StudyMed医師国家試験

「誰がやる?何が入る?」―実施主体と対象で解く地域保健医療の5つの制度

第116回医師国家試験 C問題 第5問

国試問題にチャレンジ

第116回 C問題 第5問

地域保健医療について正しいのはどれか。

  1. a.特定健診・特定保健指導は事業主が行う。
  2. b.肺がん検診では判定に二重読影が行われる。
  3. c.地域包括支援センターは都道府県が設置する。
  4. d.医療法に基づく5疾病5事業には高血圧が含まれる。
  5. e.PSAによるがん検診は対策型がん検診において推奨されている。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は地域保健医療の制度をまとめて問う問題だ。健診、がん検診、地域包括支援センター、医療計画と、どれも名前は聞いたことがあるはず。ポイントは「その制度はどの法律に基づき、誰が実施・設置するのか」「何が対象に含まれるのか」を整理できているかどうか。順番に見ていこう。まず特定健診・特定保健指導は誰が行うものだと思う?
医学生医学生
会社員なら職場で健診を受けるので、事業主でしょうか。
ドクタードクター
そこが典型的なひっかけだね。職場で受ける健診は、労働安全衛生法に基づいて事業者が行う一般健康診断。一方、特定健診・特定保健指導は高齢者の医療の確保に関する法律に基づき、医療保険者、つまり健康保険組合や協会けんぽ、市町村国保などに実施が義務づけられているんだ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で「メタボ健診」と習いました。対象は40〜74歳でしたよね。
ドクタードクター
その通り。内臓脂肪に着目した健診で、リスクの程度に応じて動機付け支援や積極的支援という保健指導を行う。実際には事業主健診の結果を保険者に提供して特定健診として活用できる仕組みがあるから、現場では混同しやすいけれど、実施主体はあくまで保険者だ。では次、地域包括支援センターはどうかな。
医学生医学生
高齢者の介護の相談窓口なので、介護保険の保険者である市町村が設置するのだと思います。都道府県ではないですよね。
ドクタードクター
正解。介護保険法に基づき市町村が設置主体で、社会福祉法人や医療法人に運営を委託することもできる。保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員の3職種がチームで、総合相談支援や虐待対応などの権利擁護、介護予防ケアマネジメントを担う、地域包括ケアシステムの中核だね。
医学生医学生
地域医療の実習で訪問したとき、ケアマネさんと保健師さんが一緒に相談を受けていました。
ドクタードクター
いい経験をしたね。では医療計画の5疾病5事業。高血圧は含まれるかな。
医学生医学生
高血圧は患者数がとても多いので、入っていそうな気がしますが……。
ドクタードクター
そう思わせるのが狙いだね。5疾病はがん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病、精神疾患。5事業は救急、災害、へき地、周産期、小児医療だ。高血圧は脳卒中や心血管疾患の重要な危険因子だけれど、それ自体は5疾病に入っていない。医療法に基づき都道府県が策定する計画、という点もセットで覚えよう。なお第8次医療計画からは新興感染症への対応が加わって6事業になっている。
医学生医学生
では、PSAによる前立腺がん検診は対策型検診で推奨されていますか。人間ドックでよく見かける気がします。
ドクタードクター
推奨されていない。対策型がん検診は、集団全体のがん死亡率を下げることを目的に市町村が公費で行うもので、死亡率減少効果が科学的に確立した方法に限られる。PSA検診はその効果が十分に示されておらず、進行の遅いがんまで見つける過剰診断や、生検・治療に伴う尿失禁や勃起障害などの不利益も問題になる。だから人間ドックなどの任意型検診として、利益と不利益を説明したうえで本人の希望で受ける位置づけなんだ。
医学生医学生
残る肺がん検診の二重読影が正解ですね。CBTの勉強で、胸部エックス線は2人で読むと覚えた記憶があります。
ドクタードクター
その通り、これが正しい選択肢だ。市町村の肺がん検診は40歳以上で年1回の胸部エックス線検査で、画像を2名以上の医師が独立して読影し、うち1名は十分な経験をもつ医師であること、必要に応じて過去画像と比較読影することが指針で求められている。小さな病変の見落としを減らすための精度管理だね。
医学生医学生
二重読影は肺がん検診だけのものですか。
ドクタードクター
いや、胃がん検診のエックス線検査や乳がん検診のマンモグラフィでも求められている。また肺がん検診では、50歳以上の重喫煙者には喀痰細胞診を併用する。せっかくだから対策型がん検診の5種類も確認しておこう。胃、大腸、肺、乳、子宮頸がんの5つで、大腸は便潜血、乳はマンモグラフィ、子宮頸部は細胞診が基本だ。
医学生医学生
健診の実施主体も、特定健診は保険者、職場健診は事業者、がん検診と乳幼児健診は市町村、学校健診は学校設置者と、まとめて整理するとよさそうですね。
ドクタードクター
まさにそれが今回の一番の学び。臨床に出ると、患者さんから「どの健診を受ければいいの」「この検査は受けたほうがいいの」と聞かれることが多い。制度の枠組みと、検診には利益だけでなく不利益もあるという視点を持っておくと、根拠をもって説明できるようになるよ。

