血管の「太さ」で症状が読める―血管炎の組合せ問題を一網打尽
第101回医師国家試験 F問題 第69問
国試問題にチャレンジ
疾患と症候の組合せで正しいのはどれか。
- a.結節性多発動脈炎 ―― 黄疸
- b.Behçet病 ―― 結節性紅斑
- c.多発血管炎性肉芽腫症〈Wegener肉芽腫症〉 ―― 点状出血
- d.高安動脈炎〈大動脈炎症候群〉 ―― 紫斑
- e.過敏性血管炎 ―― 血圧の左右差
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
血管炎はChapel Hill分類に基づき、侵される血管の太さで整理すると症候を理解しやすくなります。大型血管炎の高安動脈炎では脈拍の減弱や血圧の左右差、中型血管炎の結節性多発動脈炎では腎梗塞・多発単神経炎・皮下結節、小型血管炎のIgA血管炎や皮膚白血球破砕性血管炎(旧称:過敏性血管炎)では触知可能な紫斑が特徴で、多発血管炎性肉芽腫症は上気道・肺・腎の病変(ELK)とPR3-ANCAが代表的です。Behçet病は多様な太さの血管を侵す血管炎で、口腔内アフタ、結節性紅斑様皮疹などの皮膚症状、外陰部潰瘍、眼症状を4主症状とし、針反応やHLA-B51との関連も知られています。結節性紅斑はサルコイドーシスやCrohn病などでも生じるため、背景疾患の検索が重要です。「血管の太さ→症候」という考え方を身につければ、組合せ問題にも臨床での鑑別にも応用できます。
解答・解説
正解はbです
血管炎を中心とした膠原病類縁疾患と、その特徴的な症候の対応を問う問題である。 血管炎は、障害される血管の太さによって分類すると整理しやすい(Chapel Hill分類、2012年改訂)。 ・大型血管炎:大動脈とその主要分枝が侵される(高安動脈炎、巨細胞性動脈炎)。血管の狭窄・閉塞による脈拍の減弱や血圧の左右差、血管雑音が特徴である。 ・中型血管炎:臓器に向かう中等大の動脈が侵される(結節性多発動脈炎、川崎病)。動脈瘤や梗塞による臓器障害、皮下結節、多発単神経炎などが出る。 ・小型血管炎:細動脈・毛細血管・細静脈が侵される(ANCA関連血管炎、IgA血管炎、皮膚白血球破砕性血管炎など)。皮膚では触知可能な紫斑(palpable purpura)や点状出血が典型的である。 Behçet病はChapel Hill分類で「さまざまな太さの血管を侵す血管炎(variable vessel vasculitis)」に位置づけられ、口腔内アフタ、皮膚症状(結節性紅斑、毛嚢炎様皮疹)、外陰部潰瘍、眼症状(ぶどう膜炎)を4主症状とする。 この枠組みで各組合せを確認すると、血圧の左右差は大型血管炎の高安動脈炎、紫斑・点状出血は小型血管炎の症候であり、選択肢c〜eでは疾患と症候が入れ替わっている。疾患と症候が正しく対応しているのは、Behçet病と結節性紅斑の組合せである。
選択肢考察
- ×a. 結節性多発動脈炎 ―― 黄疸
結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa:PAN)は中型動脈の壊死性血管炎で、発熱・体重減少などの全身症状に加え、腎梗塞・腎血管性高血圧、多発単神経炎、皮下結節・網状皮斑、腹部臓器の虚血(腸間膜動脈病変による腹痛)、精巣痛などをきたす。肝動脈に病変が及ぶこともあるが、黄疸は代表的な症候ではなく、まれである。なお、B型肝炎ウイルス感染に関連したPANが知られているが、これも黄疸を特徴とするものではない。
- ○b. Behçet病 ―― 結節性紅斑
Behçet病の皮膚症状の代表は、下腿などに生じる圧痛を伴う皮下の紅斑(結節性紅斑様皮疹)と、毛嚢炎様皮疹(痤瘡様皮疹)である。皮膚症状は口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍、外陰部潰瘍、眼症状とともに4主症状の一つに数えられる。このほか、針を刺した部位に膿疱ができる針反応や、表在性血栓性静脈炎もみられる。したがってこの組合せは正しい。
- ×c. 多発血管炎性肉芽腫症〈Wegener肉芽腫症〉 ―― 点状出血
