StudyMed医師国家試験

湿疹と出血と感染症―小さな血小板が教えるWiskott-Aldrich症候群

第101回医師国家試験 F問題 第67問

国試問題にチャレンジ

第101回 F問題 第67問

血小板数が減少するのはどれか。

  1. a.毛細血管拡張性失調症〈ataxia telangiectasia〉
  2. b.Bruton型無ガンマグロブリン血症
  3. c.DiGeorge症候群
  4. d.高IgM血症
  5. e.Wiskott-Aldrich症候群

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は原発性免疫不全症の中から、血小板減少を特徴とするものを選ぶ問題だ。免疫不全症は名前だけ並べると混乱しやすいけれど、どの免疫が障害されるかと、免疫以外の随伴症状をセットで覚えると整理しやすい。まずは選択肢を、障害される部位で分けてみようか。
医学生医学生
Bruton型無ガンマグロブリン血症と高IgM血症は抗体、つまりB細胞側の異常で、DiGeorge症候群はT細胞の異常だったと思います。
ドクタードクター
いいね。残りの毛細血管拡張性失調症とWiskott-Aldrich症候群は、T細胞とB細胞の両方にかかわる複合免疫不全に分類される。ここで大事なのは、どの病気にも免疫不全以外の目印があるということなんだ。
医学生医学生
血小板が減るとなると、出血症状が目立つ病気ですよね。小児科の講義で、湿疹と血小板減少がセットの病気があると習いました。
ドクタードクター
それがまさに答えのWiskott-Aldrich症候群だ。X染色体上のWASP遺伝子の変異によるX連鎖劣性遺伝の病気で、男児に発症する。血小板減少、湿疹、易感染性の三主徴が有名で、出生早期から血便や点状出血、紫斑で気づかれることが多い。
医学生医学生
WASPというのはどんな働きをしている蛋白なんですか。
ドクタードクター
血液細胞でアクチン細胞骨格の再構成にかかわる蛋白だ。これが欠けると血小板は小型になり、数も減る。平均血小板容積が小さいのが特徴で、大型血小板がみられる特発性血小板減少性紫斑病との鑑別点になるんだ。
医学生医学生
血小板減少というと大きい血小板のイメージだったので、小型というのは意外です。
ドクタードクター
そこが試験でも臨床でも大事なポイントだよ。免疫面では、IgMが低く、IgAとIgEが高くなりやすい。多糖体抗原への抗体産生が弱いため、肺炎球菌のような莢膜をもつ細菌に感染しやすい。では他の選択肢も確認しよう。毛細血管拡張性失調症の特徴は何だろう。
医学生医学生
名前の通り、小脳失調と毛細血管拡張ですね。神経内科の講義でAFPが高いと聞いて驚いた記憶があります。
ドクタードクター
よく覚えているね。ATM遺伝子の異常による常染色体劣性遺伝の病気で、DNA損傷応答がうまく働かない。だから放射線に高感受性で、リンパ腫や白血病などの悪性腫瘍を合併しやすい。IgAなどの低下で副鼻腔炎や肺炎を繰り返すけれど、血小板減少は特徴ではない。
医学生医学生
Bruton型無ガンマグロブリン血症は、生後半年くらいから細菌感染を繰り返す病気でしたよね。
ドクタードクター
その通り。BTKの異常で成熟B細胞がほとんどいなくなり、すべてのクラスの免疫グロブリンが著しく減る。母親からもらったIgGが減ってくる生後6か月ころ以降に、肺炎球菌やインフルエンザ菌などの化膿性細菌感染を繰り返す。扁桃やリンパ節が小さいのも特徴で、治療は免疫グロブリン補充が中心だ。
医学生医学生
DiGeorge症候群は胸腺と副甲状腺の低形成で、低カルシウム血症によるけいれんと心奇形でしたっけ。
ドクタードクター
正解。多くは22q11.2の微細欠失で、第3・第4咽頭囊の発生異常によって胸腺と副甲状腺が低形成になる。Fallot四徴症などの円錐動脈幹異常や口蓋裂を伴うことも多い。血小板の軽い異常が報告されることはあるけれど、典型的な特徴とは言えない。
医学生医学生
高IgM血症は、IgMだけが作られてIgGやIgAに切り替えられない病気ですよね。
ドクタードクター
そう、クラススイッチの障害だ。最も多いのはX連鎖性のCD40リガンド欠損で、T細胞からB細胞への刺激が伝わらない。細菌感染に加え、ニューモシスチス肺炎やクリプトスポリジウムによる下痢などの日和見感染を起こしやすい。好中球減少を伴うことはあるが、血小板減少は特徴ではないね。
医学生医学生
随伴症状で覚えると、それぞれがはっきり区別できますね。
ドクタードクター
その通り。最後に臨床面の注意点だ。Wiskott-Aldrich症候群は自己免疫疾患や悪性リンパ腫の合併が多く、根治療法は造血幹細胞移植になる。男児で乳児期から湿疹、血便や紫斑などの出血傾向、感染の反復がそろったら本症を疑い、血小板の大きさを確認しよう。また、WASP異常の軽症型で血小板減少だけを示すものはX連鎖血小板減少症と呼ばれ、ITPと誤診されることもあるので注意したい。
医学生医学生
小さい血小板の男の子を見たら、ITPと決めつけずに一度立ち止まる、ということですね。
ドクタードクター
その姿勢が大切だ。血球の形や大きさは、診断のヒントを静かに語っていることが多いんだよ。

