StudyMed医師国家試験

同じ「利尿薬もどき」の兄弟―Bartter症候群とGitelman症候群の共通点はどこにある?

第100回医師国家試験 B問題 第58問

国試問題にチャレンジ

第100回 B問題 第58問

Bartter症候群とGitelman症候群とに共通にみられるのはどれか。

  1. a.高血圧
  2. b.高カリウム血症
  3. c.代謝性アシドーシス
  4. d.低マグネシウム血症
  5. e.高アルドステロン血症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、尿細管の輸送体異常で起こるBartter症候群とGitelman症候群の共通点を問う問題だ。ポイントは「どこの輸送体が壊れているか」と「そこから何が連鎖的に起こるか」。病態生理の流れを追えば、暗記に頼らず解けるよ。まず、それぞれの障害部位は覚えているかな。
医学生医学生
腎生理の講義で、BartterはHenleループの太い上行脚、Gitelmanは遠位曲尿細管と習いました。
ドクタードクター
その通り。Bartter症候群はNKCC2やROMK、ClC-Kbなどの異常で、ループ利尿薬をずっと飲んでいるような状態。Gitelman症候群はサイアザイド感受性のNa-Cl共輸送体NCCの異常で、サイアザイドをずっと飲んでいるような状態だ。どちらもNaClが再吸収されずに尿へ失われる。そうすると体はどう反応する?
医学生医学生
循環血液量が減るので、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系が亢進します。
ドクタードクター
そう。腎血流の低下を感知して高レニン・高アルドステロン血症、つまり続発性アルドステロン症になる。これが両者に共通する所見で、今回の正解だ。
医学生医学生
アルドステロンが高いなら、高血圧になりそうな気がしますが……。
ドクタードクター
そこが一番の引っかけだね。NaClが失われて体液量が減っているうえ、血管拡張作用のあるプロスタグランジン、特にPGE2の産生が増え、アンジオテンシンIIへの血管の反応性も落ちている。だから血圧は正常〜やや低め。高血圧がないことこそ、原発性アルドステロン症との鑑別点なんだ。
医学生医学生
内分泌の講義で、原発性アルドステロン症は低レニン・高血圧と習ったので、そこで区別するんですね。
ドクタードクター
その通り。次にカリウム。上流で再吸収されなかったNaが大量に集合管へ届くと、主細胞のENaCを介したNa再吸収が増え、その電気的勾配でK分泌が促される。そこに高アルドステロンが加わるから、結果は低カリウム血症だ。
医学生医学生
ということは高カリウム血症は逆ですね。酸塩基はどうなりますか。
ドクタードクター
アルドステロンは間在細胞からのH分泌も促すし、低カリウム血症や体液量減少もアルカローシスを助長する。だから代謝性アルカローシスになる。低カリウム血症に代謝性アシドーシスが合併していたら、尿細管性アシドーシスなどを考える場面だね。
医学生医学生
低マグネシウム血症は、ちょっと迷いました。両方で出そうな印象があって。
ドクタードクター
迷いやすいところだ。低マグネシウム血症はGitelman症候群に特徴的な所見なんだ。遠位曲尿細管はMgを能動的に再吸収する部位で、NCCが働かないとそこでのMg再吸収も落ちる。Bartter症候群では正常のことが多い。ただしClC-Kb異常の型では低Mg血症を示すこともあって、区別が難しい例もある。
医学生医学生
尿中カルシウムでも区別できると聞いたことがあります。
ドクタードクター
よく知っているね。太い上行脚では、NaCl再吸収で生じる管腔側正の電位を駆動力にCaやMgが細胞間隙から受動的に再吸収される。Bartterではこれが失われて高Ca尿症となり、腎石灰化を来しうる。一方Gitelmanはサイアザイドと同じで低Ca尿症になる。
医学生医学生
ループ利尿薬はCaを出し、サイアザイドはCaを保つ、という薬理の知識とそのままつながりますね。
ドクタードクター
まさにそこが理解のコツだ。臨床では、低カリウム血症と代謝性アルカローシスをみたら、まず血圧とレニン・アルドステロンを確認する。正常血圧で高レニン・高アルドステロンなら、両症候群のほか、利尿薬の隠れた服用や自己誘発性嘔吐も鑑別に挙がる。嘔吐なら尿中Clが低いのがヒントだ。
医学生医学生
腎臓内科の実習で、原因不明の低K血症の方に尿中電解質を測っていたのはそのためだったんですね。治療はカリウム補充ですか。
ドクタードクター
K・Mgの補充が基本で、スピロノラクトンなどの抗アルドステロン薬やENaC阻害薬を使うこともある。Bartter症候群では、プロスタグランジン産生を抑えるインドメタシンなどのNSAIDsも用いられる。発症時期も違って、Bartterは新生児期〜乳幼児期に羊水過多や成長障害を伴う重症型があり、Gitelmanは学童期〜成人に比較的軽い症状で見つかることが多いよ。

