高齢者外来の「常連」は誰か―患者調査が映す高血圧の圧倒的な存在感
第118回医師国家試験 E問題 第6問
国試問題にチャレンジ
最近10年間の我が国の患者調査において65歳以上で患者数(外来)が最も多いのはどれか。
- a.糖尿病
- b.緑内障
- c.高血圧症
- d.悪性新生物
- e.脂質異常症
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
ドクター
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ドクターまとめ
患者調査は厚生労働省が3年ごとに医療施設を通じて行う調査で、推計患者数、受療率、総患者数などから我が国の受療状況を把握できます。外来患者数が最も多い傷病は最近10年間一貫して高血圧性疾患で、65歳以上でも同様であり、加齢に伴う有病率の高さと長期の定期通院が必要なことがその背景にあります。糖尿病や脂質異常症、緑内障も高齢者に多いものの外来患者数は高血圧性疾患に及ばず、悪性新生物はむしろ入院患者数で上位となる傷病です。世帯を対象とする国民生活基礎調査の通院者率でも高血圧症が第1位であり、調査の違いとあわせて押さえることで、統計問題を臨床のイメージと結びつけて理解できます。
解答・解説
正解はcです
問われているテーマ
患者調査は、厚生労働省が3年ごとに実施する基幹統計調査で、全国の病院・一般診療所・歯科診療所を利用する患者について、調査日1日の入院・外来患者の傷病名や受療状況を把握するものである。これをもとに推計患者数、受療率、総患者数(継続的に医療を受けている患者の推計数)、平均在院日数などが算出される。本問は、高齢者(65歳以上)の外来診療でどの傷病が最も多いかを問う。
考え方
高齢者の外来を思い浮かべると、降圧薬の処方のために定期通院している患者が非常に多い。日本の高血圧患者は推定4,000万人を超えるとされ、年齢とともに有病率が上昇し、65歳以上ではおよそ3人に2人が高血圧に該当する。高血圧は症状が乏しくても長期にわたって定期受診と服薬を続ける慢性疾患であるため、外来患者数が積み上がりやすい。 患者調査の傷病分類別の推計外来患者数・総患者数では、最近10年間を通じて「高血圧性疾患」が最多であり、65歳以上に限ってもこの傾向は変わらない。糖尿病や脂質異常症も高齢者に多い生活習慣病であるが、患者数は高血圧性疾患に大きく及ばない。 なお、通院者を世帯への調査で把握する国民生活基礎調査でも、65歳以上の通院者率(人口千人あたり)は高血圧症が最も高く、調査方法が違っても結論は同じである。
選択肢考察
- ×a. 糖尿病
誤り。糖尿病は高齢者の外来受診理由として上位に入る代表的な慢性疾患で、加齢とともに有病率が上がる。しかし外来患者数・総患者数は高血圧性疾患の半分にも満たず、最多ではない。高齢者の糖尿病では低血糖を起こしやすく、認知機能やADL(日常生活動作)に応じて血糖コントロール目標を緩める考え方がとられる。
- ×b. 緑内障
誤り。緑内障は加齢とともに有病率が上昇し(日本人の40歳以上で約5%、その多くは眼圧が正常範囲の正常眼圧緑内障)、日本の中途失明原因の第1位である。自覚症状が乏しく早期発見が重要な疾患だが、外来患者数は眼疾患全体でみても高血圧性疾患よりはるかに少なく、最多ではない。
- ○c. 高血圧症
正しい。高血圧は年齢とともに有病率が大きく上昇し、65歳以上の多くが該当する。症状がなくても脳卒中・心疾患・腎疾患などを防ぐために長期の外来通院と降圧薬の服用が必要となるため、外来患者数が非常に多くなる。患者調査では、最近10年間一貫して「高血圧性疾患」が外来患者数(推計患者数・総患者数)の最多の傷病であり、65歳以上でも同様である。
- ×d. 悪性新生物
誤り。悪性新生物(がん)は日本人の死因の第1位であり、高齢者ほど罹患が増えるが、外来患者数でみると高血圧性疾患よりずっと少ない。がんの治療は手術・化学療法・放射線療法など一定期間に集中することが多く、高血圧のように大多数の患者が長期に定期通院を続ける疾患とは性質が異なる。また、患者調査で悪性新生物は入院患者数で上位となる傷病である。
- ×e. 脂質異常症
誤り。脂質異常症は高齢者、特に閉経後の女性に多く、動脈硬化性疾患の危険因子として長期の外来管理が行われる。外来患者数は多いものの高血圧性疾患には及ばず、最多ではない。
患者調査の概要
・実施主体:厚生労働省。3年ごとに実施される基幹統計調査。 ・対象:層化無作為抽出した病院・一般診療所・歯科診療所を利用した患者(医療施設側から調査する)。 ・主な指標:推計患者数(調査日1日に受療した患者の推計数)、受療率(人口10万人あたりの推計患者数)、総患者数(調査日には受診していないが継続的に医療を受けている者を含む推計数)、退院患者の平均在院日数。
患者調査でみた傷病の特徴
・外来:高血圧性疾患が最多。ほかに歯科疾患(う蝕、歯肉炎及び歯周疾患)、脊柱障害(腰痛など)、糖尿病、脂質異常症などが多い。 ・入院:精神及び行動の障害(統合失調症など)、循環器系の疾患(脳血管疾患など)、新生物(悪性新生物)が上位を占める。 ・受療率は入院・外来とも高齢になるほど高い。
国民生活基礎調査との違い
国民生活基礎調査は、厚生労働省が世帯を対象に実施する調査で、3年ごとの大規模調査で健康票(自覚症状のある者の割合を示す有訴者率、傷病で通院している者の割合を示す通院者率など)を調べる。患者調査が医療施設側から患者を把握するのに対し、国民生活基礎調査は世帯員の自己申告に基づく点が異なる。通院者率は男女とも高血圧症が最も高く、65歳以上でも高血圧症が第1位である。有訴者率では腰痛・肩こりなどが上位となる。
POINT
・患者調査(厚生労働省、3年ごと、医療施設を通じて調べる)で外来患者数が最多の傷病は高血圧性疾患であり、65歳以上でも同じである。 ・国民生活基礎調査の通院者率でも高血圧症が第1位。 ・入院患者数では精神疾患・循環器疾患・悪性新生物が上位。 ・高血圧は高齢者の有病率が高く、長期の定期通院を要する慢性疾患であるため外来患者数が多い。
