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白い三日月が語るもの―頭部CTで見抜く急性硬膜下血腫

第101回医師国家試験 C問題 第33問

国試問題にチャレンジ

第101回 C問題 第33問

頭部単純CTを示す。 診断はどれか。

第101回 C問題 第33問の問題画像
  1. a.脳出血
  2. b.脳梗塞
  3. c.くも膜下出血
  4. d.急性硬膜外血腫
  5. e.急性硬膜下血腫

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は頭部単純CT1枚から頭蓋内病変を診断する問題だ。見るべきポイントは2つ。病変が「白いか黒いか」、そして「どこに、どんな形で」あるか。この順番で整理すれば、5つの選択肢はきれいに分けられるよ。
医学生医学生
まず白い部分が目に入りました。CTで白いのは出血、でしたよね。
ドクタードクター
その通り。急性期の血液はヘモグロビン濃度が高いので、単純CTでは脳実質より高吸収、つまり白く写る。逆に脳梗塞は組織が浮腫や壊死を起こして水分が増えるので低吸収、黒っぽく写るんだ。だからこの画像の白い病変を見た時点で、脳梗塞は候補から外れる。
医学生医学生
放射線医学の講義で、脳梗塞は発症直後だとCTでほとんど変化が出ないと習いました。
ドクタードクター
よく覚えているね。超急性期はCTで所見が乏しいことが多く、だからこそ救急ではまずCTで出血を除外し、梗塞の検出にはMRIの拡散強調像を使う。さて、出血だとわかったら次は部位と形だ。この白い領域はどこにある?
医学生医学生
頭蓋骨の内側に沿って、画像の左側、つまり患者さんの右側に広がっています。脳の中ではなく外側ですね。
ドクタードクター
そう、CTは足側から見上げる向きなので画像の左が患者の右になる。病変は脳実質の外で、前頭部から側頭・頭頂部まで、頭蓋骨の内面に沿って薄く長く広がり、脳側がへこんだ三日月形をしている。さらに右の側脳室が押しつぶされ、正中構造が反対側へ偏位している。かなりの圧迫効果があるということだ。
医学生医学生
脳の外にある出血だと、硬膜外か硬膜下か、それともくも膜下出血か……ここがいつも混乱します。
ドクタードクター
そこが本問の核心だね。整理しよう。脳実質内の塊状の白い影なら脳出血。脳溝や脳底部の脳槽に沿って入り込むならくも膜下出血。頭蓋骨に接して脳側に凸のレンズ形なら急性硬膜外血腫。頭蓋骨の内面に沿って広く三日月形に広がるなら急性硬膜下血腫だ。
医学生医学生
今回は三日月形なので、急性硬膜下血腫ですね。でも、なぜ硬膜外と硬膜下で形が違うんですか?
ドクタードクター
いい質問だ。解剖実習を思い出してほしい。硬膜は頭蓋縫合の部分で頭蓋骨に強く付着している。だから頭蓋骨と硬膜の間にたまる硬膜外血腫は縫合線を越えられず、限られた範囲で厚みを増してレンズ形になる。一方、硬膜とくも膜の間の硬膜下腔にはそうした仕切りがないので、血液は半球表面に沿って薄く広く広がり、三日月形になるんだ。ただし大脳鎌や小脳テントは越えない。
医学生医学生
なるほど、形の違いは膜の付着の違いから来ているんですね。出血源も違いましたっけ。
ドクタードクター
違う。硬膜外血腫は側頭骨骨折に伴う中硬膜動脈の損傷が典型。硬膜下血腫は脳表と静脈洞をつなぐ架橋静脈や、脳挫傷部の皮質の血管が破綻して起こる。くも膜下出血は多くが脳動脈瘤の破裂で、CTでは鞍上槽を中心に五角形や星形の高吸収域を作るのが典型だね。
医学生医学生
脳出血は、高血圧性なら被殻や視床に多いんでしたよね。今回は脳実質の中に白い塊がないので違う、と。
ドクタードクター
その通り。これで5つ全部の位置づけができた。では臨床的な違いも押さえておこう。硬膜外血腫では受傷後いったん意識が戻る意識清明期がみられることがあり、脳実質の損傷が軽いことが多いので、早く手術すれば予後は比較的よい。
医学生医学生
救急科の実習で、「話していた人が急に意識が落ちたら硬膜外血腫を疑え」と言われました。硬膜下血腫は違うんですか?
ドクタードクター
急性硬膜下血腫は脳挫傷を伴うことが多く、受傷直後から意識障害があることが多い。脳の腫脹も強く出やすく、硬膜外血腫より予後不良だ。血腫が厚い、正中偏位が大きい、意識が悪化していくといった場合は緊急開頭血腫除去術の適応になる。高齢者や抗凝固薬を飲んでいる人では軽い打撲でも起こりうる点にも注意したい。
医学生医学生
慢性硬膜下血腫とはどう違いますか? 外来で認知症のように見えて実は血腫だった、という話を聞いたことがあります。
ドクタードクター
慢性硬膜下血腫は高齢者や大量飲酒者に多く、軽い頭部外傷の数週から数か月後に、頭痛、片麻痺、認知機能低下などで気づかれる。CTでは同じ三日月形でも、時間が経って血液が分解されているので低吸収から等吸収、あるいは混在した吸収値になる。穿頭による血腫洗浄で劇的によくなることもあるから、治療可能な認知症として見逃せないんだ。
医学生医学生
出血はCTで時間とともに白から灰色、黒へと変わっていくんですね。等吸収の時期は見落としそうです。
ドクタードクター
まさにそこが臨床の落とし穴だ。亜急性期で脳と同じ濃さになると、血腫自体より脳溝の消失や正中偏位といった間接所見が手がかりになる。CTを読むときは、白黒だけでなく左右差や正中構造まで必ず確認する習慣をつけておこう。

