StudyMed医師国家試験

予防接種はどの法律?―健康増進法の「守備範囲」を押さえる

第118回医師国家試験 C問題 第11問

国試問題にチャレンジ

第118回 C問題 第11問

健康増進法で規定されていないのはどれか。

  1. a.健康日本21
  2. b.受動喫煙防止
  3. c.食事摂取基準
  4. d.定期予防接種
  5. e.国民健康・栄養調査

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は「どの施策がどの法律に基づくか」を問う、公衆衛生の定番問題だ。健康増進法という法律が何を目的に作られたのか、そのイメージをつかめば迷わず解ける。まず、健康増進法と聞いて何を思い浮かべるかな。
医学生医学生
社会医学の講義で、受動喫煙対策の法律として習った記憶があります。飲食店の原則屋内禁煙とか。
ドクタードクター
そうだね、それが一番有名かもしれない。でも健康増進法はもっと幅広い法律なんだ。2002年に制定されたもので、前身は栄養改善法。だから「栄養・食生活」「生活習慣病の予防」「たばこ」が守備範囲の中心になる。
医学生医学生
栄養改善法が前身なら、栄養関係の調査や基準はこの法律に入っていそうですね。
ドクタードクター
その推論でいい。国民健康・栄養調査は健康増進法に基づいて厚生労働大臣が毎年実施している。無作為抽出した世帯の人について、身長・体重・血圧や血液検査といった身体状況、栄養摂取状況、喫煙・飲酒・運動などの生活習慣を調べるものだ。もともとは栄養改善法時代の国民栄養調査だった。
医学生医学生
食事摂取基準もですか。CBTの勉強で推奨量とか耐容上限量とか、指標がたくさん出てきて混乱しました。
ドクタードクター
食事摂取基準も健康増進法に基づいて厚生労働大臣が定めている。健康な個人や集団を対象に、エネルギーや栄養素の摂取量の目安を示すもので、5年ごとに改定される。指標の細かい定義は別に整理するとして、まずは「根拠法は健康増進法」と結びつけておこう。
医学生医学生
健康日本21はどうでしょう。国民運動のイメージで、法律と結びついている感じがしなかったんですが。
ドクタードクター
そこは誤解しやすいところだね。健康日本21自体は2000年に始まったけれど、健康増進法の中で厚生労働大臣が定める「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」が健康日本21にあたる。つまりこの法律が健康日本21に法的な裏付けを与えたんだ。さらに都道府県には健康増進計画の策定義務、市町村には努力義務がある。今は2024年度からの第三次で、健康寿命の延伸と健康格差の縮小が目標に掲げられている。
医学生医学生
受動喫煙防止は先ほどの通りで、残るのは定期予防接種ですね。予防接種は感染症対策なので、健康増進法とは毛色が違う気がします。
ドクタードクター
その通り。定期予防接種は予防接種法に基づいて、市町村長が実施主体となって行うものだ。だから健康増進法に規定されていないのは定期予防接種、これが正解になる。
医学生医学生
予防接種法ではA類とB類に分かれていたと思いますが、違いは何でしたっけ。
ドクタードクター
A類疾病は集団予防が主な目的で、麻疹・風疹、百日咳、破傷風、BCG、Hib、B型肝炎、ロタウイルス、HPVなどが含まれ、対象者には接種の努力義務がある。B類疾病は個人の発病・重症化予防が主な目的で、高齢者のインフルエンザや肺炎球菌感染症などがあり、努力義務はない。小児科実習で予防接種スケジュールを見ると、A類がずらっと並んでいるのがわかるはずだよ。
医学生医学生
受動喫煙のほうは、2018年の改正で厳しくなったんですよね。
ドクタードクター
そう。以前は施設管理者の努力義務にとどまっていたけれど、2018年の改正で2020年4月に全面施行され、学校・病院・行政機関などは敷地内禁煙、飲食店や事務所などは原則屋内禁煙となり、違反には過料という罰則もついた。病院が敷地内禁煙なのはこの法律のためなんだ。
医学生医学生
整理すると、健康増進法は栄養・生活習慣病・たばこが中心で、感染症対策は別の法律、ということですね。
ドクタードクター
よくまとまった。発展として、健康増進法には市町村が行う健康増進事業もあって、がん検診、歯周疾患検診、骨粗鬆症検診、肝炎ウイルス検診などもここに含まれる。逆に紛らわしいのが、いわゆるメタボ健診である特定健康診査・特定保健指導。これは高齢者の医療の確保に関する法律に基づくから注意しよう。
医学生医学生
がん検診は健康増進法なのに、特定健診は違う法律なんですね。ひっかけで出されたら間違えそうです。
ドクタードクター
国試ではまさにそこを突いてくる。ほかにも、職場の一般健診は労働安全衛生法、学校健診は学校保健安全法、乳幼児健診や母子健康手帳は母子保健法、感染症の届出は感染症法と、それぞれ根拠法がある。臨床に出てからも、診断書や届出、健診結果の説明などで、どの制度に基づく手続きなのかを意識する場面は意外と多いよ。

