うなずくように、何度も―乳児の「シリーズ」で気づくWest症候群
第101回医師国家試験 F問題 第59問
国試問題にチャレンジ
West症候群〈点頭てんかん〉について正しいのはどれか。
- a.生後3か月以内に好発する。
- b.発作は発熱時に多い。
- c.発作は群発する。
- d.脳波で3Hz棘徐波を認める。
- e.精神発達は正常である。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生まとめ
West症候群(点頭てんかん)は、多くが1歳未満(ピーク生後4〜7か月ころ)に発症する乳児期のてんかん性脳症で、てんかん性スパズムのシリーズ形成(群発)、脳波のヒプスアリスミア、精神運動発達の停止・退行を三主徴とします。発作は発熱とは無関係に、入眠時や覚醒直後に数秒〜十数秒おきに繰り返して起こり、一回ごとは短いため見逃されやすい点に注意が必要です。3Hz棘徐波は小児欠神てんかん、発熱時の発作は熱性けいれん、生後3か月以内発症でサプレッション・バーストを示すのは大田原症候群であり、混同しないことが重要です。器質的脳障害を背景にもつ例が多く知的障害を残しやすいため、ACTH療法などによる早期治療が求められます。年齢と脳波所見を組み合わせて小児てんかんを整理しておくことは、国試の鑑別問題だけでなく、乳児の「ちょっとした動き」を見逃さない臨床の目を養うことにつながります。
解答・解説
正解はcです
West症候群(点頭てんかん)は乳児期に発症する代表的なてんかん性脳症である。次の三主徴で定義される。 ・てんかん性スパズム: 頭部を前屈し(うなずくように見えるため「点頭」と呼ばれる)、両上肢を挙上・屈曲、体幹を前屈させる短い(1〜2秒程度)発作。これが数秒〜十数秒おきに何回も繰り返される(シリーズ形成)。 ・脳波のヒプスアリスミア(hypsarrhythmia): 高振幅の徐波と棘波・鋭波が部位も時間も無秩序に混在する発作間欠期脳波。 ・精神運動発達の停止・退行。 本問では、これらの特徴(好発年齢、発作の出方、脳波所見、発達予後)を他のてんかん・けいれん性疾患と取り違えないことが問われている。3Hz棘徐波は小児欠神てんかん、発熱時の発作は熱性けいれんの特徴であり、混同しないようにする。
選択肢考察
- ×a. 生後3か月以内に好発する。
誤り。West症候群の多くは生後3〜12か月(1歳未満)に発症し、発症のピークは生後4〜7か月ころ(6か月前後)である。生後3か月以内というのは早すぎる。なお新生児期〜生後3か月以内に発症するてんかん性脳症としては、大田原症候群(早期乳児てんかん性脳症、脳波でサプレッション・バースト)があり、大田原症候群がWest症候群に移行することも知られている。
- ×b. 発作は発熱時に多い。
誤り。West症候群のスパズムは発熱と関係なく起こり、入眠時や覚醒直後などの睡眠・覚醒の移行期に群発しやすい。発熱に伴って起こるのは熱性けいれん(生後6か月〜5歳ころ、38℃以上の発熱に伴う発作)の特徴である。ほかにDravet症候群も発熱や入浴で発作が誘発されやすい。
- ○c. 発作は群発する。
正しい。てんかん性スパズムは1回きりで終わることは少なく、数秒〜十数秒の間隔で数回から数十回連続して起こる(シリーズ形成、群発)のが大きな特徴である。一回一回の発作は短く、泣き出したり驚いたりしたように見えるため、保護者が発作と気づかず受診が遅れることもある。シリーズは1日に何回も出現しうる。
- ×d. 脳波で3Hz棘徐波を認める。
誤り。West症候群の発作間欠期脳波はヒプスアリスミア(高振幅徐波と多焦点性の棘波・鋭波が無秩序に混在する)が特徴である。3Hz棘徐波複合は小児欠神てんかん(学童期に好発、過呼吸で誘発される数秒〜十数秒の意識消失発作)の特徴的所見である。ちなみにLennox-Gastaut症候群では遅棘徐波(2〜2.5Hz以下)がみられる。
- ×e. 精神発達は正常である。
誤り。West症候群は精神運動発達の停止・退行を三主徴の一つとするてんかん性脳症であり、発症を境に笑わなくなる、追視をしなくなる、首がすわらなくなるなどの退行がみられる。周産期脳障害、脳形成異常、結節性硬化症、先天代謝異常などの器質的脳障害を背景にもつ症候性の例が多く、長期的にも知的障害を残すことが多い。原因不明で早期に治療が奏効した例では発達予後が比較的良いこともあり、早期診断・早期治療が重要である。
West症候群の要点
・発症: 乳児期(多くは1歳未満、ピークは生後4〜7か月ころ)。男児にやや多い。 ・原因: 周産期の低酸素性虚血性脳症、脳形成異常、結節性硬化症、Down症候群、先天代謝異常、先天性感染症など。原因を特定できない例もある。 ・三主徴: てんかん性スパズムのシリーズ形成、ヒプスアリスミア、精神運動発達の停止・退行。 ・治療: ACTH療法が最も有効な治療の一つ。ビタミンB6大量療法、バルプロ酸、ゾニサミド、ベンゾジアゼピン系も用いられる。結節性硬化症に伴う例ではビガバトリンが有効である。 ・予後: 発作が消失しても知的障害が残ることが多く、一部はLennox-Gastaut症候群へ移行する。
年齢依存性てんかん性脳症の流れ
大田原症候群(新生児〜乳児早期、サプレッション・バースト)→ West症候群(乳児期、ヒプスアリスミア)→ Lennox-Gastaut症候群(幼児期、遅棘徐波、強直発作・脱力発作・非定型欠神発作)と、年齢とともに病像が移行することがある。
脳波所見の対比
・ヒプスアリスミア: West症候群 ・3Hz棘徐波複合: 小児欠神てんかん ・遅棘徐波(2〜2.5Hz以下): Lennox-Gastaut症候群 ・サプレッション・バースト: 大田原症候群 ・中心・側頭部棘波: 中心・側頭部棘波を示す自然終息性てんかん(いわゆるローランドてんかん) ・多棘徐波: 若年ミオクロニーてんかん
POINT
・West症候群: 乳児期(ピーク生後4〜7か月)発症。 ・三主徴: てんかん性スパズムのシリーズ形成(群発)、ヒプスアリスミア、発達の停止・退行。 ・治療の中心はACTH療法(結節性硬化症ではビガバトリン)。 ・3Hz棘徐波は小児欠神てんかん、発熱時の発作は熱性けいれん。
