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アシドーシスなのにKが低い―「例外の組み合わせ」からSjögren症候群の腎病変を見抜く

第99回医師国家試験 E問題 第65問

国試問題にチャレンジ

第99回 E問題 第65問

代謝性アシドーシスを伴う低カリウム血症をきたすのはどれか。

  1. a.神経性食思不振症
  2. b.原発性アルドステロン症
  3. c.Bartter症候群
  4. d.Addison病
  5. e.Sjögren症候群

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、酸塩基平衡とカリウムの関係を使って疾患を選ぶ問題だ。ポイントは「代謝性アシドーシス」と「低K血症」の組み合わせが、実はかなり珍しいということ。まずは基本から確認しよう。アシドーシスになると、血清Kはふつうどちらに動くかな。
医学生医学生
細胞外のH+が細胞内に入る代わりにK+が外に出るので、高K血症に傾きます。生理学の講義で習いました。
ドクタードクター
その通り。さらに腎臓ではアルドステロンがカギになる。アルドステロンは集合管でNa+を再吸収する代わりにK+とH+を尿中に捨てる。だから作用が過剰なら「低K血症+代謝性アルカローシス」、不足なら「高K血症+代謝性アシドーシス」というセットになるんだ。
医学生医学生
つまり、アシドーシスとKが低いのが同時に起こるのは、そのセットから外れた例外ということですね。
ドクタードクター
そう。代表的な原因は限られていて、下痢、尿細管性アシドーシスの遠位型と近位型、アセタゾラミドの使用などだ。選択肢に下痢はないから、「尿細管性アシドーシスを起こす疾患はどれか」と読み替えるといい。
医学生医学生
それならSjögren症候群でしょうか。膠原病内科を回ったとき、ドライアイやドライマウスだけじゃなく腎臓にも病変が出ると教わりました。
ドクタードクター
正解だよ。Sjögren症候群は、腎間質へのリンパ球浸潤による尿細管間質性腎炎を起こし、遠位型、つまり1型の尿細管性アシドーシスを高頻度に合併する。集合管のα間在細胞からH+を分泌できなくなるので、酸を捨てられずにアニオンギャップ正常の高Cl性代謝性アシドーシスになるんだ。
医学生医学生
H+が出せないのはわかりますが、なぜKまで下がるんですか。
ドクタードクター
いい疑問だね。Na喪失に伴って二次性アルドステロン症が起こることや、H+の代わりにK+が排泄されやすくなることで、尿中へのK排泄が増えるからなんだ。だから遠位型では低K血症を伴う。では、ほかの選択肢を確認しよう。原発性アルドステロン症は?
医学生医学生
アルドステロン過剰なので、高血圧と低K血症、それに代謝性アルカローシスです。レニンは抑制されて低値ですよね。
ドクタードクター
完璧だ。Bartter症候群はどうだろう。
医学生医学生
これも低Kだったと思います。でもアシドーシスかアルカローシスか、ちょっと自信がありません。
ドクタードクター
Bartter症候群はHenleループの太い上行脚のNa+-K+-2Cl-共輸送体などの異常で、ループ利尿薬を飲み続けているような状態になる。循環血液量の減少でレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系が亢進し、遠位へのNa到達も増えるので、低K血症と代謝性アルカローシスになる。原発性アルドステロン症と違って血圧は正常〜低めで、レニンは高値だよ。
医学生医学生
利尿薬と同じと考えると覚えやすいです。Addison病は逆にアルドステロンが足りないので、高K血症とアシドーシスですね。
ドクタードクター
その通り。低Na血症や低血圧、低血糖も伴う。低K血症にはならない。神経性食思不振症については、どう考える?
医学生医学生
精神科実習で、嘔吐を繰り返す患者さんの低Kに注意するよう言われました。嘔吐なら胃酸を失うので、アルカローシスでしょうか。
ドクタードクター
そうだね。自己誘発性嘔吐ではH+とCl-を失い、利尿薬の乱用でもアルカローシスになるから、典型は低K性代謝性アルカローシスだ。下剤乱用による慢性下痢が主体ならアシドーシスになることもあるけれど、代表的な酸塩基異常としてはアルカローシスを想定するのが妥当だね。
医学生医学生
Kと酸塩基を組み合わせて分類すれば、選択肢が整理できるんですね。
ドクタードクター
そう、この表を頭の中に持っておくと強い。発展として尿細管性アシドーシスの分類も押さえよう。遠位型は尿pHが5.5以下に下がらず、高Ca尿症から腎石灰化や尿路結石、骨軟化症を伴いやすい。原因はSjögren症候群やSLEなどの自己免疫疾患、アムホテリシンBなどの薬剤だ。近位型はHCO3-の再吸収障害で、Fanconi症候群の一部として多発性骨髄腫などで起こる。4型はアルドステロンの欠乏や作用不全によるもので、糖尿病性腎症などでみられ、これだけは高K血症になる。
医学生医学生
1型と2型は低K、4型は高Kと分けて覚えます。臨床ではSjögrenの患者さんに尿路結石が見つかったら、腎病変も疑うべきですね。
ドクタードクター
いい着眼点だ。Sjögren症候群は腺外病変として間質性肺炎や末梢神経障害、MALTリンパ腫のリスクもある。説明のつかない低K血症や代謝性アシドーシスに出会ったら、口や目の乾燥症状を聞いてみることが診断の糸口になるよ。

