StudyMed医師国家試験

「治るがん」の代表―Hodgkinリンパ腫の年齢・部位・B症状・治療を一気に整理

第101回医師国家試験 F問題 第41問

国試問題にチャレンジ

第101回 F問題 第41問

Hodgkinリンパ腫について正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.加齢とともに発症頻度は上昇する。
  2. b.頸部リンパ節が好発部位である。
  3. c.持続する発熱はB症状に含まれる。
  4. d.限局性のものに対しては抗癌化学療法は行わない。
  5. e.限局性のものであっても予後は不良である。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はHodgkinリンパ腫の基本知識を問う問題だ。見るべき軸は4つ。発症年齢の分布、好発部位、B症状の定義、そして限局期の治療と予後。どれも非Hodgkinリンパ腫との違いを意識すると覚えやすいよ。まず、Hodgkinリンパ腫がどんな病気か簡単に説明できるかな。
医学生医学生
病理の講義で、大きな多核のReed-Sternberg細胞が出てくるリンパ腫だと習いました。
ドクタードクター
そうだね。B細胞由来の大型腫瘍細胞、つまりHodgkin細胞やReed-Sternberg細胞は実は少数で、その周りをリンパ球、好酸球、形質細胞、組織球といった反応性の炎症細胞がたくさん取り囲んでいる。腫瘍細胞が主役なのに少数派、というのが独特なんだ。日本ではリンパ腫全体の5〜10%程度と少なく、大部分は非Hodgkinリンパ腫だよ。では年齢分布はどうだろう。
医学生医学生
がんは基本的に年をとるほど増えるので、加齢とともに頻度が上がるのかなと思いました。
ドクタードクター
そこが引っかけだ。Hodgkinリンパ腫は二峰性で、20〜30歳代の若年成人と、50〜60歳代以降の高齢者にピークがある。一様に増えるわけではないんだ。欧米では若年のピークが目立つのに対して、日本では若年のピークが低めで高齢者の割合が相対的に高い、という違いもある。加齢とともに増えるのはむしろ非Hodgkinリンパ腫の多くの病型だね。
医学生医学生
二峰性、ですね。では好発部位は?血液内科の実習で、首のしこりで受診した若い患者さんがいました。
ドクタードクター
まさにそれが典型。初発症状で最も多いのは無痛性の表在リンパ節腫大で、部位は頸部リンパ節が最多、6〜8割を占める。次いで腋窩、鼠径の順だ。若い人に多い結節硬化型では縦隔リンパ節腫大もよくみられる。これが一つ目の正解だね。
医学生医学生
非Hodgkinリンパ腫のように消化管や皮膚から始まることは少ないんですか。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。Hodgkinリンパ腫は節性病変が主体で、節外初発は比較的少ない。もう一つの特徴は、隣のリンパ節領域へ連続的に広がる傾向があること。だから病期分類や放射線の照射範囲を決めることに意味があるんだ。次はB症状。定義を言えるかな。
医学生医学生
発熱、寝汗、体重減少の3つですよね。でも、細かい基準はあいまいです。
ドクタードクター
しっかり押さえよう。原因不明の38℃を超える発熱が持続または反復すること、寝衣や寝具を替えるほどの盗汗、そして診断前6か月以内に10%を超える原因不明の体重減少。1つでもあればB症状ありとする。Ann Arbor分類では病期にAかBを付記するよ。だから持続する発熱はB症状に含まれる、これが二つ目の正解だ。
医学生医学生
Hodgkinリンパ腫だと、熱が出たり引いたりするPel-Ebstein熱というのがありましたよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。数日の発熱と数日の解熱を周期的に繰り返す熱型だ。ちなみに皮膚瘙痒感や飲酒後のリンパ節痛もHodgkinリンパ腫に特徴的とされるけれど、これらはB症状には含まれない。試験でよく狙われるポイントだよ。B症状は予後不良因子で、治療強度の判断にも影響する。
医学生医学生
次は治療ですね。限局期なら放射線だけで治せそうな気がします。
ドクタードクター
実はかつてはそういう時代があった。広い範囲への放射線単独療法が標準だった時期があるんだ。でも再発が多く、広範囲照射による二次がんや心血管障害といった晩期障害も問題になった。現在の限局期の標準治療は、ABVD療法などの化学療法を数コース行い、病変部に絞った放射線照射を加える併用療法だ。だから限局期でも化学療法は治療の中心で、「化学療法は行わない」は誤りになる。
医学生医学生
ABVDは、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジンでしたね。薬理で語呂合わせを覚えました。
ドクタードクター
いいね。ブレオマイシンの肺障害、ドキソルビシンの心毒性も一緒に思い出しておこう。では予後はどうだろう。「限局性でも予後不良」という選択肢がある。
医学生医学生
化学療法と放射線を組み合わせてしっかり治療するなら、予後はいいんじゃないでしょうか。
ドクタードクター
その通り。Hodgkinリンパ腫は化学療法・放射線療法への感受性が高く、悪性腫瘍の中でも治癒が期待できる代表的な疾患だ。限局期では長期生存率が90%前後かそれ以上と報告されていて、進行期でも多くの例で長期寛解が得られる。だから予後不良という選択肢は誤りだね。
医学生医学生
治る人が多いからこそ、さっきの晩期障害が問題になるわけですね。
ドクタードクター
まさにそう。長期生存者が多いので、二次がん、心毒性、肺障害、不妊などへの配慮が重要な課題になっている。若い患者さんが多いから、治療前に妊孕性温存について話し合うことも大切だ。発展知識として、古典的Hodgkinリンパ腫のHRS細胞はCD15とCD30が陽性で、CD20は通常陰性〜弱陽性。再発・難治例では、抗CD30抗体薬物複合体のブレンツキシマブ ベドチンや抗PD-1抗体、自家造血幹細胞移植なども使われる。EBウイルスとの関連や、細胞性免疫の低下を伴いやすいことも覚えておこう。
医学生医学生
年齢は二峰性、首に多くて連続的に広がる、B症状は3つ、限局期でも化学療法が中心で予後良好、と整理できました。