まとめ

原発性免疫不全症は、障害される免疫系と免疫以外の随伴症状を組み合わせて整理すると鑑別しやすくなります。血小板減少を特徴とするのはWiskott-Aldrich症候群で、WASP遺伝子異常によるX連鎖劣性遺伝の疾患として、小型血小板を伴う血小板減少・湿疹・易感染性の三主徴を示し、IgM低下とIgA・IgE上昇がみられます。毛細血管拡張性失調症は小脳失調・毛細血管拡張・AFP高値、DiGeorge症候群は低カルシウム血症・心奇形・胸腺低形成、Bruton型無ガンマグロブリン血症はB細胞欠如による全免疫グロブリン低下、高IgM症候群はクラススイッチ障害が目印です。Wiskott-Aldrich症候群は自己免疫疾患や悪性リンパ腫を合併しやすく、根治療法は造血幹細胞移植です。小型血小板という所見はITPとの鑑別にも直結するため、血小板数だけでなく大きさにも目を向ける習慣が臨床で役立ちます。

解答・解説

正解はeです

本問は、代表的な原発性免疫不全症(先天性免疫異常症)のうち、血小板減少を主要な特徴とするものを問う問題である。原発性免疫不全症は、障害される免疫系の部位によって整理すると覚えやすい。 ・主に抗体(B細胞)の異常:Bruton型無ガンマグロブリン血症、高IgM症候群など → 細菌感染(肺炎球菌、インフルエンザ菌など)を反復 ・細胞性免疫(T細胞)の異常:DiGeorge症候群など → ウイルス・真菌・ニューモシスチスなどの日和見感染 ・複合免疫不全(T細胞とB細胞の両方):重症複合免疫不全症、Wiskott-Aldrich症候群、毛細血管拡張性失調症など それぞれの疾患は、免疫不全以外の「随伴症状」が診断の手がかりになる。毛細血管拡張性失調症なら小脳失調と毛細血管拡張、DiGeorge症候群なら低カルシウム血症と心奇形、Wiskott-Aldrich症候群なら湿疹と血小板減少である。 Wiskott-Aldrich症候群は、X染色体上のWASP遺伝子の変異による X連鎖劣性遺伝の疾患で、男児に発症する。「血小板減少(小型血小板を伴う)・湿疹・易感染性」が三主徴であり、出生早期から血便、点状出血、紫斑などの出血症状で気づかれることが多い。したがって血小板数が減少するのはWiskott-Aldrich症候群である。

選択肢考察

  1. ×a.  毛細血管拡張性失調症〈ataxia telangiectasia〉

    毛細血管拡張性失調症は、DNA損傷応答にかかわるATM遺伝子の異常による常染色体劣性遺伝の疾患である。幼児期から歩行時にふらつく進行性の小脳失調と、眼球結膜・耳介・顔面などの毛細血管拡張が特徴であり、IgA・IgG2・IgEの低下やT細胞機能低下による副鼻腔炎・肺炎の反復を伴う。血清α-フェトプロテイン(AFP)高値、放射線高感受性、リンパ腫・白血病などの悪性腫瘍の合併も重要である。血小板減少は本症の特徴ではない。

  2. ×b.  Bruton型無ガンマグロブリン血症

    Bruton型(X連鎖)無ガンマグロブリン血症は、B細胞の分化に必要なBTK(Bruton型チロシンキナーゼ)の遺伝子変異により、成熟B細胞がほとんど欠如し、すべてのクラスの免疫グロブリンが著減する X連鎖劣性遺伝の疾患である。母体からの移行IgGが減少する生後6か月ころ以降に、肺炎球菌やインフルエンザ菌などによる化膿性細菌感染を反復する。扁桃やリンパ節が小さいことも特徴である。免疫グロブリン補充療法が治療の中心となる。血小板減少は通常みられない。

