StudyMed医師国家試験

鱗屑を生む「速すぎる表皮」を鎮める―活性型ビタミンD3外用薬が効く皮膚疾患

第100回医師国家試験 G問題 第111問

国試問題にチャレンジ

第100回 G問題 第111問

活性型ビタミンD3外用薬が有効なのはどれか。

  1. a.接触皮膚炎
  2. b.蕁麻疹
  3. c.乾癬
  4. d.癜風
  5. e.疥癬

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、活性型ビタミンD3外用薬という薬の作用機序から、それが効く皮膚疾患を選ぶ問題だ。病名を丸暗記するより、「この薬は皮膚のどこに、何をする薬なのか」を考えると自然に答えが出るよ。まず、ビタミンDと聞いて何を思い浮かべるかな。
医学生医学生
生理学の講義で習った、腸管からのカルシウム吸収を促すホルモン、というイメージが強いです。皮膚との関係は、紫外線で皮膚で合成されることくらいしか思いつきません。
ドクタードクター
それが普通の反応だね。実は表皮の角化細胞(ケラチノサイト)にもビタミンD受容体があって、活性型ビタミンD3が結合すると、角化細胞の過剰な増殖を抑え、正常な分化、つまり角化を促すんだ。さらに炎症にかかわる免疫反応を調整する作用もある。
医学生医学生
増殖を抑えて分化を促す……ということは、表皮の細胞が増えすぎている病気に効くわけですね。
ドクタードクター
その通り。では、選択肢の中で表皮の角化細胞が異常に増殖している疾患はどれだろう。
医学生医学生
乾癬だと思います。皮膚科の臨床実習で、肘や膝に銀白色の厚い鱗屑がついた紅斑の患者さんを見ました。
ドクタードクター
正解。乾癬では、細胞が基底層から角層に達して剥がれ落ちるまでのターンオーバーが、正常の約4週間から数日程度にまで短縮する。だから角化が追いつかず、厚い鱗屑を伴う紅斑ができる。背景にはIL-23/Th17系を中心とした免疫異常があって、角化細胞の増殖と炎症が互いに悪循環をつくっているんだ。活性型ビタミンD3外用薬はその両方に作用するから、ステロイド外用薬と並ぶ乾癬外用療法の基本薬になっている。
医学生医学生
鱗屑を剥がすと点状に出血するAuspitz現象や、擦れた場所に皮疹が出るKöbner現象も、CBTの勉強で覚えました。
ドクタードクター
よく覚えているね。好発部位が肘・膝・頭部・腰部と擦れやすい場所なのも、Köbner現象と関係している。では、ほかの選択肢がなぜ違うのかを見ていこう。接触皮膚炎はどうかな。
医学生医学生
湿疹なので炎症を抑えればよくて、ステロイド外用薬が中心だと思います。でも、湿疹でも表皮は厚くなるので少し効きそうな気もしてしまいます。
ドクタードクター
迷うポイントだね。接触皮膚炎は、触れた物質による刺激やIV型アレルギーで起こる湿疹・皮膚炎で、角化細胞の増殖異常が本態ではない。治療は原因物質をパッチテストなどで特定して避けることと、ステロイド外用薬だ。むしろビタミンD3外用薬そのものが刺激感や接触皮膚炎の原因になることもあるくらいなんだ。
医学生医学生
蕁麻疹は、肥満細胞からヒスタミンが出て真皮がむくむ病気なので、そもそも表皮の病気ではないですね。
ドクタードクター
そう。膨疹は通常24時間以内に跡を残さず消えるし、病変は真皮の血管反応だから外用薬は治療の中心にならない。第2世代抗ヒスタミン薬の内服が基本で、難治の慢性蕁麻疹では抗IgE抗体のオマリズマブなどが使われる。
医学生医学生
残りの癜風と疥癬は感染症なので、原因微生物を叩かないと治らないですよね。
ドクタードクター
その通り。癜風は皮膚常在真菌のマラセチア属による表在性真菌症で、胸背部に細かい鱗屑を伴う淡褐色斑や脱色素斑ができる。治療はイミダゾール系などの抗真菌薬外用だ。疥癬はヒゼンダニが角層に寄生する感染症で、夜間の強いかゆみや疥癬トンネルが特徴。イベルメクチン内服やフェノトリンローション外用で駆除する。
医学生医学生
疥癬にステロイドを塗ると、かえって悪化させてしまうと聞いたことがあります。
ドクタードクター
大事なポイントだね。湿疹と誤認してステロイドを塗り続けると、ダニが増えて悪化し、高齢者施設などで集団発生の原因にもなる。「かゆい皮疹にとりあえずステロイド」は危ないんだ。
医学生医学生
薬の作用機序と病態が一致するかで考えれば、乾癬だけが当てはまると整理できました。
ドクタードクター
いいまとめだ。最後に臨床での注意点を押さえよう。活性型ビタミンD3外用薬は、ステロイド外用薬でみられる皮膚萎縮などの局所副作用が少なく、長期使用に向いている。両者の配合剤も広く使われている。ただし広範囲に大量に塗ると吸収されて高カルシウム血症を起こすことがあり、特に腎機能が低下した人では注意が必要だ。
医学生医学生
皮膚に塗る薬でも、全身の電解質に影響するんですね。使用量の確認が大切だと思いました。
ドクタードクター
そうなんだ。また乾癬の治療は外用だけでなく、ナローバンドUVBなどの光線療法、アプレミラストやシクロスポリンなどの内服、TNF-α・IL-17・IL-23を標的とする生物学的製剤と段階的に広がる。一方で、ステロイドの全身投与は減量・中止時に膿疱性乾癬を誘発することがあるから、乾癬では原則として避ける。なお、活性型ビタミンD3外用薬は魚鱗癬や掌蹠角化症などの角化症にも使われることも覚えておこう。

