StudyMed医師国家試験

吸うときに鳴る音―クループ症候群のstridorを「場所と呼吸相」で読み解く

第120回医師国家試験 D問題 第11問

国試問題にチャレンジ

第120回 D問題 第11問

Which of the following is heard during chest auscultation in a child with croup syndrome?

  1. a.Diffuse wheezing
  2. b.Inspiratory stridor
  3. c.Pleural friction rub
  4. d.Crackles at the lung bases
  5. e.Weak breath sounds in the right lung

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は英語の問題で、テーマはクループ症候群の聴診所見だ。ポイントは、異常音が「気道のどこで」「吸気と呼気のどちらで」生じるかを整理できるかどうか。まずクループ症候群がどんな病気か、ざっと説明できるかな。
医学生医学生
小児科の講義で習いました。パラインフルエンザウイルスが原因で、犬が吠えるような咳が出る病気ですよね。
ドクタードクター
そう。声門下を中心とした上気道が炎症と浮腫で狭くなる病態の総称で、代表はウイルス性の急性喉頭気管炎だ。生後6か月から3歳ごろに多く、犬吠様咳嗽、嗄声、吸気性喘鳴が三主徴。夜間に急に悪くなりやすいのも特徴だね。
医学生医学生
喘鳴と聞くと、つい喘息のゼーゼーを思い浮かべてしまいます。選択肢のdiffuse wheezingでもよさそうに見えて……。
ドクタードクター
そこが今回の落とし穴だ。気道が胸郭の外にあるか中にあるかで、狭窄音が目立つ呼吸相が変わるんだ。喉頭や気管上部といった胸郭外の上気道は、吸気時に気道内が陰圧になって内腔がさらに狭まる。だから狭窄があると吸気時に音が出る。これがstridor、吸気性喘鳴だ。
医学生医学生
逆に胸郭内の気管支は、息を吐くときに胸腔内圧で押しつぶされるから、呼気で鳴るわけですね。
ドクタードクター
その通り。それがwheezes、主に呼気性の高調な連続性ラ音だ。びまん性に聞こえるなら、気管支喘息の発作やRSウイルスによる細気管支炎のように、下気道が広く狭くなっている状態を考える。クループは声門下、つまり上気道の病気だから、答えはinspiratory stridorになる。
医学生医学生
小児科の実習で、外来の待合室にいる子のヒューッという音が聴診器なしでも聞こえたことがあります。あれがstridorだったんですね。
ドクタードクター
きっとそうだね。stridorは聴診器を当てなくても聞こえることが多いけれど、頸部や胸部の聴診でもはっきり確認できる。残りの選択肢も確認しよう。pleural friction rubはどうかな。
医学生医学生
胸膜摩擦音は胸膜炎ですよね。クループは胸膜までは侵さないので違うと思います。
ドクタードクター
正解。炎症で粗くなった臓側胸膜と壁側胸膜がこすれ合う、きしむような音で、吸気・呼気の両方で聞こえる。胸水が増えて胸膜同士が離れると消えるのもポイントだ。では肺底部のcracklesは?
医学生医学生
断続性ラ音なので、肺胞や末梢気道の病変ですね。OSCEの聴診シミュレータで、細かいパチパチが捻髪音、粗いブツブツが水泡音と練習しました。
ドクタードクター
よく覚えているね。fine cracklesは間質性肺炎、coarse cracklesは肺炎や心不全による肺水腫などを示唆する。いずれも上気道狭窄であるクループの所見ではない。最後に右肺の呼吸音減弱はどうだろう。
医学生医学生
片側だけ弱いなら、気胸や胸水……あ、小児なら気道異物でしょうか。右主気管支は太くて角度が急だから入りやすいと習いました。
ドクタードクター
その通り。片側性の呼吸音減弱は、その肺に空気が入らないか、音を遮るものがあることを示す。クループは上気道全体の狭窄だから、左右差が出るのは典型的ではないね。つまり、上気道ならstridor、下気道ならwheezes、肺胞ならcrackles、胸膜なら摩擦音、と場所で整理すればいい。
医学生医学生
場所と呼吸相で考えれば、英語の選択肢でも迷わずに済みますね。
ドクタードクター
そういうこと。臨床で大事な点も押さえておこう。安静時にもstridorが聞こえる、あるいは陥没呼吸を伴うなら中等症以上だ。そして重症化して換気量が大きく落ちると、stridorがかえって小さくなることがある。音が弱くなったのを改善と誤解してはいけない。意識レベルやチアノーゼ、陥没呼吸とあわせて評価するんだ。
医学生医学生
治療はステロイドとアドレナリン吸入でしたか。
ドクタードクター
そう。デキサメタゾンなどのステロイドは軽症でも症状を改善し、中等症以上ではアドレナリン吸入を併用する。アドレナリンは効果が速い反面、持続が短く再増悪することがあるので、吸入後もしばらく経過観察する。泣くと狭窄が悪化するから、なるべく泣かせない診察も大切だ。それから鑑別として急性喉頭蓋炎は必ず押さえよう。
医学生医学生
Hibが原因で、流涎があって前かがみに座る、tripod positionでしたね。
ドクタードクター
よく覚えている。高熱と強い咽頭痛、嚥下困難があり、犬吠様咳嗽は目立たない。急速に窒息しうるから、舌圧子で咽頭をのぞくなど患児を刺激する処置は避けて、気道確保できる体制を整えることが最優先だ。画像では、クループは頸部X線正面像の声門下狭窄、いわゆるsteeple sign、喉頭蓋炎は側面像の喉頭蓋腫大、thumb signと対比して覚えておこう。

