StudyMed医師国家試験

出た尿は語るが、残った尿は語らない―尿流測定でわかること・わからないこと

第100回医師国家試験 G問題 第101問

国試問題にチャレンジ

第100回 G問題 第101問

尿流測定で分からないのはどれか。

  1. a.排尿量
  2. b.残尿量
  3. c.排尿時間
  4. d.最大尿流量率
  5. e.排尿パターン

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、尿流測定、いわゆるウロフロメトリーで何が評価できるかを問う問題だ。着眼点は「この検査はどこで何を測っているのか」という原理。そこを押さえれば迷わず解けるよ。まず、尿流測定がどんな検査かイメージできるかな。
医学生医学生
泌尿器科の臨床実習で見学しました。センサーのついた便器に患者さんが普通に排尿するだけの検査でした。
ドクタードクター
そう、カテーテルも使わない非侵襲的な検査だ。尿流量計は、出てくる尿の量を時間経過に沿って連続的に記録している。結果は、横軸が時間、縦軸が1秒あたりの尿量、つまり尿流量率の曲線として表される。この曲線から何が読み取れると思う?
医学生医学生
曲線の一番高いところが最大尿流量率で、曲線の始まりから終わりまでが排尿時間でしょうか。
ドクタードクター
その通り。そして曲線の下の面積が、1回の排尿で出た排尿量に相当する。曲線の形そのものからは排尿パターンもわかる。つまり選択肢のうち4つは、すべてこの1本の曲線から読み取れるんだ。
医学生医学生
ということは、わからないのは残尿量ですね。でも、排尿量がわかるなら、膀胱の中の量も推定できそうな気がしてしまいます。
ドクタードクター
そこが落とし穴だね。尿流量計が測っているのは「膀胱から外に出た尿」だけ。排尿前に膀胱にどれだけ溜まっていたかはわからないから、差し引きで残尿を出すこともできない。残尿量は、排尿直後に経腹超音波で膀胱の縦・横・前後径を測って推定するか、導尿で実際に回収して測る必要がある。
医学生医学生
実習では、尿流測定のすぐ後に看護師さんがエコーを当てていました。あれが残尿測定だったんですね。
ドクタードクター
そうそう。臨床ではこの2つをセットで行うことが多い。では、それぞれの指標の意味も確認しよう。最大尿流量率はどのくらいが正常かな。
医学生医学生
男性で15mL/秒以上くらいだったと思います。
ドクタードクター
正解。おおむね15mL/秒以上が正常で、10mL/秒未満なら排尿障害を強く疑う。最も重要な指標で、前立腺肥大症の薬物療法や手術の効果判定にも使われる。ただし排尿量が少ないと低く出てしまうから、評価には一般に150mL以上の排尿量が望ましいとされているんだ。
医学生医学生
だから排尿量もあわせて記録する意味があるんですね。排尿時間はどんなときに延びますか。
ドクタードクター
前立腺肥大症のような下部尿路の閉塞や、膀胱の収縮力が落ちる排尿筋低活動で延長する。排尿パターンでは、正常は立ち上がりが速く頂点の高いベル型。前立腺肥大症では低く平坦で長く延びた曲線、尿道狭窄では台形状の平坦な曲線、腹圧排尿や排尿筋低活動では途中で途切れる断続的な曲線になる。
医学生医学生
曲線の形を見るだけで、ある程度原因が絞れるんですね。じゃあ、尿の勢いが弱いとわかれば、前立腺肥大症の閉塞だと診断できますか。
ドクタードクター
いい疑問だね。実はそこが尿流測定のもう1つの限界なんだ。尿流量率が低いとき、それが出口の閉塞によるのか、膀胱の収縮力低下によるのかは尿流測定だけでは区別できない。両者を見分けるには、膀胱内圧と尿流を同時に測る内圧尿流検査が必要になる。
医学生医学生
閉塞なら膀胱が強く押しても出にくい、収縮力低下なら押す力そのものが弱い、ということですね。
ドクタードクター
その通り。手術を考えるような場面では、この区別が治療効果を左右するから重要だよ。前立腺肥大症の評価全体では、国際前立腺症状スコアによる症状評価、直腸診、超音波での前立腺体積測定、尿流測定、残尿測定、PSA測定などを組み合わせて重症度と治療方針を決めていく。
医学生医学生
OSCEの医療面接で排尿症状を聞く練習をしましたが、その後の検査の流れまでつながりました。
ドクタードクター
臨床で特に注意したいのは、残尿が多い患者さんだ。残尿が増えると尿路感染や、さらに進めば尿閉や水腎症につながることもある。尿の勢いだけでなく、膀胱に何が残っているかを必ず確認する習慣をつけておこう。

まとめ

尿流測定(ウロフロメトリー)は、尿流量計に普段どおり排尿してもらい、排出される尿の流量を時間経過とともに記録する非侵襲的な検査です。尿流曲線から排尿量、排尿時間、最大尿流量率、平均尿流量率、排尿パターンが評価でき、最大尿流量率はおおむね15mL/秒以上が正常、10mL/秒未満では排尿障害を強く疑います。一方、測っているのは体外に出た尿だけなので残尿量はわからず、排尿直後の経腹超音波や導尿で別に測定する必要があります。また尿流低下が閉塞によるのか排尿筋収縮力低下によるのかも区別できず、その鑑別には内圧尿流検査が必要です。検査の原理から「わかること・わからないこと」を整理しておくと、前立腺肥大症などの排尿障害を評価する際の検査の組み合わせを自然に理解できます。

