StudyMed医師国家試験

児頭が越えるべき「最狭の関門」―産科的真結合線はなぜ一番短いのか

第99回医師国家試験 D問題 第37問

国試問題にチャレンジ

第99回 D問題 第37問

骨盤の計測値で最も小さいのはどれか。

  1. a.解剖学的真結合線
  2. b.産科的真結合線
  3. c.対角結合線
  4. d.骨盤横径
  5. e.骨盤斜径

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は骨盤の計測値の大小関係を問う問題だ。ポイントは、骨盤入口部の前後径が「仙骨岬角から恥骨結合のどこへ引くか」で3種類に分かれること、そして入口部全体がどんな形をしているか。この2つが整理できれば迷わず解けるよ。
医学生医学生
結合線が3本もあって、解剖学の講義のときから名前がごちゃごちゃになりがちでした。
ドクタードクター
みんなそこで混乱するんだ。起点はどれも同じ岬角、つまり第1仙椎上縁前面の出っ張りだ。終点が恥骨結合の上縁中央なら解剖学的真結合線、下縁中央なら対角結合線、そして恥骨結合の後面で最も内側に張り出した点なら産科的真結合線になる。
医学生医学生
終点が上か、下か、裏側か、ということですね。直感的には上縁に引く解剖学的真結合線が一番短そうに思えますが……。
ドクタードクター
そう考える人は多いね。でも産科的真結合線は、定義そのものが「岬角から恥骨結合後面までの最短距離」なんだ。恥骨結合は後面がわずかに骨盤内へ膨らんでいるから、上縁より後面の突出点のほうが岬角に近い。だから同じ岬角を起点とする前後径の中では、必ず産科的真結合線が最短になる。
医学生医学生
「最短距離」と定義されている以上、他の前後径より長くなりようがないわけですね。値はどのくらいでしょうか。
ドクタードクター
平均約11cmで、正常範囲はおよそ10.5〜12.5cm。解剖学的真結合線は約11.5cmで数mm長く、対角結合線は約12.5〜13cmと前後径の中では最も長い。恥骨結合の下縁まで斜めに引くぶん、長くなるんだ。
医学生医学生
では横径と斜径はどうですか。前後径と比べたことがありませんでした。
ドクタードクター
骨盤入口部は横に長い楕円形をしている。左右の分界線間の最大距離である横径は約13cmで入口部の最長径だ。斜径は一側の仙腸関節と反対側の腸恥隆起を結ぶ線で約12.5cm。どちらも前後径より長いから、結局、選択肢の中で最も小さいのは産科的真結合線ということになる。
医学生医学生
入口部が横長だから、児頭は矢状縫合を横に向けて進入するんでしたね。分娩機転の講義で習いました。
ドクタードクター
その通り。そして出口部は逆に縦長だから、児頭は下降しながら回旋して向きを合わせる。これが第2回旋だ。骨盤の形と分娩機転は表裏一体なんだよ。
医学生医学生
産科的真結合線が臨床で重視されるのは、児頭が通る一番狭いところだからですか。
ドクタードクター
そう。入口部の最狭部だから、児頭骨盤不均衡、いわゆるCPDの評価で最も重要な値になる。目安として9.5cm未満は狭骨盤、9.5〜10.5cm未満は比較的狭骨盤とされ、児頭の大きさと合わせて経腟分娩が可能かを検討する。
医学生医学生
でも、骨盤の内側の点まで実際にどうやって測るんですか。産婦人科の実習で内診は見学しましたが……。
ドクタードクター
いい疑問だね。内診指で直接届く前後径は対角結合線だけなんだ。岬角に中指を当て、恥骨結合下縁の位置を確認して測る。そこから約1.5〜2cm引くと産科的真結合線の推定値になる。正確に測るにはX線骨盤計測で、側面撮影のGuthmann法で産科的真結合線を、入口面撮影のMartius法で入口部の形や横径を評価する。
医学生医学生
X線だと胎児の被曝が気になります。
ドクタードクター
大事な視点だ。だから現在は適応を絞って行い、MRIで計測する施設もある。低身長の妊婦さんや、分娩が進まず児頭が下降しないケースなどで、CPDを疑ったときに検討することになる。
医学生医学生
前後径は対角結合線、解剖学的真結合線、産科的真結合線の順に短くなって、入口部の最長は横径。これで整理できました。
ドクタードクター
完璧だね。数値を丸暗記するより、「岬角からどこへ引くか」と「入口部は横長」というイメージを持っておくと、どんな聞かれ方をしても対応できるよ。

まとめ

骨盤入口部の前後径は、仙骨岬角から恥骨結合の上縁中央へ引く解剖学的真結合線(約11.5cm)、後面の最突出点へ引く産科的真結合線(約11cm)、下縁中央へ引く対角結合線(約12.5〜13cm)に分けられます。産科的真結合線は岬角と恥骨結合後面の最短距離として定義されるため前後径の中で最も短く、さらに入口部は横径(約13cm)・斜径(約12.5cm)が長い横楕円形であることから、選択肢中で最小となります。この値は児頭が通過する入口部の最狭部にあたり、9.5cm未満は狭骨盤、9.5〜10.5cm未満は比較的狭骨盤としてCPDの評価に直結します。内診で測れるのは対角結合線のみで、そこから1.5〜2cm引くと産科的真結合線を推定でき、正確な計測にはX線(Guthmann法・Martius法)やMRIを用います。骨盤の形と径線の大小関係を理解しておくことは、分娩機転や分娩様式の判断を学ぶうえでの土台になります。

