自宅に来てくれる医師は「医療」か「介護」か―医療保険と介護保険の境界線
第119回医師国家試験 C問題 第13問
国試問題にチャレンジ
医療保険で利用可能なのはどれか。
- a.住宅改修
- b.訪問診療
- c.介護医療院
- d.福祉用具貸与
- e.ショートステイ
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
医療保険は診察・検査・投薬などの医療行為に、介護保険は要介護・要支援者の日常生活を支える介護・生活支援に給付する制度であり、医師が計画的に自宅を訪れて診療する訪問診療は医療保険で提供されます。住宅改修、福祉用具貸与、ショートステイは介護保険の居宅サービス、介護医療院は名前に「医療」を含みますが要介護者のための介護保険の施設サービスです。訪問看護や訪問リハビリテーションのように両制度にあるサービスは要介護・要支援認定者では原則介護保険が優先されますが、末期の悪性腫瘍やALSなどでは訪問看護が医療保険で提供される例外があります。「医療保険のみ」「介護保険のみ」「両方(介護保険優先)」の3分類で整理しておくと、試験だけでなく退院調整や在宅医療の現場で多職種と連携する際にも役立ちます。
解答・解説
正解はbです
問われていること
高齢者や在宅療養者が受けるサービスには、医療保険(健康保険・国民健康保険・後期高齢者医療制度)から給付されるものと、介護保険から給付されるもの、両方の制度で提供されうるものがある。本問は、選択肢のうち医療保険の給付として利用できるサービスを選ぶ問題である。
考え方
医療保険は、疾病や負傷に対する診察・検査・投薬・処置・手術・入院などの「医療行為」に給付する制度である。一方、介護保険は、要介護・要支援と認定された人の日常生活を支える「介護・生活支援」に給付する制度であり、居宅サービス(訪問介護、通所介護、短期入所、福祉用具貸与、住宅改修など)、施設サービス(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院)、地域密着型サービスなどからなる。 医師が計画的に患者宅を訪れて診療する訪問診療は医療行為そのものであり、医療保険で提供される。残りの選択肢はいずれも介護保険で提供されるサービスである。
両制度の関係
医療保険と介護保険の両方で提供されうるサービス(訪問看護、訪問リハビリテーションなど)では、要介護・要支援認定を受けている人には原則として介護保険が優先して適用される。訪問診療のように医療保険にしかないサービスは、要介護認定の有無にかかわらず医療保険で利用する。
選択肢考察
- ×a. 住宅改修
手すりの取り付け、段差の解消、滑りにくい床材への変更、引き戸などへの扉の取り替え、洋式便器などへの取り替えといった小規模な住宅改修は、介護保険の居宅サービスとして費用が支給される(支給限度基準額は原則として1住宅あたり20万円で、その範囲内で自己負担分を除いた額が給付される)。要支援者は予防給付(介護予防住宅改修)、要介護者は介護給付として利用でき、医療保険の対象ではない。
- ○b. 訪問診療
訪問診療は、通院が困難な患者に対し、医師が診療計画に基づいて定期的に自宅や施設を訪問して診療を行うものであり、医療保険で提供される。患者や家族の求めに応じて臨時に訪れる往診も同じく医療保険の給付である。要介護認定を受けている人であっても、訪問診療は介護保険には含まれないため医療保険で利用する。なお、介護保険には医師などが療養上の管理・指導を行う居宅療養管理指導があるが、これは診療そのものではない。
- ×c. 介護医療院
介護医療院は、長期にわたる療養が必要な要介護者に、医学的管理のもとでの介護と日常生活の場(生活施設としての機能)を一体的に提供する施設で、2018年に創設された。介護保険の施設サービスの一つであり、要介護認定を受けた人が介護給付として利用する(要支援者は利用できない)。医療保険で入院する病院(療養病床など)とは制度上区別される。なお、同様の役割を担っていた介護療養型医療施設は2024年3月末で廃止され、介護医療院などへ移行した。
- ×d. 福祉用具貸与
車いす、特殊寝台(介護用ベッド)、床ずれ防止用具、手すり、歩行器、移動用リフトなどの貸与は、介護保険の居宅サービスである。要支援者には介護予防福祉用具貸与、要介護者には福祉用具貸与として給付される(要介護度により対象品目に制限がある)。なお、腰掛便座や入浴補助用具など貸与になじまない物は、特定福祉用具販売として購入費が支給される。いずれも医療保険の給付ではない。
- ×e. ショートステイ
ショートステイは、要介護者などが施設に短期間入所して介護や機能訓練を受けるサービスで、介護保険の居宅サービスに位置づけられる。介護老人福祉施設などで日常生活の介護を受ける短期入所生活介護と、介護老人保健施設や介護医療院などで医学的管理下の介護・機能訓練を受ける短期入所療養介護がある。介護者の休息(レスパイト)や冠婚葬祭時などにも利用される。要支援者・要介護者のいずれも利用でき、医療保険の対象ではない。
在宅療養で利用するサービスと保険制度
・医療保険のみで提供されるもの:訪問診療、往診、訪問歯科診療、在宅酸素療法・在宅自己注射などの在宅療養指導管理 ・医療保険と介護保険の双方で提供されるもの:訪問看護、訪問リハビリテーション、訪問薬剤管理指導(介護保険では居宅療養管理指導)、訪問栄養食事指導(同) ・介護保険のみで提供されるもの:訪問介護、訪問入浴介護、通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション(デイケア)、短期入所(ショートステイ)、福祉用具貸与・特定福祉用具販売、住宅改修、施設サービスなど
介護保険優先の原則と例外
両制度で提供されるサービスは、要介護・要支援認定者には介護保険が優先される。ただし訪問看護は、末期の悪性腫瘍や筋萎縮性側索硬化症(ALS)など厚生労働大臣が定める疾病等の患者や、急性増悪などで医師が特別訪問看護指示書を出した期間では、要介護者であっても医療保険で提供される。
介護保険の施設サービス
・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム):常時介護が必要で在宅生活が困難な人の生活施設(新規入所は原則要介護3以上) ・介護老人保健施設:在宅復帰を目指したリハビリテーションと看護・介護を提供する施設 ・介護医療院:長期療養が必要な要介護者に医療と介護、生活の場を一体的に提供する施設
POINT
・訪問診療・往診は医療行為であり、医療保険で提供される(介護保険にはない) ・住宅改修、福祉用具貸与、ショートステイは介護保険の居宅サービス ・介護医療院は介護保険の施設サービス(要介護者のみ利用可) ・医療保険と介護保険の両方にあるサービス(訪問看護など)は、要介護・要支援認定者では原則として介護保険が優先される
