StudyMed医師国家試験

うなずくように、何度も―乳児の「シリーズ」で気づくWest症候群

第101回医師国家試験 F問題 第59問

国試問題にチャレンジ

第101回 F問題 第59問

West症候群〈点頭てんかん〉について正しいのはどれか。

  1. a.生後3か月以内に好発する。
  2. b.発作は発熱時に多い。
  3. c.発作は群発する。
  4. d.脳波で3Hz棘徐波を認める。
  5. e.精神発達は正常である。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は乳児期の代表的なてんかん性脳症、West症候群の特徴を問う問題だ。好発年齢、発作の出方、脳波、発達予後という4つの軸で、ほかのてんかんや熱性けいれんと混同していないかが試されているよ。まず、West症候群と聞いて何を思い浮かべるかな。
医学生医学生
点頭てんかんという別名なので、うなずくような発作ですよね。小児科の講義で三主徴を習った記憶があります。
ドクタードクター
そう、三主徴は「てんかん性スパズム」「脳波のヒプスアリスミア」「精神運動発達の停止・退行」だ。スパズムは頭を前に倒し、両腕を挙げて曲げ、体幹も前屈する1〜2秒程度の短い発作。うなずくように見えるから点頭と呼ばれるんだ。
医学生医学生
1〜2秒だと、見逃されそうですね。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。だからこそ大事なのが発作の「出方」だ。スパズムは1回で終わることは少なく、数秒〜十数秒おきに何回も、時に数十回連続して起こる。これをシリーズ形成、つまり群発という。この問題の正解はまさにここだ。
医学生医学生
なるほど、1回だけなら泣いたりびっくりしたりしただけに見えても、繰り返すと異常だとわかるんですね。
ドクタードクター
その通り。実際、保護者が発作と気づかず受診が遅れることもある。入眠時や寝起きなど、睡眠と覚醒の移行期に出やすいのも特徴だよ。では好発年齢はどうだろう。生後3か月以内という記載は正しいかな。
医学生医学生
乳児期なのは確かですが……3か月以内だとかなり早い気がします。
ドクタードクター
正しい感覚だ。多くは1歳未満、ピークは生後4〜7か月ころだから、3か月以内では早すぎる。新生児期から生後3か月以内に発症するてんかん性脳症としては大田原症候群があり、脳波はサプレッション・バーストを示す。大田原症候群がWest症候群に移行することもあるんだ。
医学生医学生
発熱時に多いというのは、熱性けいれんと混ざっていそうですね。
ドクタードクター
よく整理できているね。West症候群のスパズムは発熱とは関係なく起こる。発熱に伴うのは熱性けいれんで、生後6か月〜5歳ころの38℃以上の発熱に伴う発作だ。発熱や入浴で誘発されやすいてんかんとしてはDravet症候群もあるけれど、これも別物だよ。
医学生医学生
3Hz棘徐波はCBTの問題で何度も見ました。欠神てんかんですよね。
ドクタードクター
正解。3Hz棘徐波複合は学童期に多い小児欠神てんかんの所見で、過呼吸で誘発される数秒〜十数秒の意識消失発作が特徴だ。West症候群の発作間欠期脳波はヒプスアリスミアで、高振幅の徐波と棘波・鋭波が場所も時間もばらばらに混在する、まさに「無秩序」な波形なんだ。
医学生医学生
精神発達は正常、というのも三主徴の一つに反しますね。
ドクタードクター
そう。発症を境に笑わなくなる、追視しなくなる、首のすわりが失われるといった退行がみられる。背景に周産期の低酸素性虚血性脳症、脳形成異常、結節性硬化症、Down症候群、先天代謝異常などの器質的な脳障害をもつ例が多く、長期的にも知的障害を残すことが多い。
医学生医学生
原因がはっきりしない例なら、予後はもう少しよいこともあるんですか。
ドクタードクター
原因不明で早期に治療が効いた例では、発達予後が比較的よいこともある。だから早期診断・早期治療が大切なんだ。治療ではACTH療法が最も有効なものの一つで、ビタミンB6大量療法やバルプロ酸、ゾニサミドなども用いられる。結節性硬化症に伴う例ではビガバトリンが有効だよ。
医学生医学生
小児科実習で、ACTH療法中の赤ちゃんの血圧や感染に気をつけていると聞きました。
ドクタードクター
大事な視点だね。ACTHは高血圧、感染症、電解質異常などの副作用に注意しながら使う。最後に年齢依存性てんかん性脳症の流れを押さえよう。大田原症候群のサプレッション・バースト、West症候群のヒプスアリスミア、幼児期のLennox-Gastaut症候群の遅棘徐波と、年齢とともに病像が移り変わることがある。脳波所見と年齢をセットで覚えると、鑑別問題に強くなるよ。
医学生医学生
年齢、発作の出方、脳波、発達の4点で、ほかの疾患と並べて覚えるようにします。

まとめ

West症候群(点頭てんかん)は、多くが1歳未満(ピーク生後4〜7か月ころ)に発症する乳児期のてんかん性脳症で、てんかん性スパズムのシリーズ形成(群発)、脳波のヒプスアリスミア、精神運動発達の停止・退行を三主徴とします。発作は発熱とは無関係に、入眠時や覚醒直後に数秒〜十数秒おきに繰り返して起こり、一回ごとは短いため見逃されやすい点に注意が必要です。3Hz棘徐波は小児欠神てんかん、発熱時の発作は熱性けいれん、生後3か月以内発症でサプレッション・バーストを示すのは大田原症候群であり、混同しないことが重要です。器質的脳障害を背景にもつ例が多く知的障害を残しやすいため、ACTH療法などによる早期治療が求められます。年齢と脳波所見を組み合わせて小児てんかんを整理しておくことは、国試の鑑別問題だけでなく、乳児の「ちょっとした動き」を見逃さない臨床の目を養うことにつながります。