まとめ

代謝性アシドーシスは通常、高K血症に傾くため、低K血症を伴う代謝性アシドーシスは下痢、遠位型・近位型の尿細管性アシドーシス、アセタゾラミドなどに原因が限られます。Sjögren症候群は尿細管間質性腎炎により集合管のH+分泌が障害され、遠位型(1型)尿細管性アシドーシスを合併する代表的疾患で、高Cl性代謝性アシドーシスと低K血症、さらに腎石灰化や尿路結石をきたします。原発性アルドステロン症やBartter症候群、嘔吐は低K血症+代謝性アルカローシス、Addison病や4型尿細管性アシドーシスは高K血症+代謝性アシドーシスを示します。カリウムと酸塩基平衡をセットで分類する視点は、電解質異常の鑑別を素早く正確に行うための土台となります。

解答・解説

正解はeです

酸塩基平衡とカリウム(K)濃度は密接に関係している。一般に、アシドーシスでは細胞外のH+が細胞内に入る代わりにK+が細胞外へ移動するため、高K血症に傾きやすい。逆にアルカローシスでは低K血症に傾きやすい。また、アルドステロン作用の過剰(またはそれに相当する遠位ネフロンへのNa到達増加)は、集合管でのK+とH+の排泄をともに促進するため「低K血症+代謝性アルカローシス」の組み合わせをつくり、アルドステロン作用の不足は「高K血症+代謝性アシドーシス」の組み合わせをつくる。 したがって「代謝性アシドーシスなのに低K血症」という組み合わせは例外的であり、原因は限られる。代表的なものは次のとおりである。 ・下痢(腸液に含まれるHCO3-とK+を同時に失う) ・尿細管性アシドーシス(RTA)のうち、遠位型(1型)と近位型(2型) ・炭酸脱水酵素阻害薬(アセタゾラミド)の使用 ・尿管S状結腸吻合術後 ・糖尿病ケトアシドーシスの治療経過中(インスリン投与でKが細胞内へ移動する) 選択肢に下痢は含まれないため、「RTAの原因となる疾患はどれか」と読み替えるとよい。Sjögren症候群は、腎間質へのリンパ球浸潤(尿細管間質性腎炎)によって遠位尿細管・集合管のH+分泌が障害され、遠位型(1型)RTAを高頻度に合併する代表的疾患である。その他の選択肢は、代謝性アルカローシスを伴う低K血症(神経性食思不振症の嘔吐・利尿薬乱用、原発性アルドステロン症、Bartter症候群)か、代謝性アシドーシスを伴う高K血症(Addison病)となる。

選択肢考察

  1. ×a.  神経性食思不振症

    神経性食思不振症(神経性やせ症)では摂取不足に加え、自己誘発性嘔吐や下剤・利尿薬の乱用によって低K血症が高頻度にみられる。嘔吐では胃液中のH+とCl-が失われ、利尿薬ではCl-喪失と二次性アルドステロン症が生じるため、いずれも低K血症は代謝性アルカローシスを伴うのが典型である。下剤乱用による慢性下痢が主体であれば代謝性アシドーシスとなることもあるが、本症の代表的な酸塩基異常としては低K性代謝性アルカローシスを想定する。