まとめ

頭部単純CTでは急性期の出血が高吸収域、脳梗塞が低吸収域として描出されるため、まず白か黒かで出血か梗塞かを分け、次に部位と形で出血の種類を鑑別します。脳実質内の塊状影は脳出血、脳槽や脳溝に沿う分布はくも膜下出血、頭蓋骨に接する凸レンズ形は急性硬膜外血腫、頭蓋骨内面に沿って広がる三日月形は急性硬膜下血腫です。形の違いは、硬膜が頭蓋縫合で骨に強く付着しているかどうかという解剖学的な理由によるもので、硬膜外血腫は縫合線を越えず、硬膜下血腫は越えて半球全体に広がります。急性硬膜下血腫は架橋静脈や脳挫傷部の血管の破綻で生じ、受傷直後からの意識障害と強い圧迫効果を伴いやすく、硬膜外血腫より予後不良です。経時的に吸収値が変化する慢性硬膜下血腫も含めて、形と濃度から病態を読み解く力は、頭部外傷の初期診療で欠かせない基本となります。

解答・解説

正解はeです

画像所見の整理

頭部単純CT(造影剤を使わないCT)の水平断像である。CTでは、慣例として画像の左側が患者の右側にあたる。 画像の左側、すなわち患者の右大脳半球の外側では、頭蓋骨の内側に沿って前頭部から側頭・頭頂部にかけて広い範囲に広がる高吸収域(白く写る領域)を認める。この高吸収域は頭蓋骨の内面に沿って薄く長く延び、脳表側の縁がくぼんだ三日月形(凹レンズ形)を呈している。病変は脳実質の外にあり、脳実質そのものの内部には出血を示す高吸収域はみられない。また、血腫の圧迫により右側の脳が内側へ押され、右側脳室の圧排と正中構造(大脳鎌・透明中隔)の患者左側への偏位(正中偏位、midline shift)がみられる。

診断へのプロセス

急性期の出血は、血液中のヘモグロビン(タンパク質)の濃度が高いため、単純CTで高吸収域として描出される。したがってまず、本画像の高吸収域は急性の出血と考えられ、低吸収域として写る脳梗塞は否定的である。 次に、出血の部位と形で鑑別する。 ・脳実質内の塊状の高吸収域 → 脳出血 ・脳溝・脳槽(くも膜下腔)に沿って広がる高吸収域 → くも膜下出血 ・頭蓋骨の内側に接した、脳側に凸の凸レンズ形の高吸収域 → 急性硬膜外血腫 ・頭蓋骨の内側に沿って広く広がる三日月形の高吸収域 → 急性硬膜下血腫 本画像は脳実質外で、大脳半球の表面に沿って広範囲に三日月形に広がっているので、急性硬膜下血腫と診断できる。硬膜下腔には頭蓋縫合のような付着部の制限がないため、血腫は縫合線を越えて半球全体に沿って広がりうる。これが縫合線を越えにくい硬膜外血腫との重要な違いである。

選択肢考察

  1. ×a.  脳出血

    誤り。脳出血(脳内出血)は脳実質内の血管が破綻して起こる出血で、高血圧性のものは被殻、視床、皮質下、小脳、橋に好発する。CTでは脳実質内部に境界明瞭な塊状の高吸収域として描出される。本画像の高吸収域は脳実質の外側で頭蓋骨内面に沿っており、脳実質内に出血巣はみられない。

