「陽性=犯人」ではない―食物アレルギーの原因は「やめて治るか」で確かめる
第99回医師国家試験 E問題 第66問
国試問題にチャレンジ
食物アレルギーによる蕁麻疹の原因検索に最も有用なのはどれか。
- a.皮膚反応
- b.食物除去試験
- c.特異的IgE測定
- d.リンパ球刺激試験
- e.ヒスタミン遊離試験
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
食物アレルギーによる蕁麻疹はIgEを介したI型アレルギーですが、特異的IgE測定、皮膚プリックテスト、ヒスタミン遊離試験はいずれも「感作」の有無を示すにとどまり、陽性でも実際に食べて症状が出るとは限りません。原因を確定するには、疑わしい食物を除去して症状が改善し、食物経口負荷試験で再現することを確かめる必要があり、選択肢の中では因果関係を安全に評価できる食物除去試験が最も有用です。リンパ球刺激試験やパッチテストはIV型アレルギー(薬疹、接触皮膚炎)の検査であり、食物による即時型蕁麻疹には適しません。診断は詳細な問診から始まり、食物依存性運動誘発アナフィラキシーなど誘因が関わる病型にも注意が必要です。「感作」と「臨床的な因果関係」を区別する考え方は、不要な食物除去を避け、患者の生活の質を守るうえで欠かせない視点です。
解答・解説
正解はbです
食物アレルギーによる蕁麻疹の多くは、食物抗原に対するIgE抗体が肥満細胞上で架橋され、ヒスタミンなどの化学伝達物質が放出されて起こるI型(即時型)アレルギーである。原因検索では、「その食物に感作されているか(IgE抗体をもっているか)」と「その食物を食べると実際に症状が出るか(臨床的な因果関係)」を区別して考えることが重要である。 特異的IgE測定、皮膚プリックテスト、ヒスタミン遊離試験などは感作の有無を調べる検査であり、陽性であっても、その食物を食べて症状が出るとは限らない(偽陽性や、感作されていても症状が出ない例が多い)。逆に陰性でも否定しきれない場合がある。したがって、これらは原因食物の候補を絞り込むための補助的な検査にとどまる。 原因を確定するには、疑わしい食物を実際に「やめると症状が消え、食べると症状が出る」ことを確かめる必要がある。最も確実なのは食物経口負荷試験であるが、アナフィラキシーを誘発する危険を伴うため、専門施設で準備を整えて行う。本問の選択肢の中では、疑わしい食物を一定期間除去して症状が改善するかを観察する食物除去試験が、臨床的な因果関係を直接評価できる点で最も有用である。
選択肢考察
- ×a. 皮膚反応
食物抗原のエキスや食物そのものを用いたプリックテストやスクラッチテストは、皮膚の肥満細胞上のIgEによる即時型反応(膨疹・紅斑)をみる検査で、I型アレルギーの感作を簡便に調べられる。しかし陽性でも実際に食べて症状が出るとは限らず、偽陽性が多い。原因食物の候補を絞る補助にはなるが、原因の確定には至らない。なお、パッチテストは遅延型(IV型)反応をみる検査であり、接触皮膚炎の原因検索に用いられ、即時型の蕁麻疹には適さない。
- ○b. 食物除去試験
疑わしい食物を一定期間(通常1〜2週間程度)食事から除去し、症状が消失・改善するかを観察する方法である。感作の有無ではなく、「その食物が実際に症状を引き起こしているか」という臨床的な因果関係を評価できるため、選択肢の中では原因検索に最も有用である。除去で改善した場合は、その後の食物経口負荷試験で症状の再出現を確認すると診断がより確実になる。安全に行える点も利点である。
- ×c. 特異的IgE測定
血清中の食物抗原特異的IgE抗体価を測定する検査で、採血のみで多数の抗原を調べられ、アナフィラキシーの危険がない。ただし示すのはあくまで感作の有無であり、抗体価が陽性でも食べて症状が出ない例は多く、陽性的中率は高くない。原因食物の候補を挙げる目安として用い、確定には除去試験や負荷試験が必要である。
- ×d. リンパ球刺激試験
リンパ球刺激試験(DLST:drug-induced lymphocyte stimulation test)は、患者のリンパ球を被疑抗原(主に薬剤)と培養し、T細胞の増殖反応をみる検査である。T細胞が関与する遅延型(IV型)アレルギー、特に薬疹や薬剤性肝障害の原因薬剤検索に用いられる。IgEを介するI型アレルギーである食物アレルギーの蕁麻疹の原因検索には適さない。
- ×e. ヒスタミン遊離試験
患者の末梢血好塩基球を抗原で刺激し、放出されるヒスタミン量を測定する検査である。好塩基球上のIgEを介した反応をみるため、I型アレルギーの感作を評価できるが、特異的IgE測定と同様に、陽性であっても実際にその食物で症状が出ることまでは示せない。補助的検査の位置づけであり、原因の確定には至らない。
食物アレルギーの診断の流れ
1. 詳細な問診:摂取した食物、摂取から発症までの時間(即時型では多くが2時間以内)、症状、再現性、運動や薬剤(NSAIDsなど)などの誘因の有無 2. 感作の確認:特異的IgE測定、皮膚プリックテスト、好塩基球を用いた検査(ヒスタミン遊離試験、好塩基球活性化試験) 3. 因果関係の確認:食物除去試験、食物経口負荷試験(最も確実だが、アナフィラキシーに備えた体制下で実施)
アレルギー型と検査の対応
・I型(即時型、IgE介在):特異的IgE測定、皮膚プリックテスト・スクラッチテスト・皮内テスト、ヒスタミン遊離試験、誘発(負荷)試験 ・IV型(遅延型、T細胞介在):パッチテスト、リンパ球刺激試験(DLST)
関連する病型
・食物依存性運動誘発アナフィラキシー:特定の食物(小麦、甲殻類など)摂取後に運動すると発症する。食物単独や運動単独では症状が出ない。 ・口腔アレルギー症候群:花粉症と交差反応を示す果物・野菜の摂取で口腔・咽頭の症状が出る。
治療の基本
原因食物の必要最小限の除去が原則であり、誤食時の対応としてH1受容体拮抗薬、アナフィラキシーのリスクがある場合はアドレナリン自己注射薬を携帯させる。
POINT
・特異的IgE、皮膚プリックテスト、ヒスタミン遊離試験は「感作」を示すだけで、症状との因果関係は示さない。 ・原因の確定には、除去して改善し、負荷して再現することの確認が必要。 ・最も確実なのは食物経口負荷試験(アナフィラキシーの危険あり)。選択肢中では食物除去試験が最も有用。 ・リンパ球刺激試験やパッチテストはIV型アレルギー(薬疹、接触皮膚炎)の検査。
