指の間のかゆみ、まず何を見る?―足白癬は「菌を証明して」初めて診断できる
第99回医師国家試験 H問題 第30問
国試問題にチャレンジ
30歳の男性。3か月前から右足第4趾間部に鱗屑が生じ,痒みを伴っている。趾間部の写真を別に示す。 行うべき検査はどれか。

- a.苛性カリ鏡検法
- b.Tzanck試験
- c.細菌培養検査
- d.貼布試験
- e.皮内試験
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
第4趾間の浸軟・鱗屑・亀裂とかゆみが慢性に続く場合、まず趾間型足白癬を疑います。ただし湿疹や接触皮膚炎、カンジダ症などと見た目が似るため、診断は苛性カリ(KOH)直接鏡検で隔壁のある菌糸を直接証明して確定し、この検査は外用治療を始める前に行うことが重要です。Tzanck試験は天疱瘡やヘルペス、パッチテストはIV型アレルギー、皮内試験はI型アレルギーの検査であり、細菌培養は二次感染の徴候があるときに考慮します。治療は外用抗真菌薬を広めに、症状消失後も継続して塗布し、角質増殖型や爪白癬では内服薬を検討します。「どの検査が何を証明するのか」を整理しておくことは、皮膚疾患の診断を確実に進めるうえでの基本になります。
解答・解説
正解はaです
所見の整理
30歳の男性で、3か月前から右足の第4趾間(薬指と小指の間)に鱗屑(皮膚表面の角質が剥がれ落ちるもの)が出現し、かゆみを伴っている。写真では第4趾間に紅斑と鱗屑があり、皮膚が白くふやけて(浸軟して)亀裂やびらんを伴っている。
診断へのプロセス
足の趾間、特に第4趾間は、趾どうしが密着して湿りやすく、皮膚糸状菌(白癬菌)が最も感染しやすい部位である。慢性に経過する(数か月単位)、かゆみを伴う、浸軟・鱗屑・亀裂を伴う趾間の紅斑、という所見から、趾間型の足白癬(いわゆる水虫)がまず考えられる。鑑別としては、趾間の湿疹・接触皮膚炎、カンジダ症、紅色陰癬、細菌感染(グラム陰性桿菌による趾間感染など)が挙がる。
設問の考え方
白癬は見た目だけで確定してはならず、湿疹などとの鑑別のために真菌の存在を直接証明することが必要である。外来で簡便かつ迅速に行える確定検査が、鱗屑を採取して水酸化カリウム(KOH、苛性カリ)で溶かして顕微鏡で観察する苛性カリ鏡検法(KOH直接鏡検)である。菌糸が確認できれば白癬と診断できる。したがって行うべき検査は苛性カリ鏡検法である。
選択肢考察
- ○a. 苛性カリ鏡検法
正解。足白癬を疑った際に最初に行うべき検査である。病変部の鱗屑や水疱蓋(小水疱の天井部分)を採取してスライドガラスにのせ、10〜30%程度(一般に20%前後)の水酸化カリウム溶液を滴下して角質を溶かし、顕微鏡で観察する。白癬菌は角質を溶かすKOHに比較的耐性であるため、分岐・隔壁をもつ菌糸や分節胞子が観察でき、白癬の確定診断となる。簡便・迅速・安価で外来ですぐ実施できる。なお、抗真菌薬の外用を始めてしまうと菌が検出されにくくなるため、治療開始前に行うことが重要である。菌種を同定したい場合は真菌培養(Sabouraud寒天培地)を追加する。
- ×b. Tzanck試験
誤り。Tzanck試験は、水疱底やびらん面を擦過して塗抹標本を作り、Giemsa染色して鏡検する検査である。天疱瘡における棘融解細胞(表皮細胞どうしの接着がはずれて丸くなった細胞)や、単純ヘルペス・水痘帯状疱疹ウイルス感染によるウイルス性巨細胞(多核巨細胞)の証明に用いられる。慢性の鱗屑・かゆみを主体とする趾間病変である本症例で真菌を証明する目的には適さない。
