本数か、形か―猫鳴き症候群で学ぶ染色体の「構造異常」
第101回医師国家試験 F問題 第6問
国試問題にチャレンジ
染色体の構造異常がみられるのはどれか。
- a.Down症候群
- b.猫鳴き症候群
- c.Marfan症候群
- d.Turner症候群
- e.Klinefelter症候群
対話形式の解説
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ドクターまとめ
染色体異常は、本数が増減する数的異常と、欠失・重複・逆位・転座・環状染色体・同腕染色体などの構造異常に分けられます。猫鳴き症候群は5番染色体短腕の部分欠失(5p−)による構造異常の代表で、子猫のような甲高い泣き声、小頭症、重度の知的障害などを示します。Down症候群(21トリソミー)、Turner症候群(45,X)、Klinefelter症候群(47,XXY)は典型的には数的異常であり、Marfan症候群はFBN1遺伝子変異による単一遺伝子疾患で染色体検査では異常を認めません。微細欠失症候群のように検出にFISH法やマイクロアレイが必要な異常もあり、異常の種類と検査法を対応づけて理解することは、遺伝カウンセリングや適切な検査選択の基礎になります。
解答・解説
正解はbです
遺伝性・先天性疾患の原因は、大きく「染色体異常」「単一遺伝子の異常(Mendel遺伝病)」「多因子遺伝」などに分けられる。さらに染色体異常は、次の2つに分類される。 ・数的異常:染色体の本数が正常(46本)から増減するもの。トリソミー(1本多い)やモノソミー(1本少ない)が代表で、主に減数分裂時の染色体不分離によって生じる。 ・構造異常:本数は変わらないか、あるいは変わっても本質は染色体の一部の形の変化にあるもの。欠失、重複、逆位、転座、環状染色体、同腕染色体などがある。 本問では各疾患の代表的な核型を思い出し、それが「数」の異常か「構造」の異常か、そもそも染色体検査でわかる異常なのかを判別すればよい。Down症候群・Turner症候群・Klinefelter症候群は典型的には数的異常、Marfan症候群は単一遺伝子の変異であり、5番染色体短腕の部分欠失で起こる猫鳴き症候群だけが構造異常に該当する。
選択肢考察
- ×a. Down症候群
誤り。Down症候群の大部分(約95%)は21番染色体が3本ある標準型21トリソミー(47,XX,+21または47,XY,+21)であり、染色体の数的異常である。母体年齢が高いほど頻度が増す。なお、約4%は21番染色体が他の端部着糸型染色体(14番など)と融合したRobertson転座型、約1%はモザイク型であり、転座型は構造異常を伴うが、Down症候群の代表的な異常として問われるのは数的異常のトリソミーである。
- ○b. 猫鳴き症候群
正解。猫鳴き症候群(cri-du-chat症候群、5p−症候群)は5番染色体短腕(5p)の一部が失われる部分欠失によって起こり、染色体の構造異常の代表である。乳児期の子猫の鳴き声に似た甲高い泣き声(喉頭の形態異常による)が名称の由来で、ほかに小頭症、丸い顔、眼間開離、重度の知的障害などを示す。多くは新生の欠失だが、一部は親の均衡型転座に由来する。
- ×c. Marfan症候群
誤り。Marfan症候群は15番染色体上にあるフィブリリン1遺伝子(FBN1)の変異による常染色体顕性(優性)遺伝の結合組織疾患であり、単一遺伝子疾患である。通常の染色体検査(G分染法)では異常は検出されない。高身長・長い四肢とクモ状指、水晶体偏位、大動脈基部拡張や大動脈解離などが特徴である。
- ×d. Turner症候群
誤り。Turner症候群の代表的な核型は45,X(X染色体が1本しかないモノソミー)であり、数的異常である。低身長、翼状頸、外反肘、原発性無月経を伴う性腺異形成、大動脈縮窄症などを呈する。なお、同腕X染色体(Xq同腕染色体)、環状X染色体、X短腕の欠失といった構造異常やモザイクによるものも一部に存在するが、最も典型的な異常は45,Xのモノソミーである。
- ×e. Klinefelter症候群
誤り。Klinefelter症候群の代表的な核型は47,XXY(X染色体が1本多い)であり、数的異常である。男性の外見で、小さく硬い精巣、無精子症による男性不妊、女性化乳房、高身長などを示し、ゴナドトロピン(LH・FSH)が高値となる原発性性腺機能低下症をきたす。
染色体異常の分類と代表疾患
数的異常 ・常染色体トリソミー:21トリソミー(Down症候群)、18トリソミー(Edwards症候群)、13トリソミー(Patau症候群) ・性染色体異常:45,X(Turner症候群)、47,XXY(Klinefelter症候群)、47,XXX、47,XYY 構造異常 ・欠失:5p−(猫鳴き症候群)、4p−(Wolf-Hirschhorn症候群) ・微細欠失(通常の分染法では見えにくく、FISH法やマイクロアレイ染色体検査で診断):22q11.2欠失症候群、7q11.23欠失(Williams症候群)、15q11-q13欠失(父由来ならPrader-Willi症候群、母由来ならAngelman症候群) ・転座:Robertson転座(転座型Down症候群)、相互転座、フィラデルフィア染色体t(9;22)(慢性骨髄性白血病。後天性の体細胞の構造異常) ・そのほか:逆位、環状染色体、同腕染色体
単一遺伝子疾患との区別
Marfan症候群(FBN1)、神経線維腫症1型(NF1)、筋強直性ジストロフィーなどは遺伝子レベルの変異であり、核型は正常である。
POINT
・猫鳴き症候群=5番染色体短腕の欠失(5p−)で、構造異常の代表。 ・Down症候群(21トリソミー)、Turner症候群(45,X)、Klinefelter症候群(47,XXY)は典型的には数的異常。 ・Marfan症候群はFBN1遺伝子変異による常染色体顕性遺伝の単一遺伝子疾患で、染色体異常ではない。 ・構造異常:欠失・重複・逆位・転座・環状染色体・同腕染色体。