解答・解説

正解はbです

尿流測定(ウロフロメトリー)は、患者が尿流量計を備えた便器や漏斗に普段どおり排尿するだけで、排出される尿の量を時間経過とともに連続的に記録する検査である。カテーテルなどを用いない非侵襲的な検査であり、前立腺肥大症をはじめとする下部尿路閉塞や、膀胱の収縮力低下(排尿筋低活動)などの排尿障害のスクリーニングや治療効果判定に広く用いられる。 記録されるのは「時間」と「1秒あたりに出てくる尿量(尿流量率、mL/秒)」の関係を示す曲線(尿流曲線)である。この曲線から、曲線の下の面積に相当する排尿量、排尿の開始から終了までの排尿時間、曲線の頂点にあたる最大尿流量率、平均尿流量率、そして曲線の形そのもの(排尿パターン)が読み取れる。 つまり尿流測定で分かるのは「膀胱から外へ出た尿」に関する情報だけであり、排尿後に膀胱内に残った尿については何も分からない。残尿量を知るには、排尿直後に経腹超音波検査で膀胱容積を測定するか、導尿で実際に回収する必要がある。このため実際の臨床では、尿流測定の直後に超音波で残尿量を測定する組み合わせで評価することが多い。

選択肢考察

  1. ×a.  排尿量

    尿流量計は排出された尿の重量や量を連続的に測定しているため、1回の排尿で出た総排尿量が分かる。尿流曲線の下の面積が排尿量に相当する。最大尿流量率は排尿量の影響を受け、排尿量が少ないと低く出るため、評価には一般に150mL以上の排尿量が望ましいとされる。その意味でも排尿量は尿流測定の重要な項目である。

  2. ○b.  残尿量

    残尿量は排尿後に膀胱内に残っている尿の量であり、体外に出た尿を測る尿流測定では評価できない。残尿量は排尿直後に経腹超音波検査で膀胱の縦・横・前後径を測って推定する(非侵襲的で一般的)か、導尿によって直接測定する。前立腺肥大症では、尿流測定と残尿測定を組み合わせて排尿障害の程度を評価する。

  3. ×c.  排尿時間

    尿流曲線は時間軸に沿って記録されるため、尿が出始めてから出終わるまでの排尿時間が分かる。前立腺肥大症などの下部尿路閉塞や、膀胱の収縮力低下では排尿時間が延長する。

  4. ×d.  最大尿流量率

    最大尿流量率(Qmax)は、排尿中に1秒あたりに排出される尿量の最大値で、尿流曲線の頂点の高さにあたる。尿流測定の最も重要な指標であり、成人男性ではおおむね15mL/秒以上が正常とされ、10mL/秒未満では排尿障害(閉塞または排尿筋収縮力低下)が強く疑われる。排尿量によって値が変動するため、排尿量とあわせて評価する。前立腺肥大症に対する薬物療法や手術の効果判定にも用いられる。

  5. ×e.  排尿パターン

    尿流曲線の形から排尿パターンを評価できる。正常では立ち上がりが速く頂点の高いベル型の曲線になる。前立腺肥大症などの閉塞では頂点が低く平坦で長く延びた曲線、尿道狭窄では台形状の平坦な曲線、腹圧排尿や排尿筋低活動では途中で途切れる断続的な曲線がみられる。尿勢の低下、排尿時間の延長、尿線の途絶なども曲線から読み取れる。

尿流測定で得られる主な指標

・排尿量(voided volume) ・排尿時間(voiding time) ・尿流時間(実際に尿が流れていた時間) ・最大尿流量率(Qmax) ・平均尿流量率(Qave)=排尿量÷尿流時間 ・最大尿流量率到達時間 ・尿流曲線のパターン

尿流曲線のパターン

・正常:ベル型 ・前立腺肥大症などの下部尿路閉塞:低く平坦で延長した曲線 ・尿道狭窄:平坦な台形(プラトー)型 ・腹圧排尿、排尿筋低活動:断続的・間欠的な曲線

尿流測定の限界

・残尿量は測定できない(超音波または導尿で測る)。 ・尿流量率の低下が「出口の閉塞」によるのか「膀胱の収縮力低下」によるのかは区別できない。両者の鑑別には、膀胱内圧と尿流を同時に測定する内圧尿流検査(プレッシャーフロースタディ)が必要である。

前立腺肥大症の評価の組み合わせ

国際前立腺症状スコア(IPSS)による症状評価、直腸診、経腹または経直腸超音波による前立腺体積の測定、尿流測定、残尿測定、PSA(前立腺特異抗原)測定などを組み合わせて重症度を判断し、治療方針を決める。

POINT

・尿流測定で分かるのは、排尿量、排尿時間、最大尿流量率、平均尿流量率、排尿パターン。 ・残尿量は尿流測定では分からず、排尿後の超音波検査または導尿で測定する。 ・最大尿流量率は15mL/秒以上がおおむね正常、10mL/秒未満は排尿障害を強く疑う。 ・閉塞と排尿筋収縮力低下の鑑別には内圧尿流検査が必要。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。