まとめ

Bartter症候群(Henleループ太い上行脚の異常、ループ利尿薬類似)とGitelman症候群(遠位曲尿細管NCCの異常、サイアザイド類似)は、ともにNaCl喪失による循環血液量減少からRAA系が亢進し、高レニン・高アルドステロン血症を呈します。その結果、両者に共通して低カリウム血症と代謝性アルカローシスを来しますが、プロスタグランジン産生亢進などにより血圧は正常〜低値に保たれ、ここが原発性アルドステロン症との鑑別点です。両者の違いは、Gitelman症候群の低マグネシウム血症・低Ca尿症と、Bartter症候群の高Ca尿症(腎石灰化)および早期発症に表れます。治療はK・Mg補充を基本に、抗アルドステロン薬やBartter症候群でのNSAIDsが用いられます。障害部位と利尿薬の作用を対応させて病態を理解することは、電解質異常の鑑別全般に応用できる重要な考え方です。

解答・解説

正解はeです

Bartter症候群とGitelman症候群は、いずれも尿細管でのNaCl再吸収にかかわる輸送体(またはその関連蛋白)の遺伝子異常による疾患で、多くは常染色体劣性遺伝である。障害部位が異なるだけで、基本的な病態生理は共通している。

障害部位

・Bartter症候群:Henleループの太い上行脚。Na+-K+-2Cl-共輸送体(NKCC2)や、それと協調して働くK+チャネル(ROMK)、Cl-チャネル(ClC-Kb)およびその補助蛋白(barttin)などの異常による。ループ利尿薬(フロセミド)を常に服用しているのと似た状態である。 ・Gitelman症候群:遠位曲尿細管のサイアザイド感受性Na+-Cl-共輸送体(NCC)の異常による。サイアザイド系利尿薬を常に服用しているのと似た状態である。

共通する病態の流れ

1. NaClが再吸収されずに尿中へ失われ、循環血液量が減少する。 2. 腎血流の低下を感知してレニン-アンジオテンシン-アルドステロン(RAA)系が亢進し、高レニン・高アルドステロン血症(続発性アルドステロン症)となる。 3. 集合管へ届くNa量が増えることと、アルドステロンの作用が強まることが重なり、集合管でNa再吸収と引き換えにK+とH+の分泌が亢進する。その結果、低カリウム血症と代謝性アルカローシスを来す。 4. それにもかかわらず、Na喪失による体液量の減少や、プロスタグランジン(特にPGE2)の産生亢進による血管拡張、アンジオテンシンIIに対する血管の反応性低下などのため、血圧は正常〜低めに保たれる。 つまり両者に共通するのは「低カリウム血症・代謝性アルカローシス・高レニン・高アルドステロン血症・正常血圧」という組み合わせであり、原発性アルドステロン症(低レニン・高血圧)との違いが鑑別の鍵となる。一方、両者の違いは尿中Ca排泄量と血清Mg値に表れやすい。

選択肢考察

  1. ×a.  高血圧

    両症候群ともRAA系が亢進しているが、尿細管でのNaCl喪失により循環血液量が減っていること、血管拡張作用をもつプロスタグランジンの産生が増えていること、アンジオテンシンIIに対する血管反応性が低下していることから、血圧は正常ないしやや低値となる。高血圧を伴わない点こそが、同じく低カリウム血症・代謝性アルカローシスを呈する原発性アルドステロン症や腎血管性高血圧との重要な鑑別点である。

  2. ×b.  高カリウム血症

    両症候群とも低カリウム血症を呈する。上流の尿細管で再吸収されなかったNaが大量に集合管へ流れ込むと、集合管主細胞では上皮型Naチャネル(ENaC)を介したNa再吸収が増え、その電気的な勾配によってK+の分泌が促進される。これに高アルドステロン血症によるK+分泌の亢進が加わり、尿中へのK喪失が大きくなる。脱力、筋力低下、テタニー、多尿などは低カリウム血症(Gitelman症候群ではさらに低マグネシウム血症)による症状である。

