StudyMed医師国家試験

汗をかく場所、かかない場所―エクリン汗腺とアポクリン汗腺の地図を描く

第99回医師国家試験 D問題 第38問

国試問題にチャレンジ

第99回 D問題 第38問

エクリン汗腺が多い部位はどれか。2つ選べ。

  1. a.口唇
  2. b.前額
  3. c.手掌
  4. d.腋窩
  5. e.亀頭

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は皮膚付属器の問題で、2種類の汗腺、エクリン汗腺とアポクリン汗腺の分布の違いがテーマだ。「どこに多いか」だけでなく「どこにないか」「どこが別の汗腺で特徴づけられるか」まで整理しておくと、選択肢が一気に見通せるよ。
医学生医学生
組織学の実習で汗腺を見ましたが、エクリンとアポクリンの違いは開口部くらいしか覚えていません。
ドクタードクター
開口部は大事な違いだね。エクリン汗腺は導管が毛包を介さず直接皮膚表面に開き、水分主体の薄い汗を出す。蒸発するときの気化熱で体温を下げる、体温調節の主役だ。一方アポクリン汗腺は毛包の上部に開口し、脂質やタンパク質を含む分泌物を出す。
医学生医学生
体温調節に働くなら、エクリン汗腺は全身にまんべんなくあるんですか。
ドクタードクター
ほぼ全身に、数百万個のオーダーで存在する。ただ密度には部位差があって、最も多いのは手掌と足底。次いで前額などの顔面に多い。だから正解は前額と手掌になる。
医学生医学生
腋窩も汗をかく場所の代表だと思って、選びそうになりました。
ドクタードクター
そこがこの問題の引っかけだね。腋窩にもエクリン汗腺はあって、腋窩多汗症の原因にもなる。でも腋窩を特徴づけるのはアポクリン汗腺なんだ。アポクリン汗腺は腋窩、乳輪、外陰部や肛門周囲、外耳道、眼瞼といった限られた部位にしかなく、その代表が腋窩。出題の意図としては「腋窩=アポクリン」と押さえることが求められているよ。
医学生医学生
わきがはアポクリン汗腺の分泌物が原因でしたよね。
ドクタードクター
そう。分泌物そのものはほぼ無臭だけれど、皮膚常在菌が分解すると特有のにおいが生じる。これが腋臭症だ。アポクリン汗腺は思春期以降に活動を始めるから、においが問題になるのも思春期からなんだ。
医学生医学生
口唇と亀頭はどうでしょう。どちらも汗をかくイメージがあまりありません。
ドクタードクター
その感覚は正しい。口唇の赤唇部は粘膜に近い移行部で、毛包も脂腺も汗腺もほとんどない。唇が乾燥しやすいのはそのためでもある。亀頭も陰核、小陰唇、包皮内板、爪床と並んで、エクリン汗腺を欠く部位として知られている。
医学生医学生
「汗腺がない部位」のリストとして、口唇と亀頭をセットで覚えておきます。
ドクタードクター
いいね。それから、部位によって発汗のきっかけが違うことも知っておこう。前額や体幹の汗は暑さで出る温熱性発汗が主体で、辛いものを食べたときに顔に出るのは味覚性発汗。手掌や足底、腋窩の汗は緊張や不安で出る精神性発汗が主体なんだ。
医学生医学生
OSCEの本番前に手のひらがびっしょりになったのは、まさに精神性発汗ですね。
ドクタードクター
その通り(笑)。手掌の汗は体温調節よりも、滑り止めのような役割があるとも考えられている。生理学の観点でもう一つ。エクリン汗腺は交感神経支配だけど、節後線維の伝達物質はアセチルコリン。いわゆるコリン作動性の交感神経なんだ。
医学生医学生
だから抗コリン薬で汗が出にくくなって、熱中症に注意が必要なんですね。薬理の講義で出てきました。
ドクタードクター
よく結びついたね。臨床では、手掌や腋窩の原発性局所多汗症がエクリン汗腺の過剰な発汗によるもので、塩化アルミニウム外用やイオントフォレーシス、ボツリヌス毒素の局注、抗コリン外用薬などで治療する。逆に汗管が詰まると汗疹、いわゆるあせもになる。腋窩の悩みでも、「汗の量」ならエクリン、「におい」ならアポクリンと分けて考えると整理しやすいよ。
医学生医学生
エクリンは手掌・足底・前額に多くて、口唇や亀頭にはない。アポクリンは腋窩など限られた部位にだけある。これで地図が描けました。

まとめ

エクリン汗腺はほぼ全身に分布して皮膚表面に直接開口し、水分主体の汗で体温調節を担う汗腺で、手掌・足底で最も密度が高く、前額などの顔面がこれに次ぎます。一方、口唇の赤唇部、亀頭、陰核、小陰唇、包皮内板、爪床にはエクリン汗腺がほとんど存在しません。アポクリン汗腺は腋窩・乳輪・外陰部・外耳道・眼瞼などに限局して毛包に開口し、思春期以降に活動して腋臭症の原因となるため、腋窩はアポクリン汗腺を特徴とする部位として押さえます。エクリン汗腺は交感神経支配でありながらコリン作動性であり、手掌・足底は精神性発汗、前額・体幹は温熱性発汗が主体という違いもあります。汗腺の種類と分布を理解しておくことは、多汗症・腋臭症・汗疹の病態や、抗コリン薬の副作用を考えるうえでの基礎になります。

