6・11型か16・18型か―尖圭コンジローマで問われる「HPVの型」の落とし穴
第101回医師国家試験 F問題 第49問
国試問題にチャレンジ
尖圭コンジローマで誤っているのはどれか。
- a.性感染症である。
- b.外陰部に好発する。
- c.発症まで数週から数か月の潜伏期間がある。
- d.乳幼児の喉頭乳頭腫は産道感染が原因である。
- e.16,18型ヒト乳頭腫〈human papilloma〉ウイルスが原因である。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
尖圭コンジローマは、低リスク型のHPV 6型・11型が皮膚・粘膜に感染して生じる良性の乳頭状腫瘍で、外陰部や肛門周囲に好発する性感染症です。潜伏期間は3週〜8か月と長く、母親からの産道感染によって乳幼児に再発性の喉頭乳頭腫が生じることがあります。16型・18型は子宮頸癌などの原因となる高リスク型で、E6がp53を、E7がRbを障害することで発癌に関わるため、尖圭コンジローマの原因とするのは誤りです。治療後の再発が多く、予防には6・11型を含む4価・9価HPVワクチンが有効です。HPVの型と疾患の対応を整理しておくことは、性感染症の診療だけでなく婦人科腫瘍やワクチンの理解にも直結します。
解答・解説
正解はeです
尖圭コンジローマ(condyloma acuminatum)は、ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus:HPV)が皮膚・粘膜の微小な傷から基底細胞に感染して生じる良性の乳頭状腫瘍(いぼ)であり、主に性行為で伝播する性感染症(STI:sexually transmitted infection)である。 本問は「誤っているもの」を選ぶ問題であり、押さえるべき論点は次の4つである。 1. 感染経路(性感染、および母子の産道感染) 2. 好発部位(外陰部・肛門周囲) 3. 潜伏期間(数週〜数か月と長い) 4. 原因となるHPVの型 HPVには200種類以上の型があり、発癌リスクによって「低リスク型」と「高リスク型」に大別される。尖圭コンジローマの原因は低リスク型の6型・11型(約90%を占める)であり、16型・18型は子宮頸癌などの原因となる高リスク型である。この型の対応を正確に覚えていれば、eが誤りであると判断できる。
選択肢考察
- ×a. 性感染症である。
記述は正しい。尖圭コンジローマは性交やオーラルセックス・アナルセックスなどの類似行為で、皮膚や粘膜が直接接触することで伝播する代表的な性感染症である。わが国の感染症法では5類感染症の定点把握疾患(性感染症定点)に位置づけられている。パートナーの診察・治療も必要になる。
- ×b. 外陰部に好発する。
記述は正しい。性行為で摩擦を受けやすい部位にできやすい。男性では陰茎の亀頭・冠状溝・包皮内板、女性では大陰唇・小陰唇・腟前庭・会陰部に多い。男女とも肛門周囲にもみられ、腟や子宮頸部、尿道口にできることもある。形態は淡紅色〜褐色の乳頭状・鶏冠状の小隆起で、大きくなるとカリフラワー状になる。
- ×c. 発症まで数週から数か月の潜伏期間がある。
記述は正しい。感染してから病変が見えるようになるまでの潜伏期間はおよそ3週〜8か月で、平均すると約3か月(2.8か月程度)とされる。潜伏期間が長いため、どの性行為で感染したか特定しにくい。また感染しても病変を作らない不顕性感染も多い。「数日」単位で発症する淋菌感染症などと混同しないよう注意する。
- ×d. 乳幼児の喉頭乳頭腫は産道感染が原因である。
記述は正しい。尖圭コンジローマのある母親から出生時に産道でHPV(6型・11型)に感染すると、乳幼児に喉頭乳頭腫(若年発症型の再発性呼吸器乳頭腫症)が生じることがある。喉頭に多発し、切除しても再発しやすく、嗄声や気道狭窄の原因となる。このため妊婦の尖圭コンジローマは分娩までに治療しておくことが望ましく、病変が大きく産道を狭める場合などには帝王切開が考慮される。
- ○e. 16,18型ヒト乳頭腫〈human papilloma〉ウイルスが原因である。
記述は誤りであり、これが正解である。尖圭コンジローマの原因となるのは主に低リスク型のHPV 6型・11型である。16型・18型は高リスク型であり、子宮頸癌(およびその前癌病変である子宮頸部上皮内腫瘍:CIN)の主な原因である。高リスク型はそのほか腟癌・外陰癌・陰茎癌・肛門癌・中咽頭癌にも関与する。低リスク型の6型・11型はウイルスDNAが宿主のゲノムに組み込まれにくく、癌化することはまれである。
HPVの型と主な疾患
低リスク型(6型、11型など):尖圭コンジローマ、喉頭乳頭腫(再発性呼吸器乳頭腫症) 高リスク型(16型、18型、31型、33型、45型、52型、58型など):子宮頸癌・CIN、腟癌、外陰癌、陰茎癌、肛門癌、中咽頭癌 皮膚型(1型、2型、4型など):尋常性疣贅(いわゆる普通のいぼ)、足底疣贅など
高リスク型が発癌する機序
高リスク型HPVのE6蛋白はp53の分解を促し、E7蛋白はRb蛋白の働きを抑える。これにより、細胞周期の制御やアポトーシス(細胞の自死)が障害され、癌化につながる。子宮頸癌の約半数以上は16型・18型が原因である。
尖圭コンジローマの診断・治療
診断は、特徴的な肉眼所見に基づく視診が基本である。非典型例や治療抵抗例では、ボーエン様丘疹症や有棘細胞癌などとの鑑別のため生検を行い、表皮上層に核周囲の空胞化した細胞(コイロサイト)を確認する。 治療には、外用薬のイミキモド(局所の免疫を高める薬)、液体窒素による凍結療法、電気焼灼、レーザー蒸散、外科的切除がある。どの治療でも再発が多く、治療後3か月以内に約25%が再発するとされる。
予防
HPVワクチンには2価(16・18型)、4価(6・11・16・18型)、9価(4価に31・33・45・52・58型を追加)がある。尖圭コンジローマの予防効果があるのは6・11型を含む4価と9価である。コンドームは感染リスクを下げるが、覆われない部位の接触があるため完全には防げない。
POINT
・尖圭コンジローマの原因はHPV 6型・11型(低リスク型) ・16型・18型(高リスク型)は子宮頸癌の原因 ・性感染症であり、外陰部・肛門周囲に好発する ・潜伏期間は3週〜8か月(平均約3か月)と長い ・母親からの産道感染で乳幼児に喉頭乳頭腫が生じうる ・治療後の再発が多い。4価・9価HPVワクチンで予防できる