- ×c. 細菌培養検査
誤り。本症例では膿や急速な発赤腫脹、疼痛といった明らかな細菌感染の徴候はなく、まず疑うべきは真菌感染である。したがって第一に行う検査ではない。ただし、趾間型足白癬では浸軟・びらん部に細菌が二次感染(混合感染)を起こしやすく、蜂窩織炎やリンパ管炎の入口となることがあるため、感染徴候がある場合には細菌培養が考慮される。
- ×d. 貼布試験
誤り。貼布試験(パッチテスト)は、疑わしい物質を皮膚に貼付して48時間後、72時間後(および1週間後)に判定する検査で、Ⅳ型(遅延型)アレルギーの原因物質を調べる。アレルギー性接触皮膚炎や薬疹の原因検索に用いられる。趾間の湿疹・接触皮膚炎との鑑別は必要だが、まず真菌の有無を確認すべきであり、本症例で行うべき検査ではない。
- ×e. 皮内試験
誤り。皮内試験は、抗原液を皮内に少量注射し、15〜20分後の膨疹・紅斑をみてⅠ型(即時型)アレルギーの原因抗原を調べる検査である(ツベルクリン反応のようにⅣ型反応を評価する皮内反応もある)。蕁麻疹や薬物アレルギーなどの評価に用いられ、白癬の診断には関係しない。なお、トリコフィチン反応という白癬菌抗原を用いた皮内反応がかつて用いられたが、現在の診断の中心ではなく、確定診断は菌の直接証明による。
足白癬の概要
・原因菌: 皮膚糸状菌(主にTrichophyton rubrum、Trichophyton interdigitale〈旧称T. mentagrophytes〉)。角質のケラチンを栄養源とする。 ・病型: 1) 趾間型: 最も多い。趾間(特に第4趾間)の浸軟、鱗屑、亀裂、びらん。かゆみが強い。 2) 小水疱型: 土踏まずや足縁に小水疱が多発し、かゆみを伴う。夏に悪化しやすい。 3) 角質増殖型: 足底全体の角質肥厚、鱗屑。かゆみは乏しく、冬に亀裂を生じやすい。慢性・難治。 ・合併症: 爪白癬(爪甲の混濁・肥厚)、細菌の二次感染(蜂窩織炎)、白癬疹(離れた部位に生じるアレルギー性皮疹)。 ・診断: 苛性カリ(KOH)直接鏡検で菌糸を証明する。必要に応じて真菌培養で菌種を同定する。 ・治療: 外用抗真菌薬(イミダゾール系、アリルアミン系など)を病変周囲も含めて広めに、症状消失後も1か月以上継続して塗布する。角質増殖型や爪白癬では経口抗真菌薬(テルビナフィン、イトラコナゾールなど)を検討する。びらんが強い場合は外用薬による刺激性皮膚炎に注意する。 ・予防: 足を清潔・乾燥に保つ、家族内・公衆浴場などでの感染に注意する。
皮膚科の主な検査と対象
・KOH直接鏡検: 白癬、カンジダ症、癜風などの真菌感染症、疥癬(虫体・虫卵)。 ・Tzanck試験: 天疱瘡(棘融解細胞)、単純ヘルペス・帯状疱疹(ウイルス性巨細胞)。 ・パッチテスト: アレルギー性接触皮膚炎、薬疹(Ⅳ型アレルギー)。 ・プリックテスト・皮内試験: 即時型(Ⅰ型)アレルギー。 ・Wood灯検査: 紅色陰癬(コーラルレッドの蛍光)、一部の頭部白癬、癜風。
POINT
・第4趾間の浸軟・鱗屑・かゆみ → 趾間型足白癬を疑う。 ・白癬の確定診断は苛性カリ(KOH)鏡検で菌糸を証明すること。外用治療開始前に行う。 ・Tzanck試験は天疱瘡とヘルペス、パッチテストは接触皮膚炎・薬疹(Ⅳ型)、皮内試験は即時型(Ⅰ型)アレルギーの検査。 ・趾間型足白癬は細菌の二次感染(蜂窩織炎)の入口になりうる。
