濡れた胸には電気が届かない―AEDを正しく使うための5つの常識
第101回医師国家試験 C問題 第34問
国試問題にチャレンジ
AEDを用いた除細動に関して正しいのはどれか。
- a.医学生はAEDを使用してはいけない。
- b.呼吸がある場合はAEDを装着しない。
- c.汗で胸がぬれている場合は拭いてからAEDを装着する。
- d.AEDを装着する前に胸骨圧迫式心マッサージを10分間行う。
- e.AEDを装着した状態で胸骨圧迫式心マッサージを行ってはいけない。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
AEDは心電図を自動で解析し、心室細動や無脈性心室頻拍のときだけ電気ショックを指示するため、医学生や一般市民を含め誰でも使用できます。胸が汗や水でぬれていると電流が皮膚表面を流れて心臓に届かず、感電ややけどの危険もあるため、乾いたタオルで拭いてからパッドを貼ります。死戦期呼吸は「呼吸あり」と誤認しやすく、普段どおりの呼吸か迷えば心停止として胸骨圧迫とAED装着を行い、AEDは到着したら直ちに装着します。パッド装着中も解析時とショック時以外は胸骨圧迫を続け、中断を最小限にすることが救命率向上の鍵です。貼付薬やペースメーカ、小児への対応も含め、BLSの基本を確実に身につけておくことは、医療者として目の前の命を救うための出発点になります。
解答・解説
正解はcです
AED(automated external defibrillator:自動体外式除細動器)は、パッドを傷病者の胸に貼ると自動的に心電図を解析し、電気ショックが必要な不整脈(心室細動、無脈性心室頻拍)であれば音声で除細動を指示する機器である。心電図の判読を機器が行うため、医療従事者でなくても安全に使えるように設計されており、日本では2004年から一般市民による使用が認められている。 心室細動による心停止では、除細動が1分遅れるごとに救命率が約7~10%低下するとされる。したがって一次救命処置(BLS:basic life support)では、次の流れで、胸骨圧迫を中断する時間をできるだけ短くしながら、AEDをできるだけ早く使うことが重視される。 1. 反応がなければ大声で助けを呼び、119番通報とAEDの手配を依頼する。 2. 呼吸を確認し(10秒以内)、呼吸がないか、普段どおりの呼吸でない(死戦期呼吸を含む)、またはわからなければ、直ちに胸骨圧迫を開始する(強く:約5 cm、速く:100~120回/分、絶え間なく)。人工呼吸の技術と意思があれば30:2で人工呼吸を加える。 3. AEDが到着したら直ちに電源を入れ、パッドを装着する。解析中と電気ショックの瞬間は傷病者に触れず、それ以外は胸骨圧迫を続ける。 4. 電気ショック後はすぐに胸骨圧迫から再開し、2分ごとにAEDが再解析する。 本問は、このAED使用の基本的な手順と注意点を問うている。電気ショックを確実に心臓に届け、救助者の安全を守るという観点から、パッド装着時の皮膚の状態に関する選択肢が正しいと判断できる。
選択肢考察
- ×a. 医学生はAEDを使用してはいけない。
誤り。AEDは心電図解析と除細動の要否判断を機器が自動で行うため、医学生に限らず、居合わせた一般市民を含め誰でも使用してよい。日本では2004年に一般市民によるAED使用が認められ、駅や学校、公共施設などに広く設置されている。使用法の講習を受けておくことが望ましいが、講習の受講は使用の条件ではない。
- ×b. 呼吸がある場合はAEDを装着しない。
