膿が出る尿道炎はグラム染色で見抜け―淋菌性尿道炎の「常識」を一問で総点検
第119回医師国家試験 A問題 第42問
国試問題にチャレンジ
25歳の男性。排尿時痛を主訴に来院した。昨日から強い排尿時痛と尿道口に膿性分泌物を認めるため受診した。定期的に性交渉を行うパートナーがいる。尿所見:蛋白(-),糖(-),沈渣に赤血球1~4/HPF,白血球100以上/HPF。Gram染色の鏡検でGram陰性双球菌を認める。 この疾患で正しいのはどれか。
- a.潜伏期間は2~3週間である。
- b.パートナーの治療は不要である。
- c.1回感染すると終生免疫を獲得する。
- d.ニューキノロン系抗菌薬を投与する。
- e.確定診断には核酸増幅検査が用いられる。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
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ドクター
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医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
若年男性の急激な強い排尿時痛と多量の膿性分泌物、グラム染色での白血球に貪食されたグラム陰性双球菌は淋菌性尿道炎を示します。潜伏期は2〜7日程度と短く、1〜3週間程度で症状の軽いクラミジア性尿道炎との対比が鑑別の手がかりになります。確定診断には高感度でクラミジアも同時に検出できる核酸増幅検査が用いられ、培養は薬剤感受性の確認に重要です。ニューキノロン耐性が大半を占めるため治療はセフトリアキソン静注やスペクチノマイシン筋注の単回投与が推奨され、終生免疫は得られないのでパートナーの検査・治療と再感染予防が欠かせません。混合感染や他の性感染症まで視野に入れることが、性感染症診療の基本姿勢です。
解答・解説
正解はeです
所見の整理
・25歳男性。昨日からの強い排尿時痛と、尿道口からの膿性分泌物がある。 ・定期的に性交渉をもつパートナーがいる(性感染症のリスク)。 ・尿沈渣で白血球100以上/HPFの膿尿を認め、蛋白・糖は陰性、赤血球は少数である。 ・分泌物のGram染色でGram陰性双球菌を認める。
診断へのプロセス
性的に活発な若年男性で、排尿時痛と尿道分泌物を伴う膿尿がみられれば、まず性感染症としての尿道炎を考える。男性尿道炎の二大起炎菌は淋菌(Neisseria gonorrhoeae)とクラミジア(Chlamydia trachomatis)である。 ・淋菌性尿道炎:潜伏期が数日と短く、急に発症し、強い排尿時痛と黄白色の膿性分泌物が多量にみられる。 ・クラミジア性尿道炎:潜伏期は1~3週間程度と長めで、症状は軽く、分泌物は少量で漿液性~粘液性のことが多い。無症状のことも少なくない。 本例は症状が強く膿性分泌物を伴い、さらにGram染色でGram陰性双球菌(白血球内に貪食された像がみられることが多い)が確認されたことから、淋菌性尿道炎と診断できる。Gram陰性双球菌には髄膜炎菌もあるが、臨床像から淋菌が考えやすい。
設問の考え方
淋菌感染症の基本事項として、潜伏期、パートナー対策、免疫の有無、抗菌薬の選択(薬剤耐性の現状)、検査法を整理しておく必要がある。特に治療薬はクラミジアとの違いと、淋菌の多剤耐性化を踏まえて理解する。
選択肢考察
- ×a. 潜伏期間は2~3週間である。
淋菌性尿道炎の潜伏期間は通常2~7日程度と短く、感染後1週間以内に急激に発症するのが特徴である。2~3週間という長めの潜伏期は、むしろクラミジア性尿道炎(1~3週間程度)に近い。潜伏期の長短は両者を推定する手がかりの一つになる。
- ×b. パートナーの治療は不要である。