まとめ

健康増進法は栄養改善法を前身として2002年に制定された法律で、健康日本21(国の基本方針)と都道府県・市町村の健康増進計画、国民健康・栄養調査、食事摂取基準、がん検診などの健康増進事業、受動喫煙の防止、特別用途表示などを定めています。一方、定期予防接種は予防接種法に基づき市町村長が実施するもので、集団予防を主目的とするA類疾病(接種の努力義務あり)と個人予防を主目的とするB類疾病に分かれます。特定健康診査・特定保健指導は高齢者の医療の確保に関する法律、職場健診は労働安全衛生法、学校健診は学校保健安全法、乳幼児健診は母子保健法と、似た健診でも根拠法が異なる点は頻出の落とし穴です。「栄養・生活習慣病・たばこ」という健康増進法の守備範囲をつかんでおくと、法律と施策の対応問題を効率よく解けるようになり、臨床現場で制度を理解するうえでも役立ちます。

解答・解説

正解はdです

テーマ

公衆衛生分野では「どの施策がどの法律に基づくか」が頻出である。健康増進法は、国民の健康の増進を総合的に推進するための基本的事項を定めた法律で、2002年(平成14年)に制定、2003年に施行された。旧来の栄養改善法を廃止・発展させる形で成立し、生活習慣病対策の国民運動である「健康日本21」に法的根拠を与えた点に意義がある。

考え方

健康増進法の主な柱は、①国の基本方針(=健康日本21)と都道府県・市町村の健康増進計画、②国民健康・栄養調査、③食事摂取基準、④市町村による健康増進事業(保健指導・がん検診など)、⑤受動喫煙の防止、⑥特別用途表示・栄養表示などである。つまり「栄養・食生活」「生活習慣病予防」「たばこ」に関する施策が中心となる。 一方、感染症を予防するための予防接種は、まったく別の法律である予防接種法に規定されている。したがって健康増進法に規定されていないのは定期予防接種であり、正解はdである。

選択肢考察

  1. ×a.  健康日本21

    健康増進法に規定されている。健康増進法第7条は、厚生労働大臣が「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」を定めることとしており、この基本方針が健康日本21にあたる。健康日本21は2000年に開始され、2013年度から第二次、2024年度から第三次(健康寿命の延伸と健康格差の縮小を目標に掲げる)が進められている。また同法第8条に基づき、都道府県は健康増進計画を策定する義務を、市町村は策定の努力義務を負う。

  2. ×b.  受動喫煙防止

    健康増進法に規定されている。制定当初は多数の者が利用する施設の管理者に受動喫煙防止の努力義務を課すにとどまっていたが、2018年(平成30年)の改正で第6章(第25条〜第42条)が整備され、2020年4月に全面施行された。学校・病院・児童福祉施設・行政機関などの第一種施設は敷地内禁煙(屋外の特定屋外喫煙場所を除く)、飲食店や事務所などの第二種施設は原則屋内禁煙(喫煙専用室などの設置は可)とされ、違反者には罰則(過料)も定められている。

  3. ×c.  食事摂取基準

    健康増進法に規定されている。同法第16条の2に基づき、厚生労働大臣が日本人の食事摂取基準を定める。健康な個人・集団を対象に、エネルギーと各栄養素の摂取量の基準(推定平均必要量、推奨量、目安量、耐容上限量、目標量など)を示すもので、5年ごとに改定される。

  4. ○d.  定期予防接種

    健康増進法には規定されていないため、本問の正解である。定期予防接種は予防接種法に基づき、市町村長が実施主体となって行う。対象疾病は、集団予防を主目的とするA類疾病(麻疹、風疹、ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ、結核〔BCG〕、Hib感染症、小児の肺炎球菌感染症、B型肝炎、ロタウイルス感染症、HPV感染症など)と、個人の発病・重症化予防を主目的とするB類疾病(高齢者のインフルエンザ、高齢者の肺炎球菌感染症など)に分けられる。A類は対象者に接種の努力義務があるが、B類には努力義務がない。

  5. ×e.  国民健康・栄養調査

    健康増進法に規定されている。同法第10条に基づき厚生労働大臣が毎年実施する調査で、無作為抽出された世帯の世帯員を対象に、身体状況(身長・体重・血圧・血液検査など)、栄養摂取状況、生活習慣(喫煙・飲酒・運動など)を把握する。得られたデータは健康日本21の目標達成状況の評価などに用いられる。前身は栄養改善法に基づく国民栄養調査である。

健康増進法の主な規定

・基本方針(健康日本21)と都道府県・市町村の健康増進計画 ・健康診査の実施等に関する指針(健康増進事業実施者が行う健診の共通指針) ・国民健康・栄養調査(毎年)と生活習慣病の発生状況の把握 ・食事摂取基準 ・市町村による健康増進事業:生活習慣相談等の栄養指導・保健指導、健康手帳の交付、健康教育、健康相談、訪問指導など ・市町村が行う検診:歯周疾患検診、骨粗鬆症検診、肝炎ウイルス検診、がん検診(胃癌、肺癌、大腸癌、子宮頸癌、乳癌)など ・特定給食施設における栄養管理 ・受動喫煙の防止 ・特別用途表示(病者用食品、乳児用調製乳など)の許可

紛らわしい法律との対応

・定期予防接種:予防接種法 ・感染症の届出・就業制限:感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律) ・特定健康診査・特定保健指導(メタボ健診):高齢者の医療の確保に関する法律 ・事業所の一般健康診断:労働安全衛生法 ・学校での健康診断:学校保健安全法 ・母子健康手帳、乳幼児健診:母子保健法 ・がん登録:がん登録等の推進に関する法律

POINT

・健康増進法:健康日本21(基本方針)、国民健康・栄養調査、食事摂取基準、受動喫煙防止、がん検診などの健康増進事業、特別用途表示 ・定期予防接種は予防接種法に基づく(A類・B類疾病) ・特定健診・特定保健指導は高齢者医療確保法である点も混同しやすい

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。