「まだ話さない」はいつから異常?―二語文のデッドラインは3歳
第99回医師国家試験 D問題 第25問
国試問題にチャレンジ
二語文が言えないのを異常と考える最も適切な健康診査の時期はどれか。
- a.6か月
- b.1歳
- c.1歳6か月
- d.3歳
- e.就学時
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
小児の発達評価では、多くの子どもができるようになる標準的な時期と、それまでにできなければ異常を疑う限界の時期(デッドライン)を区別することが重要です。二語文は通常2歳前後で出現し、3歳になっても出なければ明らかな言語発達の遅れと判断するため、母子保健法に基づく法定健診である3歳児健康診査が評価に最も適した時期となります。同様に、意味のある単語は標準1歳・限界2歳であり、1歳6か月児健診では単語や指さし、簡単な指示の理解などを確認します。言語発達の遅れをみたら、聴覚障害、知的能力障害、自閉スペクトラム症、発達性言語障害、養育環境の問題などを考え、まず難聴の除外を行います。発達の「標準」と「限界」を対で理解しておくことは、保護者への適切な説明と早期支援の判断に直結します。
解答・解説
正解はdです
問われていること
小児の言語発達の標準的な時期と、「この時期までにできなければ異常を疑う」という限界の時期(いわゆるデッドライン)の区別を問う問題である。
考え方
小児の発達には個人差が大きく、標準的な獲得時期(多くの子どもができるようになる時期)に達していないだけでは異常とはいえない。そこで健康診査では、通過率がほぼ100%に達する時期を目安に「この時点でできなければ要精査」と判断する。 二語文(「ママ きた」「ワンワン いた」のように2つの単語をつなげた文)は、通常2歳前後で話せるようになる。標準時期の2歳でまだ話せなくても様子をみてよいが、3歳になっても二語文が出ない場合は明らかな言語発達の遅れと考え、原因の検索を行う。 法定の乳幼児健康診査(母子保健法に基づき市町村が実施)のうち、1歳6か月児健康診査と3歳児健康診査の2つが実施を義務づけられている。二語文の有無で異常を判断するのに最も適切なのは、3歳児健康診査である。
選択肢考察
- ×a. 6か月
生後6か月ごろは、「バババ」「ダダダ」のような喃語(なんご:意味をもたない音の連なり)が盛んになる時期であり、意味のある単語もまだ話さない。二語文の有無を評価する時期ではない。この時期には、音のする方を向くか、喃語が出ているかなどを確認し、聴覚障害の手がかりとする。
- ×b. 1歳
1歳前後は「ママ」「マンマ」などの意味のある単語(初語、一語文)が出始める時期である。二語文はまだ話せなくて当然であり、この時期に二語文が出ないことを異常と判断するのは誤りである。
- ×c. 1歳6か月
1歳6か月は語彙(話せる単語の数)が少しずつ増えていく時期で、一部の子どもは二語文を話し始めるが、多くはまだ単語のみである。1歳6か月児健康診査で言語面について確認するのは、意味のある単語をいくつか話すか、簡単な指示を理解するか、指さしをするかといった点であり、二語文が言えないことは異常とはしない。なお意味のある単語が2歳になっても出ない場合は遅れを疑う。
- ○d. 3歳
二語文は通常2歳前後で出現し、3歳ではほぼすべての子どもが話せるようになる。3歳ごろには三語文や簡単な会話が可能となり、自分の名前を言えるようにもなるのが標準である。したがって3歳で二語文が言えなければ明らかな言語発達の遅れと判断し、聴覚障害、知的能力障害(知的障害)、自閉スペクトラム症、発達性言語障害、養育環境の問題などを念頭に精査する。3歳児健康診査は母子保健法で定められた法定健診であり、この判断に最も適した時期である。
- ×e. 就学時
就学時(5〜6歳)には、通常、日常会話が十分に成り立ち、経験したことを順序立てて話せる。この時期に二語文が言えなければ当然異常であるが、判断が遅すぎる。言語の遅れは早期に発見して療育や聴覚管理などの支援を始めることが重要であり、「最も適切な時期」とはいえない。なお就学時健康診断は母子保健法ではなく学校保健安全法に基づいて市町村教育委員会が行う。
言語発達の目安
・1〜2か月:クーイング(「アー」「クー」など母音中心の発声) ・4〜6か月:喃語が出始め、6か月以降は反復喃語が盛んになる ・9〜10か月:大人の声の抑揚をまねる、「ダメ」などの禁止がわかる ・1歳:意味のある単語(一語文)が出る。標準的な限界は2歳まで ・1歳6か月:意味のある単語が数語以上。指さしで意思を示す ・2歳:二語文。標準的な限界は3歳まで ・3歳:三語文、自分の姓名・年齢を言う、簡単な会話が可能 ・4〜5歳:接続詞を用いて文をつなげる、経験を話す ・5〜6歳:日常会話がほぼ成人並みに可能。ほとんどの音を正しく発音できる
乳幼児健康診査
・母子保健法により市町村に実施が義務づけられているのは、1歳6か月児健康診査と3歳児健康診査である。そのほか乳児期(3〜4か月、9〜10か月など)の健診も多くの市町村で行われている。 ・1歳6か月児健診:歩行の確立、意味のある単語、指さし、積み木などを確認し、運動・言語・精神発達の遅れや自閉スペクトラム症の早期発見に役立てる。 ・3歳児健診:言語発達(二語文〜会話)、社会性、視覚・聴覚の異常などを確認する。視力検査や聴覚検査もこの健診で行われる。
言語発達遅滞の主な原因
聴覚障害(難聴)、知的能力障害、自閉スペクトラム症、発達性言語障害(言語表出の遅れ)、構音器官の異常、不適切な養育環境(ネグレクトなど)。言葉の遅れがあれば、まず聴力の評価を行うことが重要である。
POINT
・二語文は標準2歳、3歳で出なければ異常(デッドライン)。 ・意味のある単語は標準1歳、2歳で出なければ異常。 ・発達の評価では、標準的な獲得時期と「異常と判断する限界の時期」を区別する。 ・法定の乳幼児健診は1歳6か月児健診と3歳児健診(母子保健法)。 ・言語発達の遅れをみたら、まず難聴を除外する。