まとめ

Hodgkinリンパ腫は、少数のHodgkin/Reed-Sternberg細胞(CD15・CD30陽性)を多数の反応性炎症細胞が取り囲む悪性リンパ腫で、発症年齢は若年成人と高齢者の二峰性を示します。好発部位は頸部リンパ節で、隣接するリンパ節領域へ連続的に進展する傾向があります。B症状は原因不明の38℃を超える発熱の持続・反復、著しい盗汗、6か月以内の10%を超える体重減少の3つで、皮膚瘙痒感や飲酒後のリンパ節痛は含まれません。限局期でもABVD療法などの化学療法に病変部照射を組み合わせるのが標準で、治療感受性が高く予後は良好なため、晩期障害への配慮が重要です。非Hodgkinリンパ腫との違いを意識しながら疫学・病期・治療を整理することが、リンパ腫全体の理解につながります。

解答・解説

正解はb, cです

Hodgkinリンパ腫(Hodgkin lymphoma:HL)は、B細胞由来の大型腫瘍細胞(Hodgkin細胞、多核のReed-Sternberg細胞:あわせてHRS細胞)が少数存在し、その周囲を多数の反応性の炎症細胞(リンパ球、好酸球、形質細胞、組織球など)が取り囲むという特徴的な組織像をもつ悪性リンパ腫である。日本では悪性リンパ腫全体の5〜10%程度と少なく、大部分は非Hodgkinリンパ腫である。 本問はHLの疫学(年齢分布)、好発部位、B症状の定義、限局期の治療と予後という基本事項を問うている。

押さえるべき骨格

・年齢分布:若年成人と高齢者の二峰性。単純に加齢とともに増えるのではない。 ・好発部位:頸部リンパ節が最多。病変は隣接するリンパ節領域へ連続的に広がる傾向があるため、病期分類と放射線照射野の設定に意味がある。 ・B症状:原因不明の発熱(38℃を超える発熱の持続・反復)、盗汗(寝具や寝衣を替えるほどの寝汗)、体重減少(6か月以内に10%を超える原因不明の減少)の3つ。病期分類(Ann Arbor分類)ではB症状の有無を「A/B」として付記する。 ・治療と予後:化学療法と放射線療法によく反応し、悪性腫瘍の中でも治癒が期待できる代表的疾患である。限局期(I・II期)でも化学療法(ABVD療法など)が治療の中心で、多くは少ないサイクル数の化学療法と病変部への放射線照射を組み合わせる。 これらを確認すれば、正しいのは頸部リンパ節が好発部位であること(b)と、持続する発熱がB症状に含まれること(c)となる。

選択肢考察

  1. ×a.  加齢とともに発症頻度は上昇する。

    誤り。HLの発症年齢は二峰性で、20〜30歳代の若年成人と、50〜60歳代以降の高齢者にピークがある。年齢とともに一様に増えるわけではない。欧米では若年のピークが目立つ(結節硬化型が多い)のに対し、日本では若年のピークが低く、高齢者の割合が相対的に高い。なお、非Hodgkinリンパ腫の多くは加齢とともに頻度が上昇するため、この点が両者の違いの一つとなる。

