かゆくないのに痛む顔のブツブツ―思春期から続く「にきび」を見抜く着眼点
第118回医師国家試験 D問題 第21問
国試問題にチャレンジ
21歳の女性。顔面の皮疹を主訴に来院した。8年前から顔面の皮疹が出現し軽快と増悪を繰り返している。月経前に悪化することがある。2か月前から精神的ストレスと食生活の偏りがあり皮疹が悪化してきた。副腎皮質ステロイド外用薬は使用していない。瘙痒はないが,軽度の痛みがある。顔面の写真を示す。 診断はどれか。

- a.結節性痒疹
- b.尋常性痤瘡
- c.尋常性狼瘡
- d.酒皶様皮膚炎
- e.脂漏性皮膚炎
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生まとめ
思春期に発症し、顔面などの脂漏部位に毛孔一致性の紅色丘疹・膿疱が多発し、月経前やストレスで悪化して軽い痛みを伴う皮疹は尋常性痤瘡に典型的です。病態は皮脂分泌の亢進、毛漏斗部の角化異常による面皰形成、Cutibacterium acnesの増殖による炎症の3要素で説明されます。ステロイド外用歴があれば酒皶様皮膚炎、鱗屑を伴う紅斑が主体なら脂漏性皮膚炎、強いかゆみと四肢の結節なら結節性痒疹、リンゴゼリー様の浸潤局面なら尋常性狼瘡を考えるなど、病歴と皮疹の形・分布から鑑別します。治療はアダパレンと過酸化ベンゾイルが基本で、急性炎症期のみ抗菌薬を併用し、維持期には耐性菌対策として抗菌薬を中止します。ありふれた疾患だからこそ、瘢痕を残さないための早期治療と鑑別の視点を身につけておくことが大切です。
解答・解説
正解はbです
所見の整理
・21歳の女性。13歳ころ(思春期)に顔面の皮疹が始まり、8年にわたって良くなったり悪くなったりを繰り返している。 ・月経前に悪化することがある。月経前の黄体期にはプロゲステロンなどの影響で皮脂分泌が増え、毛孔の炎症が悪化しやすい。 ・最近2か月の精神的ストレスと偏った食生活を契機に悪化している。 ・副腎皮質ステロイド外用薬の使用歴はない。 ・かゆみはなく、軽い痛み(圧痛)がある。炎症を起こした毛包の病変に一致する。 ・写真:前額部(特に眉間)、頰、口囲〜下顎に、毛孔に一致した紅色丘疹や小膿疱が多発・散在している。下顎や頰には炎症後の紅斑・色素沈着や小さな瘢痕と思われる部分もみられる。鱗屑(ふけ状の皮膚のはがれ)を伴う紅斑局面や、びまん性の潮紅・毛細血管拡張は目立たない。
診断へのプロセス
思春期に発症した顔面の慢性・再発性の皮疹で、皮脂の多い部位(脂漏部位)に毛孔一致性の紅色丘疹・膿疱が多発し、月経前やストレスで悪化する経過は、尋常性痤瘡(いわゆるにきび)に典型的である。 鑑別として、顔面の紅色丘疹をきたす酒皶様皮膚炎はステロイド外用歴がないこと、脂漏性皮膚炎は鱗屑を伴う紅斑が主体でありかゆみを伴うことが多いこと、結節性痒疹は強いかゆみを伴い四肢に好発すること、尋常性狼瘡は結核による浸潤性の局面を作ることから、いずれも本例の経過・皮疹とは合わない。
選択肢考察
- ×a. 結節性痒疹
結節性痒疹は、激しいかゆみを伴う硬い丘疹〜結節が、主に四肢伸側(とくに下腿)や体幹に多発する慢性の疾患である。虫刺されやアトピー素因などを契機に、掻破を繰り返すことで角化した暗褐色の結節となる。本例はかゆみがなく、病変は顔面の脂漏部位に限られており、皮疹も毛孔に一致した紅色丘疹・膿疱で合致しない。
- ○b. 尋常性痤瘡
尋常性痤瘡は、皮脂分泌の増加、毛孔(毛漏斗部)の角化異常による閉塞、アクネ菌(Cutibacterium acnes)の増殖と炎症が組み合わさって起こる毛包脂腺系の慢性炎症性疾患である。思春期に発症し、顔面・前胸部・上背部などの脂漏部位に、面皰(毛孔に皮脂が詰まった状態)、紅色丘疹、膿疱が生じ、重症例では嚢腫や結節、瘢痕を残す。月経前、ストレス、睡眠不足などで悪化しやすい。本例の発症年齢、経過、悪化因子、かゆみがなく軽い痛みを伴う点、顔面の分布と毛孔一致性の紅色丘疹・膿疱および瘢痕の所見はすべてこれに合う。
