StudyMed医師国家試験

高齢者が多いと死亡率は高く見える?―標準化死亡比で「本当の死亡水準」を測る

第118回医師国家試験 C問題 第22問

国試問題にチャレンジ

第118回 C問題 第22問

基準集団と対象集団の状況を表に示す。   基準集団 対象集団 年齢階級 人口 死亡数 死亡率 人口 死亡数 死亡率  0~14歳 200,000 200 100.0 2,000 1  50.0  15~64歳 600,000 900 150.0 4,000 4 100.0  65歳~ 200,000 600 300.0 4,000 8 200.0 ※死亡数は年間,死亡率は年間人口10万対である。 対象集団の標準化死亡比はどれか。

  1. a.65
  2. b.76
  3. c.110
  4. d.130
  5. e.170

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、年齢構成の異なる2つの集団の死亡状況を比べるために、標準化死亡比、SMRを計算する問題だ。表には数字がたくさん並んでいるけれど、何と何を掛け合わせるかさえ押さえれば計算は難しくない。まず、そもそもなぜ「標準化」が必要なのか考えてみよう。
医学生医学生
死亡率は年齢でかなり違うので、高齢者の多い集団ほど死亡数÷総人口の粗死亡率が高く出てしまうから、でしょうか。
ドクタードクター
その通り。粗死亡率のまま比べると、年齢構成の違いがそのまま結果に混ざってしまう。そこで年齢の影響を取り除く年齢調整を行う。方法には直接法と間接法があって、標準化死亡比は間接法の指標なんだ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で直接法と間接法を習ったんですが、どっちがどっちの人口を使うのか、毎回混乱します。
ドクタードクター
そこは多くの人がつまずくところだね。間接法のSMRは「もし対象集団が基準集団と同じ年齢階級別死亡率で死んでいたら、何人亡くなるはずか」という期待死亡数を求めて、実際の死亡数と比べる。つまり、対象集団の人口に基準集団の死亡率を掛ける。SMRは実際の死亡数÷期待死亡数×100だ。
医学生医学生
対象集団の人口×基準集団の死亡率、ですね。では計算してみます。0~14歳は2,000人×100.0で……20万人ですか?
ドクタードクター
惜しい、そこが落とし穴だ。表の死亡率は人口10万対だから、10万で割って人数に直す必要がある。2,000×100.0÷100,000で2人になる。
医学生医学生
あっ、そうでした。15~64歳は4,000×150.0÷100,000で6人、65歳以上は4,000×300.0÷100,000で12人。期待死亡数は合計20人です。
ドクタードクター
正確だね。一方、対象集団で実際に亡くなったのは1+4+8で13人。だからSMRは13÷20×100で65になる。これが正解だ。
医学生医学生
100より小さいので、年齢構成を考慮しても対象集団は基準集団より死亡が少ない、ということですね。
ドクタードクター
そう。基準集団の死亡水準を100とすると、対象集団はその65%程度という意味になる。実際、表の年齢階級別死亡率を見比べると、対象集団はどの階級でも基準集団の半分から3分の2くらいだから、結果とも整合する。では、ほかの数値がどこから来たのかも確認しておこう。76はどうやって出ると思う?
医学生医学生
うーん、粗死亡率どうしを比べたんでしょうか。対象集団は13÷10,000で10万対130、基準集団は1,700÷1,000,000で10万対170なので、130÷170で約76です。
ドクタードクター
鋭いね。年齢調整をせずに粗死亡率の比をとった値だ。対象集団は65歳以上が40%と高齢者の割合が大きいから、粗死亡率で比べると差が小さく見えてしまう。年齢構成の影響が残っているから、SMRではないんだ。ちなみに130と170は、それぞれの粗死亡率そのものだね。
医学生医学生
110は何でしょう。計算の仕方を逆にしたらこうなるのかな、と思ったんですが。
ドクタードクター
いいところに気づいた。基準集団の人口に対象集団の死亡率を掛けると、100+600+400で1,100人。これを基準集団の総人口100万人で割ると10万対110。これは直接法による年齢調整死亡率に相当する値だ。単位は「率」であって、「比」であるSMRとは別物だよ。
医学生医学生
表に両方の計算に必要な数字がそろっているので、取り違えた値がちゃんと選択肢に用意されているんですね。CBTの過去問でも似たひっかけを見た気がします。
ドクタードクター
まさにそういう作りの問題だ。覚え方としては、直接法は基準集団の人口×対象集団の死亡率で、結果は率。間接法は対象集団の人口×基準集団の死亡率で、結果は比。この対応をセットで覚えておこう。
医学生医学生
使い分けはどう考えればいいですか。どちらでも同じように使えるわけではないんですよね。
ドクタードクター
直接法では対象集団の年齢階級別死亡率が必要だから、人口が多くて死亡数が十分ある国や都道府県の比較に向く。日本の年齢調整死亡率では、基準人口として2020年モデル人口が使われているね。一方、市町村や特定の職業集団のような小さな集団では、年齢階級別の死亡数が少なくて死亡率が不安定になりやすい。間接法なら対象集団の年齢階級別人口と総死亡数がわかれば計算できるから、こうした小規模集団の比較に向いているんだ。
医学生医学生
地域実習で保健所の資料を見たとき、市町村ごとのSMRが地図で色分けされていたのを思い出しました。小さな自治体同士を比べるのに使っていたんですね。
ドクタードクター
その通り。SMRは地域の健康課題を見つける入り口としてよく使われる。ただし、もともと人数の少ない集団では偶然の変動も大きいので、1つの数値だけで断定せず、経年変化や信頼区間も合わせて解釈することが大切だよ。

