StudyMed医師国家試験

検診があるがん、ないがん―「死亡率を下げられるか」で決まる5つの対策型検診

第120回医師国家試験 F問題 第18問

国試問題にチャレンジ

第120回 F問題 第18問

健康増進法に基づくがん検診に含まれないのはどれか。

  1. a.胃がん
  2. b.膵がん
  3. c.乳がん
  4. d.大腸がん
  5. e.子宮頸がん

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は健康増進法に基づくがん検診の対象を問う問題だ。ポイントは、市町村が行うがん検診は5種類に限られていること、そしてなぜその5種類なのかという理由だ。理由まで理解しておくと、忘れにくくなるよ。まず、5種類を挙げられるかな。
医学生医学生
胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんの5つです。公衆衛生の講義で語呂合わせで覚えました。
ドクタードクター
正解。健康増進法では、市町村の健康増進事業の一つとしてがん検診が位置づけられていて、具体的な内容は厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」で定められている。そこに並ぶのがこの5つだ。
医学生医学生
選択肢の中だと膵がんが入っていませんね。でも膵がんは予後が悪いので、むしろ検診が必要な気がします。
ドクタードクター
その疑問はとても大切だね。対策型検診に採用される条件は、「検診を受けることで、そのがんによる死亡率が下がる」という科学的根拠があること、そして集団に対して安全かつ安価に実施できる検査法があることなんだ。膵がんは、腹部超音波や腫瘍マーカーのCA19-9で一般住民を検診しても、死亡率が下がるという根拠がない。
医学生医学生
予後が悪いことと、検診で救えることは別の話なんですね。
ドクタードクター
その通り。検診には偽陽性や過剰診断、精密検査の偶発症といった不利益もある。利益が不利益を上回ることが確認された方法だけが、公費で行う対策型検診として採用されるんだ。だから正解は膵がんになる。
医学生医学生
では膵がんの早期発見はどうしているんですか。消化器内科の実習で、IPMNの患者さんがMRCPで定期的にフォローされていました。
ドクタードクター
いい経験をしているね。まさにそれが現実的なアプローチだ。膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、慢性膵炎、膵がんの家族歴などをもつ高リスク者を個別に経過観察して、早期発見を試みているんだ。では、ほかの4つの検診の中身も確認しよう。胃がん検診は何歳からかな。
医学生医学生
40歳以上で毎年……だったと思います。
ドクタードクター
惜しい。胃がん検診は50歳以上で2年に1回が基本だ。検査は問診に加えて胃X線検査か胃内視鏡検査のどちらか。ただし胃X線検査については、当分の間40歳以上・年1回でも実施してよいとされているから、そこと混同しやすいね。
医学生医学生
大腸がんは便潜血検査ですよね。40歳以上で年1回、免疫法の2日法でした。
ドクタードクター
完璧だ。陽性なら精密検査として全大腸内視鏡検査を行う。肺がんも40歳以上・年1回で、胸部X線検査が基本。50歳以上で喫煙指数600以上の高危険群には喀痰細胞診を加える。
医学生医学生
乳がんはマンモグラフィで、視触診はもう含まれていないんでしたっけ。
ドクタードクター
そう。乳がん検診は40歳以上の女性に2年に1回、問診とマンモグラフィで行う。視診・触診単独は推奨されず、指針の検査項目から外されている。子宮頸がん検診は20歳以上の女性に2年に1回、問診・視診・細胞診・内診で行う。さらに2024年度からは、体制の整った市町村で30〜60歳の女性にHPV検査単独法を5年に1回行う方法も選べるようになった。
医学生医学生
年1回は肺と大腸、2年に1回は胃・乳・子宮頸と整理できそうです。年齢は子宮頸が20歳、胃が50歳、残りが40歳ですね。
ドクタードクター
その整理で十分だ。発展として、前立腺がんのPSA検診も現時点では対策型検診として推奨されていないことを押さえておこう。人間ドックなどで個人の希望で受ける検診は任意型検診と呼ばれ、区別される。
医学生医学生
健康増進法に基づく検診は、がん以外にもありましたか。
ドクタードクター
市町村の健康増進事業として、歯周疾患検診、骨粗鬆症検診、肝炎ウイルス検診がある。紛らわしいのは特定健康診査で、これは健康増進法ではなく高齢者の医療の確保に関する法律に基づき、医療保険者が40〜74歳を対象に行うものだ。法律と実施主体の組み合わせはよく問われるから注意しよう。
医学生医学生
外来で患者さんに「膵臓の検診は受けなくていいんですか」と聞かれたら、根拠の話をしつつ、リスクがある人は個別に診ていくと説明すればいいですね。
ドクタードクター
その通り。検診の意義と限界を説明できることは、臨床医にとって大切な力だよ。