  3. ×c.  DiGeorge症候群

    DiGeorge症候群は、多くが染色体22q11.2の微細欠失による疾患で、胎生期の第3・第4咽頭囊の発生異常によって胸腺低形成(T細胞減少による細胞性免疫不全)と副甲状腺低形成(低カルシウム血症によるテタニー・けいれん)を来す。さらに円錐動脈幹異常(Fallot四徴症、総動脈幹症、大動脈弓離断など)、特徴的顔貌、口蓋裂なども伴う。血小板減少は本症の典型的な特徴ではない。

  4. ×d.  高IgM血症

    高IgM症候群は、B細胞がIgMからIgG・IgA・IgEへクラススイッチできないため、IgMが正常〜高値でIgG・IgAが著減する疾患である。最も多いのはX連鎖性のCD40リガンド(CD154)欠損症で、T細胞からB細胞への刺激が伝わらないことが原因である。細菌感染の反復に加え、ニューモシスチス肺炎やクリプトスポリジウムによる下痢・胆管炎などの日和見感染を起こしやすい。好中球減少を伴うことはあるが、血小板減少は本症の特徴ではない。

  5. ○e.  Wiskott-Aldrich症候群

    Wiskott-Aldrich症候群はWASP遺伝子変異による X連鎖劣性遺伝の複合免疫不全症で、「血小板減少・湿疹・易感染性」を三主徴とする。WASPは血液細胞の細胞骨格(アクチン)の再構成にかかわる蛋白であり、その欠損で血小板は小型化して数も減る(平均血小板容積の低下が特徴で、大型血小板を示す特発性血小板減少性紫斑病との鑑別点になる)。免疫面ではIgM低値、IgA・IgE高値となりやすく、多糖体抗原に対する抗体産生が不良なため肺炎球菌などの莢膜をもつ細菌に感染しやすい。自己免疫疾患や悪性リンパ腫の合併も多い。根治療法は造血幹細胞移植である。

主な原発性免疫不全症の整理

・Bruton型無ガンマグロブリン血症:BTK異常、X連鎖劣性。B細胞欠如、全Ig低下。生後6か月以降の化膿菌感染反復。 ・高IgM症候群:CD40L異常(X連鎖)が最多。IgM正常〜高値、IgG・IgA低下。ニューモシスチス肺炎、クリプトスポリジウム感染。 ・DiGeorge症候群:22q11.2欠失。胸腺低形成(T細胞低下)、副甲状腺低形成(低Ca血症)、円錐動脈幹異常。 ・Wiskott-Aldrich症候群:WASP異常、X連鎖劣性。血小板減少(小型血小板)・湿疹・易感染性。IgM低下、IgA・IgE上昇。 ・毛細血管拡張性失調症:ATM異常、常染色体劣性。小脳失調、毛細血管拡張、IgA低下、AFP高値、悪性腫瘍合併、放射線高感受性。 ・重症複合免疫不全症(SCID):T細胞欠如(病型によりB・NK細胞も欠如)。乳児期早期からの重症感染。X連鎖型(IL-2受容体共通γ鎖異常)、ADA欠損症など。 ・慢性肉芽腫症:NADPHオキシダーゼ異常による食細胞の殺菌能障害。カタラーゼ陽性菌(黄色ブドウ球菌など)・真菌感染。

小児の血小板減少と免疫不全

男児で乳児期から湿疹と出血傾向(血便・紫斑)、感染症の反復がみられたらWiskott-Aldrich症候群を疑い、血小板の大きさ(小型)を確認する。なおWASP異常のうち軽症型で血小板減少のみを呈するものはX連鎖血小板減少症(XLT)と呼ばれる。

POINT

・Wiskott-Aldrich症候群の三主徴:血小板減少(小型血小板)・湿疹・易感染性。X連鎖劣性、WASP異常。 ・IgM低下、IgA・IgE上昇。根治は造血幹細胞移植。 ・随伴症状で覚える:毛細血管拡張性失調症=小脳失調+毛細血管拡張+AFP高値、DiGeorge症候群=低Ca血症+心奇形+胸腺低形成、Bruton型=B細胞欠如、高IgM症候群=クラススイッチ障害。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。