StudyMed医師国家試験

カテーテルの数字で描く4つの象限―Forrester分類と心不全分類の整理術

第116回医師国家試験 D問題 第3問

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第116回 D問題 第3問

心不全の分類で肺動脈楔入圧と心拍出量(心係数)で定義されるものはどれか。

  1. a.AHA(American Heart Association)心不全ステージ分類
  2. b.Child分類
  3. c.Forrester分類
  4. d.Nohria-Stevenson分類
  5. e.NYHA心機能分類

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、心不全の分類を「何を指標にしているか」で見分ける問題だ。心不全には自覚症状でみる分類、病期の進行でみる分類、身体所見でみる分類、そしてカテーテルで測った数値でみる分類がある。問題文にある肺動脈楔入圧と心拍出量が、どうやって測る値なのかを考えるのが着眼点だよ。
医学生医学生
どちらもSwan-Ganzカテーテルで測る値ですよね。循環器内科の実習でCCUに入ったとき、モニターに表示されていました。
ドクタードクター
その通り。右心カテーテルを肺動脈まで進めて測定する血行動態の指標だ。では肺動脈楔入圧は何を反映しているかな。
医学生医学生
肺動脈の圧……でしょうか。
ドクタードクター
惜しい。カテーテル先端のバルーンで肺動脈の枝をふさぐと、その先の血流が止まって、肺静脈を介して左房の圧が伝わってくる。だから肺動脈楔入圧は左房圧、さらにはおおむね左室拡張末期圧を反映するんだ。これが高ければ、左心系の手前に血液が渋滞している、つまり肺うっ血を意味する。
医学生医学生
なるほど、後方障害の指標なんですね。心係数のほうは、心拍出量を体表面積で割ったもので、低ければ全身に血液が届いていない、前方障害ということでしょうか。
ドクタードクター
完璧だね。この2つを軸にとって急性心不全を4群に分けるのがForrester分類で、これが正解だ。肺動脈楔入圧18mmHg、心係数2.2L/分/m²で区切り、I群はうっ血も低灌流もない、II群は肺うっ血あり、III群は低灌流あり、IV群は両方ありとなる。もともと急性心筋梗塞のポンプ失調の予後予測と治療方針のために作られたもので、群の番号が大きいほど予後が悪い。
医学生医学生
Nohria-Stevenson分類も、うっ血と低灌流の2軸で4つに分けていた気がします。正直、混同しそうです。
ドクタードクター
そこがこの問題の一番のひっかけだね。考え方は同じだけど、Nohria-Stevenson分類は測定値ではなく身体所見で評価する。起座呼吸、頸静脈怒張、浮腫、ラ音などがあればwet、四肢冷感や脈圧の狭小化、傾眠などがあればcoldとして、warm-dry、warm-wet、cold-dry、cold-wetに分けるんだ。
医学生医学生
カテーテルを入れなくてもベッドサイドで評価できるのが強みなんですね。
ドクタードクター
そう。対応関係でいうと、Forrester分類のII群がwarm-wet、III群がcold-dry、IV群がcold-wetにおおむね相当する。実臨床ではまずNohria-Stevenson分類で評価し、病態がはっきりしない場合や治療に反応しない重症例でSwan-Ganzカテーテルを使う、という流れが多い。では、NYHA分類はどうかな。
医学生医学生
CBTの勉強で覚えました。階段を上ると息切れする、といった自覚症状でI度からIV度に分けるものですよね。
ドクタードクター
その通り。日常的な身体活動で症状がなければI度、安静時にも症状があればIV度だ。数値は使わない。AHAのステージ分類はどうだろう。
医学生医学生
AからDまでありましたが、NYHAと何が違うのかがあいまいです。
ドクタードクター
よくある疑問だね。AHA/ACCのステージ分類は、心不全を進行していく一連の病期としてとらえる。Aは高血圧や糖尿病などのリスクだけがある段階、Bは器質的心疾患はあるが症状がない段階、Cは心不全症状が出た段階、Dは治療抵抗性の重症心不全だ。症状が出る前から予防的に介入しよう、という発想の分類なんだ。いったん進んだステージは戻らないという点も、症状で上下するNYHAとの違いだね。
医学生医学生
Child分類は、たしか消化器内科で習った肝硬変の分類ですよね。
ドクタードクター
そう、心不全とは無関係の選択肢だ。現在はChild-Pugh分類として、総ビリルビン、アルブミン、プロトロンビン時間、腹水、肝性脳症の5項目を点数化し、肝予備能を評価する。
医学生医学生
整理すると、自覚症状がNYHA、病期がAHA、身体所見がNohria-Stevenson、カテーテルの数値がForresterということですね。
ドクタードクター
その整理で十分戦える。発展として、Forrester分類は治療方針と直結しているのも大事だ。II群は利尿薬や血管拡張薬で前負荷を下げる。III群は脱水や右室梗塞などで前負荷が足りないことが多いので、まず輸液を考える。IV群は心原性ショックを含む最重症で、強心薬に加えて大動脈内バルーンパンピングや補助循環を検討する。
医学生医学生
III群に利尿薬を使ってしまうと、さらに灌流が悪くなりそうですね。
ドクタードクター
まさにそこが臨床での落とし穴だ。心不全だから利尿薬、と反射的に考えず、うっ血と低灌流のどちらが主体かを見極めることが大切なんだ。ほかにも急性心筋梗塞の聴診所見とショックで分けるKillip分類、来院時の収縮期血圧で初期対応を決めるクリニカルシナリオ分類もあるから、あわせて整理しておこう。