まとめ

地域保健医療の制度は、根拠法・実施主体・対象を対応づけて整理するのが攻略の鍵です。特定健診・特定保健指導は医療保険者、地域包括支援センターは市町村が担い、医療計画の5疾病(がん・脳卒中・心血管疾患・糖尿病・精神疾患)に高血圧は含まれません。PSA検診は死亡率減少効果が確立しておらず過剰診断などの不利益もあるため対策型がん検診としては推奨されず、対策型は胃・大腸・肺・乳・子宮頸の5種に限られます。肺がん検診の胸部エックス線では、精度管理として2名以上の医師による二重読影が行われ、胃エックス線やマンモグラフィでも同様です。こうした制度の枠組みを理解しておくことは、患者さんに健診や検診の意味を説明する臨床の場面でも役立ちます。

解答・解説

正解はbです

本問は、地域保健医療に関わる制度について「誰が実施・設置するのか」「何が対象に含まれるのか」を問う問題である。それぞれの制度の根拠となる法律と実施主体を整理しておくと判断しやすい。 ・特定健診・特定保健指導:高齢者の医療の確保に関する法律に基づき、医療保険者(健康保険組合、協会けんぽ、市町村国保など)が実施する。 ・がん検診:健康増進法に基づく市町村の事業(対策型がん検診)で、厚生労働省の指針により対象部位・検査方法・精度管理の方法が定められている。精度管理の一つとして、画像を用いる検診では2名以上の医師による読影(二重読影)が求められている。 ・地域包括支援センター:介護保険法に基づき、市町村が設置する(法人に委託して運営することも可能)。 ・医療計画の5疾病5事業:医療法に基づき都道府県が策定する医療計画で、重点的に体制を整備すべき疾病・事業として定められたもの。高血圧は含まれない。 ・PSA検診:前立腺がんの死亡率を集団として減少させる効果が十分に証明されておらず、過剰診断などの不利益もあるため、対策型がん検診としては推奨されていない。 以上より、正しいのは肺がん検診で二重読影が行われるとするbである。

選択肢考察

  1. ×a.  特定健診・特定保健指導は事業主が行う。

    誤り。特定健康診査(特定健診)と特定保健指導は、高齢者の医療の確保に関する法律に基づき、医療保険者に実施が義務づけられている。対象は40〜74歳の被保険者・被扶養者で、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に着目した健診を行い、リスクの程度に応じて動機付け支援・積極的支援という保健指導を行う。事業主が実施するのは労働安全衛生法に基づく一般健康診断(定期健康診断など)であり、両者を混同しないこと。なお、事業主健診の結果は特定健診の結果として保険者に提供・活用できる仕組みになっている。

  2. ○b.  肺がん検診では判定に二重読影が行われる。

    正しい。市町村が行う肺がん検診(対象40歳以上、年1回)では、胸部エックス線検査の画像を2名以上の医師が独立して読影すること(二重読影)が指針で求められており、そのうち1名は十分な経験を有する医師であること、また必要に応じて過去の画像と比較読影することとされている。小さな病変の見落としを減らし、検診の精度を保つための精度管理の一環である。二重読影は胃がん検診のエックス線検査や乳がん検診のマンモグラフィでも求められている。なお、肺がん検診では胸部エックス線検査に加え、50歳以上の重喫煙者(喫煙指数600以上など)には喀痰細胞診を併用する。

