StudyMed医師国家試験

筒と芯でできたシンプルな道具―肛門鏡を見抜く「形」の読み方

第118回医師国家試験 E問題 第21問

国試問題にチャレンジ

第118回 E問題 第21問

写真(A)~(E)を示す。  肛門直腸の診察に用いる器具はどれか。

第118回 E問題 第21問の問題画像
  1. a.A
  2. b.B
  3. c.C
  4. d.D
  5. e.E

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、写真に並んだ5つの器具から、肛門直腸の診察に使うものを選ぶ問題だ。器具名を丸暗記していなくても、「どんな形をしているか」「どこに入れて何を見るための形か」を考えれば答えにたどり着ける。まず、肛門直腸の診察がどういう順番で進むかを思い出してみよう。
医学生医学生
視診をして、そのあと直腸指診ですよね。OSCEの練習ではモデルを使って直腸指診の手順を確認しました。
ドクタードクター
そう、その2つが基本。そして指で触れるだけでは分からない粘膜の色や出血点、痔核の様子を直接見るために、器具を使った観察が続く。そのとき使う器具は、どんな構造である必要があると思う?
医学生医学生
肛門の中をのぞくのだから、穴を広げて中が見えるもの……刃が2枚に開くような器具でしょうか。
ドクタードクター
惜しいね。広げる発想は悪くないけれど、肛門鏡は「筒」なんだ。先端が丸く細くなった金属の外筒に、内腔をふさぐ芯、つまり内筒(オブチュレーター)が入っていて、手元に黒い把持部がついている。写真の中でこの構造をもっているのは一つだけ。それが正解の肛門鏡だ。
医学生医学生
芯があるのは、挿入するときに筒の縁で粘膜を傷つけないためですか。
ドクタードクター
その通り。潤滑剤を塗って、内筒を入れたまま先端の丸い形でスムーズに挿入する。入ったら内筒を抜き、筒の中を外の照明で照らして肛門管から下部直腸の粘膜を観察する。筒をゆっくり引き抜きながら全周を見るのがコツだ。内痔核、裂肛、肛門ポリープ、痔瘻の内口、直腸下端の腫瘍などがこれで分かる。
医学生医学生
消化器外科を回ったとき、外来で先生が「シムス位でお願いします」と言って横向きに寝てもらっていました。
ドクタードクター
よく見ていたね。左側臥位で膝を曲げるSims位が一般的で、患者さんの羞恥心にも配慮しやすい。ほかに砕石位やジャックナイフ位もある。では残りの器具も見ていこう。青い小さなプラスチック部品はどうかな。
医学生医学生
内視鏡実習で見たマウスピースに似ています。噛まれないようにするものですよね。
ドクタードクター
正解。あれはバイトブロックで、気管挿管中の患者さんがチューブを噛んで閉塞させたり傷つけたりしないよう歯の間に置く。上部消化管内視鏡のマウスピースと同じ発想だね。次に、途中で軸が曲がった長い鉗子はどうだろう。
医学生医学生
麻酔科実習で見た気がします。挿管のときに使う鉗子でしょうか。
ドクタードクター
そう、マギール鉗子だ。軸が曲がっているおかげで、喉頭鏡で展開した視野を手でさえぎらずに口の奥へ先端を届かせられる。経鼻挿管でチューブ先端を声門へ誘導したり、咽頭の異物を取り除いたりするのに使う。残る2つは、刃を開いた状態で保持する器具だね。
医学生医学生
爪のような歯がついていてラチェットで止まるものは、手術で傷を広げておく開創器ですか。
ドクタードクター
その理解でいい。自己保持型の開創器で、手術中に皮膚や筋肉を左右に広げて術野を確保する。もう一つの細い刃を2本もつ小型の器具も、口を開けておく開口器や開創器の類で、筒状の構造ではないから肛門の観察には使わない。
医学生医学生
なるほど、筒の形だからこそ全周の粘膜を同じように見られるわけですね。
ドクタードクター
そういうこと。発展として、肛門鏡で見られるのは肛門管から下部直腸までという点を押さえておこう。それより口側を見たいときは硬性直腸鏡や大腸内視鏡を使う。そして臨床で大事なのは、出血を訴える患者さんで痔核が見つかっても、それだけで安心しないことだ。
医学生医学生
痔核があっても、奥に大腸癌が隠れているかもしれないということですね。
ドクタードクター
その通り。年齢や便通の変化、貧血などがあれば、大腸内視鏡まで検討する。器具がどこまで届くかを知っておくことが、見逃しを防ぐ第一歩なんだ。

まとめ

肛門直腸の診察は、Sims位などの体位で視診、直腸指診を行い、さらに肛門鏡で肛門管から下部直腸の粘膜を直接観察するのが基本です。肛門鏡は先端が丸い金属の外筒と内筒(オブチュレーター)からなる筒状の器具で、内筒を入れたまま挿入し、抜いてから筒の中を照らして内痔核、裂肛、ポリープ、痔瘻の内口などを観察します。写真の他の器具は、気道管理に使うバイトブロックやマギール鉗子、組織や開口を保持する開創器・開口器であり、筒状か、刃を広げる構造か、鉗子かという形の違いで見分けられます。肛門鏡で観察できるのは下部直腸までなので、出血の原因を痔核と決めつけず、必要に応じて大腸内視鏡まで考える姿勢が臨床では重要です。