まとめ

健康増進法に基づき市町村が行うがん検診は、胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんの5種類で、膵がんは含まれません。これらは検診によって死亡率が下がるという科学的根拠があり、集団に安全かつ安価に実施できる検査法が存在するため、公費による対策型検診として採用されています。膵がんは予後不良ですが、一般住民への検診で死亡率が下がる根拠はなく、IPMNや慢性膵炎、家族歴などをもつ高リスク者を個別に経過観察して早期発見を目指します。受診間隔は肺・大腸が年1回、胃・乳・子宮頸が2年に1回、対象年齢は子宮頸が20歳以上、胃が50歳以上、ほかは40歳以上と整理しておくとよいでしょう。検診の利益と不利益を理解しておくことは、国試だけでなく、患者さんに検診の意義を説明する臨床の場面でも役立ちます。

解答・解説

正解はbです

健康増進法では、市町村が行う健康増進事業の一つとしてがん検診が位置づけられており(市町村の努力義務)、その具体的な内容は厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」で定められている。 指針で市町村が実施するとされているがん検診は、胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんの5種類である。これらは、無作為化比較試験などの科学的根拠により「検診を受けることでその臓器のがんによる死亡率が下がる」ことが示され、かつ集団に対して安全かつ安価に実施できる検査法が存在するものに限られている。このように地域住民全体の死亡率減少を目的として公費で行う検診を対策型検診といい、個人の希望で受ける人間ドックなどの任意型検診と区別する。 本問は5種類を正確に覚えていれば、そこに含まれない膵がんをすぐに選べる。

選択肢考察

  1. ×a.  胃がん

    胃がん検診は健康増進法に基づくがん検診に含まれる。対象は50歳以上で、受診間隔は2年に1回である。検査法は問診に加えて胃X線検査(バリウムによる造影検査)または胃内視鏡検査のいずれかを用いる。なお胃X線検査については、当分の間40歳以上を対象に年1回実施してもよいとされている。

  2. ○b.  膵がん

    膵がんは健康増進法に基づくがん検診に含まれない。膵がんは早期発見が難しく予後不良ながんであるが、一般住民を対象として腹部超音波検査や腫瘍マーカー(CA19-9など)で検診を行っても死亡率が下がるという科学的根拠がなく、有効な対策型検診が確立していない。実際の臨床では、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、慢性膵炎、膵がんの家族歴などをもつ高リスク者を個別に経過観察することで早期発見が試みられている。

  3. ×c.  乳がん

    乳がん検診は健康増進法に基づくがん検診に含まれる。対象は40歳以上の女性で、受診間隔は2年に1回である。検査法は問診と乳房X線検査(マンモグラフィ)であり、視診・触診は単独では推奨されておらず、指針の検査項目から外されている。

  4. ×d.  大腸がん

    大腸がん検診は健康増進法に基づくがん検診に含まれる。対象は40歳以上で、受診間隔は年1回である。検査法は問診と便潜血検査(免疫法、通常2日分の便を採取する2日法)である。便潜血陽性の場合は精密検査として全大腸内視鏡検査を行う。

  5. ×e.  子宮頸がん

    子宮頸がん検診は健康増進法に基づくがん検診に含まれる。対象は20歳以上の女性で、細胞診を用いる場合の受診間隔は2年に1回である。検査は問診、視診、子宮頸部の細胞診および内診からなる。2024年度からは、30〜60歳の女性に対してヒトパピローマウイルス(HPV)検査単独法を5年に1回行う方法も、体制が整った市町村では選択できるようになった。

健康増進法(指針)に基づくがん検診の一覧

・胃がん:50歳以上、2年に1回。問診+胃X線検査または胃内視鏡検査(胃X線は当分の間40歳以上・年1回も可)。 ・肺がん:40歳以上、年1回。問診+胸部X線検査。50歳以上で喫煙指数(1日本数×喫煙年数)600以上の高危険群には喀痰細胞診を追加する。 ・大腸がん:40歳以上、年1回。問診+便潜血検査。 ・乳がん:40歳以上の女性、2年に1回。問診+マンモグラフィ。 ・子宮頸がん:20歳以上の女性、2年に1回。問診+視診+細胞診+内診(30〜60歳ではHPV検査単独法・5年に1回も選択可)。

対策型検診と任意型検診

対策型検診は集団全体の死亡率減少を目的とし、公的資金で実施される。利益(死亡率減少)が不利益(偽陽性、過剰診断、偶発症など)を上回ることが確認された方法のみが採用される。任意型検診は個人の死亡リスク低減を目的とした人間ドックなどで、方法の選択は個人に委ねられる。前立腺がんのPSA検診や膵がんの検診は、現時点では対策型検診として推奨されていない。

健康増進法に基づくその他の検診

市町村が行う健康増進事業には、がん検診のほかに歯周疾患検診、骨粗鬆症検診(40〜70歳の女性、5歳刻みの節目年齢)、肝炎ウイルス検診(40歳の者および41歳以上で未受診の者など)がある。なお40〜74歳を対象とする特定健康診査は健康増進法ではなく「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づき医療保険者が実施する。

POINT

・健康増進法に基づく市町村のがん検診は胃・肺・大腸・乳・子宮頸の5つ。 ・膵がん、肝がん、前立腺がんなどは含まれない。 ・年1回:肺(40歳〜)、大腸(40歳〜)。2年に1回:胃(50歳〜)、乳(40歳〜女性)、子宮頸(20歳〜女性)。 ・採用条件は「検診による死亡率減少の科学的根拠」があること。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。