StudyMed医師国家試験

検査は診察の代わりにならない―臨床検査の「目的」を整理する

第100回医師国家試験 E問題 第21問

国試問題にチャレンジ

第100回 E問題 第21問

臨床検査の目的として誤っているのはどれか。

  1. a.診断の確定
  2. b.経過の観察
  3. c.予後の推定
  4. d.治療効果の判定
  5. e.身体診察の代用

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、臨床検査を何のために行うのかを問う問題だ。選択肢のうち4つは検査の正しい目的で、1つだけが紛れ込んでいる。診療の中で検査がどんな位置づけにあるかを考えると、答えは自然に見えてくるよ。
医学生医学生
どれも検査でできそうに思えますが、「身体診察の代用」だけ毛色が違う気がします。
ドクタードクター
いい感覚だね。まず前提として、臨床検査には血液や尿、髄液などを調べる検体検査と、心電図や呼吸機能検査、超音波検査のように患者の身体を直接調べる生理機能検査、それにX線やCTなどの画像検査がある。これらはどれも、医療面接と身体診察で立てた仮説、つまり鑑別診断を確かめるために行うものなんだ。
医学生医学生
OSCEの練習で「まず病歴と診察で鑑別を挙げてから検査を考えなさい」と何度も言われました。
ドクタードクター
まさにその順番が診療の基本だ。では正しい目的から確認しよう。まず診断の確定。具体例は思いつくかな。
医学生医学生
癌なら生検の病理組織検査、心筋梗塞なら心電図とトロポニンでしょうか。
ドクタードクター
その通り。感染症なら培養や抗原・遺伝子検査も確定診断に使う。逆に、ある病気を否定する除外診断や、健診でのスクリーニングも診断に関わる重要な目的だね。次に経過の観察はどうだろう。
医学生医学生
肝炎ならAST・ALT、腎疾患ならクレアチニンや尿蛋白を繰り返し測って推移を見る、ということですね。
ドクタードクター
そう。炎症ならCRPの推移、画像なら病変の大きさの変化も追える。一回の値より「変化」に意味があることが多いんだ。では予後の推定は?
医学生医学生
病期分類が予後に関わるのは腫瘍の講義で習いました。でも検査で見通しまで分かるんでしょうか。
ドクタードクター
分かる部分は大きいよ。悪性腫瘍では画像や病理に基づくTNM分類や組織型、肝硬変ならアルブミン・ビリルビン・プロトロンビン時間を含むChild-Pugh分類、心不全ならBNPが予後の目安になる。どれも検査値が土台になっているんだ。
医学生医学生
治療効果の判定は、糖尿病のHbA1cや術後の腫瘍マーカーが分かりやすいですね。
ドクタードクター
そうだね。化学療法後の画像での縮小評価や、抗菌薬投与中の炎症反応も同じ考え方だ。さらに、肝障害・腎障害・骨髄抑制といった副作用の監視や、血中薬物濃度の測定も治療管理の大事な一部だよ。
医学生医学生
残る身体診察の代用が誤り、ということですね。でもCTを撮れば聴診しなくても分かることは多くないですか。
ドクタードクター
そこはよく出る疑問だね。圧痛の部位、腹膜刺激症状、心雑音の性状、神経学的所見のように、診察でしか得られない情報はたくさんある。それに、診察所見がないまま検査を並べても、どの検査が必要か選べないし、結果も正しく解釈できない。検査は診察と組み合わせて初めて目的を果たすもので、代わりにはならないんだ。
医学生医学生
臨床実習の総合診療科で、指導医の先生が検査結果より先にお腹を触りに行っていた理由が分かった気がします。
ドクタードクター
いい経験をしたね。最後に臨床での注意点を。検査値は感度・特異度、検査前確率を踏まえて解釈する必要がある。基準範囲は健常者の約95%が入る範囲だから、外れていても直ちに異常とは限らないし、逆に範囲内でも病気を否定できるとは限らない。
医学生医学生
検査前確率が低い人に検査をたくさん出すと、偽陽性に振り回されるということですね。
ドクタードクター
その通り。だからこそ病歴と身体診察で検査前確率を見積もり、必要な検査を選ぶ。その結果を必ず臨床像と照らし合わせる、という流れを身につけておこう。

まとめ

臨床検査の主な目的は、スクリーニングや診断の確定・除外、病態・重症度の評価、経過の観察、治療効果や副作用の判定、予後の推定です。病理組織検査やトロポニン、AST・ALTやクレアチニンの推移、TNM分類やChild-Pugh分類、HbA1cや腫瘍マーカーなど、具体例と結びつけて覚えると整理しやすくなります。一方で診療の基本は医療面接と身体診察であり、検査はそこで立てた鑑別診断を確かめ補うものなので、身体診察の代用にはなりません。検査値は感度・特異度や検査前確率、基準範囲の意味を踏まえ、必ず臨床像と照らし合わせて解釈することが、適切な検査選択と診断推論の土台になります。