  2. ×b.  脳梗塞

    誤り。脳梗塞は脳動脈の閉塞による虚血で脳組織が壊死する病態であり、CTでは閉塞血管の支配領域に一致した低吸収域(黒っぽく写る領域)として描出される。発症直後の超急性期にはCTで変化が乏しいことも多い。なお、閉塞血管が再開通すると梗塞巣内に出血(出血性梗塞)を生じ、低吸収域内に高吸収域が混じることがあるが、その場合も病変は脳実質内の血管支配領域に一致する。本画像の所見は脳実質外の高吸収域であり、脳梗塞には合致しない。

  3. ×c.  くも膜下出血

    誤り。くも膜下出血は、多くが脳動脈瘤の破裂によって生じ、くも膜下腔に血液が広がる。CTでは脳底部の脳槽(鞍上槽、迂回槽、シルビウス裂など)に高吸収域が広がり、鞍上槽を中心とした五角形(ペンタゴン)や星形の高吸収域が典型的である。出血は脳溝に入り込む形で分布する。本画像は脳表を覆うように三日月形に広がる塊状の血腫であり、脳底槽や脳溝に沿った分布ではない。

  4. ×d.  急性硬膜外血腫

    誤り。急性硬膜外血腫は、頭部外傷による頭蓋骨骨折などで主に中硬膜動脈が損傷し、頭蓋骨と硬膜の間に血液がたまる病態である。硬膜は頭蓋縫合部で頭蓋骨に強く付着しているため、血腫は縫合線を越えにくく、限局して厚みを増し、CTでは脳側に凸の凸レンズ形(両凸レンズ形)の高吸収域となる。本画像の血腫は半球表面に沿って広く薄く広がる三日月形であり、凸レンズ形ではない。

  5. ○e.  急性硬膜下血腫

    正解。急性硬膜下血腫は、頭部外傷により脳表の動静脈や、脳表と静脈洞をつなぐ架橋静脈が破綻し、硬膜とくも膜の間(硬膜下腔)に血液がたまる病態である。硬膜下腔には縫合線による制限がないため、血腫は大脳半球の表面に沿って広範囲に広がり、CTでは頭蓋骨内面に沿った三日月形(凹レンズ形)の高吸収域となる。本画像では患者右側の前頭部から側頭・頭頂部にかけて三日月形の高吸収域があり、側脳室の圧排と正中偏位を伴っており、急性硬膜下血腫に典型的な所見である。

頭蓋内出血のCT所見のまとめ

急性期の出血は単純CTで高吸収域となる。時間の経過とともにヘモグロビンが分解されて吸収値が低下し、亜急性期には脳と等吸収、慢性期には低吸収となる。

急性硬膜外血腫と急性硬膜下血腫の比較

急性硬膜外血腫 ・部位: 頭蓋骨と硬膜の間 ・主な出血源: 中硬膜動脈(側頭骨骨折に伴うことが多い)、静脈洞、板間静脈 ・CT: 凸レンズ形の高吸収域。縫合線を越えにくい。 ・臨床: 受傷直後に一時的に意識が回復する意識清明期(lucid interval)がみられることがある。脳実質損傷が軽いことが多く、速やかな開頭血腫除去術で予後は比較的良好である。 急性硬膜下血腫 ・部位: 硬膜とくも膜の間 ・主な出血源: 脳挫傷部の皮質動静脈、架橋静脈 ・CT: 三日月形の高吸収域。縫合線を越えて広がるが、大脳鎌・小脳テントは越えない。 ・臨床: 脳挫傷を伴うことが多く、受傷直後から意識障害を示すことが多い。強い脳の腫脹と正中偏位をきたしやすく、硬膜外血腫より予後不良である。高齢者や抗凝固薬内服者では軽微な外傷でも起こりうる。 ・治療: 厚い血腫や正中偏位が大きい場合、意識障害が進行する場合には、緊急の開頭血腫除去術を行う。

慢性硬膜下血腫との違い

慢性硬膜下血腫は高齢者やアルコール多飲者に多く、軽微な頭部外傷の数週~数か月後に頭痛、片麻痺、認知機能低下などで発症する。CTでは三日月形の低吸収~等吸収~混合吸収域となり、穿頭血腫洗浄術が行われる。

POINT

・急性期の頭蓋内出血は単純CTで高吸収域、脳梗塞は低吸収域として描出される。 ・三日月形(凹レンズ形)の脳実質外高吸収域 → 急性硬膜下血腫(架橋静脈・脳表血管の破綻、縫合線を越える)。 ・凸レンズ形 → 急性硬膜外血腫(中硬膜動脈、縫合線を越えない、意識清明期)。 ・脳槽の五角形・星形の高吸収域 → くも膜下出血。 ・CTは画像の左側が患者の右側である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。