まとめ

Forrester分類は、Swan-Ganzカテーテルで測定した肺動脈楔入圧(18mmHg)と心係数(2.2L/分/m²)を軸に、急性心不全を肺うっ血と末梢低灌流の有無で4群に分ける血行動態分類です。同じうっ血と低灌流の2軸を身体所見で評価するのがNohria-Stevenson分類で、自覚症状に基づくNYHA分類、病期の進行をみるAHA/ACCステージ分類とは指標が異なり、Child-Pugh分類は肝硬変の重症度分類です。Forrester分類ではII群は前負荷の軽減、III群は輸液、IV群は強心薬や機械的補助と、群ごとに治療の方向性が変わります。心不全の分類を「何を指標にしているか」で整理することは、試験対策だけでなく、目の前の患者のうっ血と低灌流を見極めて治療を選ぶ臨床判断の土台になります。

解答・解説

正解はcです

テーマ

心不全には目的の異なる多くの分類がある。何を指標にしているか(自覚症状か、病期の進行か、身体所見か、カテーテルで測った数値か)を整理しておくことが本問の鍵である。

考え方

肺動脈楔入圧(PCWP:pulmonary capillary wedge pressure)と心係数(CI:cardiac index、心拍出量を体表面積で割った値)は、いずれも右心カテーテル(Swan-Ganzカテーテル)を肺動脈に挿入して測定する血行動態の指標である。 ・肺動脈楔入圧:カテーテル先端のバルーンで肺動脈の枝をふさいだときの圧で、左房圧(≒左室拡張末期圧)を反映する。上昇していれば肺うっ血(後方障害)を意味する。 ・心係数:全身へ送り出される血液量の指標で、低下していれば末梢の低灌流(前方障害)を意味する。 この2つを縦軸・横軸にとって急性心不全を4群に分けるのがForrester分類である。同じく「うっ血」と「低灌流」の2軸で4群に分けるNohria-Stevenson分類は、測定値ではなく身体所見で評価する点が異なり、両者の区別がよく問われる。

選択肢考察

  1. ×a.  AHA(American Heart Association)心不全ステージ分類

    米国心臓協会(AHA)と米国心臓病学会(ACC)による分類で、心不全を進行していく一連の病期としてとらえ、ステージA〜Dに分ける。A:高血圧・糖尿病など心不全のリスクはあるが器質的心疾患も症状もない、B:器質的心疾患はあるが症状がない、C:器質的心疾患があり心不全症状がある(または既往がある)、D:治療抵抗性の重症心不全。早期からの予防的治療介入を目的とした分類であり、血行動態の数値は用いない。

  2. ×b.  Child分類

    Child分類(現在は一般にChild-Pugh分類として用いる)は心不全ではなく肝硬変の重症度分類である。血清総ビリルビン、血清アルブミン、プロトロンビン時間(活性)、腹水、肝性脳症の5項目を点数化し、合計点でA・B・Cの3段階に分ける。肝予備能の評価や肝切除の適応判断に用いられる。

