StudyMed医師国家試験

「肉納豆」だけでは解けない―ビタミンKに頼るもう一つのグループ、凝固阻止因子

第117回医師国家試験 F問題 第21問

国試問題にチャレンジ

第117回 F問題 第21問

ビタミンKが欠乏すると活性が低下する因子はどれか。

  1. a.第Ⅴ因子
  2. b.第XIII因子
  3. c.プロテインC
  4. d.フィブリノゲン
  5. e.アンチトロンビン

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はビタミンK依存性蛋白を問う問題だ。ポイントは、ビタミンKを必要とするのは凝固因子だけではない、という点。まずはビタミンKが何をしているのかから整理していこう。
医学生医学生
ビタミンK依存性凝固因子なら「肉納豆」で、第Ⅱ・Ⅸ・Ⅶ・Ⅹ因子ですよね。でも選択肢にどれも入っていなくて、正直焦りました。
ドクタードクター
そう感じた人は多いと思うよ。ビタミンKは、肝臓で作られる一部の蛋白質の「仕上げ」に必要な補酵素なんだ。これらの蛋白質は端のほうにグルタミン酸残基をいくつも持っていて、ビタミンK依存性のγ-グルタミルカルボキシラーゼがそれをγ-カルボキシグルタミン酸、略してGlaに変える。
医学生医学生
生化学の講義で出てきたGla化ですね。Glaになると何が変わるんでしたっけ。
ドクタードクター
Gla残基はカルシウムイオンと結合して、そのカルシウムを介して活性化血小板などのリン脂質膜の上にくっつけるようになる。膜の上に集まって初めて、効率よく働けるんだ。ビタミンKが足りないとGla化が不十分な蛋白、PIVKAが血中に出てくる。量はあっても機能しないから、活性が落ちるわけだ。
医学生医学生
なるほど。では凝固因子以外にも、そのGla化を受ける蛋白があるんですね。
ドクタードクター
その通り。凝固を止める側、つまり凝固阻止因子のプロテインCとプロテインSもビタミンK依存性なんだ。だから選択肢の中では、プロテインCが正解になる。
医学生医学生
凝固を止める側までビタミンKが必要とは意外です。プロテインCはどうやって働くんですか。
ドクタードクター
トロンビンが血管内皮のトロンボモジュリンと結合すると、その複合体がプロテインCを活性化する。活性化プロテインCは、プロテインSを補因子として第Ⅴa因子と第Ⅷa因子を分解し、凝固にブレーキをかけるんだ。
医学生医学生
第Ⅴ因子が出てきましたが、第Ⅴ因子自体はビタミンK依存性ではないんですよね。
ドクタードクター
そう。第Ⅴ因子も肝臓で作られるけれど、ビタミンKは要らない。だから重症肝障害では下がるけれど、ビタミンK欠乏では下がらない。PTが延びたとき、肝臓の合成能低下かビタミンK欠乏かを見分ける手がかりに第Ⅴ因子活性を使うこともあるよ。
医学生医学生
第XIII因子はフィブリン安定化因子でしたね。これもビタミンKとは関係なさそうです。
ドクタードクター
正解。第XIII因子はトロンビンで活性化され、フィブリン同士を架橋して血栓を固める。ビタミンK非依存性だ。欠乏すると一度止まった出血がまた起こる後出血や創傷治癒の遅れが出るのに、PTもAPTTも正常という点が試験でよく問われる。
医学生医学生
フィブリノゲンは急性期蛋白で、炎症で上がるものと習いました。
ドクタードクター
その通り。フィブリノゲンもビタミンK非依存性で、下がるのは重症肝障害やDIC、大量出血、先天性の欠乏症・異常症などだ。最後にアンチトロンビンはどうかな。
医学生医学生
凝固阻止因子なので、プロテインCと同じ仲間でビタミンK依存性……と思いかけましたが、ヘパリンが作用を増強する相手でしたよね。
ドクタードクター
よく踏みとどまったね。アンチトロンビンは凝固阻止因子だけれどビタミンK非依存性で、トロンビンや第Ⅹa因子などを阻害する。凝固阻止因子のうちビタミンK依存性なのはプロテインCとSだけ、とセットで覚えよう。
医学生医学生
ビタミンK依存性は、凝固因子のⅡ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹと、凝固阻止因子のプロテインC・S、という2群で整理すればいいんですね。
ドクタードクター
完璧だ。ここから臨床の話をしよう。プロテインCは半減期が約8時間と短いから、ワルファリンを始めた直後は、半減期の長い第Ⅱ因子や第Ⅹ因子より先にプロテインCが下がる。すると一時的に血栓傾向になりうるんだ。
医学生医学生
循環器内科の実習で、ワルファリン導入時にヘパリンを併用していたのはそのためですか。
ドクタードクター
それも理由の一つだね。先天性プロテインC欠乏症の患者などでは、この機序でワルファリン誘発性皮膚壊死が起こることがある。もう一つ、凝固因子の中では第Ⅶ因子の半減期が最も短いので、ビタミンK欠乏ではまずPTから延長する。ワルファリンの効果をPT-INRで見るのはこのためだ。
医学生医学生
ビタミンK欠乏の原因としては、新生児メレナや閉塞性黄疸が国試でよく出ますよね。
ドクタードクター
そうだね。新生児は胎盤移行が少なく母乳中の含量も少ないので、ビタミンK2シロップで予防する。成人では閉塞性黄疸による脂溶性ビタミンの吸収障害、長期の抗菌薬投与、絶食などが原因になる。検査ではPT延長、PIVKA-Ⅱ上昇が特徴で、血小板数やフィブリノゲンは正常だ。PIVKA-Ⅱは肝細胞癌の腫瘍マーカーとしても使われるから、あわせて覚えておこう。