解答・解説

正解はb, cです

本問は皮膚付属器である2種類の汗腺、エクリン汗腺とアポクリン汗腺の分布の違いを問う一般問題である。 エクリン汗腺は全身の皮膚に200万〜500万個ほど存在し、導管が毛包を介さず直接皮膚表面に開口する。水分を主体とする薄い汗を分泌し、蒸発による気化熱で体温を下げる体温調節の主役である。分布密度には部位差があり、手掌・足底で最も高く、次いで前額(額)などの顔面、腋窩、体幹の順に多い。一方、口唇の赤唇部、亀頭、陰核、小陰唇、包皮内板、爪床などにはエクリン汗腺がほとんど存在しない。 アポクリン汗腺は腋窩、乳輪、外陰部(陰部・肛門周囲)、外耳道(耳道腺)、眼瞼(Moll腺)など限られた部位にのみ分布し、導管は毛包の上部に開口する。思春期以降に活動を始め、脂質やタンパク質を含む分泌物は皮膚常在菌に分解されて特有のにおいを生じる。 したがって、エクリン汗腺が多い部位として典型的な前額と手掌を選ぶ。腋窩はアポクリン汗腺が集中する部位として押さえるのが出題の意図である。

選択肢考察

  1. ×a.  口唇

    口唇の赤唇部は角層が薄く粘膜に近い移行部で、毛包・脂腺・汗腺をほとんど欠く。エクリン汗腺が存在しない代表的部位の一つである。赤唇が乾燥しやすいのはこのためでもある。

  2. ○b.  前額

    前額(額)は顔面の中でもエクリン汗腺の密度が高く、手掌・足底に次ぐ多汗部位である。暑熱環境や運動時の温熱性発汗が目立ち、辛い物を食べたときの味覚性発汗も顔面(額・鼻・口周囲)に生じる。

  3. ○c.  手掌

    手掌は足底とともにエクリン汗腺の密度が全身で最も高い部位である。この部位の発汗は体温調節よりも緊張・不安などの情動刺激による精神性発汗が主体であり、手掌多汗症の好発部位でもある。

  4. ×d.  腋窩

    腋窩はアポクリン汗腺が最も集中する部位であり、その分泌物が細菌で分解されると腋臭症(わきが)の原因となる。腋窩にもエクリン汗腺は存在し腋窩多汗症の原因となるが、この部位を特徴づけるのはアポクリン汗腺であり、エクリン汗腺の典型的な多発部位としては前額・手掌が挙げられる。

  5. ×e.  亀頭

    亀頭は陰核、小陰唇、包皮内板とともにエクリン汗腺を欠く部位である。汗腺がない部位として口唇とあわせて覚えておく。

エクリン汗腺とアポクリン汗腺の比較

・分布:エクリン汗腺はほぼ全身(口唇赤唇部・亀頭・陰核・小陰唇・包皮内板・爪床を除く)で、手掌・足底・前額に多い。アポクリン汗腺は腋窩・乳輪・外陰部・肛門周囲・外耳道・眼瞼に限局する。 ・開口部:エクリン汗腺は皮膚表面に直接開口し、アポクリン汗腺は毛包上部に開口する。 ・分泌様式:エクリン汗腺は開口分泌(漏出分泌)で水分主体の汗。アポクリン汗腺は細胞の一部がちぎれて出る断頭分泌とされ、脂質・タンパク質を含む。 ・神経支配:エクリン汗腺は交感神経支配だが節後線維の伝達物質はアセチルコリン(コリン作動性)。アポクリン汗腺は主にアドレナリン作動性の刺激に反応する。 ・機能・発達:エクリン汗腺は出生時から機能し体温調節を担う。アポクリン汗腺は思春期以降に発達し、におい(体臭)に関与する。

発汗の種類

・温熱性発汗:手掌・足底を除く全身、特に前額・体幹で起こり体温調節に働く。 ・精神性発汗:手掌・足底・腋窩に起こり、緊張や情動で生じる。 ・味覚性発汗:辛味などの刺激で顔面に起こる。

関連疾患

・原発性局所多汗症(手掌・足底・腋窩・頭部顔面):エクリン汗腺の過剰な発汗。塩化アルミニウム外用、イオントフォレーシス、ボツリヌス毒素局注、抗コリン外用薬などで治療する。 ・腋臭症:アポクリン汗腺の分泌物の細菌分解による。 ・汗疹(あせも):エクリン汗管の閉塞による。

POINT

・エクリン汗腺は手掌・足底・前額に多い。 ・エクリン汗腺がない部位:口唇(赤唇部)、亀頭、陰核、小陰唇、包皮内板、爪床。 ・アポクリン汗腺は腋窩・乳輪・外陰部・外耳道・眼瞼に限局し、毛包に開口する。 ・エクリン汗腺は交感神経支配だがコリン作動性。 ・手掌・足底は精神性発汗、前額・体幹は温熱性発汗が主体。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。