まとめ

クループ症候群は、主にパラインフルエンザウイルスによって声門下を中心とした上気道が狭窄する病態で、生後6か月〜3歳に多く、犬吠様咳嗽・嗄声・吸気性喘鳴(stridor)が三主徴です。胸郭外の上気道は吸気時の陰圧で内腔がさらに狭まるため吸気時に音が生じ、胸郭内の下気道狭窄では呼気時にwheezesが目立つという違いを押さえることが鍵になります。cracklesは肺胞・末梢気道の病変、胸膜摩擦音は胸膜炎、片側の呼吸音減弱は気胸・胸水・気道異物などを示し、いずれもクループの所見ではありません。臨床では安静時stridorや陥没呼吸で重症度を判断し、重症化でstridorが弱まることがある点や、Hibによる急性喉頭蓋炎との鑑別に注意が必要です。聴診音を「場所」と「呼吸相」で整理する考え方は、小児の呼吸困難を評価する際の基本となります。

解答・解説

正解はbです

設問の訳

「クループ症候群の小児の胸部聴診で聴取されるのは次のうちどれか。」

考え方

クループ症候群は、喉頭、特に声門下を中心とした上気道の炎症と浮腫により、気道が狭くなる病態の総称である。代表はウイルス性の急性喉頭気管炎で、原因の多くはパラインフルエンザウイルスである。生後6か月〜3歳ごろに多い。犬が吠えるような咳(犬吠様咳嗽)、嗄声、吸気性喘鳴が三主徴であり、夜間に急に悪化しやすい。 聴診で聞こえる異常音は、「どこで(上気道か下気道か、肺胞か胸膜か)」「吸気と呼気のどちらで」発生するかを考えると整理できる。 ・胸郭の外にある上気道(喉頭・気管上部)は、吸気時に気道内が陰圧となって内腔がさらに狭まるため、狭窄があると吸気時に音が生じる。これがstridor(吸気性喘鳴)である。 ・胸郭内の下気道(気管支・細気管支)は、呼気時に胸腔内圧で圧迫されて狭まるため、狭窄があると主に呼気時に音が生じる。これがwheezes(笛声音などの連続性ラ音)である。 クループ症候群は上気道(声門下)の狭窄であるから、聴取されるのは吸気性喘鳴(inspiratory stridor)である。stridorは聴診器を当てなくても聞こえることが多いが、頸部や胸部の聴診でもはっきり確認できる。

選択肢考察

  1. ×a.  Diffuse wheezing

    びまん性の喘鳴(wheezes)は、気管支・細気管支といった下気道が広い範囲で狭くなることで生じる、主に呼気時の高調な連続性ラ音である。気管支喘息の発作や、RSウイルスなどによる細気管支炎で聴取される。クループ症候群の病変は声門下を中心とする上気道であり、典型的な所見ではない。

  2. ○b.  Inspiratory stridor

    吸気性喘鳴(stridor)は、喉頭から胸郭外の気管にかけての上気道が狭くなったときに、吸気時に聞こえる高調な音である。クループ症候群ではウイルス感染による声門下の浮腫で内腔が狭くなり、吸気時の陰圧でさらに狭まるため、この音が生じる。犬吠様咳嗽・嗄声とともにクループの三主徴をなす。安静時にもstridorが聞こえる場合や、陥没呼吸を伴う場合は中等症以上と判断する。逆に重症化して換気量が大きく低下すると、stridorがかえって小さくなることがあり、音が弱まったことを改善と誤解してはならない。