まとめ

活性型ビタミンD3外用薬(カルシポトリオール、マキサカルシトール、タカルシトールなど)は、角化細胞のビタミンD受容体に作用して過剰な増殖を抑え、正常な分化を促し、免疫反応も調整します。そのため、表皮のターンオーバーが著しく短縮して厚い鱗屑を伴う紅斑を生じる乾癬に有効で、ステロイド外用薬と並ぶ外用療法の基本薬となっています。接触皮膚炎は原因除去とステロイド外用、蕁麻疹は抗ヒスタミン薬内服、癜風は抗真菌薬外用、疥癬はイベルメクチン内服やフェノトリン外用と、病態に応じて治療が異なります。大量・広範囲の外用では高カルシウム血症に注意が必要で、乾癬ではステロイドの全身投与を原則として避けます。薬の作用機序と疾患の病態を結びつけて考える姿勢は、皮膚科に限らず治療薬選択の基本になります。

解答・解説

正解はcです

問われていること

活性型ビタミンD3外用薬の作用機序を理解し、それが治療に合う皮膚疾患を選べるかを問う問題である。

考え方

活性型ビタミンD3外用薬(カルシポトリオール、マキサカルシトール、タカルシトールなど)は、表皮の角化細胞(ケラチノサイト)にあるビタミンD受容体に結合し、角化細胞の過剰な増殖を抑え、正常な分化(角化)を促す。さらに炎症にかかわる免疫反応を調整する作用もある。したがって、この薬が効くのは「表皮細胞の増殖が亢進し、角化が異常になっている疾患」である。 選択肢のうち、この病態に当てはまるのは乾癬である。乾癬では表皮のターンオーバー(細胞が基底層から角層に達して剥がれ落ちるまでの期間)が正常の約4週間から数日程度にまで短縮し、厚い鱗屑を伴う紅斑を生じる。ほかの選択肢は、アレルギー性・刺激性の炎症(接触皮膚炎)、肥満細胞からのヒスタミン放出による真皮の浮腫(蕁麻疹)、真菌感染(癜風)、ダニの寄生(疥癬)であり、角化細胞の増殖を抑える薬の効果は期待できない。それぞれ原因に応じた治療薬を選ぶ必要がある。

選択肢考察

  1. ×a.  接触皮膚炎

    接触皮膚炎は、皮膚に触れた物質による刺激(刺激性)またはⅣ型アレルギー(アレルギー性)で生じる湿疹・皮膚炎である。治療の基本は原因物質の特定(パッチテストなど)と回避であり、皮疹に対しては強い抗炎症作用をもつ副腎皮質ステロイド外用薬を用い、かゆみには抗ヒスタミン薬の内服を併用する。病態は角化細胞の増殖異常ではないため、活性型ビタミンD3外用薬の適応ではない。むしろビタミンD3外用薬そのものが刺激感や接触皮膚炎の原因となることがある。