解答・解説

正解はcです

West症候群(点頭てんかん)は乳児期に発症する代表的なてんかん性脳症である。次の三主徴で定義される。 ・てんかん性スパズム: 頭部を前屈し(うなずくように見えるため「点頭」と呼ばれる)、両上肢を挙上・屈曲、体幹を前屈させる短い(1〜2秒程度)発作。これが数秒〜十数秒おきに何回も繰り返される(シリーズ形成)。 ・脳波のヒプスアリスミア(hypsarrhythmia): 高振幅の徐波と棘波・鋭波が部位も時間も無秩序に混在する発作間欠期脳波。 ・精神運動発達の停止・退行。 本問では、これらの特徴(好発年齢、発作の出方、脳波所見、発達予後)を他のてんかん・けいれん性疾患と取り違えないことが問われている。3Hz棘徐波は小児欠神てんかん、発熱時の発作は熱性けいれんの特徴であり、混同しないようにする。

選択肢考察

  1. ×a.  生後3か月以内に好発する。

    誤り。West症候群の多くは生後3〜12か月(1歳未満)に発症し、発症のピークは生後4〜7か月ころ(6か月前後)である。生後3か月以内というのは早すぎる。なお新生児期〜生後3か月以内に発症するてんかん性脳症としては、大田原症候群(早期乳児てんかん性脳症、脳波でサプレッション・バースト)があり、大田原症候群がWest症候群に移行することも知られている。

  2. ×b.  発作は発熱時に多い。

    誤り。West症候群のスパズムは発熱と関係なく起こり、入眠時や覚醒直後などの睡眠・覚醒の移行期に群発しやすい。発熱に伴って起こるのは熱性けいれん(生後6か月〜5歳ころ、38℃以上の発熱に伴う発作)の特徴である。ほかにDravet症候群も発熱や入浴で発作が誘発されやすい。

  3. ○c.  発作は群発する。

    正しい。てんかん性スパズムは1回きりで終わることは少なく、数秒〜十数秒の間隔で数回から数十回連続して起こる(シリーズ形成、群発)のが大きな特徴である。一回一回の発作は短く、泣き出したり驚いたりしたように見えるため、保護者が発作と気づかず受診が遅れることもある。シリーズは1日に何回も出現しうる。

  4. ×d.  脳波で3Hz棘徐波を認める。

    誤り。West症候群の発作間欠期脳波はヒプスアリスミア(高振幅徐波と多焦点性の棘波・鋭波が無秩序に混在する)が特徴である。3Hz棘徐波複合は小児欠神てんかん(学童期に好発、過呼吸で誘発される数秒〜十数秒の意識消失発作)の特徴的所見である。ちなみにLennox-Gastaut症候群では遅棘徐波(2〜2.5Hz以下)がみられる。

  5. ×e.  精神発達は正常である。

    誤り。West症候群は精神運動発達の停止・退行を三主徴の一つとするてんかん性脳症であり、発症を境に笑わなくなる、追視をしなくなる、首がすわらなくなるなどの退行がみられる。周産期脳障害、脳形成異常、結節性硬化症、先天代謝異常などの器質的脳障害を背景にもつ症候性の例が多く、長期的にも知的障害を残すことが多い。原因不明で早期に治療が奏効した例では発達予後が比較的良いこともあり、早期診断・早期治療が重要である。

West症候群の要点

・発症: 乳児期(多くは1歳未満、ピークは生後4〜7か月ころ)。男児にやや多い。 ・原因: 周産期の低酸素性虚血性脳症、脳形成異常、結節性硬化症、Down症候群、先天代謝異常、先天性感染症など。原因を特定できない例もある。 ・三主徴: てんかん性スパズムのシリーズ形成、ヒプスアリスミア、精神運動発達の停止・退行。 ・治療: ACTH療法が最も有効な治療の一つ。ビタミンB6大量療法、バルプロ酸、ゾニサミド、ベンゾジアゼピン系も用いられる。結節性硬化症に伴う例ではビガバトリンが有効である。 ・予後: 発作が消失しても知的障害が残ることが多く、一部はLennox-Gastaut症候群へ移行する。

年齢依存性てんかん性脳症の流れ

大田原症候群(新生児〜乳児早期、サプレッション・バースト)→ West症候群(乳児期、ヒプスアリスミア)→ Lennox-Gastaut症候群(幼児期、遅棘徐波、強直発作・脱力発作・非定型欠神発作)と、年齢とともに病像が移行することがある。

脳波所見の対比

・ヒプスアリスミア: West症候群 ・3Hz棘徐波複合: 小児欠神てんかん ・遅棘徐波(2〜2.5Hz以下): Lennox-Gastaut症候群 ・サプレッション・バースト: 大田原症候群 ・中心・側頭部棘波: 中心・側頭部棘波を示す自然終息性てんかん(いわゆるローランドてんかん) ・多棘徐波: 若年ミオクロニーてんかん

POINT

・West症候群: 乳児期(ピーク生後4〜7か月)発症。 ・三主徴: てんかん性スパズムのシリーズ形成(群発)、ヒプスアリスミア、発達の停止・退行。 ・治療の中心はACTH療法(結節性硬化症ではビガバトリン)。 ・3Hz棘徐波は小児欠神てんかん、発熱時の発作は熱性けいれん。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。