41週で1,950g―「早産児」ではなく「小さく生まれた正期産児」が抱えるリスク
第102回医師国家試験 A問題 第2問
国試問題にチャレンジ
在胎41週,1,950gで出生した新生児に合併しやすいのはどれか。
- a.低血糖症
- b.無呼吸発作
- c.動脈管開存症
- d.呼吸窮迫症候群
- e.一過性多呼吸症
対話形式の解説
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ドクターまとめ
新生児はまず在胎週数(早産・正期産・過期産)と出生体重で分類し、さらに在胎期間別の体格標準値と比べて評価します。在胎41週で1,950gの児は、未熟ではない正期産児でありながら週数のわりに小さいlight-for-dates児で、子宮内の栄養不足によりグリコーゲンや脂肪の蓄えが乏しく、脳のブドウ糖消費が相対的に大きいため低血糖症を起こしやすくなります。呼吸窮迫症候群、無呼吸発作、動脈管開存症は臓器の未熟性による早産児の合併症で、一過性多呼吸は肺水吸収遅延によるもので選択的帝王切開児に多く、いずれも本例では合併しやすいとはいえません。LFD児ではほかに多血症、低体温、低カルシウム血症、胎便吸引症候群にも注意が必要です。「小さい」と「未熟」を区別して考えることが、新生児の合併症を予測し出生直後の管理を組み立てる基本になります。
解答・解説
正解はaです
新生児の問題では、まず「在胎週数」と「出生体重」の2軸で児を分類し、それぞれに特徴的な合併症を思い浮かべるのが基本である。
在胎週数による分類
・早産児:在胎22週0日〜36週6日 ・正期産児:37週0日〜41週6日 ・過期産児:42週0日以降 本例は在胎41週なので正期産児である(過期産の一歩手前)。
出生体重による分類
・低出生体重児:2,500 g未満(極低出生体重児は1,500 g未満、超低出生体重児は1,000 g未満) 本例は1,950 gなので低出生体重児である。
在胎週数に対する体格の評価
在胎期間別出生時体格標準値と比べ、出生体重が10パーセンタイル未満であればlight-for-dates(LFD)児、体重と身長がともに10パーセンタイル未満であればsmall-for-gestational age(SGA)児と呼ぶ。正期産児の平均体重はおよそ3,000 g前後であり、41週で1,950 gというのは明らかに小さく、本例はLFD児(胎児発育不全の結果として生まれた児)と判断できる。
設問の考え方
本例は「正期産」なので、臓器の未熟性が原因となる疾患(肺サーファクタント不足による呼吸窮迫症候群、呼吸中枢の未熟による無呼吸発作、動脈管開存症)は起こりにくい。一方、「子宮内で栄養が不足していた小さな児」であることから、エネルギーの蓄え(肝グリコーゲン・体脂肪)が乏しいことによる問題、すなわち低血糖症が最も合併しやすい。早産児に特徴的な疾患と、LFD/SGA児に特徴的な疾患を区別できるかが問われている。
選択肢考察
- ○a. 低血糖症
正しい。胎児は妊娠後期に肝臓へグリコーゲンを、皮下へ脂肪を蓄え、出生後に母体からのブドウ糖供給が途絶えた時期をこの蓄えでしのぐ。子宮内で栄養不足に陥っていたLFD/SGA児はこの蓄えが少ないうえ、体重あたりの脳が相対的に大きく(脳はブドウ糖を大量に消費する)、糖新生の機能も未熟なため、出生後早期(特に生後数時間〜1日以内)に低血糖を起こしやすい。低血糖は無症状のことも多いが、振戦、易刺激性、哺乳不良、無呼吸、けいれんなどで気づかれることもあり、放置すると脳障害を残しうる。そのためLFD児では出生直後から血糖を繰り返し測定し、早期授乳やブドウ糖の投与で予防・治療する。新生児低血糖を起こしやすい児としては、LFD/SGA児のほか、糖尿病母体児(高インスリン血症による)、早産児・極低出生体重児(蓄えが少ない)、新生児仮死・低体温・感染症の児(消費が多い)を押さえておく。
- ×b. 無呼吸発作
誤り。ここでいう無呼吸発作(未熟児無呼吸発作)は、脳幹の呼吸中枢の未熟性によって20秒以上の呼吸停止や、徐脈・チアノーゼを伴う短い呼吸停止を繰り返すもので、在胎週数が短いほど多く、主に在胎34週未満の早産児にみられる。多くは生後2〜7日ごろに出現し、治療にはカフェインなどのメチルキサンチン製剤が用いられる。本例は在胎41週の正期産児で呼吸中枢は成熟していると考えられ、未熟性による無呼吸発作は起こりにくい。なお正期産児に無呼吸がみられた場合は、低血糖、感染症、けいれん、頭蓋内出血などの基礎疾患を考える。