  3. ×c.  地域包括支援センターは都道府県が設置する。

    誤り。地域包括支援センターは介護保険法に基づき市町村が設置主体となる機関であり、社会福祉法人や医療法人などに運営を委託することもできる。保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)の3職種がチームで、総合相談支援、権利擁護(高齢者虐待への対応や成年後見制度の活用支援など)、包括的・継続的ケアマネジメント支援、介護予防ケアマネジメントを担い、地域包括ケアシステムの中核となる。

  4. ×d.  医療法に基づく5疾病5事業には高血圧が含まれる。

    誤り。都道府県が医療法に基づいて策定する医療計画では、5疾病として、がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病、精神疾患が、5事業として救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療(小児救急医療を含む)が定められている。高血圧は脳卒中や心血管疾患の重要な危険因子ではあるが、5疾病そのものには含まれない。なお、2024年度からの第8次医療計画では新興感染症発生・まん延時における医療が加わり、5疾病6事業(および在宅医療)となっている。

  5. ×e.  PSAによるがん検診は対策型がん検診において推奨されている。

    誤り。PSA(前立腺特異抗原)検査による前立腺がん検診は、集団全体の前立腺がん死亡率を減らす効果を示す科学的根拠が十分でなく、さらに生命予後に影響しない進行の遅いがんまで見つけてしまう過剰診断や、生検・治療に伴う合併症(尿失禁、勃起障害など)といった不利益が問題とされる。そのため国のがん検診指針の対象には含まれず、公費で住民に行う対策型がん検診としては推奨されていない。人間ドックなどの任意型検診として、利益と不利益を十分に説明したうえで本人の希望により受けるものと位置づけられている。

対策型検診と任意型検診

・対策型がん検診:集団全体のがん死亡率を下げることを目的に、市町村などが公共的な予防対策として行う(住民検診など)。死亡率減少効果が科学的に確立した方法に限られ、利益と不利益のバランスが重視される。 ・任意型がん検診:個人が自分の死亡リスクを下げる目的で任意に受ける(人間ドックなど)。

国の指針で推奨されるがん検診(対策型)

・胃がん:50歳以上、2年に1回、胃部エックス線検査または胃内視鏡検査(エックス線検査は40歳以上で年1回の実施も可) ・大腸がん:40歳以上、年1回、便潜血検査(免疫法) ・肺がん:40歳以上、年1回、胸部エックス線検査(重喫煙者には喀痰細胞診を併用) ・乳がん:40歳以上、2年に1回、マンモグラフィ ・子宮頸がん:20歳以上、2年に1回、子宮頸部細胞診(30〜60歳ではHPV検査単独法も選択肢に加えられた) 前立腺がん(PSA)、肝がん、甲状腺がんなどは対策型検診の対象ではない。

健診制度の実施主体の整理

・特定健診・特定保健指導:医療保険者(高齢者の医療の確保に関する法律) ・一般健康診断(職場健診):事業者(労働安全衛生法) ・がん検診:市町村(健康増進法) ・乳幼児健診:市町村(母子保健法) ・学校健診:学校設置者(学校保健安全法)

地域包括支援センター

介護保険法に基づき市町村が設置。保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員の3職種を配置し、高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援を一体的に提供する地域包括ケアシステムの中核を担う。

POINT

・特定健診・特定保健指導の実施主体は医療保険者(事業主ではない)。対象は40〜74歳。 ・肺がん検診の胸部エックス線は2名以上の医師による二重読影を行う(胃エックス線、マンモグラフィも同様)。 ・地域包括支援センターの設置主体は市町村。 ・5疾病=がん・脳卒中・心血管疾患・糖尿病・精神疾患。5事業=救急・災害・へき地・周産期・小児(第8次医療計画で新興感染症が加わり6事業)。高血圧は含まれない。 ・PSA検診は対策型がん検診として推奨されていない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。