解答・解説

正解はbです

本問は骨盤入口部に関する各径線の定義と大小関係を問う一般問題である。 骨盤入口部の前後径は、後方の基準点である仙骨岬角(第1仙椎上縁前面の突出部)と、前方の恥骨結合のどこを結ぶかによって3種類に分けられる。 ・解剖学的真結合線:岬角中央〜恥骨結合上縁中央 ・産科的真結合線:岬角中央〜恥骨結合後面(内面)の最も突出した点。岬角から恥骨結合への最短距離 ・対角結合線:岬角中央〜恥骨結合下縁中央 産科的真結合線は定義上「岬角と恥骨結合後面との最短距離」であるから、同じ岬角を起点とする他の2本の前後径より必ず短い。さらに骨盤入口部では横径(約13cm)、斜径(約12.5cm)が前後径より長く、入口部は横に長い楕円形をしている。したがって選択肢中で最も小さいのは産科的真結合線(平均約11cm)である。 産科的真結合線は分娩時に児頭が通過しなければならない入口部の最狭部であり、児頭骨盤不均衡(cephalopelvic disproportion:CPD)や狭骨盤の評価で最も重視される計測値である。

選択肢考察

  1. ×a.  解剖学的真結合線

    岬角中央と恥骨結合上縁中央を結ぶ線で、約11.5cmである。恥骨結合上縁は後面の最突出点よりわずかに前上方にあるため、産科的真結合線より数mm程度長い。解剖学的な入口面の前後径を表すが、児頭通過の評価には産科的真結合線が用いられる。

  2. ○b.  産科的真結合線

    岬角中央と恥骨結合後面を結ぶ最短距離で、正常値はおよそ10.5〜12.5cm(平均約11cm)である。骨盤入口部の径線の中で最も短く、児頭が通過する際の最狭部となる。9.5cm未満は狭骨盤、9.5〜10.5cm未満は比較的狭骨盤とされ、CPDの判定に直結する。X線骨盤計測(Guthmann法)で測定する。

  3. ×c.  対角結合線

    岬角中央と恥骨結合下縁中央を結ぶ線で、約12.5〜13cmと前後径の中で最も長い。内診指で直接触れて測定できる唯一の前後径であり、対角結合線から約1.5〜2cmを差し引くと産科的真結合線の推定値となる。

  4. ×d.  骨盤横径

    骨盤入口部で左右の分界線間の最大距離であり、約13cmと入口部の径線の中で最も長い。入口部が横長の楕円形であることを示し、児頭が入口部を横向き(矢状縫合が横径に一致)で進入する理由となる。

  5. ×e.  骨盤斜径

    一側の仙腸関節と対側の腸恥隆起(腸恥骨結節)を結ぶ線で、約12.5cmである。右仙腸関節と左腸恥隆起を結ぶものを第1斜径(右斜径)、左仙腸関節と右腸恥隆起を結ぶものを第2斜径(左斜径)という。産科的真結合線より長い。

骨盤入口部の径線(おおよその正常値)

・骨盤横径:約13cm(最長) ・対角結合線:約12.5〜13cm ・骨盤斜径:約12.5cm ・解剖学的真結合線:約11.5cm ・産科的真結合線:約11cm(10.5〜12.5cm、最短)

産科的真結合線による骨盤の評価

・9.5cm未満:狭骨盤 ・9.5〜10.5cm未満:比較的狭骨盤 狭骨盤ではCPDとなり経腟分娩が困難となる可能性が高く、児頭の大きさ(児頭大横径など)と合わせて分娩様式を検討する。

X線骨盤計測

・Guthmann法(側面撮影):産科的真結合線、骨盤各面の前後径、骨盤傾斜などを評価 ・Martius法(入口面撮影):入口部の形態や横径を評価し、児頭との関係もみる 近年は被曝を考慮し、適応を限定して行う。MRIによる計測も用いられる。

骨盤の各面

骨盤腔は入口部・濶部・峡部・出口部に分けられる。入口部は横径が長い横楕円形、出口部は前後径が長い縦楕円形であり、児頭はこれに合わせて回旋しながら下降する(第2回旋)。

POINT

・産科的真結合線=岬角中央〜恥骨結合後面の最短距離で、骨盤入口部の径線中で最も短い(平均約11cm)。 ・9.5cm未満は狭骨盤、9.5〜10.5cm未満は比較的狭骨盤。 ・前後径の長さ:対角結合線>解剖学的真結合線>産科的真結合線。 ・対角結合線は内診で測定でき、そこから1.5〜2cm引くと産科的真結合線の推定値。 ・入口部の最長径は横径(約13cm)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。