  3. ○c.  Forrester分類

    Swan-Ganzカテーテルで測定した肺動脈楔入圧(基準18mmHg)と心係数(基準2.2L/分/m²)を用いて、急性心不全を4群に分ける分類である。I群:うっ血なし・低灌流なし、II群:肺うっ血あり(PCWP>18mmHg)・灌流保持、III群:うっ血なし・低灌流あり(CI<2.2L/分/m²)、IV群:肺うっ血と低灌流の両方。もともと急性心筋梗塞に伴うポンプ失調の予後予測と治療方針の決定のために提唱され、群番号が大きいほど予後が不良である。

  4. ×d.  Nohria-Stevenson分類

    急性心不全の病態を、うっ血所見の有無(wet/dry:起座呼吸、頸静脈怒張、浮腫、ラ音など)と低灌流所見の有無(cold/warm:四肢冷感、脈圧の狭小化、傾眠、低ナトリウム血症、腎機能悪化など)の2軸で4群(warm-dry、warm-wet、cold-dry、cold-wet)に分ける。Forrester分類と同じ考え方の2軸分類だが、カテーテルによる測定値ではなく身体所見に基づくため非侵襲的にベッドサイドで評価できる点が特徴で、肺動脈楔入圧と心係数による定義ではない。

  5. ×e.  NYHA心機能分類

    ニューヨーク心臓協会(NYHA)による分類で、身体活動によって生じる自覚症状(疲労、動悸、呼吸困難、狭心痛)の程度から心不全の重症度をI〜IV度に分ける。I度:日常的な身体活動では症状なし、II度:日常的な身体活動で症状が出る(軽度の制限)、III度:日常活動以下の軽い労作で症状が出る(高度の制限)、IV度:安静時にも症状があり、わずかな労作で増悪する。自覚症状に基づく分類であり、血行動態の測定値は用いない。

Forrester分類の整理

横軸を肺動脈楔入圧(18mmHgで区切る)、縦軸を心係数(2.2L/分/m²で区切る)として4群に分ける。 I群(PCWP≦18、CI>2.2):正常な血行動態。経過観察、必要に応じて対症療法。 II群(PCWP>18、CI>2.2):肺うっ血が主体。利尿薬や血管拡張薬で前負荷を下げる。 III群(PCWP≦18、CI≦2.2):循環血液量減少(脱水、右室梗塞など)による低灌流が主体。輸液で前負荷を補う。必要なら強心薬。 IV群(PCWP>18、CI≦2.2):心原性ショックを含む最重症。強心薬、血管拡張薬、利尿薬に加え、大動脈内バルーンパンピング(IABP)や補助循環を考慮する。

Nohria-Stevenson分類との対応

Forrester分類のII群はwarm-wet、III群はcold-dry、IV群はcold-wetにおおむね相当する。実臨床では、侵襲的なカテーテル検査を要しないNohria-Stevenson分類がまず用いられ、病態がはっきりしない場合や治療に反応しない重症例でSwan-Ganzカテーテルによる評価が行われる。

心不全の主な分類の比較

・NYHA分類:自覚症状(身体活動能力)による重症度(I〜IV度) ・AHA/ACCステージ分類:病期の進行度(A〜D) ・Killip分類:急性心筋梗塞時の聴診所見(ラ音・III音)とショックの有無による重症度(I〜IV群) ・Forrester分類:肺動脈楔入圧と心係数による血行動態(I〜IV群) ・Nohria-Stevenson分類:身体所見によるうっ血と低灌流の評価(4群) ・クリニカルシナリオ(CS)分類:急性心不全の来院時収縮期血圧などによる初期対応の分類

Child-Pugh分類

総ビリルビン、アルブミン、プロトロンビン時間、腹水、肝性脳症をそれぞれ1〜3点で評価し、5〜6点をA、7〜9点をB、10〜15点をCとする。

POINT

・Forrester分類=肺動脈楔入圧(18mmHg)×心係数(2.2L/分/m²)、Swan-Ganzカテーテルによる測定値で4群 ・Nohria-Stevenson分類=身体所見(wet/dry、cold/warm)で4群 ・NYHA分類=自覚症状、AHA/ACCステージ分類=病期の進行度 ・Killip分類=急性心筋梗塞の身体所見(ラ音、III音、ショック) ・Child-Pugh分類は肝硬変の分類

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。