- ×c. 動脈管開存症
誤り。動脈管は出生後の動脈血酸素分圧の上昇とプロスタグランジン濃度の低下により収縮し、成熟児では生後24〜72時間以内に機能的に閉鎖する。早産児では動脈管平滑筋が未熟で酸素に対する収縮反応が弱いため閉鎖しにくく、在胎週数が短いほど、また呼吸窮迫症候群を合併しているほど動脈管開存症が起こりやすい。本例は正期産児であり、未熟性による動脈管開存症は合併しやすいとはいえない。
- ×d. 呼吸窮迫症候群
誤り。呼吸窮迫症候群(RDS)は、肺胞のⅡ型肺胞上皮細胞が産生する肺サーファクタント(肺胞の表面張力を下げて虚脱を防ぐ物質)が不足し、肺胞が虚脱することで生じる。サーファクタントの産生は妊娠34週ごろまでに十分となるため、RDSは在胎週数が短いほど多く、特に在胎32週未満の早産児で頻度が高い。本例は41週の正期産児で肺は成熟していると考えられる。むしろ子宮内で慢性的なストレスにさらされた胎児発育不全児では、内因性ステロイドの影響で肺成熟が促進されることもあるとされる。RDSを起こしやすい児としては、早産児のほか、糖尿病母体児(高インスリン血症がサーファクタント産生を抑える)を覚えておく。
- ×e. 一過性多呼吸症
誤り。新生児一過性多呼吸は、胎児期に肺を満たしていた肺水(肺胞液)の吸収・排出が遅れることにより、出生直後から多呼吸を呈する疾患で、通常は数日以内に自然軽快する。経腟分娩では陣痛のストレスで分泌されるカテコラミンや産道での胸郭圧迫が肺水の除去を助けるため、陣痛を経ない選択的帝王切開で生まれた児、急速遂娩の児、後期早産児などに多い。LFD児であることは特に危険因子ではなく、本例で合併しやすいものとして選ぶ根拠はない。
新生児の分類(在胎週数・体重・体格)
・在胎週数:早産児(22週0日〜36週6日)、正期産児(37週0日〜41週6日)、過期産児(42週0日以降)。 ・出生体重:低出生体重児(2,500 g未満)、極低出生体重児(1,500 g未満)、超低出生体重児(1,000 g未満)、巨大児(4,000 g以上)。 ・体格:在胎期間別出生時体格標準値と比較し、体重が10パーセンタイル未満はlight-for-dates(LFD)、体重・身長ともに10パーセンタイル未満はsmall-for-gestational age(SGA)、90パーセンタイルを超えるものはheavy-for-dates/large-for-gestational age(LGA)とする。
胎児発育不全(FGR)の原因
・母体因子:妊娠高血圧症候群、喫煙、低栄養、慢性疾患(腎疾患、膠原病など)。 ・胎盤・臍帯因子:胎盤機能不全、臍帯付着異常。 ・胎児因子:染色体異常(18トリソミーなど)、先天性感染症(サイトメガロウイルスなど)、多胎。 胎盤機能不全による型では、脳への血流が優先されるため頭囲は比較的保たれ体重が減る「非対称性」となりやすい。一方、染色体異常や感染症など妊娠早期からの原因では頭も体も小さい「対称性」となりやすい。
LFD/SGA児に起こりやすい問題
・低血糖症:グリコーゲン・脂肪の蓄えが少なく、脳の相対的な消費が大きい。 ・多血症:子宮内の慢性低酸素によりエリスロポエチンが増え、赤血球が増加する。過粘稠度症候群や高ビリルビン血症の原因となる。 ・低体温:皮下脂肪が少なく熱を失いやすい。 ・低カルシウム血症。 ・新生児仮死、胎便吸引症候群、新生児遷延性肺高血圧症:子宮内低酸素や分娩時ストレスによる(過期産に近い本例では胎便吸引症候群も注意すべき合併症である)。
早産児に起こりやすい問題(未熟性による)
呼吸窮迫症候群、未熟児無呼吸発作、動脈管開存症、脳室内出血、脳室周囲白質軟化症、未熟児網膜症、壊死性腸炎、慢性肺疾患など。
POINT
・在胎41週は正期産、1,950 gは低出生体重児。週数のわりに小さい→LFD(SGA)児。 ・LFD/SGA児の合併症:低血糖症、多血症、低体温、低カルシウム血症、新生児仮死・胎便吸引症候群。 ・早産児(未熟性)の合併症:呼吸窮迫症候群、無呼吸発作、動脈管開存症、脳室内出血、未熟児網膜症など。正期産児では起こりにくい。 ・一過性多呼吸は肺水吸収遅延によるもので、選択的帝王切開児に多い。 ・新生児低血糖のハイリスク児:LFD/SGA児、糖尿病母体児、早産児、仮死・低体温・感染症の児。
