予防接種はどの法律?―健康増進法の「守備範囲」を押さえる
第118回医師国家試験 C問題 第11問
国試問題にチャレンジ
健康増進法で規定されていないのはどれか。
- a.健康日本21
- b.受動喫煙防止
- c.食事摂取基準
- d.定期予防接種
- e.国民健康・栄養調査
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
健康増進法は栄養改善法を前身として2002年に制定された法律で、健康日本21(国の基本方針)と都道府県・市町村の健康増進計画、国民健康・栄養調査、食事摂取基準、がん検診などの健康増進事業、受動喫煙の防止、特別用途表示などを定めています。一方、定期予防接種は予防接種法に基づき市町村長が実施するもので、集団予防を主目的とするA類疾病(接種の努力義務あり)と個人予防を主目的とするB類疾病に分かれます。特定健康診査・特定保健指導は高齢者の医療の確保に関する法律、職場健診は労働安全衛生法、学校健診は学校保健安全法、乳幼児健診は母子保健法と、似た健診でも根拠法が異なる点は頻出の落とし穴です。「栄養・生活習慣病・たばこ」という健康増進法の守備範囲をつかんでおくと、法律と施策の対応問題を効率よく解けるようになり、臨床現場で制度を理解するうえでも役立ちます。
解答・解説
正解はdです
テーマ
公衆衛生分野では「どの施策がどの法律に基づくか」が頻出である。健康増進法は、国民の健康の増進を総合的に推進するための基本的事項を定めた法律で、2002年(平成14年)に制定、2003年に施行された。旧来の栄養改善法を廃止・発展させる形で成立し、生活習慣病対策の国民運動である「健康日本21」に法的根拠を与えた点に意義がある。
考え方
健康増進法の主な柱は、①国の基本方針(=健康日本21)と都道府県・市町村の健康増進計画、②国民健康・栄養調査、③食事摂取基準、④市町村による健康増進事業(保健指導・がん検診など)、⑤受動喫煙の防止、⑥特別用途表示・栄養表示などである。つまり「栄養・食生活」「生活習慣病予防」「たばこ」に関する施策が中心となる。 一方、感染症を予防するための予防接種は、まったく別の法律である予防接種法に規定されている。したがって健康増進法に規定されていないのは定期予防接種であり、正解はdである。
選択肢考察
- ×a. 健康日本21
健康増進法に規定されている。健康増進法第7条は、厚生労働大臣が「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」を定めることとしており、この基本方針が健康日本21にあたる。健康日本21は2000年に開始され、2013年度から第二次、2024年度から第三次(健康寿命の延伸と健康格差の縮小を目標に掲げる)が進められている。また同法第8条に基づき、都道府県は健康増進計画を策定する義務を、市町村は策定の努力義務を負う。
- ×b. 受動喫煙防止
健康増進法に規定されている。制定当初は多数の者が利用する施設の管理者に受動喫煙防止の努力義務を課すにとどまっていたが、2018年(平成30年)の改正で第6章(第25条〜第42条)が整備され、2020年4月に全面施行された。学校・病院・児童福祉施設・行政機関などの第一種施設は敷地内禁煙(屋外の特定屋外喫煙場所を除く)、飲食店や事務所などの第二種施設は原則屋内禁煙(喫煙専用室などの設置は可)とされ、違反者には罰則(過料)も定められている。
- ×c. 食事摂取基準
健康増進法に規定されている。同法第16条の2に基づき、厚生労働大臣が日本人の食事摂取基準を定める。健康な個人・集団を対象に、エネルギーと各栄養素の摂取量の基準(推定平均必要量、推奨量、目安量、耐容上限量、目標量など)を示すもので、5年ごとに改定される。
- ○d. 定期予防接種
健康増進法には規定されていないため、本問の正解である。定期予防接種は予防接種法に基づき、市町村長が実施主体となって行う。対象疾病は、集団予防を主目的とするA類疾病(麻疹、風疹、ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ、結核〔BCG〕、Hib感染症、小児の肺炎球菌感染症、B型肝炎、ロタウイルス感染症、HPV感染症など)と、個人の発病・重症化予防を主目的とするB類疾病(高齢者のインフルエンザ、高齢者の肺炎球菌感染症など)に分けられる。A類は対象者に接種の努力義務があるが、B類には努力義務がない。
- ×e. 国民健康・栄養調査
健康増進法に規定されている。同法第10条に基づき厚生労働大臣が毎年実施する調査で、無作為抽出された世帯の世帯員を対象に、身体状況(身長・体重・血圧・血液検査など)、栄養摂取状況、生活習慣(喫煙・飲酒・運動など)を把握する。得られたデータは健康日本21の目標達成状況の評価などに用いられる。前身は栄養改善法に基づく国民栄養調査である。
健康増進法の主な規定
・基本方針(健康日本21)と都道府県・市町村の健康増進計画 ・健康診査の実施等に関する指針(健康増進事業実施者が行う健診の共通指針) ・国民健康・栄養調査(毎年)と生活習慣病の発生状況の把握 ・食事摂取基準 ・市町村による健康増進事業:生活習慣相談等の栄養指導・保健指導、健康手帳の交付、健康教育、健康相談、訪問指導など ・市町村が行う検診:歯周疾患検診、骨粗鬆症検診、肝炎ウイルス検診、がん検診(胃癌、肺癌、大腸癌、子宮頸癌、乳癌)など ・特定給食施設における栄養管理 ・受動喫煙の防止 ・特別用途表示(病者用食品、乳児用調製乳など)の許可
紛らわしい法律との対応
・定期予防接種:予防接種法 ・感染症の届出・就業制限:感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律) ・特定健康診査・特定保健指導(メタボ健診):高齢者の医療の確保に関する法律 ・事業所の一般健康診断:労働安全衛生法 ・学校での健康診断:学校保健安全法 ・母子健康手帳、乳幼児健診:母子保健法 ・がん登録:がん登録等の推進に関する法律
POINT
・健康増進法:健康日本21(基本方針)、国民健康・栄養調査、食事摂取基準、受動喫煙防止、がん検診などの健康増進事業、特別用途表示 ・定期予防接種は予防接種法に基づく(A類・B類疾病) ・特定健診・特定保健指導は高齢者医療確保法である点も混同しやすい
