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脳の「環状交差点」を読み解く―Willis動脈輪で後交通動脈を見つけるコツ

第101回医師国家試験 B問題 第42問

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第101回 B問題 第42問

Willis動脈輪の模式図を示す。 後交通動脈はどれか。

第101回 B問題 第42問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はWillis動脈輪の模式図から後交通動脈を同定する解剖の問題だ。細い血管を一本ずつ追うより、まず太い「幹」になる血管を見つけて全体の向きをつかむのがコツだよ。図の中でいちばん目立つ血管はどれかな。
医学生医学生
下から上に伸びている太い1本ですね。下端がY字になっているので、左右の椎骨動脈が合流した脳底動脈だと思います。
ドクタードクター
その通り。脳底動脈は先端で左右に分かれ、外側へ弓状に走る。これが後大脳動脈だ。つまり図の下側が後方、上側が前方だと分かる。では左右の外側にある太く曲がった血管は?
医学生医学生
前方循環の主役なので内頸動脈でしょうか。そこからさらに外側へ伸びるのが中大脳動脈ですか。
ドクタードクター
正解。内頸動脈から前内側、図でいう上方へ向かう細い枝が前大脳動脈の水平部、いわゆるA1で、左右のA1は正中の短い前交通動脈でつながる。ここまで来れば輪の残りは1か所だけだね。
医学生医学生
内頸動脈と後大脳動脈の間を前後方向に結ぶ細い血管……それが後交通動脈ですね。
ドクタードクター
そう。内頸動脈と後大脳動脈を縦に結んでいる細い血管が答えだ。前方の内頸動脈系と後方の椎骨脳底動脈系をつなぐ連絡路なんだ。紛らわしいほかの部位も確認しておこう。
医学生医学生
正中で左右をつなぐ短い横向きの血管は、名前が似ていて最初は混同しかけました。
ドクタードクター
前交通動脈だね。「前」は左右の前大脳動脈を横につなぎ、「後」は内頸動脈と後大脳動脈を縦につなぐ。向きで覚えると間違えにくい。内頸動脈から前交通動脈までの区間は前大脳動脈A1、外側の太い弯曲部は内頸動脈そのもの、正中の太い血管の先端は脳底動脈から後大脳動脈が分かれるところで、どれも後交通動脈ではないよ。
医学生医学生
解剖実習で脳を取り出したとき、視交叉や乳頭体の周りを血管がぐるっと囲んでいたのを思い出しました。あれがWillis動脈輪なんですね。
ドクタードクター
いい記憶だ。構成は前交通動脈、左右の前大脳動脈A1、内頸動脈の終末部、後交通動脈、後大脳動脈P1。中大脳動脈や脳底動脈は輪の構成要素には含めないのが一般的だ。
医学生医学生
この輪があれば、どこか1本詰まっても大丈夫ということですか。
ドクタードクター
ゆっくり狭窄が進む場合には側副血行路として働くことが期待できる。ただし変異がとても多く、完全な輪をもつ人は半数に満たないとされる。後大脳動脈が主に後交通動脈経由で内頸動脈から血流を受ける胎児型後大脳動脈も有名な変異だ。だから「輪があるから安心」とは言えないんだ。
医学生医学生
臨床的にはやはり脳動脈瘤との関係が大事ですよね。脳外科の実習で、くも膜下出血の患者さんの血管造影を見せてもらいました。
ドクタードクター
そうだね。嚢状動脈瘤はWillis動脈輪とその近傍の分岐部に好発し、前交通動脈、内頸動脈-後交通動脈分岐部、中大脳動脈分岐部が三大好発部位だ。特に内頸動脈-後交通動脈分岐部の動脈瘤は、すぐそばを走る動眼神経を圧迫することがある。
医学生医学生
瞳孔散大を伴う動眼神経麻痺ですね。副交感線維が神経の表層を走るから、圧迫で瞳孔症状が出やすいとCBTの勉強で覚えました。
ドクタードクター
完璧だ。散瞳を伴う動眼神経麻痺は破裂前の動脈瘤のサインになりうるから、見逃してはいけない。糖尿病などによる虚血性の動眼神経麻痺では瞳孔が比較的保たれやすい、という対比も覚えておこう。解剖の一本の血管が、そのまま救急の判断につながるんだ。

まとめ

Willis動脈輪は脳底部で視交叉や乳頭体を囲む動脈吻合で、前交通動脈、前大脳動脈A1、内頸動脈、後交通動脈、後大脳動脈P1からなります。模式図では、まず正中の太い脳底動脈とその先端から分かれる後大脳動脈、外側の太い内頸動脈を同定すると、内頸動脈と後大脳動脈を前後に結ぶ細い血管として後交通動脈が見つかります。前交通動脈は左右の前大脳動脈を横に結ぶ点で区別でき、輪は前方循環と後方循環、左右の循環をつなぐ側副路ですが変異が多いことも重要です。前交通動脈、内頸動脈-後交通動脈分岐部、中大脳動脈分岐部は脳動脈瘤の三大好発部位で、内頸動脈-後交通動脈分岐部動脈瘤は散瞳を伴う動眼神経麻痺の原因となりえます。血管の位置関係を理解することは、脳卒中や動脈瘤の画像診断・症候学の土台になります。

解答・解説

正解はdです

Willis動脈輪(大脳動脈輪)は、脳底部(視交叉・下垂体茎・乳頭体を取り囲む位置)にある輪状の動脈吻合で、前方の内頸動脈系と後方の椎骨脳底動脈系、さらに左右の循環を互いにつなぐ。模式図を読むときは、まず太い血管を手がかりに全体の位置関係を確認するとよい。