誤り。心停止の直後には、しゃくりあげるような不規則な呼吸(死戦期呼吸)がみられることがあり、一見「呼吸がある」ように見えても実際には心停止である。このような場合は胸骨圧迫を開始し、直ちにAEDを装着しなければならない。呼吸が普段どおりかどうか判断に迷う場合も、心停止として対応してAEDを装着する。また、AEDは自ら心電図を解析し、除細動が必要な波形でなければ電気ショックを行わないので、装着によって傷病者に害が生じることはない。さらに、反応がない傷病者では急変に備えてパッドを貼ったままにしておくことも許容される。したがって「呼吸がある場合は装着しない」と一律に決めるのは誤りである。なお、普段どおりの呼吸が明らかにあり脈もある傷病者は心停止ではないので、電気ショックの対象にはならない。
- ○c. 汗で胸がぬれている場合は拭いてからAEDを装着する。
正しい。胸が汗や水でぬれていると、電流が皮膚表面の水分を伝って流れてしまい、心臓に十分なエネルギーが届かず除細動の効果が低下する。また、パッドが皮膚に密着しにくくなり、周囲の救助者が感電したり、パッド周囲で火花が生じてやけどを起こしたりする危険もある。そのため、乾いたタオルなどで胸の水分を拭き取ってからパッドを貼る。水中から救助した傷病者でも同様に、乾いた場所に移して胸を拭いてから使用する。
- ×d. AEDを装着する前に胸骨圧迫式心マッサージを10分間行う。
誤り。AEDは到着したら直ちに電源を入れ、パッドを装着して心電図解析を行う。心室細動では除細動までの時間が短いほど救命率が高く、装着前に一定時間の胸骨圧迫を行う必要はない。10分間も除細動を遅らせれば救命の可能性は大きく低下する。AEDが到着するまでの間に胸骨圧迫を行うのは、脳や心臓への血流を保つためであり、AEDが届いたらその時点で速やかに装着する。
- ×e. AEDを装着した状態で胸骨圧迫式心マッサージを行ってはいけない。
誤り。パッドを貼ったまま胸骨圧迫を行ってよい。AEDの指示に従い、心電図解析中と電気ショックを行う瞬間だけは誰も傷病者に触れないようにするが、それ以外の時間は胸骨圧迫を継続する。電気ショック後も脈の確認をせずに直ちに胸骨圧迫を再開し、約2分ごとにAEDの再解析を受ける。胸骨圧迫の中断を最小限にすることが救命率向上の鍵である。
AEDのパッド装着時の注意点
・胸がぬれている: 乾いたタオルで拭いてから貼る。 ・貼付薬(ニトログリセリンなどの貼り薬): はがして薬剤を拭き取ってから貼る(やけどや通電不良の防止)。 ・植込み型ペースメーカ・除細動器: 皮膚の下の膨らみを避け、そこから少し離して貼る。 ・胸毛が濃い: パッドが密着しない場合は、予備のパッドで除毛するか剃ってから貼る。 ・貼る位置: 右前胸部(鎖骨の下)と左側胸部(脇の下5~8 cm下)で、心臓をはさむように貼る。 ・小児: 未就学児(おおむね6歳未満)には小児用パッドや小児用モードを用いる。小児用がなければ成人用を使用し、パッド同士が触れ合わないように貼る(必要なら胸と背中に貼る)。
AEDの適応となる心電図
電気ショックの適応: 心室細動(VF)、無脈性心室頻拍(pulseless VT) 電気ショックの適応とならない: 心静止(asystole)、無脈性電気活動(PEA)→ 胸骨圧迫とアドレナリン投与などで対応する。
救命の連鎖
1. 心停止の予防、2. 心停止の早期認識と通報、3. 一次救命処置(心肺蘇生とAED)、4. 二次救命処置と心拍再開後の集中治療。市民による迅速な胸骨圧迫とAED使用が、社会復帰率を大きく左右する。
POINT
・AEDは心電図解析を機器が行うので、医学生・一般市民を含め誰でも使ってよい。 ・胸がぬれていたら拭いてからパッドを貼る(通電不良・感電・熱傷の防止)。 ・AEDは到着したら直ちに装着する。装着前に一定時間の胸骨圧迫を行う必要はない。 ・パッド装着中も胸骨圧迫を続け、中断は解析時とショック時のみとする。 ・死戦期呼吸は「呼吸なし」として扱い、胸骨圧迫とAED装着を行う。