解答・解説

正解はaです

本問は、臨床でよく使われる器具の写真から、肛門直腸の診察に用いるものを選ぶ問題である。 肛門直腸の診察は、視診(肛門周囲の皮膚・痔核・裂肛・瘻孔の開口部などの観察)、直腸指診、そして器具を用いた肛門管内腔の観察の順に進めるのが基本である。器具による観察には、肛門管から下部直腸の粘膜を直視できる筒状の器具(肛門鏡)が使われる。 写真Aは、先端が丸く細くなった金属製の筒(外筒)、挿入時に内腔をふさぐ芯(内筒、オブチュレーター)、黒い把持部(グリップ)からなる器具であり、肛門鏡(ケリー型など)である。他の写真は、気道管理用の器具(B、E)や手術・口腔などで組織や開口を保持するための器具(C、D)であり、肛門直腸の診察には用いない。器具の形(筒状か、刃を広げる構造か、鉗子か)と大きさ(定規との比較)に注目すると判断しやすい。

選択肢考察

  1. ○a.  A

    正しい。肛門鏡(ケリー型など)である。潤滑剤を塗り、内筒を入れた状態で肛門に挿入し、挿入後に内筒を抜いて筒の中から肛門管・下部直腸の粘膜を観察する。観察時は外部の照明で筒内を照らす(照明付きの製品もある)。内痔核、裂肛、肛門ポリープ、瘻孔の内口、直腸下端の腫瘍などの診断に用いられ、筒をゆっくり引き抜きながら全周を観察するのが要領である。

  2. ×b.  B

    誤り。青い小型のプラスチック製部品で、バイトブロックである。経口気管挿管や人工呼吸管理中の患者が気管チューブを噛んで閉塞させたり損傷したりするのを防ぐため、歯の間に置いて使用する。上部消化管内視鏡検査でも、スコープを噛まれないよう同様の目的のマウスピースを用いる。肛門直腸の診察には用いない。

  3. ×c.  C

    誤り。先端に爪状の歯(鈎)をもつ2枚の刃を、ラチェット(歯止め)で開いたまま固定できる自在開創器(ウェイトラナー型・アドソン-ベックマン型などの自己保持型開創器)である。手術中に皮膚や筋肉などの組織を左右に広げて術野を確保するための手術器具であり、診察には用いない。

  4. ×d.  D

    誤り。2本の細い刃を持ち手の操作で開き、その位置を保持するタイプの小型器具で、口腔の開口を保つ開口器や手術用の開創器の類である。肛門直腸の観察に用いる筒状の構造をもっておらず、肛門直腸の診察器具ではない。

  5. ×e.  E

    誤り。軸が途中で屈曲した長い鉗子で、マギール(Magill)鉗子である。屈曲によって、喉頭鏡で展開した視野を手でさえぎらずに口腔内の奥へ先端を届かせることができる。経鼻気管挿管で鼻から挿入した気管チューブの先端を把持して声門へ誘導したり、咽頭・喉頭の異物を除去したりするのに用いる。

肛門直腸診察の流れ

・体位: 左側臥位で膝を曲げるSims位(シムス位)が一般的で、ほかに砕石位、ジャックナイフ位などがある。 ・視診: 肛門周囲の皮膚炎、外痔核、皮垂、裂肛、痔瘻の二次口、脱出の有無などを観察する。いきませて脱出を確認することもある。 ・直腸指診: 括約筋の緊張、圧痛、腫瘤、前立腺(男性)・子宮頸部(女性)、Douglas窩の所見、指に付着した便や血液の性状を確認する。 ・肛門鏡: 肛門管から下部直腸の粘膜(内痔核、裂肛、ポリープ、瘻孔の内口など)を直視する。 ・より口側の観察には、硬性直腸鏡(肛門から十数〜20cm程度まで)や大腸内視鏡を用いる。

写真に出た他の器具の用途

・バイトブロック: 気管チューブを噛むことによる閉塞・損傷の防止。 ・自在(自己保持型)開創器: 手術中に組織を広げて術野を保持する。 ・開口器: 口を開いた状態に保ち、口腔内の処置や観察を行う。 ・マギール鉗子: 経鼻挿管時のチューブ誘導、咽頭・喉頭の異物除去。

POINT

・肛門鏡は内筒(オブチュレーター)付きの筒状器具で、挿入後に内筒を抜いて肛門管・下部直腸を観察する。 ・肛門直腸の診察は視診→直腸指診→肛門鏡の順で行い、体位はSims位が一般的である。 ・バイトブロック、マギール鉗子は気道管理、開創器・開口器は組織や開口の保持に用いる器具である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。