図の読み方

・下方から上行する太い1本の血管は、左右の椎骨動脈(図下端のY字部分)が合流してできた脳底動脈である。その先端で左右に分かれて弓状に外側へ走るのが後大脳動脈である。 ・左右外側にある太く弯曲した血管は内頸動脈で、ここからさらに外側へ伸びる部分が中大脳動脈に相当する。 ・内頸動脈から前内側(図の上方)へ向かう細い血管が前大脳動脈(水平部、A1)で、左右の前大脳動脈は正中で短い前交通動脈によって結ばれ、その先は上方へ平行に走る(A2以降)。 ・内頸動脈と後大脳動脈を前後方向に結ぶ細い血管が後交通動脈である。 設問は後交通動脈を問うているので、内頸動脈(③)と後大脳動脈の間を縦に結んでいる④を選べばよい。Willis動脈輪は「前交通動脈-前大脳動脈(A1)-内頸動脈-後交通動脈-後大脳動脈(P1)」が左右でつながった輪であると覚えておけば、どの模式図でも同定できる。

選択肢考察

  1. ×a.  ①

    ①は正中で左右の前大脳動脈をつなぐ短い横走血管であり、前交通動脈である。左右の内頸動脈系をつなぐ吻合路で、脳動脈瘤(嚢状動脈瘤)の好発部位として臨床的に極めて重要である。

  2. ×b.  ②

    ②は内頸動脈から前内側へ向かい、前交通動脈に至るまでの血管であり、前大脳動脈の水平部(A1部)である。前交通動脈より遠位のA2部以降は大脳半球内側面へ上行し、前頭葉・頭頂葉の内側面(下肢の運動野・感覚野を含む)を灌流する。

  3. ×c.  ③

    ③は左右外側にある太く弯曲した血管で、内頸動脈である。内頸動脈は前大脳動脈(②)を分岐した後、外側へ向かって中大脳動脈に移行する。また後方へ後交通動脈(④)を出して後大脳動脈と連絡する。

  4. ○d.  ④

    ④は内頸動脈(③)と、脳底動脈から分かれた後大脳動脈とを前後方向に結ぶ細い血管であり、後交通動脈である。前方循環(内頸動脈系)と後方循環(椎骨脳底動脈系)を連絡する唯一の経路で、一方が閉塞したときの側副血行路として働く。内頸動脈から後交通動脈が分岐する部位(IC-PC分岐部)は脳動脈瘤の好発部位であり、ここの動脈瘤が拡大すると近傍を走る動眼神経を圧迫して、散瞳を伴う動眼神経麻痺をきたすことがある。

  5. ×e.  ⑤

    ⑤は正中を上行する太い脳底動脈の先端部、すなわち左右の後大脳動脈が分岐する部位を指している(後大脳動脈の起始部とみなすこともできる)。後大脳動脈は後頭葉(視覚野)や側頭葉下面、視床などを灌流する。いずれにしても後交通動脈ではない。

Willis動脈輪の構成

・前交通動脈(1本、正中) ・左右の前大脳動脈(A1部) ・左右の内頸動脈(終末部) ・左右の後交通動脈 ・左右の後大脳動脈(P1部) 中大脳動脈は内頸動脈の最大の分枝だが、輪そのものの構成要素には含めないのが一般的である。脳底動脈も輪の構成要素ではなく、輪へ血液を供給する幹である。

機能

内頸動脈系(前方循環)と椎骨脳底動脈系(後方循環)、および左右の循環を連絡し、一側の主幹動脈が徐々に狭窄・閉塞した場合に側副血行路として脳血流を保つ。ただし、構成血管の低形成や欠損などの変異は多く、完全な輪が形成されている人は半数に満たないとされる。後大脳動脈が主に内頸動脈から後交通動脈経由で血流を受ける「胎児型後大脳動脈」もよく知られた変異である。

脳動脈瘤との関係

嚢状脳動脈瘤の多くはWillis動脈輪とその近傍の分岐部に生じ、前交通動脈、内頸動脈-後交通動脈分岐部、中大脳動脈分岐部が三大好発部位である。破裂すればくも膜下出血をきたす。内頸動脈-後交通動脈分岐部動脈瘤は動眼神経を圧迫し、瞳孔散大を伴う動眼神経麻痺で発見されることがある(動眼神経の副交感線維は神経の表層を走るため、圧迫で瞳孔症状が出やすい)。

主な灌流域

・前大脳動脈:大脳半球内側面(前頭葉・頭頂葉内側)、下肢の運動野・感覚野 ・中大脳動脈:大脳半球外側面の大部分、顔面・上肢の運動野・感覚野、優位半球では言語野 ・後大脳動脈:後頭葉(一次視覚野)、側頭葉下内側面、視床の一部

POINT

・後交通動脈は内頸動脈と後大脳動脈を結ぶ血管で、前方循環と後方循環をつなぐ。 ・前交通動脈は左右の前大脳動脈を正中で結ぶ。 ・Willis動脈輪=前交通動脈+前大脳動脈(A1)+内頸動脈+後交通動脈+後大脳動脈(P1)。 ・脳動脈瘤の好発部位:前交通動脈、内頸動脈-後交通動脈分岐部、中大脳動脈分岐部。IC-PC動脈瘤は散瞳を伴う動眼神経麻痺をきたしうる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。