淋菌感染症は性感染症であり、性的パートナーも感染している可能性が高い。特に女性では子宮頸管炎を起こしても無症状のことが多く、放置すると骨盤内炎症性疾患や不妊の原因になる。また、パートナーを治療しなければ治癒後に再び感染する(いわゆるピンポン感染)。したがってパートナーの検査と治療が必要であり、治療が終わるまで性交渉を控えるよう指導する。
- ×c. 1回感染すると終生免疫を獲得する。
淋菌に感染しても防御免疫はほとんど成立しない。淋菌は表面抗原(線毛やOpa蛋白など)を変化させて宿主の免疫を回避するため、感染の機会があれば何度でも再感染する。麻疹のように一度の感染で終生免疫が得られる疾患とは異なり、ワクチンも実用化されていない。
- ×d. ニューキノロン系抗菌薬を投与する。
かつてはニューキノロン系抗菌薬も用いられたが、現在わが国の淋菌はニューキノロン耐性株が大半を占め、ペニシリン系やテトラサイクリン系、経口セフェム系にも耐性が広がっているため、第一選択にはならない。推奨されるのは注射薬で、セフトリアキソンの静注単回投与や、スペクチノマイシンの筋注単回投与が用いられる。
- ○e. 確定診断には核酸増幅検査が用いられる。
PCR法などの核酸増幅検査(nucleic acid amplification test:NAAT)は感度・特異度が高く、初尿や分泌物を検体として淋菌を検出できる。同じ検体でクラミジアも同時に検出できることも利点で、淋菌感染者の一部(男性尿道炎で20~30%程度とされる)はクラミジアを合併しているため有用である。Gram染色は迅速な推定に役立ち、培養検査は薬剤感受性を調べるのに必要であるが、診断の確定にはNAATが広く用いられている。
淋菌感染症の概要
起炎菌はGram陰性双球菌の淋菌である。乾燥や温度変化に弱く、主に性的接触(性器、オーラルセックスによる咽頭など)で感染する。感染症法では5類感染症(定点把握)に分類される。
臨床像
・男性:急性尿道炎(強い排尿時痛、膿性分泌物)。進展すると精巣上体炎を起こす。 ・女性:子宮頸管炎が主体で無症状のことが多い。上行すると骨盤内炎症性疾患、肝周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis症候群)を起こし、不妊や異所性妊娠の原因となる。 ・その他:咽頭感染(無症状が多く感染源となりやすい)、直腸炎、播種性淋菌感染症(関節炎、皮疹)。 ・新生児:産道感染による新生児結膜炎(膿漏眼)。
淋菌性尿道炎とクラミジア性尿道炎の比較
・潜伏期:淋菌は2~7日程度、クラミジアは1~3週間程度。 ・発症:淋菌は急激、クラミジアは緩徐。 ・症状:淋菌は強い排尿時痛、クラミジアは軽度の違和感程度。 ・分泌物:淋菌は多量の膿性、クラミジアは少量の漿液性~粘液性。 ・治療:淋菌はセフトリアキソン静注またはスペクチノマイシン筋注の単回投与。クラミジアはアジスロマイシンやドキシサイクリンなどのマクロライド系・テトラサイクリン系(細胞内寄生菌のためβ-ラクタム系は無効)。
検査
・Gram染色:男性の尿道分泌物で白血球に貪食されたGram陰性双球菌を確認する迅速検査。 ・培養:薬剤感受性試験のために重要。 ・核酸増幅検査:高感度で、淋菌とクラミジアを同時に検出できる。咽頭検体にも用いられる。
管理上の注意
クラミジアとの混合感染が多いため両方を検査し、必要なら両方を治療する。パートナーの検査・治療、治療後の効果判定、梅毒やHIVなど他の性感染症の検査も考慮する。
POINT
・若年男性の強い排尿時痛+膿性分泌物+Gram陰性双球菌 → 淋菌性尿道炎。 ・潜伏期は2~7日程度と短い(クラミジアは1~3週間程度)。 ・ニューキノロン耐性が多く、治療はセフトリアキソン静注またはスペクチノマイシン筋注の単回投与。 ・核酸増幅検査で淋菌とクラミジアを同時に検出できる。混合感染に注意。 ・終生免疫はなく再感染する。パートナーの検査・治療が必須。