  2. ○b.  頸部リンパ節が好発部位である。

    正しい。HLの初発症状として最も多いのは無痛性の表在リンパ節腫大であり、その部位は頸部リンパ節が最多(60〜80%)で、次いで腋窩リンパ節、鼠径リンパ節の順である。結節硬化型では縦隔リンパ節腫大も多い。HLは節性(リンパ節)病変が主体で、節外病変(消化管、皮膚など)が初発となることは非Hodgkinリンパ腫に比べて少ない。また、隣接するリンパ節領域へ連続性に進展しやすいという特徴がある。

  3. ○c.  持続する発熱はB症状に含まれる。

    正しい。B症状とは、①原因不明の38℃を超える発熱(持続あるいは反復するもの)、②盗汗(寝衣が濡れるほどの著しい寝汗)、③診断前6か月以内の10%を超える原因不明の体重減少、の3つであり、1つでもあればB症状ありとする。病期にA(B症状なし)またはB(B症状あり)を付記し、B症状は予後不良因子であり治療強度の決定にも影響する。HLでは、数日間の発熱と数日間の解熱を周期的に繰り返すPel-Ebstein熱がみられることがある。なお、皮膚瘙痒感やアルコール摂取後のリンパ節痛もHLに特徴的とされるが、B症状には含まれない。

  4. ×d.  限局性のものに対しては抗癌化学療法は行わない。

    誤り。かつては限局期(I・II期)のHLに対して、病変部を広く含む範囲への放射線単独療法が標準とされた時期があった。しかし放射線単独では再発が多く、広範囲照射による二次がんや心血管障害などの晩期障害も問題となった。現在の限局期HLの標準治療は、ABVD療法(ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン)などの化学療法を数コース行い、病変部に限局した放射線照射を追加する併用療法(combined modality therapy)である。巨大腫瘤やB症状などの予後不良因子があれば化学療法のコース数を増やす。したがって限局期でも化学療法は治療の中心である。

  5. ×e.  限局性のものであっても予後は不良である。

    誤り。HLは化学療法・放射線療法への感受性が高く、予後は比較的良好である。特に限局期では適切な治療により大多数が治癒し、長期生存率は90%前後あるいはそれ以上と報告されている。進行期でも多くの例で長期寛解が得られる。むしろ長期生存者が多いため、治療に伴う晩期障害(二次がん、心毒性、肺障害、不妊など)への配慮が重要な課題となっている。

Hodgkinリンパ腫の分類(WHO分類)

1. 古典的Hodgkinリンパ腫(HRS細胞はCD15陽性・CD30陽性、CD20は通常陰性〜弱陽性) ・結節硬化型:若年者に多く、縦隔病変を伴いやすい。欧米で最多。 ・混合細胞型:日本では比較的多い。EBウイルスとの関連が強い。 ・リンパ球豊富型:予後良好。 ・リンパ球減少型:高齢者やHIV感染者に多く、予後不良。 2. 結節性リンパ球優位型(NLPHL):腫瘍細胞(LP細胞、popcorn細胞)はCD20陽性、CD15・CD30陰性。緩徐な経過をとる。近年は「結節性リンパ球優位型B細胞リンパ腫」と呼ぶ考え方もある。

病期分類(Ann Arbor分類、Cotswolds修正)

・I期:1つのリンパ節領域 ・II期:横隔膜の同じ側の2つ以上のリンパ節領域 ・III期:横隔膜の両側のリンパ節領域 ・IV期:リンパ節以外の臓器(骨髄、肝、肺など)へのびまん性浸潤 ・付記:A(B症状なし)/B(B症状あり)、X(巨大腫瘤)、E(節外病変の限局的進展)

治療の概略

・限局期:ABVD療法などの化学療法数コース+病変部への放射線照射(involved-site radiotherapy)。 ・進行期:ABVD療法、あるいは抗CD30抗体薬物複合体ブレンツキシマブ ベドチンを組み込んだ化学療法など。 ・再発・難治例:救援化学療法後の自家造血幹細胞移植、ブレンツキシマブ ベドチン、抗PD-1抗体(ニボルマブ、ペムブロリズマブ)など。

その他の特徴

・EBウイルスとの関連がある。 ・細胞性免疫の低下を伴いやすい(ツベルクリン反応の陰性化など)。 ・Pel-Ebstein熱、皮膚瘙痒感、飲酒後のリンパ節痛。 ・血液検査で好酸球増多、赤沈亢進、LD上昇などを示すことがある。

POINT

・Hodgkinリンパ腫の発症年齢は若年成人と高齢者の二峰性。 ・好発部位は頸部リンパ節で、隣接領域へ連続的に進展する。 ・B症状=原因不明の発熱(38℃超)、盗汗、6か月以内の10%超の体重減少。 ・限局期でも化学療法(ABVD療法)が中心で、病変部照射を組み合わせる。 ・化学療法・放射線への感受性が高く、予後は比較的良好(限局期は大多数が治癒)。 ・Reed-Sternberg細胞はCD15・CD30陽性。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。