BMI 28が告げるもの―計算の先に見える「肥満症」とメタボリックシンドローム
第120回医師国家試験 D問題 第75問
国試問題にチャレンジ
40歳の男性。健康診断で異常値を指摘され,精査を勧められ来院した。運動習慣はなく,外食が多い。喫煙歴はなく,降圧薬を服用している。身長173cm,体重84kg,腹囲90cm。血圧142/76mmHg。血液生化学所見(空腹時):血糖115mg/dL,HbA1c 6.2%(基準4.9~6.0),トリグリセリド146mg/dL,HDLコレステロール33mg/dL,LDLコレステロール110mg/dL。対応方針の検討にあたり肥満の評価が必要と判断し,Body Mass Indexを計算することにした。 Body Mass Indexを求めよ。 ただし,小数点以下の数値が得られた場合には,小数第1位を四捨五入すること。 解答:①②
対話形式の解説
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ドクターまとめ
BMIは体重(kg)を身長(m)の2乗で割って求め、本例では84÷1.73²≒28.07から28となります。身長をmに換算し忘れるミスが多いため、逆算による検算が有効です。日本肥満学会ではBMI 25以上を肥満とし、さらに耐糖能障害・脂質異常症・高血圧などの健康障害を伴うか内臓脂肪型肥満であれば、減量治療が必要な「肥満症」と判断します。本例は腹囲85cm以上に加えて脂質・血圧・血糖の3項目を満たしており、メタボリックシンドロームにも該当します。数値を計算するだけでなく、その意味を合併症とあわせて解釈し、3〜6か月で3%以上という現実的な減量目標へつなげることが、生活習慣病診療の基本です。
解答・解説
正解は28です
解法
Body Mass Index(BMI、体格指数)は、体重(kg)を身長(m)の2乗で割って求める。身長はcmではなくmに換算してから計算する点に注意する。
計算過程
・身長:173cm=1.73m ・身長の2乗:1.73×1.73=2.9929(m²) ・BMI=84÷2.9929≒28.07(kg/m²) 小数第1位を四捨五入して、BMIは28となる。 (検算:28×2.9929≒83.8であり、体重84kgとほぼ一致する。)
症例全体の評価
BMI 28は日本肥満学会の基準で肥満(1度:25以上30未満)に当たる。本例はさらに、 ・腹囲90cm(男性の基準85cm以上)→内臓脂肪蓄積が疑われる ・降圧薬服用中で、なお血圧142/76mmHg→高血圧(治療中でコントロール不十分) ・空腹時血糖115mg/dL(110〜125mg/dLは空腹時血糖異常)、HbA1c 6.2%→耐糖能異常(糖尿病予備群) ・HDLコレステロール33mg/dL(40mg/dL未満)→低HDLコレステロール血症 を有する。肥満に起因・関連する健康障害(耐糖能異常、脂質異常症、高血圧)を伴うため、単なる「肥満」ではなく治療対象となる「肥満症」と判断される。また、腹囲基準に加えて、脂質(低HDL)・血圧(降圧薬服用中)・血糖(空腹時110mg/dL以上)の3項目すべてを満たし、日本のメタボリックシンドローム診断基準にも該当する。運動習慣がなく外食が多いという生活背景から、食事療法と運動療法による減量(まずは3〜6か月で現体重の3%以上)が対応の中心となる。
日本肥満学会の肥満度分類(BMI, kg/m²)
・18.5未満:低体重 ・18.5以上25未満:普通体重 ・25以上30未満:肥満(1度) ・30以上35未満:肥満(2度) ・35以上40未満:肥満(3度) ・40以上:肥満(4度) ・BMI 35以上を高度肥満とする。 ・WHOの基準ではBMI 25以上30未満はPre-obese(過体重)、30以上がObese(肥満)である。日本人は欧米人に比べて軽度の肥満でも健康障害を生じやすいため、より低いBMI 25を肥満の基準としている。 ・標準体重(理想体重)はBMI 22となる体重で、身長(m)²×22で求める。本例では2.9929×22≒65.8kgである。
肥満と肥満症
・肥満:BMI 25以上の状態(脂肪組織が過剰に蓄積した状態)。 ・肥満症:肥満に起因・関連する健康障害(耐糖能障害、脂質異常症、高血圧、高尿酸血症・痛風、冠動脈疾患、脳梗塞、脂肪肝、月経異常、睡眠時無呼吸症候群、運動器疾患、肥満関連腎臓病など)を合併するか、その合併が予測される内臓脂肪型肥満(ウエスト周囲長が男性85cm以上・女性90cm以上でスクリーニングし、腹部CTで内臓脂肪面積100cm²以上により確定)であり、医学的に減量を必要とする病態。
メタボリックシンドロームの診断基準(日本)
必須項目:腹囲(ウエスト周囲長)男性85cm以上、女性90cm以上 これに加えて、以下の3項目のうち2項目以上を満たす。 ・脂質:トリグリセリド150mg/dL以上 かつ/または HDLコレステロール40mg/dL未満 ・血圧:収縮期130mmHg以上 かつ/または 拡張期85mmHg以上 ・血糖:空腹時血糖110mg/dL以上 ※それぞれの疾患に対する薬物治療を受けている場合は、その項目を満たすものとする。
POINT
・BMI=体重(kg)÷身長(m)²。cmをmに直してから計算する。 ・本例:84÷1.73²=84÷2.9929≒28.07→28。 ・日本肥満学会ではBMI 25以上を肥満、35以上を高度肥満とする(WHOでは30以上が肥満)。 ・肥満に健康障害を伴う、または内臓脂肪型肥満であれば「肥満症」として治療対象となる。 ・メタボリックシンドローム:腹囲(男性85cm以上・女性90cm以上)+脂質・血圧・血糖のうち2項目以上。