まとめ

ビタミンKは、肝臓で合成される蛋白質のグルタミン酸残基をGla化する補酵素であり、Gla化によりカルシウムを介してリン脂質膜に結合できるようになって初めて機能を発揮します。ビタミンK依存性蛋白は、凝固因子の第Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子と、凝固阻止因子のプロテインC・プロテインSの2群に整理でき、第Ⅴ因子、第XIII因子、フィブリノゲン、アンチトロンビンはビタミンK非依存性です。プロテインCは半減期が短いため、ワルファリン導入初期には凝固因子より先に低下して一過性の血栓傾向を招くことがあり、皮膚壊死やヘパリン併用の理由につながります。ビタミンK欠乏ではまず半減期の短い第Ⅶ因子が低下してPTが延長し、PIVKA-Ⅱが上昇します。「凝固側と抗凝固側の両方がビタミンKに依存する」という視点は、ワルファリン管理や出血・血栓傾向の評価を理解する土台になります。

解答・解説

正解はcです

ビタミンKは、肝臓で合成される一部の蛋白質の「仕上げ」に必要な補酵素である。これらの蛋白質はN末端付近に複数のグルタミン酸(Glu)残基をもち、ビタミンK依存性のγ-グルタミルカルボキシラーゼによってγ-カルボキシグルタミン酸(Gla)残基へと変換される。Gla残基はカルシウムイオンと結合し、そのカルシウムを介して活性化血小板などのリン脂質膜上に結合することで、蛋白質がはじめて機能を発揮できる。 ビタミンKが欠乏したり、ワルファリンなどのビタミンK拮抗薬でビタミンKの再利用(ビタミンKエポキシド還元酵素によるリサイクル)が阻害されたりすると、Gla化が不十分な蛋白質(PIVKA:protein induced by vitamin K absence or antagonist)が血中に放出される。PIVKAは蛋白量としては存在しても機能をもたないため、活性が低下する。 ビタミンK依存性蛋白のうち、凝固に関わるものは次の2群に整理して覚える。 ・凝固因子:第Ⅱ因子(プロトロンビン)、第Ⅶ因子、第Ⅸ因子、第Ⅹ因子(「肉納豆(2・9・7・10)」の語呂がよく用いられる) ・凝固阻止因子(抗凝固蛋白):プロテインC、プロテインS したがって選択肢の中で、ビタミンK欠乏により活性が低下するのはプロテインCである。凝固「阻止」因子にもビタミンK依存性のものがある点が本問のポイントである。

選択肢考察

  1. ×a.  第Ⅴ因子

    第Ⅴ因子はビタミンK依存性ではない。肝臓で合成され、活性化されると(Ⅴa)第Ⅹa因子の補因子としてプロトロンビナーゼ複合体を形成し、プロトロンビンからトロンビンへの変換を促進する。肝で産生されるがビタミンKを必要としないため、重症肝障害では低下するがビタミンK欠乏では低下しない。この性質を利用し、PT(プロトロンビン時間)延長の原因が肝合成能低下かビタミンK欠乏かを鑑別する手がかりとして第Ⅴ因子活性が用いられることがある。そのほか先天性第Ⅴ因子欠乏症やDIC(播種性血管内凝固)での消費でも低下する。

  2. ×b.  第XIII因子

    第XIII因子(フィブリン安定化因子)はビタミンK依存性ではない。トロンビンにより活性化されたⅩⅢaはトランスグルタミナーゼとしてフィブリン分子同士を架橋し、強固で安定なフィブリン塊をつくることで止血を完成・維持させる。また創傷治癒にも関与する。先天性欠乏症や後天性(自己抗体、消費など)に低下すると、いったん止まった出血が再び起こる後出血や創傷治癒遅延をきたすが、PT・APTTはいずれも正常となる点が特徴である。