多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis:GPA)は、PR3-ANCA(プロテイナーゼ3に対する抗好中球細胞質抗体)と関連する小型血管炎で、上気道(E:鼻・副鼻腔・中耳の壊死性肉芽腫性炎、鞍鼻)、肺(L:結節・空洞)、腎(K:壊死性半月体形成性糸球体腎炎)の3領域の病変(ELK)が特徴である。経過中に紫斑などの皮膚病変がみられることはあるが、初発時の頻度は1割前後と低く、代表的な症候とはいえない。点状出血・紫斑を代表的症候とするのはIgA血管炎(Schönlein-Henoch紫斑病)などである。旧称のWegener肉芽腫症は、国際会議(2012年Chapel Hill会議)で現在の病名に改められた。
- ×d. 高安動脈炎〈大動脈炎症候群〉 ―― 紫斑
高安動脈炎は若年女性に多い大型血管炎で、大動脈弓とその分枝(鎖骨下動脈、頸動脈など)の狭窄・閉塞により、上肢の脈拍減弱・消失(脈なし病)、血圧の左右差、頸部の血管雑音、めまい・失神、上肢の易疲労感などをきたす。大動脈弁閉鎖不全症や大動脈瘤を合併することもある。紫斑は細い血管が侵される小型血管炎の症候であり、高安動脈炎の特徴ではない。
- ×e. 過敏性血管炎 ―― 血圧の左右差
過敏性血管炎は、薬剤や感染症などに対する過敏反応として起こる小型血管炎で、現在の分類では皮膚白血球破砕性血管炎(cutaneous leukocytoclastic angiitis)にあたる。主に下肢の触知可能な紫斑として現れ、病変は皮膚の細小血管に限られることが多い。大血管の狭窄を起こさないため、血圧の左右差は生じない。血圧の左右差は高安動脈炎の特徴的な所見である。
Chapel Hill分類(2012年)による主な血管炎
・大型血管炎:高安動脈炎、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎) ・中型血管炎:結節性多発動脈炎、川崎病 ・小型血管炎 ANCA関連:顕微鏡的多発血管炎(MPO-ANCA)、多発血管炎性肉芽腫症(PR3-ANCA)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(旧Churg-Strauss症候群) 免疫複合体性:IgA血管炎(旧Schönlein-Henoch紫斑病)、クリオグロブリン血症性血管炎、抗GBM病など ・多様な血管を侵す血管炎:Behçet病、Cogan症候群 ・単一臓器の血管炎:皮膚白血球破砕性血管炎(旧称の過敏性血管炎を含む)など
Behçet病の診断に用いる症状(厚生労働省基準)
主症状:①口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍、②皮膚症状(結節性紅斑様皮疹、皮下の血栓性静脈炎、毛嚢炎様皮疹・痤瘡様皮疹)、③眼症状(虹彩毛様体炎、網膜ぶどう膜炎)、④外陰部潰瘍 副症状:関節炎、副睾丸炎、消化器病変(回盲部潰瘍)、血管病変、中枢神経病変 特殊病型:腸管型、血管型、神経型 検査では針反応陽性、HLA-B51との関連がよく知られる。
結節性紅斑を生じる代表的な病態
Behçet病、サルコイドーシス、炎症性腸疾患(特にCrohn病)、溶連菌感染症、結核、薬剤など。
症候から疾患を想起するコツ
血圧の左右差・脈拍消失→高安動脈炎 触知可能な紫斑→小型血管炎(IgA血管炎、ANCA関連血管炎、皮膚白血球破砕性血管炎) 多発単神経炎・皮下結節・腎梗塞→結節性多発動脈炎 鞍鼻・肺空洞・腎炎→多発血管炎性肉芽腫症
POINT
・Behçet病の皮膚症状は結節性紅斑(様皮疹)と毛嚢炎様皮疹が代表で、4主症状の一つである。 ・血圧の左右差・脈なしは大型血管炎である高安動脈炎の特徴である。 ・紫斑・点状出血は小型血管炎(IgA血管炎、皮膚白血球破砕性血管炎など)の特徴である。 ・血管炎は侵される血管の太さで分類して症候を整理する。 ・旧称:Wegener肉芽腫症→多発血管炎性肉芽腫症、Schönlein-Henoch紫斑病→IgA血管炎、過敏性血管炎→皮膚白血球破砕性血管炎。