- ×c. 尋常性狼瘡
尋常性狼瘡は真性皮膚結核の代表的な病型で、体内の結核病巣から血行性・リンパ行性に、あるいは隣接病巣から皮膚に結核菌が及んで生じる。顔面や頸部に赤褐色〜黄褐色の小結節(ガラス圧法でリンゴゼリー様に見える)が生じ、徐々に融合して浸潤性の局面となり、潰瘍化や瘢痕形成を伴いながら長期間かけて拡大する。本例のように毛孔に一致した丘疹・膿疱が散在し、月経やストレスで増悪・軽快を繰り返す経過とは異なる。
- ×d. 酒皶様皮膚炎
酒皶様皮膚炎は、顔面に副腎皮質ステロイド外用薬(やタクロリムス外用薬)を長期に使用したことで生じる皮膚炎で、口囲皮膚炎とも近縁である。外用部位に一致して、びまん性の潮紅、毛細血管拡張、紅色丘疹・膿疱が出現し、ほてり感や灼熱感を伴う。中止すると一時的に悪化(リバウンド)するのも特徴である。本例はステロイド外用歴がなく、病歴の上から否定的である。
- ×e. 脂漏性皮膚炎
脂漏性皮膚炎は、頭部、眉毛部、鼻唇溝、耳介後部、前胸部、腋窩など皮脂分泌の多い部位や間擦部に、黄色調の脂っぽい鱗屑を伴う紅斑が生じる湿疹である。皮膚の常在真菌であるマラセチアの関与が考えられている。好発部位は痤瘡と一部重なるが、主体は鱗屑を伴う紅斑局面であり、毛孔一致性の丘疹・膿疱が多発する本例の皮疹とは異なる。軽度のかゆみを伴うことも多い。
尋常性痤瘡の病態
1. 皮脂分泌の亢進:思春期にアンドロゲンが増えると皮脂腺が発達し、皮脂分泌が増す。 2. 毛漏斗部の角化異常:毛孔の出口が角質で詰まり、皮脂がたまって面皰(微小面皰)ができる。毛孔が閉じたものを閉鎖面皰(白にきび)、開いて内容が酸化し黒く見えるものを開放面皰(黒にきび)という。 3. Cutibacterium acnes(旧名Propionibacterium acnes)の増殖と炎症:毛包内の嫌気性環境でアクネ菌が増え、炎症を起こして紅色丘疹・膿疱となる。炎症が深部に及ぶと嚢腫・結節を形成し、萎縮性瘢痕や肥厚性瘢痕を残す。
悪化因子
月経前、精神的ストレス、睡眠不足、皮脂を増やすような生活習慣、こすったり触ったりする機械的刺激、油性の化粧品、ステロイドなどの薬剤。食事との関連は個人差がある。
治療(日本皮膚科学会ガイドラインの考え方)
・急性炎症期(炎症性皮疹が主体の時期):アダパレン(レチノイド様作用で毛孔の角化を正常化)や過酸化ベンゾイル(抗菌作用と角質剥離作用)に、抗菌外用薬(クリンダマイシン、ナジフロキサシンなど)や、中等症以上では内服抗菌薬(ドキシサイクリン、ミノサイクリンなど)を組み合わせる。 ・維持期(炎症が治まった後):再発や面皰の形成を防ぐため、アダパレンや過酸化ベンゾイルを継続する。抗菌薬は耐性菌出現を防ぐため漫然と長期使用しない。 ・洗顔によるスキンケアも重要である。
顔面の紅色丘疹・膿疱の鑑別
・酒皶:中年以降に多く、鼻・頰の持続性紅斑、毛細血管拡張、ほてりが特徴。面皰を伴わない。 ・酒皶様皮膚炎:ステロイド外用歴がポイント。 ・毛包虫性痤瘡、マラセチア毛包炎:痤瘡に似るが、かゆみや分布の違いがあり、顕微鏡で病原体を確認する。
POINT
・思春期発症、顔面・胸背部の脂漏部位、面皰・毛孔一致性の紅色丘疹・膿疱、月経前やストレスで悪化 → 尋常性痤瘡。 ・病態:皮脂分泌亢進+毛漏斗部の角化異常+C. acnesによる炎症。 ・治療:アダパレン、過酸化ベンゾイルが基本。急性炎症期は抗菌薬を併用し、維持期は抗菌薬を中止して外用を続ける。 ・ステロイド外用歴あり → 酒皶様皮膚炎。鱗屑を伴う紅斑 → 脂漏性皮膚炎。強いかゆみと四肢の結節 → 結節性痒疹。