まとめ

標準化死亡比(SMR)は、年齢構成の異なる集団の死亡状況を公平に比較するための間接法の指標で、実際の死亡数÷期待死亡数×100で求めます。期待死亡数は対象集団の年齢階級別人口に基準集団の年齢階級別死亡率を掛けて合計したもので、本問では期待死亡数20人に対し実際の死亡数13人なので、SMRは65となり、基準集団より死亡水準が低いと判断できます。人口10万対の死亡率は10万で割って人数に直すこと、粗死亡率やその比、直接法の年齢調整死亡率(基準集団の人口×対象集団の死亡率で、結果は率)と混同しないことが計算上の要点です。直接法は大規模集団、間接法は市町村などの小規模集団の比較に向いており、両者の違いを理解することは地域の健康指標を正しく読み解く基礎になります。

解答・解説

正解はaです

問われていること

標準化死亡比(standardized mortality ratio:SMR)を、表の数値から間接法で計算させる問題である。

SMRの定義

SMR=(対象集団で実際に観察された死亡数)÷(期待死亡数)×100 期待死亡数とは「もし対象集団が基準集団と同じ年齢階級別死亡率で死亡していたら、何人死亡するはずか」を求めた値であり、 期待死亡数=Σ(対象集団の年齢階級別人口 × 基準集団の年齢階級別死亡率) で計算する。使うのは「対象集団の人口」と「基準集団の死亡率」の組み合わせであり、ここを取り違えないことが要点である。

計算過程

死亡率は人口10万対なので、10万で割って人数に直す。 ・0~14歳:2,000 × 100.0/100,000 = 2.0人 ・15~64歳:4,000 × 150.0/100,000 = 6.0人 ・65歳~:4,000 × 300.0/100,000 = 12.0人 期待死亡数の合計 = 2+6+12 = 20人 実際の死亡数 = 1+4+8 = 13人 SMR = 13 ÷ 20 × 100 = 65

結果の解釈

SMRが100を下回るので、対象集団は年齢構成の違いを考慮しても基準集団より死亡の水準が低い(基準集団の65%程度)と判断される。実際、対象集団の年齢階級別死亡率はどの階級でも基準集団のちょうど半分~2/3であり、結論と整合する。一方、対象集団は65歳以上の割合が40%と高齢者の比率が大きいため、粗死亡率で比べると差が小さく見える点に注意する。

選択肢考察

  1. ○a.  65

    対象集団の年齢階級別人口に基準集団の年齢階級別死亡率を当てはめた期待死亡数は20人、実際の死亡数は13人である。13÷20×100=65となり、これが標準化死亡比である。

  2. ×b.  76

    年齢構成を調整せずに粗死亡率どうしを比べた値である。対象集団の粗死亡率は13÷10,000×100,000=130(人口10万対)、基準集団の粗死亡率は1,700÷1,000,000×100,000=170(人口10万対)であり、130÷170×100≒76となる。年齢構成の差による影響が残っているため、標準化死亡比ではない。

  3. ×c.  110

    直接法による対象集団の年齢調整死亡率に相当する値である。基準集団の人口に対象集団の年齢階級別死亡率を当てはめると、200,000×50.0/100,000+600,000×100.0/100,000+200,000×200.0/100,000=100+600+400=1,100人となり、基準集団の総人口100万人で割ると人口10万対110となる。これは死亡「率」であり、比であるSMRとは別の指標である。

  4. ×d.  130

    対象集団の粗死亡率(13人÷10,000人、人口10万対130)である。年齢構成の補正を行っていないうえ、比ではなく率であるため誤りである。

  5. ×e.  170

    基準集団の粗死亡率(1,700人÷1,000,000人、人口10万対170)である。対象集団の死亡状況を表す値ではない。

年齢調整(標準化)の必要性

死亡率は年齢によって大きく異なるため、高齢者の多い集団ほど粗死亡率(死亡数÷総人口)は高く出る。年齢構成の異なる集団の死亡状況を公平に比較するには、年齢構成の影響を取り除く「年齢調整(標準化)」が必要になる。方法には直接法と間接法がある。

直接法:年齢調整死亡率

・基準人口(日本では2020年モデル人口が用いられる)の年齢構成に、対象集団の年齢階級別死亡率を当てはめて期待死亡数を求め、基準人口の総数で割る。 ・結果は「率」(人口10万対など)で表される。 ・対象集団の年齢階級別死亡率が必要であり、人口規模が大きく死亡数が十分ある集団(国や都道府県)の比較に向く。

間接法:標準化死亡比(SMR)

・対象集団の年齢階級別人口に、基準集団の年齢階級別死亡率を当てはめて期待死亡数を求め、実際の死亡数と比較する。 ・結果は「比」で表され、基準集団を100とする(100より大きければ基準より死亡が多い)。 ・対象集団では年齢階級別人口と総死亡数がわかればよく、年齢階級別死亡率が不安定になりやすい小規模集団(市町村、特定の職業集団など)の比較に向く。

計算の対応関係(覚え方)

・直接法:基準集団の「人口」×対象集団の「死亡率」 ・間接法:対象集団の「人口」×基準集団の「死亡率」 本問の表では、両方の計算に必要な数値がそろっているため、どちらの方法の値も選択肢に紛れ込ませてある。

POINT

・標準化死亡比(SMR)=実際の死亡数÷期待死亡数×100(間接法)。 ・期待死亡数=Σ(対象集団の年齢階級別人口×基準集団の年齢階級別死亡率)。 ・死亡率が人口10万対で与えられたら、10万で割って人数に直してから掛け合わせる。 ・SMR<100なら基準集団より死亡が少ない、>100なら多い。 ・直接法の年齢調整死亡率(率)、粗死亡率、粗死亡率の比と混同しない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。