  2. ×b.  蕁麻疹

    蕁麻疹は、肥満細胞から放出されたヒスタミンなどにより真皮に一過性の浮腫が生じる疾患で、膨疹は通常24時間以内に跡を残さず消える。病変は真皮の血管反応であり表皮の異常ではないため、外用薬は基本的に治療の中心とならない。治療は原因・悪化因子の除去と、第2世代抗ヒスタミン薬を中心とした内服である。難治の慢性蕁麻疹では抗IgE抗体(オマリズマブ)などが用いられる。

  3. ○c.  乾癬

    乾癬は、IL-23/Th17 系を中心とした免疫異常を背景に、表皮角化細胞が過剰に増殖し角化が異常となる慢性炎症性皮膚疾患である。境界明瞭で銀白色の厚い鱗屑を伴う紅斑が、肘・膝・頭部・腰部など擦れやすい部位に好発し、Auspitz 現象や Köbner 現象がみられる。活性型ビタミンD3は角化細胞の増殖を抑制して分化を促し、炎症も調整するため、乾癬の外用治療の第一選択の一つとなる。副腎皮質ステロイド外用薬と並ぶ基本薬で、両者の配合剤も広く用いられる。なお、広範囲に大量に外用すると吸収されて高カルシウム血症をきたすことがあるため、使用量に注意する。

  4. ×d.  癜風

    癜風は、皮膚の常在真菌であるマラセチア属(Malassezia、かつては Malassezia furfur や Pityrosporum とよばれた)による表在性皮膚真菌症である。胸背部などに細かい鱗屑を伴う淡褐色斑(黒色癜風)や脱色素斑(白色癜風)を生じ、高温多湿・多汗が誘因となる。皮膚常在菌が増殖して起こる日和見的な感染症であり、治療はイミダゾール系などの抗真菌薬の外用である。感染症であるため活性型ビタミンD3外用薬は無効である。

  5. ×e.  疥癬

    疥癬はヒゼンダニ(疥癬虫)が角層に寄生して起こる感染症で、夜間に強いかゆみ、指間や外陰部の丘疹・結節、疥癬トンネルがみられる。高齢者施設や病院での集団発生が問題となる。治療はダニを駆除する薬で、イベルメクチンの内服、フェノトリンローションの外用が中心であり、ほかにクロタミトンやイオウ含有外用薬が用いられる(かつてはγ-BHC〈リンデン〉や安息香酸ベンジルも使われた)。ステロイド外用薬は悪化させるおそれがあり、活性型ビタミンD3外用薬も効果はない。

乾癬の治療の全体像

・外用療法:副腎皮質ステロイド外用薬、活性型ビタミンD3外用薬(およびその配合剤) ・光線療法:ナローバンドUVB、PUVA(ソラレン+長波長紫外線)など ・内服療法:シクロスポリン、レチノイド(エトレチナート)、メトトレキサート、アプレミラスト(PDE4阻害薬)、JAK/TYK2阻害薬など ・生物学的製剤:TNF-α、IL-17、IL-23 などを標的とする抗体製剤 副腎皮質ステロイドの全身投与は、減量・中止の際に膿疱性乾癬を誘発・悪化させることがあるため、乾癬では原則として避ける。

活性型ビタミンD3外用薬のポイント

・代表薬:カルシポトリオール、マキサカルシトール、タカルシトール ・作用:角化細胞の増殖抑制と分化誘導、免疫調整作用 ・長所:ステロイド外用薬でみられる皮膚萎縮などの局所副作用が少なく、長期使用に向く ・注意点:大量・広範囲使用による高カルシウム血症(腎機能低下例で起こりやすい)、塗布部位の刺激感 ・乾癬以外に、角化症(魚鱗癬、掌蹠角化症など)にも用いられる

選択肢の疾患と主な治療

・接触皮膚炎:原因除去、ステロイド外用 ・蕁麻疹:抗ヒスタミン薬内服 ・乾癬:ステロイド外用、活性型ビタミンD3外用 ・癜風:抗真菌薬外用 ・疥癬:イベルメクチン内服、フェノトリン外用

POINT

・活性型ビタミンD3外用薬は角化細胞の増殖を抑え分化を促す → 乾癬(ほか角化症)に有効。 ・乾癬の外用療法の二本柱はステロイドと活性型ビタミンD3(配合剤もある)。 ・大量外用では高カルシウム血症に注意。 ・乾癬ではステロイドの全身投与は膿疱性乾癬誘発のおそれがあり原則避ける。 ・癜風はマラセチアによる真菌症(抗真菌薬)、疥癬はヒゼンダニ(イベルメクチン、フェノトリン)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。