18番が3本並ぶとき―核型から読み解くEdwards症候群の厳しい予後
第100回医師国家試験 B問題 第5問
国試問題にチャレンジ
羊水染色体検査結果の写真を示す。 正しいのはどれか。

- a.巨大児が多い。
- b.羊水過少が多い。
- c.児は猫のように泣く。
- d.表現型は女児である。
- e.生後6か月の生存率は低い。
対話形式の解説
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ドクターまとめ
羊水染色体検査の核型で18番染色体が3本あれば18トリソミー(Edwards症候群)であり、性染色体まで確認して47,XY,+18なら表現型は男児と判断します。18トリソミーは胎児発育不全による低出生体重、嚥下障害や食道閉鎖による羊水過多を特徴とし、先天性心疾患を約9割に合併するため生命予後は極めて不良で、1歳時の生存率は1割前後とされます。猫のような泣き声は5p−症候群、羊水過少はPotter症候群や前期破水でみられる所見であり、混同しないよう整理が必要です。手指の重なりや揺り椅子状足底などの外表所見、21・13トリソミーとの比較もあわせて押さえておきましょう。核型を正確に読み、予後を踏まえて家族と方針を話し合う力は、出生前診断や新生児医療の現場で欠かせません。
解答・解説
正解はeです
核型の読み取り
写真は羊水中の胎児由来細胞を培養し、分裂中期の染色体をGバンド法で染めて番号順に並べた核型(カリオタイプ)である。1〜17番、19〜22番の常染色体はそれぞれ2本ずつであるが、18番染色体のみ3本存在する。性染色体はXとYが1本ずつである。したがって核型は47,XY,+18であり、18トリソミー(Edwards症候群)の男児と診断できる。
設問の考え方
18トリソミーの臨床像(胎児期・新生児期の特徴と生命予後)を問う問題である。18トリソミーは子宮内発育不全を伴うことが多く、低出生体重で生まれる。胎児期には嚥下運動の低下などにより羊水過多を合併しやすい。心疾患(心室中隔欠損など)をはじめとする重い合併奇形が多く、生命予後は不良で、多くが乳児期早期に死亡する。これらの知識をもとに各選択肢を判断する。また、核型の性染色体を見落とさないことも本問のポイントである。
選択肢考察
- ×a. 巨大児が多い。
18トリソミーでは胎児発育不全(FGR)が高頻度にみられ、在胎週数に比して小さい低出生体重児(SGA児)として生まれることが多い。巨大児(出生体重4,000g以上)とは逆である。巨大児は母体の糖尿病、Beckwith-Wiedemann症候群などでみられる。
- ×b. 羊水過少が多い。
18トリソミーではむしろ羊水過多を合併することが多い。胎児の嚥下運動の低下(小顎・小口などの顔面の形態異常や中枢神経機能の異常による)や、合併する食道閉鎖などが、胎児が羊水を飲み込んで処理することを妨げるためと考えられる。羊水過少は、両側腎無形成(Potter症候群)などの尿路異常、前期破水、胎盤機能不全などでみられる。
- ×c. 児は猫のように泣く。
新生児期に子猫のような甲高い泣き声を示すのは、5番染色体短腕の部分欠失による猫鳴き症候群(5p−症候群、cri-du-chat症候群)である。喉頭の形態異常によるとされ、小頭、円形顔貌、両眼開離、知的障害などを伴う。18トリソミーの特徴ではない。
- ×d. 表現型は女児である。
核型の性染色体はXとYが1本ずつ(XY)であり、Y染色体上のSRY遺伝子により精巣が分化するため、表現型は男児である。なお18トリソミーは出生児では女児に多い(男児の胎児は子宮内で死亡しやすいため)とされるが、本問の核型は男性型である。
- ○e. 生後6か月の生存率は低い。
18トリソミーは、先天性心疾患(心室中隔欠損、動脈管開存など)、食道閉鎖などの消化管奇形、中枢神経の異常、中枢性無呼吸などを高率に合併し、生命予後が極めて不良である。生存期間の中央値は数日〜2週間程度とされ、約半数が生後1〜2週以内に、大多数が1歳までに死亡する(1歳時の生存率は1割前後)。したがって生後6か月の生存率は低い。近年は心臓手術などの積極的治療により長期生存例も報告されているが、全体としての予後不良に変わりはない。
羊水染色体検査
妊娠15〜18週ごろに経腹的に羊水を採取(羊水穿刺)し、羊水中の胎児由来細胞を培養して核型を調べる確定的な出生前診断である。流産のリスク(約0.3%程度とされる)がある。採取時期がより早い方法として絨毛検査があり、非侵襲的な方法として母体血を用いる非侵襲性出生前遺伝学的検査(NIPT)があるが、NIPTは非確定的検査であり、陽性の場合は羊水検査などで確定する。
18トリソミー(Edwards症候群)の特徴
・頻度:出生3,500〜8,000人に1人程度。母体年齢が高いほど増加する。出生児では女児に多い。 ・胎児期:胎児発育不全、羊水過多、心奇形、手の握りこみ、単一臍帯動脈などが超音波で指摘されることがある。 ・外表所見:後頭部突出、小顎、耳介低位・変形、胸骨短小、特徴的な手指の重なり(第2指が第3指に、第5指が第4指に重なる握り方)、揺り椅子状足底(rocker-bottom foot)、短い母趾など。 ・合併症:先天性心疾患(約90%)、食道閉鎖、臍帯ヘルニア、腎奇形、重度の精神運動発達遅滞、無呼吸発作。 ・予後:生存期間中央値は数日〜2週間程度で、1年生存率は1割前後と不良。
三大常染色体トリソミーの比較
・21トリソミー(Down症候群):最多(約700〜1,000出生に1人)。筋緊張低下、特徴的顔貌、心内膜床欠損、十二指腸閉鎖、白血病。生命予後は比較的良好。 ・18トリソミー(Edwards症候群):手指の重なり、揺り椅子状足底、心疾患。予後不良。 ・13トリソミー(Patau症候群):全前脳胞症、口唇口蓋裂、小眼球症、多指症、頭皮欠損。予後不良。
猫鳴き症候群との区別
5p−(5番染色体短腕の部分欠失)による。甲高い猫様の泣き声、小頭症、知的障害。核型では5番染色体の片方の短腕が短く見える。
POINT
・核型で18番が3本、性染色体XY → 47,XY,+18(18トリソミー、男児)。性染色体の確認を忘れない。 ・18トリソミー:胎児発育不全による低出生体重、羊水過多、心奇形(約90%)、手指の重なり、揺り椅子状足底。 ・生命予後は極めて不良で、大多数が1歳までに死亡する。 ・猫のような泣き声は5p−症候群(猫鳴き症候群)。 ・羊水過少はPotter症候群、前期破水、胎盤機能不全などでみられる。