解答・解説

正解はeです

臨床検査がどのような目的で行われるのかを問う問題である。 臨床検査には、血液・尿・髄液などの検体を調べる検体検査と、心電図・呼吸機能検査・超音波検査・エックス線撮影など患者の身体を直接調べる生理機能検査・画像検査が含まれる。これらは医療面接(問診)と身体診察から立てた仮説(鑑別診断)を検証し、診療のさまざまな段階で判断材料を提供するために行う。その目的は、診断(スクリーニング・確定診断・除外診断)、病態や重症度の把握、経過の観察、治療効果や副作用の判定、予後の推定などに整理できる。 一方、診療の基本は医療面接と身体診察であり、臨床検査はそれを補って裏づける位置づけにある。検査で身体診察を置き換えることはできないという点が本問の要点となる。

選択肢考察

  1. ×a.  診断の確定

    臨床検査の最も重要な目的の一つである。問診と身体診察で絞り込んだ鑑別診断を、検査で確かめたり否定したりする。たとえば悪性腫瘍では病理組織検査、感染症では培養検査や抗原・遺伝子検査、心筋梗塞では心電図と心筋トロポニンなどが診断の確定に用いられる。臨床検査の目的として正しい。

  2. ×b.  経過の観察

    病気の勢いや臓器障害の推移を、繰り返し行う検査で客観的に追跡できる。たとえば肝炎でのAST・ALT、腎疾患での血清クレアチニンや尿蛋白、炎症性疾患でのCRPの推移、画像による病変の大きさの変化などが用いられる。臨床検査の目的として正しい。

  3. ×c.  予後の推定

    検査結果は病気の見通しを立てる材料にもなる。悪性腫瘍では画像や病理所見に基づく病期(TNM分類)や組織型、肝硬変では血清アルブミン・ビリルビン・プロトロンビン時間などを含むChild-Pugh分類、心不全ではBNP値などが予後の推定に使われる。臨床検査の目的として正しい。

  4. ×d.  治療効果の判定

    治療前後の検査値や画像を比べることで、治療が効いているかを客観的に判断できる。糖尿病でのHbA1c、術後の腫瘍マーカーの推移、抗菌薬治療中の炎症反応、化学療法後の画像による腫瘍縮小の評価などが例である。また、薬剤の副作用(肝障害・腎障害・骨髄抑制など)の監視や血中薬物濃度の測定も治療管理の一部として行われる。臨床検査の目的として正しい。

  5. ○e.  身体診察の代用

    身体診察は、視診・触診・打診・聴診によって患者の状態を直接把握する診療の基本であり、検査を選ぶ根拠そのものを与える。身体診察で得られる情報(圧痛の部位、腹膜刺激症状、心雑音の性状、神経学的所見など)の中には検査では得られないものも多く、所見がないまま検査を並べても適切な解釈はできない。臨床検査は身体診察と組み合わせて使うことで初めて上記の目的を果たすものであり、身体診察の代わりにはならない。したがって臨床検査の目的として誤っており、本問の正解である。

臨床検査の分類

・検体検査:血液学的検査、生化学検査、免疫血清検査、微生物学的検査、尿・便検査、病理検査、遺伝子検査など ・生理機能検査:心電図、呼吸機能検査、脳波、筋電図、超音波検査など ・画像検査:エックス線撮影、CT、MRI、核医学検査など(生理機能検査と区別して扱われることが多い)

臨床検査の主な目的

・スクリーニング(健康診断などでの疾患の拾い上げ) ・診断の確定および除外 ・病態・重症度の評価 ・経過の観察 ・治療効果・副作用の判定 ・予後の推定

診断の基本的な流れ

医療面接と身体診察で鑑別診断を立て、それを確かめるのに必要な検査を選んで行う。検査値は感度・特異度、基準範囲、検査前確率を踏まえて解釈し、必ず臨床像と照らし合わせて判断する。基準範囲は健常者の約95%が含まれる範囲であり、範囲外であっても直ちに異常とは限らない。

POINT

・臨床検査の目的:診断の確定、経過観察、予後推定、治療効果(副作用)の判定など。 ・医療面接と身体診察が診療の基本であり、臨床検査はそれを補うもので代用にはならない。 ・検査は臨床所見と組み合わせて解釈する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。