  3. ○c.  プロテインC

    プロテインCはビタミンK依存性に肝臓で合成される凝固阻止因子であり、ビタミンKが欠乏するとGla化が不十分となって活性が低下する。プロテインCは、トロンビンが血管内皮上のトロンボモジュリンと結合した複合体によって活性化され(活性化プロテインC:APC)、同じくビタミンK依存性のプロテインSを補因子として第Ⅴa因子と第Ⅷa因子を分解・不活化し、凝固反応にブレーキをかける。プロテインCは半減期が短い(約8時間)ため、ワルファリン投与開始直後には凝固因子(特に半減期の長い第Ⅱ・Ⅹ因子)よりも先にプロテインCが低下し、一過性に血栓傾向となりうる。これが先天性プロテインC欠乏症の患者などでみられるワルファリン誘発性皮膚壊死の機序であり、ワルファリン導入時にヘパリンを併用する理由の一つとなっている。

  4. ×d.  フィブリノゲン

    フィブリノゲン(第Ⅰ因子)はビタミンK依存性ではない。肝臓で合成され、トロンビンによってフィブリンに変換されて血栓の骨格となる。急性期蛋白でもあり、炎症時には上昇する。低下するのは先天性フィブリノゲン欠乏症・異常症、重症肝障害による合成低下、DICや大量出血による消費・喪失、線溶亢進などの場合であり、ビタミンK欠乏では低下しない。

  5. ×e.  アンチトロンビン

    アンチトロンビンは凝固阻止因子だが、ビタミンK依存性ではない。肝臓で合成されるセリンプロテアーゼ阻害因子で、トロンビンや第Ⅹa因子などを不活化する。ヘパリンはアンチトロンビンに結合してその阻害作用を大きく増強することで抗凝固作用を示す。低下するのは先天性アンチトロンビン欠乏症、肝障害による合成低下、DICでの消費、ネフローゼ症候群での尿中喪失などである。凝固阻止因子のうちビタミンK依存性なのはプロテインCとプロテインSであり、アンチトロンビンは含まれない。

ビタミンK依存性蛋白の整理

1) 凝固因子:第Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子 半減期は第Ⅶ因子が最も短く(約4〜6時間)、ついで第Ⅸ因子、第Ⅹ因子、第Ⅱ因子(約60〜72時間)の順に長くなる。このため、ビタミンK欠乏やワルファリン投与ではまず外因系の第Ⅶ因子が低下してPTが延長し、進行すると内因系に関わる第Ⅸ・Ⅹ・Ⅱ因子も低下してAPTTも延長する。ワルファリンの効果判定にPT-INRが用いられるのはこのためである。 2) 凝固阻止因子:プロテインC、プロテインS 3) 骨代謝に関わる蛋白:オステオカルシン、マトリックスGla蛋白など 妊娠初期のワルファリン内服で胎児に骨・軟骨形成異常(鼻骨低形成、点状軟骨異栄養症など)を生じるワルファリン胎芽病には、これら骨関連のビタミンK依存性蛋白の機能障害が関与すると考えられている。このためワルファリンは妊婦に原則禁忌である。

ビタミンK欠乏の原因

・新生児・乳児:胎盤移行が少ない、母乳中の含量が少ない、腸内細菌叢が未熟→新生児メレナ、乳児ビタミンK欠乏性出血症(頭蓋内出血)。予防としてビタミンK2シロップを投与する。 ・成人:閉塞性黄疸や胆汁うっ滞(脂溶性ビタミンの吸収障害)、吸収不良症候群、長期の抗菌薬投与(腸内細菌による産生低下)、絶食・経口摂取不良、ワルファリン投与など。

検査所見

ビタミンK欠乏ではPT延長(進行例でAPTTも延長)、血小板数とフィブリノゲンは正常、PIVKA-Ⅱ(Gla化不十分なプロトロンビン)が上昇する。PIVKA-Ⅱは肝細胞癌の腫瘍マーカーとしても用いられる。

凝固阻止因子のまとめ

・アンチトロンビン:トロンビン・Ⅹaなどを阻害、ヘパリンで作用増強、ビタミンK非依存性 ・プロテインC:活性化されてⅤa・Ⅷaを不活化、ビタミンK依存性 ・プロテインS:活性化プロテインCの補因子、ビタミンK依存性 先天性欠乏症はいずれも静脈血栓症の素因となる。

POINT

・ビタミンK依存性凝固因子:Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ(肉納豆)。 ・ビタミンK依存性凝固阻止因子:プロテインC、プロテインS(アンチトロンビンは非依存性)。 ・第Ⅰ(フィブリノゲン)・Ⅴ・Ⅷ・XIII因子はビタミンK非依存性。 ・半減期の最も短い第Ⅶ因子がまず低下するため、ビタミンK欠乏ではPTから延長する。 ・プロテインCは半減期が短く、ワルファリン導入初期の一過性血栓傾向(皮膚壊死)の原因となる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。