  2. ×b.  原発性アルドステロン症

    副腎腺腫や過形成からアルドステロンが自律的に過剰分泌される疾患である。アルドステロンは集合管でのNa+再吸収を促進し、それと引き換えにK+とH+の尿中排泄を増やす。その結果、高血圧とともに低K血症と代謝性アルカローシスを呈する。レニンは負のフィードバックで抑制され低値となる。

  3. ×c.  Bartter症候群

    Henleループの太い上行脚にあるNa+-K+-2Cl-共輸送体(またはそれに関連するチャネル)の遺伝子異常により、ループ利尿薬を常に服用しているのと同じ状態になる疾患である。Na・Cl喪失による循環血液量減少からレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系が亢進し(続発性アルドステロン症)、遠位ネフロンへのNa到達増加も加わって、低K血症と代謝性アルカローシスを呈する。血圧は正常〜低値で、原発性アルドステロン症と異なりレニンは高値となる。

  4. ×d.  Addison病

    原発性副腎皮質機能低下症で、アルドステロンとコルチゾールがともに欠乏する。アルドステロン作用がないと集合管でのK+とH+の排泄が減るため、高K血症と代謝性アシドーシス(高Cl性)を呈する。低Na血症、低血圧、低血糖も伴う。低K血症は生じない。

  5. ○e.  Sjögren症候群

    Sjögren症候群は涙腺・唾液腺を主な標的とする自己免疫疾患であるが、腺外病変として腎の尿細管間質性腎炎を起こし、遠位型(1型)RTAを合併しやすい。遠位型RTAでは集合管のα間在細胞からのH+分泌が障害されるため、酸を尿中に排泄できず、アニオンギャップ正常の高Cl性代謝性アシドーシスとなる。同時にNa喪失に伴う二次性アルドステロン症やH+に代わるK+排泄の増加により尿中K排泄が増え、低K血症をきたす。このため代謝性アシドーシスを伴う低K血症の代表的な原因となる。

尿細管性アシドーシス(RTA)の分類

・遠位型(1型):集合管でのH+分泌障害。重炭酸を投与しなくても尿pHは5.5以下に下がらない。低K血症、高Ca尿症、腎石灰化・尿路結石、骨軟化症を伴いやすい。原因はSjögren症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患、高γグロブリン血症、薬剤(アムホテリシンBなど)、遺伝性など。 ・近位型(2型):近位尿細管でのHCO3-再吸収障害。低K血症を伴う。Fanconi症候群(糖尿、アミノ酸尿、リン酸尿を伴う)の一部として現れることが多く、多発性骨髄腫、重金属、薬剤(炭酸脱水酵素阻害薬など)が原因となる。 ・4型:アルドステロンの欠乏または作用不全による。高K血症を伴うのが特徴。糖尿病性腎症(低レニン性低アルドステロン症)、Addison病、薬剤(スピロノラクトン、ACE阻害薬、ST合剤など)が原因となる。

K異常と酸塩基平衡の組み合わせ(整理)

・低K血症+代謝性アルカローシス:嘔吐、利尿薬、原発性アルドステロン症、Cushing症候群、Bartter症候群、Gitelman症候群、Liddle症候群、偽性アルドステロン症(甘草) ・低K血症+代謝性アシドーシス:下痢、遠位型・近位型RTA、アセタゾラミド、尿管S状結腸吻合 ・高K血症+代謝性アシドーシス:腎不全、4型RTA、Addison病、低アルドステロン症

Sjögren症候群の腺外症状

間質性肺炎、尿細管間質性腎炎(遠位型RTA、腎性尿崩症)、末梢神経障害、環状紅斑、自己免疫性肝疾患の合併、悪性リンパ腫(特にMALTリンパ腫)の発生リスク上昇などがある。

POINT

・代謝性アシドーシスは通常高K血症を伴う。低K血症を伴うのは下痢とRTA(1型・2型)が代表。 ・Sjögren症候群は遠位型(1型)RTAの代表的原因。 ・原発性アルドステロン症・Bartter症候群・嘔吐は低K血症+代謝性アルカローシス。 ・Addison病・4型RTAは高K血症+代謝性アシドーシス。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。