  3. ×c.  Pleural friction rub

    胸膜摩擦音は、炎症で表面が粗くなった臓側胸膜と壁側胸膜が呼吸に伴ってこすれ合うことで生じる、ギュッギュッというきしむような音である。吸気・呼気の両方で聴取され、胸膜炎の初期などにみられる。胸水が多量にたまって胸膜同士が離れると消失する。クループ症候群は胸膜を侵さないため、聴取されない。

  4. ×d.  Crackles at the lung bases

    断続性ラ音(crackles)は、閉じていた末梢気道が吸気時に開放されたり、気道内の分泌物や液体の中を空気が通過したりして生じる音である。肺底部で聴取される場合、細かいパチパチという音(fine crackles、捻髪音)は間質性肺炎など、粗いブツブツという音(coarse crackles、水泡音)は肺炎や心不全による肺水腫などを示唆する。いずれも肺胞や末梢気道の病変であり、上気道狭窄であるクループ症候群の所見ではない。

  5. ×e.  Weak breath sounds in the right lung

    片側の呼吸音減弱は、その側の肺に空気が十分に入らない、あるいは肺と胸壁の間に音を遮るもの(空気や液体)があることを示す。気胸、胸水、無気肺のほか、小児では右主気管支への気道異物が重要である(右主気管支は左より太く、気管からの分岐角度が小さいため異物が入りやすい)。クループ症候群は上気道全体の狭窄であり、左右差のある呼吸音減弱は典型的ではない。

クループ症候群の要点

・原因:パラインフルエンザウイルスが最多で、ほかにRSウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルスなど。 ・好発:生後6か月〜3歳、秋〜冬に多い。 ・症状:感冒症状に続いて、犬吠様咳嗽、嗄声、吸気性喘鳴が出現する。重症例では陥没呼吸、チアノーゼ、不穏、意識レベル低下を伴う。 ・画像:頸部X線正面像で声門下の狭窄が尖塔状にみえる(steeple sign、ペンシルサイン)。ただし診断は臨床症状で行うのが基本で、画像は必須ではない。 ・重症度評価:Westleyクループスコア(意識レベル、チアノーゼ、stridor、空気の入り、陥没呼吸で評価)などが用いられる。 ・治療:ステロイド(デキサメタゾンの経口・筋注など)は軽症例でも症状を改善する。中等症以上ではアドレナリン吸入を併用する(効果は速いが持続が短く、効果が切れて再増悪することがあるため、吸入後しばらく経過観察する)。啼泣は狭窄を悪化させるため、なるべく患児を泣かせないように診察する。重症例では酸素投与や気管挿管を要する。

鑑別すべき上気道狭窄

・急性喉頭蓋炎:主にインフルエンザ菌b型(Hib)による。高熱、強い咽頭痛、流涎、嚥下困難、前傾座位(tripod position)が特徴で、犬吠様咳嗽は目立たない。頸部X線側面像で喉頭蓋が腫大する(thumb sign)。急速に窒息に至りうるため、舌圧子での咽頭観察など患児を刺激する処置は避け、気道確保ができる体制を整える。Hibワクチンの普及で減少した。 ・細菌性気管炎、気道異物、咽後膿瘍、アナフィラキシーによる喉頭浮腫なども鑑別に挙がる。

聴診所見の整理

・stridor:上気道(胸郭外)狭窄、吸気性 ・wheezes:下気道狭窄、主に呼気性の連続性ラ音 ・crackles:肺胞・末梢気道の病変、断続性ラ音(fine=捻髪音、coarse=水泡音) ・胸膜摩擦音:胸膜炎 ・片側の呼吸音減弱:気胸、胸水、無気肺、気道異物

POINT

・クループ症候群は声門下を中心とした上気道狭窄で、三主徴は犬吠様咳嗽・嗄声・吸気性喘鳴(stridor)。 ・胸郭外の上気道狭窄は吸気時、胸郭内の下気道狭窄は呼気時に音が強くなる。 ・原因はパラインフルエンザウイルスが最多、生後6か月〜3歳に好発する。 ・治療はステロイドとアドレナリン吸入。急性喉頭蓋炎(Hib、流涎、前傾座位)との鑑別が重要。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。