全部を決める人ではなく、チームの一員として情報をつなぐ役割も大事だということですね。
ドクタードクター
その通り。各メンバーが連携せずに独自の判断で動くと、かえって患者さんに害が及ぶこともある。目標を共有し、役割を明確にし、到達度を評価して目標を見直す。この流れを回すのがチーム医療だよ。

まとめ

チーム医療とは、医師・看護師・薬剤師・管理栄養士・療法士・MSWなど多職種が、対等な立場で目標と患者情報を共有し、役割を分担して互いに補い合う医療です。その前提となるのが患者情報の共有であり、POSに基づく共通の診療録(SOAP形式)やカンファレンスを通じて行い、チーム外への守秘義務も守ります。特定の職種を主体にしたり、リーダーを医師に限定したり、職種間で競わせたり、記録を職種別に分けたりすることは、協働を妨げるため不適切です。NSTやICT、緩和ケアチームなど具体的なチームを知り、患者・家族もチームの一員と捉える視点を持つことが、臨床現場で円滑に連携するための土台になります。

解答・解説

正解はdです

チーム医療の基本的な考え方を問う問題である。 チーム医療とは、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士・作業療法士、臨床検査技師、診療放射線技師、医療ソーシャルワーカー(MSW)など、専門性の異なる多職種が、患者の治療・生活上の目標を共有し、それぞれの専門性を発揮しながら役割を分担して補い合う医療の形である。患者・家族もチームの一員として位置づけられる。 チームが機能するための条件は、①目標の共有、②患者情報の共有、③役割分担の明確化、④対等な立場での連携と相互の尊重、⑤状況に応じた適切なリーダーシップ、である。選択肢を読むときは、「特定の職種に偏っていないか」「情報が分断されていないか」「協働を妨げる要素がないか」という観点で判断するとよい。

選択肢考察

  1. ×a.  看護師主体で構成する。

    チームの構成は、患者に必要な医療やケアの内容に応じて決まり、特定の職種を主体とするものではない。例えば栄養サポートチーム(NST)には医師・看護師・管理栄養士・薬剤師・臨床検査技師などが参加する。各職種は対等な立場で連携するのが原則であり、看護師中心に構成すると他職種の専門的な視点が不足しやすい。

  2. ×b.  職種別に記録を作成する。

    職種ごとに別々の記録を作ると、他職種が何を観察し何を行ったかが見えにくくなり、情報共有の妨げとなる。チーム医療では、問題志向型システム(POS)に基づく共通の診療録(電子カルテなど)に各職種が記載し、患者の問題リストや経過を全員で把握できるようにするのが望ましい。

  3. ×c.  職種間で競争意識を持たせる。

    チーム医療は、共通の目標に向かって各職種が役割を分担し、互いの専門性を補い合う協働の仕組みである。職種間で競わせることは協力関係や情報の共有を損ない、患者の利益につながらないため不適切である。

  4. ○d.  患者情報は職種間で共有する。

    多職種が同じ目標に向かって協働するには、病状、治療方針、生活背景、患者・家族の意向などの情報をチーム全員が共有していることが前提となる。情報が共有されていないと、方針の食い違い、重複した処置、見落としなどが生じ、医療の質や安全性が低下する。カンファレンスや共通の診療録を通じて情報を共有することがチーム医療の基本である。なお、チーム内での共有は診療上必要な範囲で行い、チーム外への漏洩を防ぐ守秘義務は当然守られなければならない。

  5. ×e.  チームリーダーは医師に限る。

    リーダーは、チームの目的を達成するのに最もふさわしい人が担えばよく、医師に限定されない。例えば褥瘡対策や退院支援では看護師やMSWが、リハビリテーションでは療法士が中心的な役割を担うことがある。リーダーを明確に定めないで運営されるチームも少なくない。

チーム医療の定義と背景

チーム医療は、医療の高度化・複雑化や高齢化による患者ニーズの多様化を背景に推進されてきた。医療に従事する多種多様なスタッフが、各々の高い専門性を前提に、目的と情報を共有し、業務を分担しつつ互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した医療を提供するもの、と説明される。

チームが機能するための方法論

・共通の到達目標を設定する ・問題志向型システム(POS:problem-oriented system)を採用し、共通の問題リストに基づいて診療する。記録にはSOAP形式(S:主観的情報、O:客観的情報、A:評価、P:計画)が用いられる ・役割分担を明確にする ・カンファレンスや共通の記録で情報を共有する ・各段階で到達度を評価し、目標を再設定する ・状況に応じた適切なリーダーシップを発揮する 各メンバーが連携なしに独自の判断で動くと、かえって患者に害を及ぼしうる。

チーム医療の具体例

栄養サポートチーム(NST)、感染制御チーム(ICT)、緩和ケアチーム、呼吸ケアチーム、褥瘡対策チーム、精神科リエゾンチーム、認知症ケアチームなどがある。

患者の位置づけ

現在は、患者・家族も治療方針の決定に参加するチームの一員と考えられている(共同意思決定)。

POINT

・チーム医療は多職種が対等に連携し、目標と情報を共有して役割を分担・補完する医療である。 ・患者情報はチーム内で共有する(共通の記録、カンファレンス)。 ・特定の職種を主体にせず、リーダーも医師に限らない。 ・競争ではなく協働である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。