  3. ×c.  代謝性アシドーシス

    両症候群とも代謝性アルカローシスを呈する。アルドステロンは集合管の間在細胞からのH+分泌を促し、さらに低カリウム血症そのものも細胞内外のイオン移動や近位尿細管での重炭酸再吸収の増加を介してアルカローシスを助長する。体液量の減少もアルカローシスを維持する方向に働く(収縮性アルカローシス)。代謝性アシドーシスを伴う低カリウム血症は、尿細管性アシドーシス(1型・2型)などで考えるべき所見である。

  4. ×d.  低マグネシウム血症

    低マグネシウム血症はGitelman症候群に特徴的な所見であり、両者に共通する所見ではない。遠位曲尿細管はMgを能動的に再吸収する部位で(Mgチャネル TRPM6 が関与)、NCCの機能が失われるとこの部位のMg再吸収能も低下し、尿中へMgが失われる。これに対しBartter症候群では血清Mgは正常であることが多い(ただしClC-Kbの異常による3型では低マグネシウム血症を示すことがあり、Gitelman症候群との区別が難しい例もある)。

  5. ○e.  高アルドステロン血症

    両症候群とも、尿細管でのNaCl喪失によって循環血液量が減少し、その代償としてRAA系が亢進するため、血漿レニン活性と血漿アルドステロン濃度がともに上昇する(続発性アルドステロン症)。この高アルドステロン血症が、集合管でのK+・H+分泌を強めて低カリウム血症と代謝性アルカローシスを引き起こす一因となっている。両者に共通する所見であり、正解である。

Bartter症候群とGitelman症候群の比較

・障害部位:Bartter=Henleループの太い上行脚/Gitelman=遠位曲尿細管 ・主な責任分子:Bartter=NKCC2、ROMK、ClC-Kb、barttinなど/Gitelman=サイアザイド感受性NCC(SLC12A3遺伝子) ・類似する利尿薬:Bartter=ループ利尿薬/Gitelman=サイアザイド系利尿薬 ・発症時期:Bartter=新生児期〜乳幼児期が多く、胎児期の羊水過多・早産、成長障害を伴う型がある/Gitelman=学童期〜成人で見つかることが多く、症状は比較的軽い ・尿中Ca排泄:Bartter=正常〜増加(腎石灰化を来しうる)/Gitelman=低下(低Ca尿症) ・血清Mg:Bartter=正常のことが多い/Gitelman=低下 ・共通所見:低カリウム血症、代謝性アルカローシス、高レニン・高アルドステロン血症、正常〜低血圧

尿中Ca排泄が異なる理由

Henleループの太い上行脚では、NaCl再吸収によって生じる管腔側正の電位を駆動力として、Ca2+やMg2+が細胞間隙を通って受動的に再吸収される。Bartter症候群ではこの電位が失われるためCa再吸収が低下し、高Ca尿症となる。一方、遠位曲尿細管のNCCが障害されるGitelman症候群では、サイアザイド使用時と同様にCa再吸収が亢進し(細胞内Na濃度低下による基底側Na+/Ca2+交換の促進、および近位尿細管での再吸収増加などによる)、低Ca尿症となる。

鑑別のポイント

低カリウム血症と代謝性アルカローシスをみたら、まず血圧とレニン・アルドステロンを確認する。高血圧+低レニン+高アルドステロンなら原発性アルドステロン症、正常血圧+高レニン+高アルドステロンならBartter/Gitelman症候群のほか、利尿薬の隠れた服用や、自己誘発性嘔吐(尿中Clが低い)を鑑別に挙げる。

治療

K・Mgの補充を基本とし、抗アルドステロン薬(スピロノラクトン)、ENaC阻害薬、Bartter症候群ではプロスタグランジン産生を抑えるNSAIDs(インドメタシンなど)が用いられる。

POINT

・Bartter症候群=Henleループ太い上行脚(ループ利尿薬類似)、Gitelman症候群=遠位曲尿細管(サイアザイド類似)。 ・共通所見:低カリウム血症、代謝性アルカローシス、高レニン・高アルドステロン血症、血圧は正常〜低値。 ・Gitelman症候群に特徴的:低マグネシウム血症、低Ca尿症。 ・Bartter症候群:高Ca尿症(腎石灰化)、発症が早く重症例が多い。 ・原発性アルドステロン症との鑑別は「高血圧の有無」と「レニン高値か低値か」。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。